不法領得の意思のない事例・業務上横領罪 業務上横領、背任被告事件 最高裁判所 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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不法領得の意思のない事例・業務上横領罪

 

 

業務上横領、背任被告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和26年(あ)第5052号

【判決日付】      昭和28年12月25日

【判示事項】      不法領得の意思のない事例

【参照条文】      刑法253

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集7巻13号2721頁

             最高裁判所裁判集刑事90号413頁

             判例時報20号24頁

 

刑法

(業務上横領)

第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

 

       主   文

 

 原判決を破棄する。

 本件を福岡高等裁判所に差戻す。

 

       理   由

 

 弁護人木下郁の上告趣意第一点、第二点は、いづれも刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。

 しかし、業務上横領の点につき職権を以つて調査するに、記録上判示A組合の組合長たる被告人が判示貨物自動車営業に関して組合資金を支出したことが、被告人自身の利益を図る目的を以つてなされたものと認めるべき資料はないばかりでなく、それが組合のためにもなされたものであることはこれを否定し得ない。殊に被告人が判示組合名義を以つてB等から譲受け、組合名義を以つて経営するに至つた貨物自動車営業は、原判決の説示する如く、組合の総会及び理事会の議決を経ず、定款に違反して被告人が独断でその営業を継承したものであるとしても、この営業のためにした支出が専ら組合以外の者のためになされたと認めるに足る資料はない。してみると、判示貨物自動車営業が、原判決の認定する如く、たとえ判示組合の内部関係において、その事業に属しないとしても、被告人が該営業のため組合資金をほしいまゝに支出した一事を以つて直ちに業務上横領罪を構成するものと即断することはできない。即ち、右支出が専ら本人たる組合自身のためになされたものと認められる場合には、被告人は不法領得の意思を欠くものであつて、業務上横領罪を構成しないと解するのが相当である。然るに、原判決は被告人自身の利得を図る目的に出たか否かは同罪の成立に影響を及ぼすものではないとして右支出が何人のためになされたものであるかとの点について何ら判断を示すことなく、直ちに業務上横領罪を構成すると判示しているのであつて、結局事案を誤認したかまたは法律の適用を誤つたものといわなければならない、そして、その誤は当然判決に影響を及ぼすべきものであり、且つ原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。

 よつて、刑訴四一一条、四一三条により、裁判官全員一致の意見を以つて、主文のとおり判決する。

 この公判期日には検察官草鹿浅之介が出席した。

  昭和二八年一二月二五日

    最高裁判所第二小法廷