平成30年民法(相続法)改正その3 第4 配偶者居住権の保護 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

第4 配偶者居住権の保護

1,改正の背景

配偶者の終の住み家を守る「配偶者居住権」の新設

日本人の遺産の典型例として、「自宅不動産の価値が遺産の半分以上を占める」というケースは多く、これが遺産分割を難しくしていることが多く、また、残された相続人同士の仲が悪い場合、残された配偶者が、自宅を失ってしまうこともあります。

 

そこで、夫に先立たれた妻(逆の場合もあり)が、住む場所や生活のためのお金に困ることなく、老後を過ごすための画期的な権利として創設されたのが、「配偶者居住権」です。

 

改正の目玉とも言えるのがこの「配偶者相続人の保護」に関する新制度です。

 

従来の相続法では、夫名義の不動産に長年住んでいた妻が、遺産分割協議等で不動産を取得できなければ、居住の権利が保護されない可能性があり、以前から問題視されていました。

 

このような問題を改善するため改正相続法では、配偶者居住権の保護についての方策が盛り込まれることになりました。

 

2,配偶者居住権

【配偶者居住権】により終身の間、居住が可能

この新しく認められた権利は、配偶者相続人が、亡くなった夫(妻)名義の居住建物の所有権を相続しない場合でも、配偶者居住権を取得すれば、終身の間その居住建物に住み続けられるという権利です。

 

この配偶者居住権は、遺産分割協議、遺贈、審判などで認められる必要がありますが、不動産に関する権利として登記することもできます。

 

例えば、亡くなった夫名義の居住建物の所有権は長男が取得し、残された妻に配偶者居住権を認めれば、残された妻は生涯無償で居住することができます。

 

3,配偶者短期居住権

配偶者短期居住権】により、一定期間居住が認められる

配偶者短期居住権とは、配偶者の死亡から遺産分割協議の成立まで短期的な居住権を認めるものです。

 

先述した生涯無償で居住できる「配偶者居住権」が仮に認められない場合でも、この「配偶者短期居住権」により、一定期間は居住している建物に無償で住むことができます。その一定期間とは、「遺産分割により居住建物の帰属が確定した日」または「相続開始時から6ヶ月を経過する日」のいずれか遅い日となっています。

 

これにより、少なくとも相続開始時から6ヶ月間は配偶者相続人の居住権が保護されることになりました。

 

4,施行日

2020年4月1日以降に開始した相続につき適用されます。遺言・死因贈与契約によって定めた配偶者居住権についても、その作成・契約日が2020年4月1日以降であることが必要です。