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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

国家公務員法100条1項にいう「秘密」の意義

 

 

国家公務員法違反被告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷決定/昭和48年(あ)第2716号

【判決日付】      昭和52年12月19日

【判示事項】      1、国家公務員法100条1項にいう「秘密」の意義

             2、国家公務員法100条1項にいう「秘密」にあたるとされた事例

【判決要旨】      1、国家公務員法100条1項にいう「秘密」とは、非公知の事項であって、実質的にもそれを秘密として保護するに価すると認められるものをいい、国家機関が単にある事項につき形式的に秘扱の指定をしただけでは足りない。

             2、大阪国税局が事業所得者に対する課税事務を行う際の推計等の資料とするため作成した本件「営業庶業等所得標準率表」及び「所得業種目別効率表」(原判文参照)は、国家公務員法100条1項にいう「秘密」にあたる。

【参照条文】      国家公務員法100-1

             国家公務員法109

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集31巻7号1053頁

 

国家公務員法

(秘密を守る義務)

第百条 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。

② 法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表するには、所轄庁の長(退職者については、その退職した官職又はこれに相当する官職の所轄庁の長)の許可を要する。

③ 前項の許可は、法律又は政令の定める条件及び手続に係る場合を除いては、これを拒むことができない。

④ 前三項の規定は、人事院で扱われる調査又は審理の際人事院から求められる情報に関しては、これを適用しない。何人も、人事院の権限によつて行われる調査又は審理に際して、秘密の又は公表を制限された情報を陳述し又は証言することを人事院から求められた場合には、何人からも許可を受ける必要がない。人事院が正式に要求した情報について、人事院に対して、陳述及び証言を行わなかつた者は、この法律の罰則の適用を受けなければならない。

⑤ 前項の規定は、第十八条の四の規定により権限の委任を受けた再就職等監視委員会が行う調査について準用する。この場合において、同項中「人事院」とあるのは「再就職等監視委員会」と、「調査又は審理」とあるのは「調査」と読み替えるものとする。

 

第四章 罰則

第百九条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

一 第七条第三項の規定に違反して任命を受諾した者

二 第八条第三項の規定に違反して故意に人事官を罷免しなかつた閣員

三 人事官の欠員を生じた後六十日以内に人事官を任命しなかつた閣員(此の期間内に両議院の同意を経なかつた場合には此の限りでない。)

四 第十五条の規定に違反して官職を兼ねた者

五 第十六条第二項の規定に違反して故意に人事院規則及びその改廃を官報に掲載することを怠つた者

六 第十九条の規定に違反して故意に人事記録の作成、保管又は改訂をしなかつた者

七 第二十条の規定に違反して故意に報告しなかつた者

八 第二十七条の規定に違反して差別をした者

九 第四十七条第三項の規定に違反して採用試験の公告を怠り又はこれを抑止した職員

十 第八十三条第一項の規定に違反して停職を命じた者

十一 第九十二条の規定によつてなされる人事院の判定、処置又は指示に故意に従わなかつた者

十二 第百条第一項若しくは第二項又は第百六条の十二第一項の規定に違反して秘密を漏らした者

十三 第百三条の規定に違反して営利企業の地位についた者

十四 離職後二年を経過するまでの間に、離職前五年間に在職していた局等組織に属する役職員又はこれに類する者として政令で定めるものに対し、契約等事務であつて離職前五年間の職務に属するものに関し、職務上不正な行為をするように、又は相当の行為をしないように要求し、又は依頼した再就職者

十五 国家行政組織法第二十一条第一項に規定する部長若しくは課長の職又はこれらに準ずる職であつて政令で定めるものに離職した日の五年前の日より前に就いていた者であつて、離職後二年を経過するまでの間に、当該職に就いていた時に在職していた局等組織に属する役職員又はこれに類する者として政令で定めるものに対し、契約等事務であつて離職した日の五年前の日より前の職務(当該職に就いていたときの職務に限る。)に属するものに関し、職務上不正な行為をするように、又は相当の行為をしないように要求し、又は依頼した再就職者

十六 国家行政組織法第六条に規定する長官、同法第十八条第一項に規定する事務次官、同法第二十一条第一項に規定する事務局長若しくは局長の職又はこれらに準ずる職であつて政令で定めるものに就いていた者であつて、離職後二年を経過するまでの間に、局長等としての在職機関に属する役職員又はこれに類する者として政令で定めるものに対し、契約等事務であつて局長等としての在職機関の所掌に属するものに関し、職務上不正な行為をするように、又は相当の行為をしないように要求し、又は依頼した再就職者

十七 在職していた府省その他の政令で定める国の機関、行政執行法人若しくは都道府県警察(以下この号において「行政機関等」という。)に属する役職員又はこれに類する者として政令で定めるものに対し、国、行政執行法人若しくは都道府県と営利企業等(再就職者が現にその地位に就いているものに限る。)若しくはその子法人との間の契約であつて当該行政機関等においてその締結について自らが決定したもの又は当該行政機関等による当該営利企業等若しくはその子法人に対する行政手続法第二条第二号に規定する処分であつて自らが決定したものに関し、職務上不正な行為をするように、又は相当の行為をしないように要求し、又は依頼した再就職者

十八 第十四号から前号までに掲げる再就職者から要求又は依頼(独立行政法人通則法第五十四条第一項において準用する第十四号から前号までに掲げる要求又は依頼を含む。)を受けた職員であつて、当該要求又は依頼を受けたことを理由として、職務上不正な行為をし、又は相当の行為をしなかつた者

 

ジュリスト 2024年3月号(No.1594) 【特集】芸能活動と法

 

有斐閣

2024年02月24日 発売

定価 1,760円(本体 1,600円)

 

今号特集では連日のように報道される芸能分野の問題事象を法的な視点から捉えます。芸能活動は,慣行の問題点が指摘されるとともに,新たな技術による様々な課題も生じています。本特集では,これらの問題の現状やその背景について広く議論し,芸能分野の未来を展望するとともに,それぞれの問題への対応のあり方について理論的検討を加えました。

 

 

【特集】芸能活動と法

◇〔座談会〕芸能活動と法――エコシステム,文化政策,ルールメイキング…福井健策(司会)/佐藤大和/宍戸常寿/中井秀範/三尾美枝子……14

 

◇芸名,グループ名とパブリシティ権…小林利明……35

 

◇芸能人のAIアバターとプライバシー・肖像権…石井夏生利……41

 

◇芸能活動と労働者性…石田信平……48

 

◇芸能事務所からの独立・移籍をめぐる独占禁止法上の諸問題…伊永大輔……54

 

◇エンタテインメント業界とハラスメント――舞台,映像分野を中心としたハラスメント防止対策と課題…寺内康介……60

 

◇SNS上での誹謗中傷問題と芸能人――もうひとつの萎縮効果(chilling effect)…水谷瑛嗣郎……67

 

◇不適切表現の「封印」と「表現の自由」…志田陽子……75

 

◇ステルスマーケティング規制――インフルエンサーの社会的責任…海老澤美幸……81

 

コメント

芸能と法に関する網羅的な特集である。

興味深い。

 

第10章 事業者が交付すべき書面のデジタル化

改正背景とデジタル化の対象

 近年、あらゆる分野についてデジタル化が進められ、新型コロナウイルス感染症の影響で、この動きはますます激しくなっています。特商法の分野でも、昨今、消費者・事業者の外出が制限されていることもあり、対面での契約書等の交付が難しい場面が増えました。

 こうした背景から、改正法では、旧法でもデジタル化への対応がされていた通信販売を除き、事業者が交付しなければならない契約書面等について、消費者の承諾を得て、電磁的方法(電子メール送信等)で行うことも可能になりました。

 

交付書面デジタル化の対象

 

業務形態

根拠条文

 

訪問販売

改正4条2項・3項

通信販売

交付書面の規定自体なし

(承諾メールについて、通知は旧法13条2項ですでにデジタル化対応済み)

 

電話勧誘販売

改正18条2項・3項

 

連鎖販売契約

改正37条3項・4項

 

特定継続的役務提供         

改正42条4項・5項

 

業務提供誘引販売取引

改正55条3項・4項

 

訪問購入

改正58条の7第2項・3項

 

 

 

消費者からの承諾を適法に得るための方法は未確定

 書面の交付を電磁的方法に代替する場合、「政令で定めるところにより、当該申込みをした者の承諾を得」る必要があり、今後政施行規則でどのような定めがされるかが重要となります。

 

 

 事業者が交付するべき書面のデジタル化については、悪徳事業者が法改正を悪用して、消費者が納得しないうちに契約締結に至らせるのではないかという心配の声があがっているほか、高齢者や若者が不利な契約をした場合に周囲が発見できないなどの懸念も指摘されています。こうした懸念点に対応すべく、承諾の取得方法について政施行規則で適切に規定するように附帯決議もなされています。

 

 

 実際、消費者庁取引対策課の笹路健課長は、政府規制改革推進会議で、「本人が納得していないものは承諾とは言えず、電磁的な交付をしても書面交付義務を満たしたことにならない。(中略)形ばかりの承諾が悪質事業者に利用されることは絶対に阻止することは必須。」「高齢者に配慮する必要があり、原則書面は維持する。」と説明しています。また、消費者の「承諾」が、交付書面のデジタル化によって予想される弊害を回避するためのセーフティネットであることに配慮して、「消費者の承諾」要件を厳格に定めることで消費者トラブルを回避する意向を示しています 2。

 

 

 さらに、参議院での審議における5月28日の高田潔消費者庁次長答弁の中には、オンラインで完結する取引については電子メールでの承諾を認め、それ以外については紙での承諾を必要とする提案もなされています 3。

 そして、仮に適切に承諾をとっていないと判断された場合は、行う事業に応じて懲役または罰金が科せられます(法71条等)。

 

 

 具体的な承諾取得方法については、今後の議論に委ねられることになっていますが、上記のような議論の状況を踏まえると、消費者の真意に基づく承諾といえるかという観点から、たとえば、デジタル機器に不慣れな高齢者や障がい者およびトラブルに巻き込まれやすい若者に配慮するなどした、厳格なルールが定められることが想定されます。

 

 

 今後定められる政施行規則によって、書面での承諾を取得することが一律に求められるとしたら、事業者にとっての手続的負担が、書面交付の場合と実質的に変わらないことも考えられます。

 交付書面のデジタル化によって、コストの削減やビジネスの可能性を広げることを検討する事業者においては、消費者からの承諾を適法に獲得するための方法がどう定められるかについて、今後の動向に注視すべきと思われます。

 

 

 また、クーリング・オフ制度への波及効果も考えられます。具体的には、クーリング・オフ期間は「書面を受領してから8日」と定められているところ、ここでいう「書面」に電子メールも含まれることとなる結果、電子メールを受領しさえすればクーリング・オフ期間が進行してしまうのかという問題点があります。

 

 

 この点について、電子メールを開封しなければ、クーリング・オフの起算点が進行しないとする議論もあります。デジタル化された場合の書面の「受領」とは何を意味するかも含め、具体的な要件設定についても、今後、政施行規則等で定まっていくことになります 4。

 

証拠保全の必要性

大阪高等裁判所決定昭和38年3月6日

証拠保全申立却下決定に対する抗告事件

【判示事項】 供述内容が変更されるおそれと証拠保全

【判決要旨】 民事訴訟法第343条にいう「其の証拠を使用するに困難なる事情」とは、「其の証拠方法を使用するに困難なる事情」であり、人証の場合、工作により供述の内容が変更されるおそれがあることは、右事情に該当しない。

【参照条文】 民事訴訟法343

【掲載誌】  訟務月報9巻3号419頁

       判例タイムズ147号106頁

 

平成八年法律第百九号

民事訴訟法

(証拠保全)

第二百三十四条 裁判所は、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認めるときは、申立てにより、この章の規定に従い、証拠調べをすることができる。

 

 

 証拠保全の要件について、旧法第365条は、「証拠ヲ紛失スル恐アリ又ハ之ヲ使用シ難キ恐アルトキ」と規定し、現行法でも書証、物証についてはそういう場合のことをいい、人証についても、これに準じて、老齢又は不治の病気のだめ余命がないとか、国外に移住しようとしている場合(兼子・条約III 153・4頁)などに、その実例が多いようである。

しかし、現状の変更されるおそれがある場合の検証なども許されており、それと比べてみると、本件のように時日をかすことによって証言内容の信憑性がうすれるおそれのある場合など(もちろんそういう事由が疎明されてのことだが)、許してもよいようでもある。

なお研究すべき問題であると思われる。

 

高齢者優良賃貸住宅の入居者の死亡の発見が担当者の鍵の管理ミスにより遅れた事案について、緊急時対応サービス等の利用に関する契約上の債務不履行があったとして、死亡者の相続人の慰謝料請求が認められた事例

大阪高等裁判所判決/平成20年(ネ)第860号、平成20年(ネ)第1531号

平成20年7月9日

損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件

【判示事項】    高齢者優良賃貸住宅の入居者の死亡の発見が担当者の鍵の管理ミスにより遅れたことについて、緊急時対応サービス等の利用に関する契約上の債務不履行があったとして、死亡者の相続人の慰謝料請求が認められた事例

【参照条文】    民法415

          民法656

【掲載誌】     判例時報2025号27頁

 

民法

(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

 

(準委任)

第六百五十六条 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

 

不法領得の意思のない事例・業務上横領罪

 

 

業務上横領、背任被告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和26年(あ)第5052号

【判決日付】      昭和28年12月25日

【判示事項】      不法領得の意思のない事例

【参照条文】      刑法253

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集7巻13号2721頁

             最高裁判所裁判集刑事90号413頁

             判例時報20号24頁

 

刑法

(業務上横領)

第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

 

       主   文

 

 原判決を破棄する。

 本件を福岡高等裁判所に差戻す。

 

       理   由

 

 弁護人木下郁の上告趣意第一点、第二点は、いづれも刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。

 しかし、業務上横領の点につき職権を以つて調査するに、記録上判示A組合の組合長たる被告人が判示貨物自動車営業に関して組合資金を支出したことが、被告人自身の利益を図る目的を以つてなされたものと認めるべき資料はないばかりでなく、それが組合のためにもなされたものであることはこれを否定し得ない。殊に被告人が判示組合名義を以つてB等から譲受け、組合名義を以つて経営するに至つた貨物自動車営業は、原判決の説示する如く、組合の総会及び理事会の議決を経ず、定款に違反して被告人が独断でその営業を継承したものであるとしても、この営業のためにした支出が専ら組合以外の者のためになされたと認めるに足る資料はない。してみると、判示貨物自動車営業が、原判決の認定する如く、たとえ判示組合の内部関係において、その事業に属しないとしても、被告人が該営業のため組合資金をほしいまゝに支出した一事を以つて直ちに業務上横領罪を構成するものと即断することはできない。即ち、右支出が専ら本人たる組合自身のためになされたものと認められる場合には、被告人は不法領得の意思を欠くものであつて、業務上横領罪を構成しないと解するのが相当である。然るに、原判決は被告人自身の利得を図る目的に出たか否かは同罪の成立に影響を及ぼすものではないとして右支出が何人のためになされたものであるかとの点について何ら判断を示すことなく、直ちに業務上横領罪を構成すると判示しているのであつて、結局事案を誤認したかまたは法律の適用を誤つたものといわなければならない、そして、その誤は当然判決に影響を及ぼすべきものであり、且つ原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。

 よつて、刑訴四一一条、四一三条により、裁判官全員一致の意見を以つて、主文のとおり判決する。

 この公判期日には検察官草鹿浅之介が出席した。

  昭和二八年一二月二五日

    最高裁判所第二小法廷

 

航空機リース事件・契約の締結に当たって,税負担を伴わないあるいは税負担が軽減されることを目的として,実体ないし実質と異なる外観ないし形式をとった場合には,当該実体ないし実質に従って課税されるべきであるとした事例

 

 

              申告所得税更正処分取消等各請求控訴事件

【事件番号】      名古屋高等裁判所/平成16年(行コ)第48号

【判決日付】      平成17年10月27日

【判示事項】      契約の締結に当たって,税負担を伴わないあるいは税負担が軽減されることを目的として,実体ないし実質と異なる外観ないし形式をとった場合には,当該実体ないし実質に従って課税されるべきであるとした事例

【判決要旨】      (1) 憲法84条(課税の要件)の租税法律主義の原則の重要な機能は、国民に対して経済活動における法的安定性と予測可能性を与えることにあり、その観点からすれば、租税賦課の根拠となるべき法令すなわち租税法は、国法秩序の一部を構成するものであるから、そこで用いられている概念は、基本的には他の国法のそれと整合する意味内容が与えられるべきであり、租税法における目的論的解釈の名の下に、一般法の概念と矛盾・抵触するものであってはならないというべきである。そうすると、租税法は国民の私的経済活動ないし経済現象を課税対象とするものであるが、これらについては、第一次的に私法によって規律されているから、その意味内容も、まず私法によって解釈されなければならない。

             (2) 国民が一定の経済的目的を達成しようとする場合、私的自治の原則ないし契約自由の原則が存在する以上、当該国民は、どのような法的手段、法的形式を用いるかについて、選択の自由を有するというべきであり、このことは、他の法的手段、形式を選択すれば税負担を求められるのに、選択の結果、これを免れる場合であっても基本的には同様というべきである。もっとも、特段の合理的理由がないのに、通常は用いられることのない法的手段、形式を選択することによって、所期の経済的効果を達成しつつ、通常用いられる法律行為に対応する課税要件の充足を免れ、税負担を減少させあるいは排除する場合には、租税回避行為としてその有効性が問題となり得るが、租税法律主義の観点からは、このような場合であっても、当該法的手段、形式が私法上は有効であることを前提としつつ、租税法上はこれを有効と扱わず、同一の経済目的を達成するために通常用いられる法的手段、形式に対応する課税要件が充足したものとして扱うためには、これを許容する法律上の根拠を要すると解すべきである。

             (3) 一般論としては、通常は用いられることのない契約類型の内容を把握するに当たっては、明示的な文言にもかかわらず、これを制限的に解釈し、あるいは逆に条項と条項の「行間」に明示されていない合意内容を読み込む必要が生ずることもあり得るというべきであり、また、契約書等の外形的資料は、それらが唯一絶対的な判断材料というわけではないから、隠された当事者の合意内容がどのようなものであるか(この場合、契約書は処分証書としての性格を有しないことになる。)、あるいは表示行為から推測される効果意思と真の内心的効果意思との異同を明らかにする必要を生ずる場合もあり得るというべきである。以上のような作業は、当事者の真意の所在を明らかにするという事実認定の問題であり、これに即して課税要件の充足を検討するものであるから、租税法律主義に反するものではないが、このことは、動機、意図などの主観的事情によって、通常は用いられることのない契約類型であるか否かを判断することを相当とするものではなく、まして、税負担を伴わないあるいは税負担が軽減されることを根拠に、直ちに通常は用いられることのない契約類型と判断した上、税負担を伴うあるいは税負担が重い契約類型こそが当事者の真意であると認定することを許すものでもない。したがって、選択された契約類型における「当事者の真意の探求」は、当該契約類型や契約内容自体に着目し、それが当事者が達成しようとした法的・経済的目的を達成する上で、社会通念上著しく複雑、迂遠なものであって、到底その合理性を肯認できないものであるか否かの客観的な見地から判断した上で、行われるべきものである。

             (4)・(5) 省略

             (6) 民法667条1項(組合契約)の組合契約が有効に成立するためには、①2人以上の当事者の存在、②各当事者が出資をすることを合意したこと、③各当事者が共同の事業を営むことについて合意したことの各要件が必要であるところ、この「事業を共同で営む」というためには、各当事者が同法673条(組合員の組合の業務及び財産状況に関する検査)に基づいて組合の業務や財産状況を検査する権利と、業務執行を1人又は数人の組合員に委任したときに、正当の事由がある場合には同法672条1項(業務執行組合員の辞任及び解任)に基づいて業務執行組合員を解任する権利を有している必要があり、また、各当事者が事業の成功に何らかの利害関係を有することが必要である。

             (7)~(11) 省略

             (12) 所得税法施行規則57条(取引の記録等)に規定する「正規の簿記の原則に従い、整然と、かつ、明りょうに記録」するとは、所得金額が正確に計算できるように、資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を、定められた会計処理の方法に基づいて、組織的かつ秩序的に記録することを意味する。

             (13) 省略

             (14) 青色申告承認取消処分をする場合に理由を附記した書面をもって通知することを必要としているのは、青色申告承認の取消しが、承認を得た者の種々の特典をはく奪する不利益処分であることから、取消事由の有無に関する処分庁の判断における慎重さと公正妥当性を担保してその恣意を抑制するとともに、取消しの理由を相手方に知らしめることによって、その不服申立てに便宜を与えるためであると解される。したがって、該当号数を示しただけでは取消しの基因となった具体的事実を知ることができない場合には、通知書に該当号数を示しただけでは足りず、その基因となった事実についても相手方が具体的に知り得る程度に特定して摘示しなければならないというべきである(最高裁判所昭和49年4月25日第一小法廷判決・民集28巻3号405頁)。

             (15)~(18) 省略

             (19) 抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう(行政事件訴訟法3条1項(抗告訴訟))ところ、同訴訟は、民衆訴訟や機関訴訟などの客観訴訟と異なり、「法律上の利益を有する者」に限って提起することができるとされており、処分取消訴訟についても、当該処分によって自己の権利又は法律上の利益を害され、あるいはそのおそれがあり、その取消しによって上記権利又は利益が回復、保全される場合に、その提起が許されるものであるから、およそ、原告の法律上の権利、利益を害するおそれのないような処分については、そもそもこれを取り消すべき利益がなく、かかる処分の取消訴訟は不適法というべきである。

             (20)~(29) 省略

【掲載誌】        税務訴訟資料255号順号10180

             LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      Lexis判例速報5号92頁

 

憲法

第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

 

所得税法施行規則

(取引の記録等)

第五十七条 青色申告者は、青色申告書を提出することができる年分の不動産所得の金額、事業所得の金額及び山林所得の金額が正確に計算できるように次の各号に掲げる資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引(以下この節において「取引」という。)を正規の簿記の原則に従い、整然と、かつ、明りように記録し、その記録に基づき、貸借対照表及び損益計算書を作成しなければならない。

一 不動産所得については、その不動産所得を生ずべき法第二十六条第一項(不動産所得)に規定する不動産等の貸付けに係る資産、負債及び資本

二 事業所得については、その事業所得を生ずべき事業に係る資産、負債及び資本

三 山林所得については、その山林所得を生ずべき業務に係る資産、負債及び資本

2 青色申告者は、取引のうち事業所得、不動産所得及び山林所得に係る総収入金額又は必要経費に算入されない収入又は支出を含むものについては、そのつどその総収入金額又は必要経費に算入されない部分の金額を除いて記録しなければならない。ただし、そのつど区分整理し難いものは年末において、一括して区分整理することができる。

 

民法

(組合契約)

第六百六十七条 組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。

2 出資は、労務をその目的とすることができる。

 

第9章 事業者が交付すべき書面のデジタル化

改正背景とデジタル化の対象

 近年、あらゆる分野についてデジタル化が進められ、新型コロナウイルス感染症の影響で、この動きはますます激しくなっています。特商法の分野でも、昨今、消費者・事業者の外出が制限されていることもあり、対面での契約書等の交付が難しい場面が増えました。

 こうした背景から、改正法では、旧法でもデジタル化への対応がされていた通信販売を除き、事業者が交付しなければならない契約書面等について、消費者の承諾を得て、電磁的方法(電子メール送信等)で行うことも可能になりました。

 

交付書面デジタル化の対象

 

業務形態

根拠条文

 

訪問販売

改正4条2項・3項

通信販売

交付書面の規定自体なし

(承諾メールについて、通知は旧法13条2項ですでにデジタル化対応済み)

 

電話勧誘販売

改正18条2項・3項

 

連鎖販売契約

改正37条3項・4項

 

特定継続的役務提供         

改正42条4項・5項

 

業務提供誘引販売取引

改正55条3項・4項

 

訪問購入

改正58条の7第2項・3項

 

 

 

消費者からの承諾を適法に得るための方法は未確定

 書面の交付を電磁的方法に代替する場合、「政令で定めるところにより、当該申込みをした者の承諾を得」る必要があり、今後政施行規則でどのような定めがされるかが重要となります。

 

 

 事業者が交付するべき書面のデジタル化については、悪徳事業者が法改正を悪用して、消費者が納得しないうちに契約締結に至らせるのではないかという心配の声があがっているほか、高齢者や若者が不利な契約をした場合に周囲が発見できないなどの懸念も指摘されています。こうした懸念点に対応すべく、承諾の取得方法について政施行規則で適切に規定するように附帯決議もなされています。

 

 

 実際、消費者庁取引対策課の笹路健課長は、政府規制改革推進会議で、「本人が納得していないものは承諾とは言えず、電磁的な交付をしても書面交付義務を満たしたことにならない。(中略)形ばかりの承諾が悪質事業者に利用されることは絶対に阻止することは必須。」「高齢者に配慮する必要があり、原則書面は維持する。」と説明しています。また、消費者の「承諾」が、交付書面のデジタル化によって予想される弊害を回避するためのセーフティネットであることに配慮して、「消費者の承諾」要件を厳格に定めることで消費者トラブルを回避する意向を示しています 2。

 

 

 さらに、参議院での審議における5月28日の高田潔消費者庁次長答弁の中には、オンラインで完結する取引については電子メールでの承諾を認め、それ以外については紙での承諾を必要とする提案もなされています 3。

 そして、仮に適切に承諾をとっていないと判断された場合は、行う事業に応じて懲役または罰金が科せられます(法71条等)。

 

 

 具体的な承諾取得方法については、今後の議論に委ねられることになっていますが、上記のような議論の状況を踏まえると、消費者の真意に基づく承諾といえるかという観点から、たとえば、デジタル機器に不慣れな高齢者や障がい者およびトラブルに巻き込まれやすい若者に配慮するなどした、厳格なルールが定められることが想定されます。

 

 

 今後定められる政施行規則によって、書面での承諾を取得することが一律に求められるとしたら、事業者にとっての手続的負担が、書面交付の場合と実質的に変わらないことも考えられます。

 交付書面のデジタル化によって、コストの削減やビジネスの可能性を広げることを検討する事業者においては、消費者からの承諾を適法に獲得するための方法がどう定められるかについて、今後の動向に注視すべきと思われます。

 

 

 また、クーリング・オフ制度への波及効果も考えられます。具体的には、クーリング・オフ期間は「書面を受領してから8日」と定められているところ、ここでいう「書面」に電子メールも含まれることとなる結果、電子メールを受領しさえすればクーリング・オフ期間が進行してしまうのかという問題点があります。

 

 

 この点について、電子メールを開封しなければ、クーリング・オフの起算点が進行しないとする議論もあります。デジタル化された場合の書面の「受領」とは何を意味するかも含め、具体的な要件設定についても、今後、政施行規則等で定まっていくことになります 4。

 

1 土地開発公社が個人から買収した土地の買収価格に関する情報が名古屋市公文書公開条例(昭和61年名古屋市条例第29号)9条1項1号にいう個人の所得又は財産に関する情報であって「通常他人に知られたくないと認められるもの」に当たらないとされた事例

2 土地開発公社が土地を買収した際に個人に対して支払った建物、工作物、立木、動産等に係る補償金の額に関する情報が名古屋市公文書公開条例(昭和61年名古屋市条例第29号)9条1項1号にいう個人の所得又は財産に関する情報であって「通常他人に知られたくないと認められるもの」に当たるとされた事例

 

最2小判平成17年7月15日裁判集民事217号523頁 判タ1191号225頁 判時1909号25頁

【判決要旨】 1 土地開発公社が個人から買収した土地の買収価格に関する情報は、公有地の拡大の推進に関する法律(平成16年法律第66号による改正前のもの)7条の適用により、同価格が地価公示法(平成11年法律第160号による改正前のもの)6条の規定による公示価格を規準として算定されたという事実関係の下においては、名古屋市公文書公開条例(昭和61年名古屋市条例第29号)9条1項1号にいう個人の所得又は財産に関する情報であって「通常他人に知られたくないと認められるもの」に当たらない。

2 土地開発公社が土地を買収した際に個人に対して支払った建物、工作物、立木、動産等に係る補償金の額に関する情報は、建物の内部の構造、使用資材、施工態様、損耗の状況等の詳細及び上記個人がどのような工作物、立木、動産等を有するかが外部に明らかになっているものではないなど判示の事情の下においては、名古屋市公文書公開条例(昭和61年名古屋市条例第29号)9条1項1号にいう個人の所得又は財産に関する情報であって「通常他人に知られたくないと認められるもの」に当たる。

【参照条文】 名古屋市公文書公開条例(昭61名古屋市条例29号)9-1

       公有地の拡大の推進に関する法律(平16法66号改正前)7(土地の買取価格)

       地価公示法(平11法160号改正前)2-1 、6

       地価公示法2-2

 

公有地の拡大の推進に関する法律

(土地の買取価格)

第七条 地方公共団体等は、届出等に係る土地を買い取る場合には、地価公示法(昭和四十四年法律第四十九号)第六条の規定による公示価格を規準として算定した価格(当該土地が同法第二条第一項の公示区域以外の区域内に所在するときは、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した当該土地の相当な価格)をもつてその価格としなければならない。

 

地価公示法

(標準地の価格の判定等)

第二条 土地鑑定委員会は、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第四条第二項に規定する都市計画区域その他の土地取引が相当程度見込まれるものとして国土交通省令で定める区域(国土利用計画法(昭和四十九年法律第九十二号)第十二条第一項の規定により指定された規制区域を除く。以下「公示区域」という。)内の標準地について、毎年一回、国土交通省令で定めるところにより、二人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行つて、一定の基準日における当該標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定し、これを公示するものとする。

2 前項の「正常な価格」とは、土地について、自由な取引が行なわれるとした場合におけるその取引(農地、採草放牧地又は森林の取引(農地、採草放牧地及び森林以外のものとするための取引を除く。)を除く。)において通常成立すると認められる価格(当該土地に建物その他の定着物がある場合又は当該土地に関して地上権その他当該土地の使用若しくは収益を制限する権利が存する場合には、これらの定着物又は権利が存しないものとして通常成立すると認められる価格)をいう。

 

(標準地の価格等の公示)

第六条 土地鑑定委員会は、第二条第一項の規定により標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定したときは、すみやかに、次に掲げる事項を官報で公示しなければならない。

一 標準地の所在の郡、市、区、町村及び字並びに地番

二 標準地の単位面積当たりの価格及び価格判定の基準日

三 標準地の地積及び形状

四 標準地及びその周辺の土地の利用の現況

五 その他国土交通省令で定める事項

 

 

公益社団法人に移行した控訴人が,法人税につき,職員等に支給した賞与等を損金に算入して確定申告をしたのに対する処分行政庁の更正処分及び過少申告加算税賦課決定の取消しと消費税等関係処分の取消しを求めた事例

 

 

              法人税及び消費税等更正処分等取消請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成27年(行コ)第72号

【判決日付】      平成27年10月15日

【判示事項】      公益社団法人に移行した控訴人が,法人税につき,職員等に支給した賞与等を損金に算入して確定申告をしたのに対する処分行政庁の更正処分及び過少申告加算税賦課決定の取消しと消費税等関係処分の取消しを求め,原審が,訴え提起後に処分行政庁が変更決定処分をした部分の訴えを却下し,その余の取消請求を棄却したのに対し,棄却部分を不服として控訴した事案。

控訴人は,本件賞与等について,法人税法22条3項及び4項所定の費用収益対応の原則,債務確定基準を充足し,損金算入が認められるべきであるなどの主張をした。控訴審は,控訴人のそうした主張を排斥して控訴を棄却した事例

【掲載誌】        税務訴訟資料265号順号12740

             LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      税研186号106頁

             税経通信72巻14号165頁

             税務事例48巻5号20頁

             税理64巻1号238頁

 

法人税法

第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則

第二十二条 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。

2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。

一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額

二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額

三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

4 第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。

5 第二項又は第三項に規定する資本等取引とは、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引並びに法人が行う利益又は剰余金の分配(資産の流動化に関する法律第百十五条第一項(中間配当)に規定する金銭の分配を含む。)及び残余財産の分配又は引渡しをいう。

 

(各事業年度の所得の金額の計算の細目)

第六十五条 第二款から前款まで(所得の金額の計算)に定めるもののほか、各事業年度の所得の金額の計算に関し必要な事項は、政令で定める。