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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

1、航海士の航行上の過失による海難事故につき国際海上物品運送法に基づく免責が認められないとされた事例

2、航行中の船舶と曳航される船舶との衝突事故につき曳航される船舶側に過失が認められなかった事例

 

東京地方裁判所判決/昭和50年(ワ)第4704号

昭和54年5月14日

損害賠償請求事件

【判示事項】    1、航海士の航行上の過失による海難事故につき国際海上物品運送法に基づく免責が認められないとされた事例

2、航行中の船舶と曳航される船舶との衝突事故につき曳航される船舶側に過失が認められなかった事例

【参照条文】    商法690-1(昭和50年法律第94号による改正前)

          国際海上物品運送法3-2

          民法722

【掲載誌】     判例タイムズ395号142頁

          判例時報941号116頁

商法

(船舶所有者の責任)

第六百九十条 船舶所有者は、船長その他の船員がその職務を行うについて故意又は過失によって他人に加えた損害を賠償する責任を負う。

 

国際海上物品運送法

(運送品に関する注意義務)

第三条 運送人は、自己又はその使用する者が運送品の受取、船積、積付、運送、保管、荷揚及び引渡につき注意を怠つたことにより生じた運送品の滅失、損傷又は延着について、損害賠償の責を負う。

2 前項の規定は、船長、海員、水先人その他運送人の使用する者の航行若しくは船舶の取扱に関する行為又は船舶における火災(運送人の故意又は過失に基くものを除く。)により生じた損害には、適用しない。

 

民法

損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺)

第七百二十二条 第四百十七条及び第四百十七条の二の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。

2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

 

日本熱学工業の代表取締役副社長らが,将来自社の株式を証券取引所第二部に上場して,証券市場並びに金融機関からの資金調達を円滑にするため,株主に対する利益配当を継続しようなどと企てた粉飾決算事件で,執行猶予付き懲役刑に処せられた事例

 

 

大阪地裁、日本熱学工業の粉飾決算事件で判決

【事件番号】      大阪地方裁判所判決/昭和49年(わ)第1960号、昭和50年(わ)第89号

【判決日付】      昭和52年6月28日

【判示事項】      日本熱学工業の代表取締役副社長らが,将来自社の株式を証券取引所第二部に上場して,証券市場並びに金融機関からの資金調達を円滑にするため,株主に対する利益配当を継続しようなどと企てた粉飾決算事件で,執行猶予付き懲役刑に処せられた事例

【掲載誌】        商事法務780号30頁

【評釈論文】      別冊ジュリスト100号8頁

 

会社法

(会社財産を危うくする罪)

第九百六十三条 第九百六十条第一項第一号又は第二号に掲げる者が、第三十四条第一項若しくは第六十三条第一項の規定による払込み若しくは給付について、又は第二十八条各号に掲げる事項について、裁判所又は創立総会若しくは種類創立総会に対し、虚偽の申述を行い、又は事実を隠ぺいしたときは、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

2 第九百六十条第一項第三号から第五号までに掲げる者が、第百九十九条第一項第三号又は第二百三十六条第一項第三号に掲げる事項について、裁判所又は株主総会若しくは種類株主総会に対し、虚偽の申述を行い、又は事実を隠ぺいしたときも、前項と同様とする。

3 検査役が、第二十八条各号、第百九十九条第一項第三号又は第二百三十六条第一項第三号に掲げる事項について、裁判所に対し、虚偽の申述を行い、又は事実を隠ぺいしたときも、第一項と同様とする。

4 第九十四条第一項の規定により選任された者が、第三十四条第一項若しくは第六十三条第一項の規定による払込み若しくは給付について、又は第二十八条各号に掲げる事項について、創立総会に対し、虚偽の申述を行い、又は事実を隠ぺいしたときも、第一項と同様とする。

5 第九百六十条第一項第三号から第七号までに掲げる者が、次のいずれかに該当する場合にも、第一項と同様とする。

一 何人の名義をもってするかを問わず、株式会社の計算において不正にその株式を取得したとき。

二 法令又は定款の規定に違反して、剰余金の配当をしたとき。

三 株式会社の目的の範囲外において、投機取引のために株式会社の財産を処分したとき。

 

 

   《主 文》

  一、被告人らを懲役一〇月に各処する。

  二、被告人らに対し右裁判確定の日からそれぞれ二年間右刑の執行を猶予する。

  三、訴訟費用中、証人服部正毅に支給した分(第二九回公判期日で取調。昭和五一年二月九日支給分。)は全部被告人大熊芳郎の負担とし、証人田中仁栄(同五〇年九月九日支給。)、同白井為雄(同上)に各支給した分は全部被告人松井雄之亮の負担とし、被告人湯浅利郎の国選弁護人に支給した分は全部被告人の負担とする。

土地の売買契約成立後代金完済前に売主が死亡した場合につき、右売買契約には土地所有権移転の時期を代金完済の時とする特約があったと認められるから、右売主の相続人らに対する相続税の課税物件に含まれるのは、右土地の所有権であるとした事例

 

 

              相続税課税処分取消請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/昭和53年(行コ)第75号

【判決日付】      昭和56年1月28日

【判示事項】      1、土地の売買契約成立後代金完済前に売主が死亡した場合につき、右売買契約には土地所有権移転の時期を代金完済の時とする特約があったと認められるから、右売主の相続人らに対する相続税の課税物件に含まれるのは、右土地の所有権であるとした事例

             2、1掲記の土地の価額は、相続税財産評価に関する基本通達によらず、売買契約の実際の取引価額によって評価するのが合理的であるとした事例

【判決要旨】      (1) 省略

             (2) 所有権の留保の特約のない通常の売買においては売買成立と同時に目的物件の所有権は売主から買主に移転すると同時に売主は売買代金債権を取得し、これに伴って、資産的価値も所有権が債権に転化するとみられるのであるが、本件のように売買代金の支払完了時に、本件農地の所有権が、移転するという特約がある売買においては、代金未払の間は所有権が売主に留保され、買主には移転しないのであるから右所有権と対価関係にたつ売買代金債権も確定的に売主に帰属するに至らないとみるのが相当であり、したがって同債権を課税物件と解するのは相当でないものというべく、本件土地の所有権をもって課税物件と解すべきである。

             (3) 相続税法二二条は、相続財産の価格は特別に定める場合を除いて当該財産の取得時における時価による旨定めているのみで、同法は土地の時価に関する評価方法をなんら定めていないのである。そこで、国税庁において「相続税財産評価に関する基本通達」を定め、その評価基準に従って各税務署が統一的に土地の評価をし、課税事務を行っていることは周知のとおりである。従って右基準によらないことが正当として是認されうるような特別な事情がある場合は別として、原則として右通達による基準に基づいて土地の評価を行うことが相続税の課税の公平を期する所以であると考えられる。

             (4) 相続開始当時における土地の評価額が取引価額によって具体的に明らかになっており、しかも被相続人もしくは相続人が相続に近接した時期に取引代金を全額取得しているような場合において、その取引価額が客観的にも相当であると認められ、しかも、それが通達による路線価額との間に著しい格差を生じているときには、右通達の基準により評価することは相続税法二二条の法意に照らし合理的とはいえないというべきである。

             (5)~(10) 省略

【掲載誌】        行政事件裁判例集32巻1号106頁

             訟務月報27巻5号985頁

             判例時報1000号69頁

             税務訴訟資料116号51頁

 

相続税法

(評価の原則)

第二十二条 この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。

 

『ファッションロー 第2版』 2023/12/4

角田 政芳 (著), 関 真也 (著), 内田 剛 (著)

 

出版社 ‏ : ‎ 勁草書房 (2023/12/4)

発売日 ‏ : ‎ 2023/12/4

単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 368ページ

 

 

ファッションローのわが国初の体系書の最新版。最新の情報を盛り込み、体系的な知識、実務上の問題の解決指針と今後の課題を提供。

 

ファッションビジネスの拡大と変容に伴って近年大きく注目されているファッション・ローに関する本邦初の体系書の最新版。体系的な理解を提供し、実務で問題となる事案に解決指針を与え、今後起こり得る課題を指摘する。ファッションデザイン、ブランド、モデル、コスプレなどを著作権、意匠権、商法権等の保護の観点から解説する。

 

コメント

論点の私的と裁判例が詳しく、参考になります。

 

 

 

【目次】

 

第2版 はしがき

はじめに

 

第1章 総説

 第1節 ファッションローの意義

 第2節 ファッションローの沿革

 第3節 ファッションロー研究の状況

 第4節 ファッションローにおける課題

 第5節 本書の構成

 第6節 「Forever21事件控訴審」

 第7節 「TRIPP TRAPP事件」

 第8節 本書の目的

 

第2章 ファッションショーの法的保護

 第1節 著作権の概要

 第2節 ファッションショーと著作権

 第3節 ファッションショーの著作隣接権による保護

 第4節 ファッションショー主催者の権利

 第5節 ファッションショー演出家の権利

 

第3章 ファッションデザインの法的保護

 第1節 総説

 第2節 著作権による保護

 第3節 意匠権による保護

 第4節 商標権による保護

 第5節 不正競争防止法による保護(周知商品等表示・著名商品等表示・商品形態)

 第6節 特許権・実用新案権による保護

 

第4章 ファッションブランドの法的保護

 第1節 総説

 第2節 商標権による保護

 第3節 不正競争防止法による保護

 

第5章 ファッションモデルの法的保護

 第1節 総説

 第2節 パブリシティ権による保護

 第3節 ファッションモデルと出演契約

 第4節 ファッションモデルと専属契約

 第5節 モデル引き抜き問題

 

第6章 コスプレの法的保護

 第1節 総説

 第2節 コスプレの著作権による保護

 第3節 コスプレの不正競争防止法による保護

 第4節 コスプレイヤーの法的保護

 第5節 コスプレ・ショーの法的保護

 第6節 コスプレ・ディレクターの保護

 第7節 コスプレ・コンテンツの保護

 第8節 コスプレの契約による保護

 

第7章 ドイツにおけるファッションロー

 第1節 総説

 第2節 著作権法による保護

 第3節 意匠権による保護

 第4節 商標権による保護

 

第8章 米国におけるファッションロー

 第1節 総説

 第2節 著作権による保護

 第3節 意匠特許による保護

 第4節 商標およびトレード・ドレスによる保護

 第5節 デジタルファッションと知的財産

 

第9章 英国におけるファッションロー

 第1節 総説

 第2節 著作権による保護

 第3節 意匠権による保護

 第4節 商標権および詐称通用による保護

 

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本の長さ

368ページ

言語

日本語

 

 

著者について

角田 政芳(すみだ まさよし)

1979年3月駒澤大学大学院法学研究科私法学専攻博士課程満期退学。1988年4月関東学園大学経済学部助教授(~1999年3月)。1994年4月マックスプランク国際知的財産法研究所客員研究員(~1996年3月)。1999年4月東海大学法学部教授(~2004年3月)。2004年4月東海大学法科大学院教授(~2017年3月)。2007年10月弁護士登録(第二東京弁護士会)(現在に至る)。2015年4月東海大学法科大学院研究科長(~2017年3月)。2017年4月東海大学総合社会科学研究所長・知的財産部門長(~2019年3月)。2019年4月東海大学総合社会科学研究所知的財産部門長(現在に至る)。著書:知的財産法(第9版)〔アルマシリーズ〕(共著・有斐閣、2020年)、知的財産権六法2019年版─判例付─(編集・三省堂、2019年)、著作権法コンメンタール2(第2版)(勁草書房、2015年)、Patent Infringement Worldwide(英文・共著・Heymanns、2009年)ほか。

 

関 真也(せき まさや)

2007年3月東京都立大学法学部法律学科卒業。2008年9月弁護士登録(第一東京弁護士会)。2015年5月南カリフォルニア大学ロースクール修了 (LL. M., Entertainment Law Certificate, Honor Society of Phi Kappa Phi)。2016年6月ニューヨーク州弁護士登録。2019年4月東海大学総合社会科学研究所客員講師。2019年9月関真也法律事務所開設。2019年10月ファッションビジネス学会ファッションロー研究部会部会長。2022年8月経済産業省「Web 3.0 時代におけるクリエイターエコノミーの創出に係る研究会」委員。2022年11月経済産業省・ファッション未来研究会「ファッションローWG」委員(ファッションローガイドブック2023 執筆メンバー)。2023年4月日本商標協会理事・法制度研究部会長。著書:ビジネスのためのメタバース入門─メタバース・リアル・オンラインの選択と法実務(共編著、商事法務、2023年)、XR・メタバースの知財法務(中央経済社、2023年)。

 

内田 剛(うちだ つよし)

2007年3月東海大学法学研究科法律学専攻満期退学。2017年4月東海大学総合社会科学研究所研究所員。2022年1月博士(法学)(東海大学)。2023年4月東海大学法学部准教授。2023年4月マックスプランクイノベーション・競争研究所客員研究員。著書:商標の法律実務:重要判例分析×ブランド戦略推進(分担執筆・中央経済社、2023年)。

 

法学教室 2024年4月号(No.523) ◆特集 AIから法の世界へ

 

有斐閣

2024年03月28日 発売

定価  1,650円(本体 1,500円)

 

 

さて、法学教室の2024年度特集はAIからスタートします。生成AIの登場を画期として、「第4次AIブーム」に突入したともいわれる昨今。もはや、AIのない世界に逆戻りすることはありえず、今後求められることは、「人間主体の世界を維持しながらどのようにAIと共存するか」を考え抜く姿勢です。AIができること/できないこと、AIを使うメリットとデメリット、コストとリスク――その均衡点はどこにあるでしょうか。これからの世界を生きるみなさまへ。ようこそ、AIから法の世界へ。

 

◆特集 AIから法の世界へ

Ⅰ AI入門…藤田政博……6

 

Ⅱ AIによる裁判の支援と代替の可能性…長島光一……12

 

Ⅲ 刑事司法システムに求められるAIの支援…中川孝博……17

 

Ⅳ AIの行政意思決定関与の許容範囲…黒川哲志……22

 

Ⅴ 生成AIの利用が著作権侵害となる場合…前田 健……27

 

Ⅵ 国際法における軍事AI問題の本質――攻撃目標選定支援プラットフォームを手掛かりに…黒﨑将広……32

 

Ⅶ AI・デジタル化と法制事務…西村友海……37

 

コメント

現状では、AIによる法律事務支援はまだまだと思うが、今後が楽しみです。

 

第2部 株主総会に関する規律の見直し

 株主総会に関する規律の見直しとして、①株主総会資料の電子提供制度と、②株主提案権の濫用的行使の制限が規定されました。

 

第1章 株主総会資料の電子提供制度の創設

1,電子提供制度の導入

 旧法では、株主総会の招集通知に際し、原則として株主総会参考書類や計算書類等の資料(以下「株主総会資料」という)を書面で交付しなければならないとされています(会社法301条1項)。例外的に、株主の個別の承諾(会社法299条3項)を得た場合には電磁的方法による通知も許容されていますが(会社法301条2項、302条2項)、実務において広く利用される状況には至っていません。これらの資料を紙媒体に印刷して郵送するコストの問題が指摘されており、インターネットを活用した株主総会の電子化プロセスを促進させる必要があると認識されていました。

 電子提供制度の導入により、株主総会資料の印刷、郵送にかかる会社の負担が軽減されるうえに、紙媒体の制約がなくなることで、より充実した情報開示が期待されます。ただし、デジタル・デバイドの問題を避けるため、株主に書面交付請求権(株主総会資料を書面で提供するよう求める権利)が認められており(改正法325条の5)、依然として、紙媒体の株主総会資料制作は必要です。

 

書面で株主に送付することが原則になっている株主総会の参考書類等を、ウェブ開示で代用できるようにする制度(電子提供制度)が新設されます。株式会社は、定款で電子提供制度の採用を定めることができ(改正法第325条の2)、その場合は株主総会の招集に際して株主総会参考書類や定時総会の対象事項である計算書類等をウェブ開示することとなり(改正法第325条の3)、書面で送付する招集通知にはこれらを添付せず、掲載しているウェブサイトURL等の情報を掲載すれば良いこととなります(改正法第325条の4第2項、第3項。詳細は改正施行規則第95条の2以下)。

 

改正法325条の2は、定款に定めることにより、 株主総会参考資料等の電子提供措置を採用できることを規定しました。

 

2,電子提供措置

「電子提供措置」について説明します。 電磁的方法により、株主が情報の提供を受けることができる状態に置く措置のことです。ウエブサイトでの掲載などがこれに当たることになります。

「株主総会参考資料等」とは、改正法325条の2第1項かっこ書によると、①株主総会参考資料、②議決権行使書面、 ③437条の計算書類および事業報告、④444条6項でいう連結計算書類、を指します。

 

 電子提供措置をとる場合でも、株主総会の日の2週間前までに、株主総会招集通知を発送しなければなりません(改正法325条の4第1項)。この株主総会招集通知には、株主総会の日時・場所等のほか、電子提供措置をとっている旨が記載され(同条2項)、法務省令において、その情報を掲載するウェブサイトのアドレスを記載することが定められる見込みです。

電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の取締役は、株主総会の招集通知を書面で行う必要がある場合 (会社法299条2項各号)には、①株主総会の日の3週間前、もしくは②株主総会招集通知の書面による通知を発した日、 のいずれか早い日から、株主総会の日後3ヶ月を経過するまでの間、改正法325条の3各号に掲げる情報について、 電子提供措置を行わなければならないとしています。

 

3,株主総会招集時の決定事項

株主総会参考書類および議決権行使書面に記載すべき事項

 

改正法325条の3各号に掲げる情報とは、以下の情報をいいます。

① 298条1項各号に掲げる事項(株主総会の日時や場所、株主総会の目的事項等)

②(書面投票ができる場合には、)株主総会参考資料記載事項および議決権行使書面記載事項

③(電子投票制度を採用している場合には、)株主総会参考資料記載事項

④(株主提案があった場合には、)議案の要領

⑤(取締役会設置会社である場合で会社召集の場合には、)計算書類・事業報告記載事項

⑥(会計監査人設置会社である場合で会社招集の場合には、)連結計算書類記載事項

⑦(①から⑥に掲げられている情報を修正した場合には、)その旨および修正前の事項

 

これらの情報を、定める措置期間にわたって、電子提供措置をとる必要があります。

 

改正法325条の4第1項は、電子提供措置をとる場合には、会社法299条1項の定める招集通知の期限について 公開会社・非公開会社の区分を問わず一律に2週間と定めています。電子提供する場合、株主総会の3週間前の日又は招集通知発送日のいずれか早い日に掲載を開始し、株主総会日から3ヶ月経過する日まで掲載を継続する必要があります(改正法第325条の3第1項)。

ここで、電子提供措置をとる会社は、株主総会の招集通知について修正が入ることについて触れておきます。

招集通知については、非公開会社は通常の場合は株主総会の1週間前でよい(取締役会非設置会社では定款で更に短縮可能 )ところ、電子提供する場合は2週間前の発送が必要となります(改正法第325条の4第1項)。電子提供措置をとる場合には、 株主総会の招集通知の送付期限について修正が入ることに注意が必要です。

 

4,書面交付制度

 

次に、電子提供措置制度を採用する会社について、インターネット等へのアクセスが困難な株主の保護も目指し、 「書面交付請求」の制度を認めました(改正法325条の5)。

 

電子提供制度をとる旨の定款の定めがある会社の株主は、会社に対して 改正法325条の3第1項各号に掲げる事項(「電子提供措置事項」と名付けられています) を記載した書面の交付を請求することができます(改正法325条の5第1項)。

この書面交付請求を受けた会社の取締役は、請求した株主に対して当該株主総会に関する 電子提供措置事項を記載した書面を交付する必要があります(改正法325条の5第2項)。 基準日制度を設けている会社の場合、基準日までに書面交付請求をした株主に限り書面交付義務があります(改正法325条の5第2項かっこ書)。

 

なお、改正法では、書面交付請求の効力の存続期間について定めがありません。

そこで、改正法325条の5第4項は、書面交付請求がなされた日から1年を経過した場合に、改正法325条の5第2項による 書面の交付を終了する旨を通知し、およびこれに対して異議がある場合には一定の期間内(「催告期間」)に 異議を述べるべき旨を、催告することができると定めています。

会社の通知した 催告期間(1か月を下回ることはできないとされています)を経過し、かつ、株主から 異議がなかった場合には書面交付請求の効力が失われることになります(改正法325条の5第6項)。

 

仮に、会社が上記通知・催告を行わないような場合には、書面交付請求の効力が存続することになるので、 請求以降の株主総会について電子提供措置事項を記載した書面を交付する必要があることになります。改正法325条の5第6項は、 書面交付請求に無制限に応じ続ける会社の負担軽減を図った規定といえます。

 

5,電子提供措置の中断

電子提供措置の中断について解説します。

電子提供措置は、会社のウエブサイト等が正常に機能していることが前提の制度といえます。 したがって、ウエブサイトが機能していないような場合には電子提供措置をとれない状態が発生することになります。

 

改正法325条の6は、このような電子提供措置が中断した場合について規定しています。「電子提供措置の中断」とは、 株主が提供を受けることができる状態に置かれた情報がその状態に置かれないこととなったこと又は当該情報がその状態に置かれた後改変されたことをいいます(改正法325条の6柱書かっこ書)。 ウエブサイトがダウンしたような場合がこれにあたると考えられます。

 

改正法325条の6は、 電子提供措置期間中に電子提供措置の中断がある場合、次の4つのいずれの場合にも該当する際、 電子提供措置の中断が、電子提供措置の効力に影響を及ぼさないとしています。

①電子提供措置の中断が生ずることにつき株式会社が善意でかつ重大な過失がないこと又は株式会社に正当な事由があること(改正法325条の6第1号)

②電子提供措置の中断が生じた時間の合計が電子提供措置期間の10分の1を超えないこと(同条2号)

③当該期間中に電子提供措置の中断が生じた時間の合計が当該期間の10分の1を超えないこと(同条3号)

④株式会社が電子提供措置の中断が生じたことを知った後速やかにその旨、電子提供措置の中断が生じた時間及び電子提供措置の中断の内容について 当該電子提供措置に付して電子提供措置をとったこと(同条4号)

 

電子提供の主な対象となる「株主総会参考書類」は、会社が書面又は電磁的方法による議決権行使を認める場合に、法定の記載事項を網羅する形で作成することが必要となる議案説明の書類であり、一般的には上場会社が使用するものです(非上場会社でも、書面等による議決権行使の許容を義務づけられる株主1000名以上の会社や、任意的に書面等による議決権行使を採用する場合は必要になりますが、例は少ないと思われます 。)。参考書類の作成が法律上義務づけられない非上場会社でも、形式上「参考書類」の題名で法定記載事項を充足しない議案書類を作成するケースがありますが、これは法律上の「株主総会参考書類」には該当しません。このため、電子提供制度は、上場会社を主なターゲットとする制度になると考えられます(後述のとおり、上場会社にはこの制度が強制されます。)。但し、定時総会の承認等の対象となる事業報告や計算書類も対象にできるため、非上場会社が定時総会でそれらをウェブ開示するという制度活用も可能と思われます。

 

 

電子提供は、電子公告と異なり、株主が閲覧できる態様であれば足ります。このため、株主に提供したパスワードで認証するページでの掲載も可能と考えられます。電子提供制度を採用している旨は、定款及び登記(改正法第911条第3項第12号の2)の記載事項となりますが、具体的なURL情報まではこれらに記載する必要はありません。

 

6,上場会社における導入

 電子提供制度は、既存の上場会社に一斉に適用される想定であり、振替株式の要件として、定款に電子提供措置をとる会社の株式であることが追加され、電子提供制度の導入が義務付けられることとなりました(会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(整備法)9条)。

 また、当該制度にかかる改正の施行に伴い、施行日と同時に、上場会社は、電子提供制度をとる旨の定款の定めを設ける定款変更の決議をしたものとみなされます(整備法10条2項)。

 現在の上場会社の実務においても、株主総会の日の3週間前の日までには招集通知の原稿が完成していることが多いと推察され、株主総会開催に向けた準備スケジュールが大幅に前倒しされることはないと思われます。もっとも、株主総会参考書類の内容について、より一層の充実が図られる方向で検討が進むことが予想されます。

 

なお、上記の改正は、株式振替機関などのシステム対応の準備期間を考慮し、改正法交付日から3年6ヶ月を超えない範囲において施行日が指定されることとなっており(改正附則第1条但書)、実際に制度が利用できるのは少し先となります。

 

 なお、株主総会の招集通知に際して株主に議決権行使書面を交付する場合には、議決権行使書面に記載すべき事項について、電子提供措置をとることを要しません(会社法325条の3第2項)。

 

通行人の死亡による損害が市道管理の瑕疵のため生じたものと認められた事例

 

最二小判昭和40年4月16日判時405号9頁、仙台市穴ぼこ事件

【判示事項】 通行人の死亡による損害が市道管理の瑕疵のため生じたものと認められた事例

【参照条文】 国家賠償法

 

国家賠償法

第二条 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。

② 前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。

 

1審の仙台地判昭和35年9月6日下級裁判所民事裁判例集11巻9号1837頁  判時240号27頁によれば、市道のコンクリート舗装の欠損部分に原動機付自転車の車輪が落ち込み横転し運転者が死亡した場合において道路の管理に瑕疵があるとして市に損害賠償責任を認めた事例

Aは昭和31年12月9日午後9時頃、原動機付自転車を運転して仙台市五橋交叉点方面より北進して同市仙台駅前方面へ向う途中、コンクリート舖装道路上にさしかかった際、市電東五番丁停留所南方約27メートルの地点にあった穴状の道路沈下部分に前輪を嵌落させたためにバウンドして操縦の自由を失い、更にその北方約8メートルの地点にあった同様の沈下部分に前輪を嵌落させるにいたって全く操縦の平衡を失い、それにより約10メートル北方の地点において前記原動機付自転車もろとも横転して路面に激突し、よって頭蓋底骨折脳挫傷の傷害をうけて病院において死亡するにいたった

同最判は、「地方公共団体が予算の範囲内で道路の管理をすれば道路に瑕疵があっても前記法条にいう道路の管理の瑕疵があるとはいえないとの所論は、採用できない。」と判示した。

 

離婚判決における親権者指定の脱漏と上告理由の有無

 

最高裁判所第2小法廷判決/昭和56年(オ)第572号

昭和56年11月13日

離婚等請求事件

【判示事項】    離婚判決における親権者指定の脱漏と上告理由の有無

【判決要旨】    離婚判決に親権者指定の脱漏があつた場合には、当該判決をした裁判所が追加判決をすれば足り、右脱漏は、上告適法の理由にあたらない。

【参照条文】    民事訴訟法195-1

          人事訴訟法15-3

          民法819-2

          人事訴訟法15-5

【掲載誌】     最高裁判所裁判集民事134号221頁

          判例タイムズ457号85頁

          判例時報1026号89頁

 

民法

(離婚又は認知の場合の親権者)

第八百十九条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。

2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。

3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。

4 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。

5 第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。

6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。

 

平成八年法律第百九号

民事訴訟法

(裁判の脱漏)

第二百五十八条 裁判所が請求の一部について裁判を脱漏したときは、訴訟は、その請求の部分については、なおその裁判所に係属する。

2 訴訟費用の負担の裁判を脱漏したときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、その訴訟費用の負担について、決定で、裁判をする。この場合においては、第六十一条から第六十六条までの規定を準用する。

3 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

4 第二項の規定による訴訟費用の負担の裁判は、本案判決に対し適法な控訴があったときは、その効力を失う。この場合においては、控訴裁判所は、訴訟の総費用について、その負担の裁判をする。

 

平成十五年法律第百九号

人事訴訟法

(附帯処分についての裁判等)

第三十二条 裁判所は、申立てにより、夫婦の一方が他の一方に対して提起した婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る請求を認容する判決において、子の監護者の指定その他の子の監護に関する処分、財産の分与に関する処分又は厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第七十八条の二第二項の規定による処分(以下「附帯処分」と総称する。)についての裁判をしなければならない。

2 前項の場合においては、裁判所は、同項の判決において、当事者に対し、子の引渡し又は金銭の支払その他の財産上の給付その他の給付を命ずることができる。

3 前項の規定は、裁判所が婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る請求を認容する判決において親権者の指定についての裁判をする場合について準用する。

4 裁判所は、第一項の子の監護者の指定その他の子の監護に関する処分についての裁判又は前項の親権者の指定についての裁判をするに当たっては、子が十五歳以上であるときは、その子の陳述を聴かなければならない。

 

氷見市・消防職員停職処分事件

 

 

              懲戒処分取消等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/令和3年(行ヒ)第164号

【判決日付】      令和4年6月14日

【判示事項】      地方公共団体の職員が暴行等を理由とする懲戒処分の停職期間中に同僚等に対して行った同処分に関する働き掛けを理由とする停職6月の懲戒処分が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断に違法があるとされた事例

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      判例秘書ジャーナルHJ100153

             ジュリスト1574号4頁

             銀行法務21 888号68頁

 

地方公務員法

(懲戒)

第二十九条 職員が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該職員に対し、懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。

一 この法律若しくは第五十七条に規定する特例を定めた法律又はこれらに基づく条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合

二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合

三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

2 職員が、任命権者の要請に応じ当該地方公共団体の特別職に属する地方公務員、他の地方公共団体若しくは特定地方独立行政法人の地方公務員、国家公務員又は地方公社(地方住宅供給公社、地方道路公社及び土地開発公社をいう。)その他その業務が地方公共団体若しくは国の事務若しくは事業と密接な関連を有する法人のうち条例で定めるものに使用される者(以下この項において「特別職地方公務員等」という。)となるため退職し、引き続き特別職地方公務員等として在職した後、引き続いて当該退職を前提として職員として採用された場合(一の特別職地方公務員等として在職した後、引き続き一以上の特別職地方公務員等として在職し、引き続いて当該退職を前提として職員として採用された場合を含む。)において、当該退職までの引き続く職員としての在職期間(当該退職前に同様の退職(以下この項において「先の退職」という。)、特別職地方公務員等としての在職及び職員としての採用がある場合には、当該先の退職までの引き続く職員としての在職期間を含む。次項において「要請に応じた退職前の在職期間」という。)中に前項各号のいずれかに該当したときは、当該職員に対し同項に規定する懲戒処分を行うことができる。

3 定年前再任用短時間勤務職員(第二十二条の四第一項の規定により採用された職員に限る。以下この項において同じ。)が、条例年齢以上退職者となつた日までの引き続く職員としての在職期間(要請に応じた退職前の在職期間を含む。)又は第二十二条の四第一項の規定によりかつて採用されて定年前再任用短時間勤務職員として在職していた期間中に第一項各号のいずれかに該当したときは、当該職員に対し同項に規定する懲戒処分を行うことができる。

4 職員の懲戒の手続及び効果は、法律に特別の定めがある場合を除くほか、条例で定めなければならない。

 

国家賠償法

第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

② 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

 

 

 

       主   文

 

 原判決中上告人敗訴部分を破棄する。

 前項の部分につき、本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

 

       理   由

 

 上告代理人山本賢治、同山本尚宗の上告受理申立て理由について

 1 普通地方公共団体である上告人の消防職員であった被上告人は、任命権者であった氷見市消防長(以下「消防長」という。)から、上司及び部下に対する暴行等を理由とする停職2月の懲戒処分(以下「第1処分」という。)を受け、さらに、その停職期間中に正当な理由なく上記暴行の被害者である部下に対して面会を求めたこと等を理由とする停職6月の懲戒処分(以下「第2処分」という。)を受けた。本件は、被上告人が、上告人を相手に、第1処分及び第2処分の各取消しを求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求める事案である。

 2 原審の確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。

 (1) 地方公務員法29条1項は、職員が同法等に違反した場合(1号)、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合(3号)等においては、懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる旨規定し、氷見市職員の懲戒の手続及び効果に関する条例(昭和36年氷見市条例第16号)4条1項は、停職期間は1日以上6月以下とする旨規定する。

 (2) 被上告人は、平成2年4月に消防職員として上告人に採用され、第2処分を受けた後である同29年10月31日付けで依願退職した。

 (3)ア 被上告人は、平成23年7月22日、関係者の会合において、消防長であるAに対し、「お前みたいなやつ、早く消防長辞めてしまえ。」と怒鳴った。

 イ 被上告人は、平成25年5月又は6月頃の勤務終了時、消防署庁舎内において、上司であるBに対し、「お前、上の者のところへ行って俺の悪口を言っとるやろう。」などと大声で一方的に怒鳴り、胸倉をつかんで移動させ、壁に押し付けた。

 ウ 被上告人は、平成25年6月10日頃の救助訓練の準備行為中、部下であるCを注意し、これに対してふてくされた態度をとった同人を蹴ろうとした。そして、これを避けようとした同人の左手に被上告人の足が当たり、Cの左手小指が腫れた。

 エ 被上告人は、平成26年1月、消防署庁舎内において、部下であるDに対し、「何や、お前その手は、反抗的やの。」などと威圧的に述べ、平手で頬を殴打した。同人は、同年頃から被上告人に連日怒鳴られていたところ、被上告人による暴行及び暴言が一因となり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)にり患した。

 オ 被上告人は、平成26年6月頃、消防署庁舎内において、上司であるEに対し、胸倉をつかみ、「殴ってやろうか。」などと大声で怒鳴った。

 カ 被上告人は、平成28年3月末頃、消防長であるFに対し、「お前みたいなやつ、早く辞めてしまえ。」と怒鳴った。

 キ 被上告人は、平成28年10月頃、消防署庁舎内において、上司であるGに対し、大声で一方的に怒鳴りつけて詰め寄った。Eが、被上告人とGを連れて別室に移動したが、被上告人は、その後もE及びGに対し、約10分間にわたって一方的に「バカ」、「アホ」などと怒鳴り続けた。

 (4) 被上告人は、平成29年2月27日付けで、消防長から、前記(3)の行為等に関し、地方公務員法29条1項1号に基づき停職2月の懲戒処分を受け(第1処分)、同年5月10日、氷見市公平委員会に対して審査請求をした。

 (5)ア 被上告人は、平成29年3月6日、Eに対する暴行及び暴言(前記(3)オ)についての事情を知っていた同僚であるHに対し、電話で、同人が訓練において不適切に電動式心肺人工蘇生器を作動させた事案につき、被上告人においてHに対する処分を軽くするための行動をとることを提案した上で、同人が第1処分に係る調査で事実関係を話したのかについて問い詰め、同人が裏切るような行為をしたために第1処分がされたのであれば許さないなどと述べた。

 イ 被上告人は、平成29年3月3日から同月23日までの間、Cに対し、数次にわたる電話で、当時消防職員の給与計算を担当していた同人による時間外勤務手当の処理に問題があることに言及した上で、第1処分に対する審査請求手続において同人への暴行が争点となること等についての話をし、処分をより軽くする目的で、同人と面会する約束をした。その後、被上告人は、Cとの間でメールのやり取りをしたところ、被上告人が送信したメールには、被上告人の運転する自動車にCが同乗して氷見市外の面会場所に行くことを提案する旨の記載や、「この不服に邪魔が入りもしうまくいかなかったら辞表出して(中略)消防長とDを刑事告訴する それに加担したものも含むつもり リークしたものも同罪やろ」との記載があった。

 Cは、被上告人と面会したくないと考えたため、消防長であるFに相談したところ、被上告人と面会することを禁止されるなどしたことから、同月29日朝、被上告人に対し、面会を取りやめる旨のメールを送信した。これに対し、被上告人は、間もなく、Cに対し、連続して3回にわたりメールを送信した。そのメールには、「Dと一緒にならないように」、「お前も加担してるとは思わなかったわ」との記載があった。

 (6) 被上告人は、平成29年4月27日付けで、消防長から、前記(5)の行為が、正当な理由なく暴行の被害者に対して面会を求めるなど、いずれも反社会的な違法行為であって、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行に当たるなどとして、地方公務員法29条1項3号に基づき停職6月の懲戒処分を受けた(第2処分)。

 3 原審は、上記事実関係等の下において、第1処分は適法であるとしてその取消請求を棄却すべきものとする一方、要旨次のとおり判断して、第2処分の取消請求を認容し、損害賠償請求の一部を認容した。

 第2処分の対象となる非違行為はそれなりに悪質なものであり、被上告人は第1処分を受けても反省していないとみられるが、上記非違行為は、反社会的な違法行為とまで評価することが困難なものである上、第1処分に対する審査請求手続のためのものであって第1処分の対象となる非違行為である暴行等とは異なる面があり、同種の行為が反復される危険性等を過度に重視することは相当ではない。

 そうすると、第1処分の停職期間を大きく上回り、かつ、最長の期間である6月の停職とした第2処分は、重きに失するものであって社会通念上著しく妥当を欠いており、消防長に与えられた裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法なものである。

 4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

 (1) 公務員に対する懲戒処分について、懲戒権者は、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をするか否か、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択するかを決定する裁量権を有しており、その判断は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合に、違法となるものと解される(最高裁昭和47年(行ツ)第52号同52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁、最高裁平成23年(行ツ)第263号、同年(行ヒ)第294号同24年1月16日第一小法廷判決・裁判集民事239号253頁等参照)。

 (2)ア 前記2(5)アの被上告人によるHへの働き掛けは、被上告人がそれまで上司及び部下に対する暴行及び暴言を繰り返していたことを背景として、同僚であるHの弱みを指摘した上で、第1処分に係る調査に当たって同人が被上告人に不利益となる行動をとっていたならば何らかの報復があることを示唆することにより、Hを不安に陥れ、又は困惑させるものと評価することができる。

 また、前記2(5)イの被上告人によるCへの働き掛けは、同人が部下であり暴行の被害者の立場にあったこと等を背景として、同人の弱みを指摘するなどした上で、第1処分に対する審査請求手続を被上告人にとって有利に進めることを目的として面会を求め、これを断ったCに対し、告訴をするなどの報復があることを示唆することにより、同人を威迫するとともに、同人を不安に陥れ、又は困惑させるものと評価することができる。

 イ そうすると、上記各働き掛けは、いずれも、懲戒の制度の適正な運用を妨げ、審査請求手続の公正を害する行為というほかなく、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行に明らかに該当することはもとより、その非難の程度が相当に高いと評価することが不合理であるとはいえない。また、上記各働き掛けは、上司及び部下に対する暴行等を背景としたものとして、第1処分の対象となった非違行為と同質性があるということができる。加えて、上記各働き掛けが第1処分の停職期間中にされたものであり、被上告人が上記非違行為について何ら反省していないことがうかがわれることにも照らせば、被上告人が業務に復帰した後に、上記非違行為と同種の行為が反復される危険性があると評価することも不合理であるとはいえない。

 以上の事情を総合考慮すると、停職6月という第2処分の量定をした消防長の判断は、懲戒の種類についてはもとより、停職期間の長さについても社会観念上著しく妥当を欠くものであるとはいえず、懲戒権者に与えられた裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできない。

 (3) 以上によれば、第2処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断には、懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法があるというべきである。

 5 以上のとおり、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして、第2処分に関するその他の違法事由の有無等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする。

 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

内国法人がタイ王国に所在する関連法人発行の新株を額面価額で引き受けた場合において,当該株式が法人税法施行令(平成19年改正前)119条1項4号に規定するいわゆる有利発行有価証券に該当するとされた事例

 

 

法人税更正処分等取消請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成27年(行コ)第371号

【判決日付】      平成28年3月24日

【判示事項】      内国法人がタイ王国に所在する関連法人発行の新株を額面価額で引き受けた場合において,当該株式が法人税法施行令(平成19年政令第83号による改正前のもの)119条1項4号に規定するいわゆる有利発行有価証券に該当するとされた事例

【判決要旨】      内国法人がタイ王国に所在する関連法人発行の新株を当該株式の取得に通常要する価額に比して相当程度低い額面価額で引き受けた場合において,次の(1)及び(2)など判示の事情の下では,内国法人を含む株主間の契約によって,内国法人と他の株主とで株主として行使し得る権利内容に差を設ける旨の合意がされていたとしても,当該株式は,法人税法施行令(平成19年政令第83号による改正前のもの)119条1項4号に規定するいわゆる有利発行有価証券に該当する。

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      租税訴訟10号109頁

             税研191号96頁

             税研208号130頁

 

法人税法施行令

(有価証券の取得価額)

第百十九条 内国法人が有価証券の取得をした場合には、その取得価額は、次の各号に掲げる有価証券の区分に応じ当該各号に定める金額とする。

一 購入した有価証券(法第六十一条の四第三項(有価証券の空売り等に係る利益相当額又は損失相当額の益金又は損金算入等)又は第六十一条の五第三項(デリバティブ取引に係る利益相当額又は損失相当額の益金又は損金算入等)の規定の適用があるものを除く。) その購入の代価(購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)

二 金銭の払込み又は金銭以外の資産の給付により取得をした有価証券(第四号又は第二十号に掲げる有価証券に該当するもの及び適格現物出資により取得をしたものを除く。) その払込みをした金銭の額及び給付をした金銭以外の資産の価額の合計額(新株予約権の行使により取得をした有価証券にあつては当該新株予約権の当該行使の直前の帳簿価額を含み、その払込み又は給付による取得のために要した費用がある場合にはその費用の額を加算した金額とする。)

三 株式等無償交付(法人がその株主等に対して新たに金銭の払込み又は金銭以外の資産の給付をさせないで当該法人の株式(出資を含む。以下第九号までにおいて同じ。)又は新株予約権を交付することをいう。次号において同じ。)により取得をした株式又は新株予約権(同号に掲げる有価証券に該当するもの及び新株予約権付社債に付された新株予約権を除く。) 零

四 有価証券と引換えに払込みをした金銭の額及び給付をした金銭以外の資産の価額の合計額が払い込むべき金銭の額又は給付すべき金銭以外の資産の価額を定める時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額に比して有利な金額である場合における当該払込み又は当該給付(以下この号において「払込み等」という。)により取得をした有価証券(新たな払込み等をせずに取得をした有価証券を含むものとし、法人の株主等が当該株主等として金銭その他の資産の払込み等又は株式等無償交付により取得をした当該法人の株式又は新株予約権(当該法人の他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合における当該株式又は新株予約権に限る。)、第二十号に掲げる有価証券に該当するもの及び適格現物出資により取得をしたものを除く。) その取得の時におけるその有価証券の取得のために通常要する価額