大阪高等裁判所決定昭和38年3月6日
証拠保全申立却下決定に対する抗告事件
【判示事項】 供述内容が変更されるおそれと証拠保全
【判決要旨】 民事訴訟法第343条にいう「其の証拠を使用するに困難なる事情」とは、「其の証拠方法を使用するに困難なる事情」であり、人証の場合、工作により供述の内容が変更されるおそれがあることは、右事情に該当しない。
【参照条文】 民事訴訟法343
【掲載誌】 訟務月報9巻3号419頁
判例タイムズ147号106頁
平成八年法律第百九号
民事訴訟法
(証拠保全)
第二百三十四条 裁判所は、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認めるときは、申立てにより、この章の規定に従い、証拠調べをすることができる。
証拠保全の要件について、旧法第365条は、「証拠ヲ紛失スル恐アリ又ハ之ヲ使用シ難キ恐アルトキ」と規定し、現行法でも書証、物証についてはそういう場合のことをいい、人証についても、これに準じて、老齢又は不治の病気のだめ余命がないとか、国外に移住しようとしている場合(兼子・条約III 153・4頁)などに、その実例が多いようである。
しかし、現状の変更されるおそれがある場合の検証なども許されており、それと比べてみると、本件のように時日をかすことによって証言内容の信憑性がうすれるおそれのある場合など(もちろんそういう事由が疎明されてのことだが)、許してもよいようでもある。
なお研究すべき問題であると思われる。