土地の売買契約成立後代金完済前に売主が死亡した場合につき、右売買契約には土地所有権移転の時期を代 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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土地の売買契約成立後代金完済前に売主が死亡した場合につき、右売買契約には土地所有権移転の時期を代金完済の時とする特約があったと認められるから、右売主の相続人らに対する相続税の課税物件に含まれるのは、右土地の所有権であるとした事例

 

 

              相続税課税処分取消請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/昭和53年(行コ)第75号

【判決日付】      昭和56年1月28日

【判示事項】      1、土地の売買契約成立後代金完済前に売主が死亡した場合につき、右売買契約には土地所有権移転の時期を代金完済の時とする特約があったと認められるから、右売主の相続人らに対する相続税の課税物件に含まれるのは、右土地の所有権であるとした事例

             2、1掲記の土地の価額は、相続税財産評価に関する基本通達によらず、売買契約の実際の取引価額によって評価するのが合理的であるとした事例

【判決要旨】      (1) 省略

             (2) 所有権の留保の特約のない通常の売買においては売買成立と同時に目的物件の所有権は売主から買主に移転すると同時に売主は売買代金債権を取得し、これに伴って、資産的価値も所有権が債権に転化するとみられるのであるが、本件のように売買代金の支払完了時に、本件農地の所有権が、移転するという特約がある売買においては、代金未払の間は所有権が売主に留保され、買主には移転しないのであるから右所有権と対価関係にたつ売買代金債権も確定的に売主に帰属するに至らないとみるのが相当であり、したがって同債権を課税物件と解するのは相当でないものというべく、本件土地の所有権をもって課税物件と解すべきである。

             (3) 相続税法二二条は、相続財産の価格は特別に定める場合を除いて当該財産の取得時における時価による旨定めているのみで、同法は土地の時価に関する評価方法をなんら定めていないのである。そこで、国税庁において「相続税財産評価に関する基本通達」を定め、その評価基準に従って各税務署が統一的に土地の評価をし、課税事務を行っていることは周知のとおりである。従って右基準によらないことが正当として是認されうるような特別な事情がある場合は別として、原則として右通達による基準に基づいて土地の評価を行うことが相続税の課税の公平を期する所以であると考えられる。

             (4) 相続開始当時における土地の評価額が取引価額によって具体的に明らかになっており、しかも被相続人もしくは相続人が相続に近接した時期に取引代金を全額取得しているような場合において、その取引価額が客観的にも相当であると認められ、しかも、それが通達による路線価額との間に著しい格差を生じているときには、右通達の基準により評価することは相続税法二二条の法意に照らし合理的とはいえないというべきである。

             (5)~(10) 省略

【掲載誌】        行政事件裁判例集32巻1号106頁

             訟務月報27巻5号985頁

             判例時報1000号69頁

             税務訴訟資料116号51頁

 

相続税法

(評価の原則)

第二十二条 この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。