商品自体が取引上互に誤認混同を生ずる虞がないものであっても、それらの商品に同一または類似の商標を | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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商品自体が取引上互に誤認混同を生ずる虞がないものであっても、それらの商品に同一または類似の商標を使用するとき同一営業主の製造または販売にかかる商品と誤認混同される虞がある場合には、これらの商品は、旧商標法(大正10年法律第99号)第2条第1項第9号にいう類似の商品にあたると解するのが相当である。

 

最高裁判所第3小法廷判決/昭和33年(オ)第1104号

昭和36年6月27日

審決取消請求事件

【判示事項】    1、旧商標法(大正10年法律第99号)第2条第1項第9号にいわゆる指定商品の類似性の判定

2、連合商標の登録の要件

【判決要旨】    1、商品自体が取引上互に誤認混同を生ずる虞がないものであっても、それらの商品に同一または類似の商標を使用するとき同一営業主の製造または販売にかかる商品と誤認混同される虞がある場合には、これらの商品は、旧商標法(大正10年法律第99号)第2条第1項第9号にいう類似の商品にあたると解するのが相当である。

2、出願にかかる商標が原登録商標の連合商標として出願された場合であっても、それが登録を受けうるためには、他人の登録商標と類似していないことを必要とする。

【参照条文】    商標法(大正10年法律第99号)1

          商標法2-1

          商標法3

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集15巻6号1730頁

 

商標法

(商標登録を受けることができない商標)

第四条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。

一 国旗、菊花紋章、勲章、褒章又は外国の国旗と同一又は類似の商標

二 パリ条約(千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約をいう。以下同じ。)の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国の紋章その他の記章(パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国旗を除く。)であつて、経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標

三 国際連合その他の国際機関(ロにおいて「国際機関」という。)を表示する標章であつて経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標(次に掲げるものを除く。)

イ 自己の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似するものであつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

ロ 国際機関の略称を表示する標章と同一又は類似の標章からなる商標であつて、その国際機関と関係があるとの誤認を生ずるおそれがない商品又は役務について使用をするもの

四 赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律(昭和二十二年法律第百五十九号)第一条の標章若しくは名称又は武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成十六年法律第百十二号)第百五十八条第一項の特殊標章と同一又は類似の商標

五 日本国又はパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号のうち経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の標章を有する商標であつて、その印章又は記号が用いられている商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務について使用をするもの

六 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なものと同一又は類似の商標

七 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標

八 他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)

九 政府若しくは地方公共団体(以下「政府等」という。)が開設する博覧会若しくは政府等以外の者が開設する博覧会であつて特許庁長官の定める基準に適合するもの又は外国でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会の賞と同一又は類似の標章を有する商標(その賞を受けた者が商標の一部としてその標章の使用をするものを除く。)

十 他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

十一 当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

十二 他人の登録防護標章(防護標章登録を受けている標章をいう。以下同じ。)と同一の商標であつて、その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務について使用をするもの

十三 削除

十四 種苗法(平成十年法律第八十三号)第十八条第一項の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であつて、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

十五 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)

十六 商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標

十七 日本国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地のうち特許庁長官が指定するものを表示する標章又は世界貿易機関の加盟国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する標章のうち当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒若しくは蒸留酒について使用をすることが禁止されているものを有する商標であつて、当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒又は蒸留酒について使用をするもの

十八 商品等(商品若しくは商品の包装又は役務をいう。第二十六条第一項第五号において同じ。)が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標

十九 他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)

2 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者が前項第六号の商標について商標登録出願をするときは、同号の規定は、適用しない。

3 第一項第八号、第十号、第十五号、第十七号又は第十九号に該当する商標であつても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。

 

 

       主   文

 

 原判決を破棄する。

 被上告人の請求を棄却する。

 訴訟費用は、各審級を通じ被上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告人指定代理人斎藤一夫、同矢渕久成名義、同杉林信義の上告理由第1点乃至第3点について。

 商標が類似のものであるかどうかは、その商標を或る商品につき使用した場合に、商品の出所について誤認混同を生ずる虞があると認められるものであるかどうかということにより判定すべきものと解するのが相当である。そして、指定商品が類似のものであるかどうかは、原判示のように、商品自体が取引上誤認混同の虞があるかどうかにより判定すべきものではなく、それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認される虞がある認められる関係にある場合には、たとえ、商品自体が互に誤認混同を生ずる虞がないものであっても、それらの商標は商標法(大正10年法律99号)2条9号にいう類似の商品の商品にあたると解するのが相当である。本件においては「橘正宗」なる商標中「正宗」は清酒を現わす慣用標章と解され、「橘焼酎」なる商標中「焼酎」は普通名詞であるから、右両商標は要部を共通にするものであるのみならず、原審の確定する事実によれば、同一メーカーで清酒と焼酎との製造免許を受けているものが多いというのであるから、いま「橘焼酎」なる商標を使用して焼酎を製造する営業主がある場合に、他方で「橘正宗」なる商標を使用して清酒を製造する営業主があるときは、これらの商品は、いずれも、「橘」じるしの商標を使用して酒類を製造する同一営業主から出たものと一般世人に誤認させる虞があることは明らかであって、「橘焼酎」なる商標が著名のものであるかどうかは右の判断に影響を及ぼうものではない。それ故、「橘焼酎」と「橘正宗」とは類似の商標と認むべきであるのみならず、右両商標の指定商品もまた類似の商品と認むべきである。

 そして、出願にかかる商標(「橘正宗」)が原登録商標(登録第89、094号「花橘正宗」)の連合商標として出願された場合であっても、原登録商標が登録された後に登録された原登録商標と類似しない第3者の登録商標(「橘焼酎」)に類似する場合には、その登録は商標法2条により拒絶さるべきものと解するを相当とするところ、上告人の有する「花橘正宗」なる登録商標と「橘焼酎」とは類似するものとは認められず、しかも「橘正宗」「橘焼酎」と類似するものであることは上叙のとおりであるから、上告人が「橘正宗」なる商標の登録出願を拒絶したことは正当であるといわねばならない。されば、論旨は理由があり原判決は破棄を免れない。そして、原審の確定した事実関係によれば、本件審決になんら違法はなく、その取消を求める被上告人の請求は失当として棄却さるべきものである。

 よって、民訴408条、96条、89条を適用し、全裁判官1致の意見で、主文のとおり判決する。よって、民訴4。8条、96条、89条を適用し、菱蟹豊婁姜の寿判決する。

     最高裁判所第3小法廷