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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

納税者が租税特別措置法26条1項の規定により事業所得の金額を計算し確定申告をした場合と国税通則法23条1項1号による更正の請求の許否

 

 

              通知処分取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和60年(行ツ)第81号

【判決日付】      昭和62年11月10日

【判示事項】      納税者が租税特別措置法26条1項の規定により事業所得の金額を計算し確定申告をした場合と国税通則法23条1項1号による更正の請求の許否

【判決要旨】      納税者が租税特別措置法26条1項の規定により事業所得の金額を計算し確定申告をした場合には、たとえ実際に要した必要経費の金額が右規定による必要経費の金額を超えるため納付すべき税額が多くなったとしても、納税者としては、そのことを理由として国税通則法23条1項1号による更生の請求をすることはできない。

【参照条文】      租税特別措置法26

             国税通則法23-1

【掲載誌】        訟務月報34巻4号861頁

             最高裁判所裁判集民事152号155頁

             判例タイムズ654号121頁

             金融・商事判例793号3頁

             判例時報1261号54頁

 

国税通則法

(更正の請求)

第二十三条1項 納税申告書を提出した者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該申告書に係る国税の法定申告期限から五年(第二号に掲げる場合のうち法人税に係る場合については、十年)以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等(当該課税標準等又は税額等に関し次条又は第二十六条(再更正)の規定による更正(以下この条において「更正」という。)があつた場合には、当該更正後の課税標準等又は税額等)につき更正をすべき旨の請求をすることができる。

一 当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたこと又は当該計算に誤りがあつたことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があつた場合には、当該更正後の税額)が過大であるとき。

 

 

租税特別措置法

(社会保険診療報酬の所得計算の特例)

第二十六条1 医業又は歯科医業を営む個人が、各年において社会保険診療につき支払を受けるべき金額を有する場合において、当該支払を受けるべき金額が五千万円以下であり、かつ、当該個人が営む医業又は歯科医業から生ずる事業所得に係る総収入金額に算入すべき金額の合計額が七千万円以下であるときは、その年分の事業所得の金額の計算上、当該社会保険診療に係る費用として必要経費に算入する金額は、所得税法第三十七条第一項及び第二編第二章第二節第四款の規定にかかわらず、当該支払を受けるべき金額を次の表の上欄に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に同表の下欄に掲げる率を乗じて計算した金額の合計額とする。

二千五百万円以下の金額

百分の七十二

二千五百万円を超え三千万円以下の金額

百分の七十

三千万円を超え四千万円以下の金額

百分の六十二

四千万円を超え五千万円以下の金額

百分の五十七

 

 

 

       主   文

 

 原判決を破棄する。

 被上告人の本件控訴を棄却する。

 原審及び当審における訴訟費用は被

 上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人藤井俊彦、同宮崎直見、同有本恒夫、同田邊安夫、同亀谷和男、同小澤義彦、同林勘市、同庄司勉、同験馬国夫、同岡崎長、同相馬正明の上告理由について

 一 原審の適法に確定したところによると、(1)被上告人は、耳鼻咽喉科医を業とする者であるが、昭和五四年分の社会保険診療報酬に係る事業所得の計算に当たり、租税特別措置法(以下「措置法」という。)二六条一項の規定を適用したうえ、総所得金額を四二三〇万〇九八七円、税額を一八二九万五〇〇〇円とする確定申告をした、(2)その後、被上告人は、昭和五五年七月九日、社会保険診療報酬につき取引実績を基礎とする収支計算の方法によつて計算すると、総所得金額は三六八三万〇三一九円、税額は一五〇一万二四〇〇円になるとして、上告人に対し更正の請求をした、(3)これに対し、上告人は、確定申告に際して選択した措置法二六条一項の計算方法を後日他の計算方法に変更することは許されず、更正の請求ができる場合に当たらないとして、被上告人に対し、更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件処分」という。)をした、というのである。

 被上告人は、本訴を提起し、本件更正の請求は国税通則法(以下「通則法」という。)二三条一項一号により許される場合に当たり、更正をすべき理由がないとした本件処分は違法であるとして、その取消しを求めたところ、第一審は、本件処分に違法はないとして被上告人の請求を棄却したが、原審は、措置法二六条一項の規定に基づき必要経費を計算して確定申告をしたところ、これが現実の必要経費より過少で、そのため措置法の規定に基づいて算出した税額が所得税法の原則たる収支計算の方法により算出した税額より過大となつた場合には、通則法二三条一項一号所定の「当該計算に誤りがあつた」ものとして更正の請求が許されるべきであると判断して、第一審判決を取り消し、被上告人の請求を認容した。

 二 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は次のとおりである。

 措置法二六条一項は、医師の社会保険診療に係る必要経費の計算について、実際に要した個々の経費の積上げに基づく実額計算の方法によることなく、一定の標準率に基づく概算による経費控除の方法を認めたものであり、納税者にとつては、実際に要した経費の額が右概算による控除額に満たない場合には、その分だけ税負担軽減の恩恵を受けることになり有利であるが、反対に実際に要した経費の額が右概算による控除額を超える場合には、税負担の面から見る限り右規定の方法によることは不利であることになる(ただし、税負担の面以外では、記帳事務からの解放などの利点があることはいうまでもない。)。もつとも、措置法の右規定は、確定申告書に同条項の規定により事業所得の金額を計算した旨の記載がない場合には、適用しないとされているから(同法二六条三項)、同条項の規定を適用して概算による経費控除の方法によつて所得を計算するか、あるいは同条項の規定を適用せずに実額計算の方法によるかは、専ら確定申告時における納税者の自由な選択に委ねられているということができるのであつて、納税者が措置法の右規定の適用を選択して確定申告をした場合には、たとえ実際に要した経費の額が右概算による控除額を超えるため、右規定を選択しなかつた場合に比して納付すべき税額が多額になつたとしても、納税者としては、そのことを理由に通則法二三条一項一号に基づく更正の請求をすることはできないと解すべきである。けだし、通則法二三条一項一号は、更正の請求が認められる事由として、「申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたこと又は当該計算に誤りがあつたこと」を定めているが、措置法二六条一項の規定により事業所得の金額を計算した旨を記載して確定申告をしている場合には、所得税法の規定にかかわらず、同項所定の率により算定された金額をもつて所得計算上控除されるべき必要経費とされるのであり、同規定が適用される限りは、もはや実際に要した経費の額がどうであるかを問題とする余地はないのであつて、納税者が措置法の右規定に従つて計算に誤りなく申告している以上、仮に実際に要した経費の額が右概算による控除額を超えているとしても、そのことは、右にいう「国税に関する法律の規定に従つていなかつたこと」又は「当該計算に誤りがあつたこと」のいずれにも該当しないというべきだからである。このように解しても、納税者としては、法が予定しているとおり法定の申告期限までに収支決算を終了してさえいれば、措置法二六条一項所定の概算による経費控除の方法と実額計算の方法とのいずれを選択するのが税負担の面で有利であるかは容易に判明することであるから、必ずしも納税者に酷であるということはできないし、かえつて右のように所得計算の方法について納税者の選択が認められている場合において、その選択の誤りを理由とする更正の請求を認めることは、いわば納税者の意思によつて税の確定が左右されることにもなり妥当でないというべきである。

 したがつて、右と異なる見解に立つて本件処分を違法とした原審の判断は、通則法二三条一項一号の規定の解釈適用を誤つたものというべきであり、右の違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、この点を指摘する論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、以上によれば、本件処分に違法はないとした第一審判決は正当であつて、被上告人の控訴は棄却されるべきものである。

 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

『筆跡鑑定入門──ニセ遺言書、文書偽造を見破るには』 2013/12/24

魚住和晃 (著)

 

筆跡被害で困らないための必携書。一澤帆布遺言書事件、脅迫状を巡る狭山事件等、数々の逆転判決を導いた筆跡鑑定の真実! 当事者しか知り得ない裁判の裏側とは!? いま増え続けている遺産相続をめぐるニセ遺書、偽造文書をどうみやぶるか……。

 

 

著者について

1946年三重県生まれ。神戸大学名誉教授。天津大学客員教授。文学博士。六甲筆跡科学研究所所長。神戸連続児童殺傷事件の犯行声明文、一澤帆布事件の遺言書など、数々の裁判で鑑定を手がける、筆跡鑑定学の第一人者。書家としての雅号は卿山。

 

出版社 ‏ : ‎ 芸術新聞社 (2013/12/24)

発売日 ‏ : ‎ 2013/12/24

単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 184ページ

 

コメント

スキャナーとコンピューターを用いた、科学的な筆跡鑑定という意味で、大変参考になります。

 

第3部 取締役等に関する規律の見直し

 取締役等に関する規律の見直しとして、①取締役の報酬等にかかる規律の見直し、②会社補償やD&O保険に関する規定の新設、③社外取締役に関する規定の整備等が行われました。

 

第1章 取締役の報酬等にかかる規律の見直し

1,改正

近時、上場会社を中心にリストリクテッドストックなどの株式インセンティブが普及している一方、業績に連動した報酬の付与に対する会社法の規律にはやや曖昧な部分がありました。規律を透明化して株式報酬等を適正、円滑に付与することを企図して、取締役の報酬について以下のような改正がされています。

今回、取締役の報酬に関する規律について、主に以下の4つの内容の改正が行われました

①上場会社等における取締役の報酬等の決定方針の義務付け(改正法361条7項)

②取締役の報酬として株式や新株予約権を付与する場合の株主総会決議事項の具体化(改正法361条1項)

③上場会社が取締役の報酬として株式を発行する場合に出資の履行を不要に

④事業報告における報酬等の決定方針や個人別報酬等の決定の代表取締役に対する委任などの事項の開示における取締役の個人別の報酬が株主総会で決定されない際の、取締役会による報酬の決定方針の策定の義務化

 

2,取締役の報酬決定方針の開示

上場会社等の一定の会社は、定款又は株主総会の決議で取締役の個人別報酬を具体的に定めている場合を除いて、報酬内容についての決定に関する方針(報酬決定方針)を取締役会で定め、開示することが必要となります(改正法第361条第7項。方針の具体的内容について改正施行規則第98条の5、開示方法が事業報告への記載となることについて同第121条第6号)。この制度の適用対象は、①有価証券報告書提出会社(公開会社である大会社に限る)、②監査等委員会設置会社、のみとなりますので、上場会社及び一定範囲の上場準備中企業にのみ関係する改正となります。

改正法361条7項において、一定の要件を満たした会社の取締役会における個人別報酬の決定方針の策定が義務化されました(①)。

 会社法では、指名委員会等設置会社では報酬等の決定方針を決定しなければならないとされていました(会社法409条1項)。

 

 今回の改正により、下記の会社についても、定款または株主総会決議による会社法361条1項各号に定める取締役の報酬等の定めがある場合、報酬等の決定方針として、法務省令で定める事項を決定しなければならないとされました(改正法361条7項)。

ⅰ監査役会設置会社(公開会社かつ大会社に限る)であって金商法24条1項の規定により有価証券報告書を提出する必要のある会社(いわゆる上場会社)、 または監査当委員会設置会社における取締役会は、

ⅱ個人別の報酬等の内容が定款または株主総会において決定されている場合を除き、

ⅲ個人別の報酬等の内容の決定方針として法務省令で定める事項を決定しなければならない、

とされています。

 ただし、コーポレートガバナンス・コードにおいても情報開示が求められていた事項であり(原則 3-1)、対応済みの上場会社も多いと思われます。

 

改正法361条7項においては開示までが規定されているわけではありません。

なお、今回改正法361条4項において、従来の説明義務の対象とされていた不確定額報酬・非金銭報酬(旧法361条1項2号、3号)に加えて、1号の確定額報酬に ついても説明義務の対象となりました。

また、後述のように会社法の事業報告において決定方針が追加されることも検討されています。 報酬額の決定方針について、これらの中で説明されるようになることが予想されます。

3,報酬等の決定方針の決定

 報酬等の決定方針の詳細は、法務省令において規定されますが、取締役の個人別の報酬等についての報酬等の種類ごとの比率にかかる決定の方針、業績連動報酬等の有無およびその内容にかかる決定の方針、取締役の個人別の報酬等の内容にかかる決定の方法(代表取締役に決定を再一任するかどうか等を含む)等が含まれます。報酬制度の設計を検討している会社においては、これらの開示が求められる項目に留意しておく必要があります。

 

4,株主総会の報酬決議

取締役の報酬は、その上限額等を株主総会で決議する必要があります。新株予約権や株式のインセンティブを付与する場合にも、報酬の一形態として決議を得る必要があり、会社法(旧法第361条第3号)の定めに従って「報酬等のうち金銭でないもの」として、「その具体的な内容」を決議することになりますが、具体的なインセンティブスキームに応じて、どのように内容を特定して決議するかは解釈の余地がありました。

 

今回の改正で、報酬として株式又は新株予約権を付与する場合には、その上限等を決議すべきものとされました(改正法第361条第1項第3号、第4号)。また、実務上利用されている金銭報酬を介した現物出資又は相殺方式による株式又は新株予約権についても同様の規律を及ぼすべく、株式又は新株予約権の払込にあてるための金銭報酬を付与する場合にも、同様に付与上限数等を決議すべきものとされています(同第5号)。具体的な決議項目は、改正施行規則(第98条の2~第98条の4)に規定されます。

 

また、旧法では、会社法361条1項2号または3号の報酬(不確定額報酬または非金銭報酬)に関する議案の内容を定め、または改定する議案を提出する場合、取締役はその報酬議案の事項を「相当とする理由」の説明が求められます(会社法361条2項)。

 今回の改正により、会社法361条1項1号の確定額報酬に関しても、当該事項を「相当とする理由」の説明が求められることになりました(改正法361条4項)。

 

改正法361条1項は、取締役の報酬等について、各号に掲げる事項が定款で定まっていない際には株主総会でこれを定める、としているものです。 旧法では1号から3号までしか決議事項がありませんでしたが、今回の改正により、細かく報酬区分ごとに決議事項が定められ、報酬の区分に応じて1号から6号までの 事項を決議しなければならないものとなりました。

 

具体的には、取締役の報酬として当該株式会社の株式・新株予約権を付与する際には、株式・新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項について 定款・株主総会決議で定めなければならないとしています(改正法361条1項3号、4号)。

また、払い込みの上、株式・新株予約権を付与されることを報酬とする場合にも、払い込みと引き換えに受ける株式・新株予約権の数の上限について 定款・株主総会決議で定めなければならないとしています(改正法361条1項5号イ・ロ)。

つまり、 取締役の報酬として株式・新株予約権を付与するような場合には、付与する株式・新株予約権の数の上限を定めなければならないということになります。

 

 立法過程では、取締役の報酬に関して、従来のお手盛り防止の見地に加えて、取締役への適切なインセンティブの付与となっているかを株主が適切に判断できるよう、株主総会における説明義務の対象として前記(1)に述べた「報酬等の決定方針」を含めるか否かが議論されました。最終的には、「報酬等の決定方針」自体は説明義務の対象とはされませんでしたが、報酬等に関する議案を株主総会に提出する場合、その後に決定される「報酬等の決定方針」を踏まえてその内容を決定すると考えられることから、上記の「相当とする理由」の説明において、決定しようとする「報酬等の決定方針」の概要の説明が求められることになります。

 

 

5,報酬としての株式、新株予約権の特則

取締役に報酬として株式を発行する場合、無償での新株発行はできないこと等から、時価で株式を発行しつつその払込金相当額を現金報酬として付与する方法などがとられ、新株予約権については行使価額をゼロにできないことからこれを1円とする1円オプションなどの技巧的なスキームが用いられてきました。今回、株式発行手続に関する会社法の規定を一部改正し、上場会社の取締役に対して報酬の目的で発行する株式については端的に払込金額をなし(0円)とし(改正法第202条の2)、新株予約権については行使時に払込を要しない(行使価額0円)ものとすること(改正法第236条第3項)ができるようになります。これによって、上記のような技巧的な方法を利用せずとも、ダイレクトに株式や新株予約権という有価証券を報酬として取締役に発行できる形になります。

 

この制度は、上場会社のみに適用されます。市場価格のある上場会社の場合、取締役に付与された株式等の価値が算定可能であり一定のガバナンスが期待できますが、非上場会社の場合は経営者の支配助長のため濫用されるおそれがあるとの懸念から、このようになっています。また、取締役のみが対象であり、監査役や従業員などは対象外となります。

 

上場会社が、取締役に対して株式・新株予約権を報酬として付与する際に払い込みを要しないこととしました(③)。

旧法下においては、報酬として株式・新株予約権を付与するような場合には金銭の払い込みや財産上の給付等が必要とされており、 その結果として取締役の報酬債権との相殺の方法などにより、株式・新株予約権の付与が行われていました。

 

今回は改正では、このような迂遠な方法を必要としないように報酬として株式・新株予約権を付与する際には払い込みを要しないものとしました。 株式・新株予約権の付与において払い込みを要しないものとできるのは、 金商法2条16項に規定する上場株式を発行する会社、つまり上場会社です。

 

上場会社は、定款または株主総会決議において株式を報酬として付与することを定め、これに従い株式の募集をする際には、199条2項1項2号及び4号の事項( 払込金額等及び払込期日)を定める必要がなく、また、改正法202条の2第1項各号の事項を定めなければならないとしています。

改正法202条の2第1項各号の事項とは、報酬として株式の発行をするものであり、募集株式の発行と引き換えにする金銭の払い込み等を要しない旨(1号)、 募集株式を割り当てる日(2号)です。

 

つまり、上場会社で報酬として株式を発行する際には、払込金額及び払込期日を定める必要はなく、 代わりに金銭の払い込み等を要しない旨および募集株式を割り当てる日を決定する必要がある、ということになります。 新株予約権も同様の規律となっています(改正法236条3項各号)。

 

6,事業報告の記載充実

上記改正を踏まえ、公開会社の事業報告について、(1)で述べた報酬決定方針のほか、業績連動報酬に関する事項や、報酬として交付した株式等に関する事項などが、事業報告の記載事項として追加されます(改正施行規則第121条、第122条)。「公開会社」(株式の譲渡制限を外している会社)に関する変更ですので、主に上場会社に関する改正となります。

 

事業報告の充実化(④)が報酬に関する改正としてあげられます。

事業報告は会社法435条2項に規定されており、その具体的内容は会社法施行規則118条以下に規定されています。

 

以上の4点が、報酬に関する改正内容となります。

 

7,企業に求められる具体的な対応とそのスケジュール

 この規律は特に経過措置が設けられていないため、義務づけの対象となる会社においては、改正法の施行日(2021年3月1日)時点で報酬等の決定方針が定められていることが原則として必要ですが、施行日以後すみやかに決定することでも許容されると解されています 1。

 

 つまり、義務付けの対象となる会社においては、2021年3月1日までに開催される取締役会で、報酬等の決定方針を定めておくことが望ましいといえます。それが難しい場合には、2021年3月1日以降なるべく早いタイミングで定める必要があります。「施行日以後すみやかに」というのが具体的にいつまでなのかは不明確ですが、遅くとも3月の定例取締役会では決議しておく必要があると考えられます。

 

8,過去(改正法の施行日より前の時点)の取締役会決議の内容が、報酬等の決定方針として取締役会が決定すべき事項を網羅している場合であっても、改めて決議する必要はありません。

 

9,既に制定されている役員報酬規程の内容が、報酬等の決定方針として取締役会が決定すべき事項を網羅している場合であって、役員報酬規程の制定や改定が取締役会決議に基づいてされているのであれば、報酬等の決定方針として取締役会が決定すべき事項についても取締役会決議によって決定されていると評価することができるため、改めて決議する必要はありません。

 

10,報酬等の決定方針として定めるべき事項

改正会社法施行規則98条の5の概要

 報酬等の決定方針として定めるべき事項の具体的内容は、会社法施行規則98条の5各号に規定されており、その概要は以下のとおりです。

1号       報酬の種類ごとに

定める事項        報酬等(業績に連動しない金銭報酬)の額またはその算定方法の決定方針

2号       業績連動報酬等がある場合には、業績指標の内容および業績連動報酬等の額または数の算定方法の決定方針

3号       非金銭報酬等がある場合には、その内容および非金銭報酬等の額もしくは数またはその算定方法の決定方針

4号       報酬全体について

定める事項        報酬等の種類ごとの割合の決定方針

5号       報酬等を与える時期または条件の決定方針

6号       個人別報酬の内容の決定方法    決定の全部または一部の第三者への委任に関する事項

イ)委任を受ける者の氏名または株式会社における地位・担当

ロ)委任する権限の内容

ハ)権限が適切に行使されるようにするための措置を講ずることとするときは、その内容

7号       第三者への委任以外の決定方法

8号       その他  その他重要な事項

改正会社法施行規則98条の5各号で定めるべき事項の具体的な記載方法

 以下、会社法施行規則98条の5各号の内容について条文の順序に沿って解説しますが、報酬等の決定方針としては、その実質的な内容において同条各号に掲げる事項が決定されていれば足り、記載順序や様式について特に限定はありません。

 

11,報酬等(業績に連動しない金銭報酬)の額またはその算定方法の決定方針(会社法施行規則98条の5第1号)

 業績に連動しない金銭報酬については、その額またはその算定方法の決定方針を定める必要がありますが、額や算定方法の詳細までを決定する必要はなく、算定方法を決定する際の考え方を定めれば足りると考えられます。

【具体的な記載例】

取締役の役位、職責、在任年数等に応じて支給額を決定する。

 

12,業績連動報酬等がある場合には、業績指標の内容および業績連動報酬等の額または数の算定方法の決定方針(会社法施行規則98条の5第2号)

 取締役に対して業績指標(※)を基礎としてその額または数が算定される報酬を支給している場合には、ここでいう「業績連動報酬等」に該当します。業績に連動する金銭報酬だけでなく、業績に応じて付与数が変動する株式報酬などの非金銭報酬等も「業績連動報酬等」に該当する点には留意が必要です。

 

 業績連動報酬等に該当する場合には、業績指標の内容および業績連動報酬等の額または数の算定方法の決定方針を定める必要がありますが、額・数や算定方法の詳細までを決定することが求められているわけではなく、算定方法を決定する際の考え方を定めれば足りると考えられます。

 

(※)「業績指標」には、以下のようなものが広く含まれます。

売上高、営業利益、経常利益、当期純利益等

株価

自己資本利益率(ROE)、総資産利益率(ROA)等

配当性向

非財務指標(顧客満足度、CO2排出量削減目標の計画値に対する達成度等)

連結売上高、連結営業利益、連結経常利益等

【具体的な記載例】

各事業年度の連結売上高が……円以上であれば〇円~〇円の範囲内、……円以上であれば〇円~〇円の範囲内の額とする。

役位に応じて設定される基準額に、各事業年度の連結売上高営業利益率に応じて〇~〇の範囲内で設定される指標係数を乗じた額とする。

各事業年度の連結売上高の目標値に対する達成率に応じて算出された額を支給する。

役位に応じて設定される基準額に、各事業年度の連結売上高営業利益率に比例して設定される指標係数を乗じた額を支給する。

 

13,非金銭報酬等がある場合には、その内容および非金銭報酬等の額もしくは数またはその算定方法の決定方針(会社法施行規則98条の5第3号)

 取締役に対して株式や新株予約権を報酬として付与する場合のほか、株式や新株予約権と引換えにする払込みに充てるための金銭を取締役の報酬とする場合(いわゆる現物出資構成による株式報酬や相殺構成によるストックオプション)も、「非金銭報酬等」に該当します。

 

 非金銭報酬等に該当する場合には、その内容および非金銭報酬等の額もしくは数またはその算定方法の決定方針を定める必要があります。

【具体的な記載例】

当社の中長期的な企業価値及び株主価値の持続的な向上を図るインセンティブを付与するため、非金銭報酬として譲渡制限付株式(譲渡制限期間は〇年間とし、…を条件として譲渡制限を解除する。)を付与するものとし、付与数は役位に応じて決定するものとする。

 

14,報酬等の種類ごとの割合の決定方針(会社法施行規則98条の5第4号)

 業績に連動しない金銭報酬、業績連動報酬等および非金銭報酬等の報酬全体に占める割合の決定方針について定める必要があります。ここで決定しなければならないのは、割合自体ではなくあくまで割合の決定方針なので、具体的な割合を定めることは必須ではありません。たとえば、レンジを用いて示すことや、役位が上がるほど業績連動報酬等や非金銭報酬の割合が大きくなるように設定するなどの考え方を定めることでも足りると考えられます。

 

 なお、有価証券報告書では、業績連動報酬とそれ以外の報酬等の支給割合の決定方針を記載することは求められていますが(開示府令第二号様式記載上の注意(第三号様式記載上の注意(38)において準用)(57)a)、報酬の種類ごとの割合の決定方針まで記載することが明示的に求められているわけではないので、報酬等の決定方針を策定する際に有価証券報告書の記載内容を流用しようとする場合には注意が必要です。

 

【具体的な記載例】

固定の金銭報酬である基本報酬:業績連動報酬等である賞与:非金銭報酬等であるストックオプションの割合がおよそ5:3:2となるように支給するものとする。

業績連動報酬等が報酬全体に占める割合は、約〇%~〇%の範囲内で役位が上がるほどその割合が大きくなるように設定するものとし、固定金銭報酬と非金銭報酬等はおよそ〇:〇の割合で支給するものとする。

業績連動報酬等は支給せず、固定報酬のうち〇%前後を一律で非金銭報酬等である譲渡制限株式と引換えにする払込みに充てるための金銭として支給するものとする。

 

15,報酬等を与える時期または条件の決定方針(会社法施行規則98条の5第5号)

 それぞれの報酬について、取締役に対して報酬等を与える時期や条件の決定方針を定める必要があります。それぞれの報酬の内容や額の算定方法の決定方針についての説明の中で、まとめて記載することとしても問題ありません。

 

 なお、有価証券報告書では、報酬等を与える時期または条件の決定方針に相当する内容を記載することは明示的には求められておりませんので、報酬等の決定方針を策定する際に有価証券報告書の記載内容を流用しようとする場合には注意が必要です。

 

【具体的な記載例】

基本報酬は、月例の固定金銭報酬とする。

業績連動報酬等である賞与は、事業年度終了後〇ヶ月以内に年1回支給する。

株式交付信託を採用しており、対象となる取締役に対して、取締役会で定めた株式交付規程に従って役位に応じたポイントを付与し、付与を受けたポイントの数に応じて、当社および当社グループの役員を退任した時に当社株式を交付する。

 

16,決定の全部または一部の第三者への委任に関する事項(会社法施行規則98条の5第6号)

 取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の全部または一部を取締役その他の第三者に委任(いわゆる再一任)することとする場合には、以下の事項を定める必要があります(会社法施行規則98条の5第6号イ〜ハ)。

 

➀委任を受ける者の氏名または株式会社における地位・担当

②委任する権限の内容

③権限が適切に行使されるようにするための措置を講ずることとするときは、その内容

 なお、①の「委任を受ける者」は、たとえば、社外取締役で構成される任意の報酬委員会を設置して同委員会に決定の全部または一部を委任した場合には、報酬委員会ではなく、その構成員である取締役を指すと考えられています。

 

 また、③の措置としては、委任を受けた取締役等が社外取締役を中心とした任意の報酬諮問委員会の答申や外部の専門家の意見等を得たうえで取締役の個人別の報酬等の内容を決定することなどが考えられますが、このような措置を講ずるかどうかは各社の判断に委ねられています。

 

【具体的な記載例】

各取締役に支給する業績連動報酬等である賞与については、取締役会決議に基づき代表取締役社長にその具体的内容の決定を委任するものとし、代表取締役社長は、当社の業績等も踏まえ、株主総会で決議した報酬等の総額の範囲内において、各取締役の役位、職責等に応じて決定する。なお、代表取締役社長は、当該決定にあたっては、委員の過半数が社外取締役で構成される報酬諮問委員会からの答申内容を尊重するものとする。

 

17,第三者への委任以外の決定方法(会社法施行規則98条の5第7号)

 会社法施行規則98条の5第7号では、いわゆる再一任以外の決定方法について定めることとされています。たとえば、取締役の個人別の報酬等の内容について取締役会が決定するに際して、任意の報酬諮問委員会の答申を得たり、外部の専門家の意見を得たりしている場合には、これに該当します。

 

【具体的な記載例】

各取締役の基本報酬については、取締役会が、委員の過半数が独立社外取締役で構成される報酬諮問委員会における審議結果を踏まえ、その具体的内容を決定する。

 

18,その他重要な事項(会社法施行規則98条の5第8号)

 以上のほか、取締役の個人別の報酬等の内容を決定するにあたって、各社において重要と考える事項があれば、報酬等の決定方針の一内容として定めておくことが考えられます。たとえば、取締役の個人別の報酬等の内容を決定する際の前提となる基本的な理念や、一定の事由が生じた場合に報酬等を返還させるような建付けとする場合における当該事由の決定方針などがこれに該当すると考えられます。

 

19,報酬には、取締役に対して職務を適切に執行するインセンティブを付与するという重要な機能があるため、取締役の報酬等の内容を適切に定めるための仕組みを整備することは、ガバナンスの強化の観点から重要であると指摘されてきました。

 

 今回、改正法が上場会社等に報酬等の決定方針の決定を義務づけることとしたのも、企業による「仕組みの整備」の一環として、報酬決定プロセスの透明性を向上させることが目的といえます。

 

 ガバナンスの強化という至上命題を達成するためにも、各企業が、今回の改正を自社の報酬制度全体を見つめ直す好機と捉え、自社に適した仕組みの整備を目指すことが期待されます。

 

債務者の使用人が履行補助者と認められた事例

 

 

              土地明渡等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和33年(オ)第344号

【判決日付】      昭和35年6月21日

【判示事項】      債務者の使用人が履行補助者と認められた事例

【判決要旨】      賃借家屋を使用し家具の製造を業としている賃借人が住込で雇い入れた工員は、右賃借家屋の使用については、賃借人の義務の履行補助者にあたる。

【参照条文】      民法415

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集14巻8号1487頁

 

民法

(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

 

指にフッ化水素酸を付着させ,治療を受けたが不適切な治療のため,指先切除による後遺症を負ったとして,損害賠償を求めた事案

東京地方裁判所判決/平成16年(ワ)第11981号

平成18年3月27日

損害賠償請求事件

【判示事項】    指にフッ化水素酸を付着させ,治療を受けたが不適切な治療のため,指先切除による後遺症を負ったとして,損害賠償を求めた事案について,被告の過失を一部認め,認定した損害額の限度で原告の請求を認容し,その余を棄却した事例

【掲載誌】     LLI/DB 判例秘書登載

 

民法

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

       主   文

      1 被告は,原告に対し,1053万5670円およびこれに対する平成14年5月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

      2 原告のその余の請求を棄却する。

      3 訴訟費用はこれを5分し,その3を原告の,その余を被告の負担とする。

      4 この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。

       事実および理由

第1 請求

   被告は,原告に対し,2836万6141円およびこれに対する平成14年5月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

   本件は,原告(昭和48年○月○○日生)が,平成14年5月31日,メッキ工場で作業中,右手指にフッ化水素酸を付着させ,被告の経営するA病院(以下「被告病院」という。)において治療を受けたが,被告病院の医師が原告に対し,水洗浄を行わない等の不適切な治療を行ったため,原告は,右手第2指第2関節上切断および右手第3指骨先部分1cmの切除による後遺障害を負ったと主張して,被告に対し,診療契約上の債務不履行または不法行為(民法715条)に基づき,損害賠償およびこれに対する被告病院における初診日である平成14年5月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

 

日本興業銀行事件・金銭債権の貸倒損失を法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として損金の額に算入するための要件及びその要件該当性の判断

 

 

              法人税更正処分等取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/平成14年(行ヒ)第147号

【判決日付】      平成16年12月24日

【判示事項】      1 金銭債権の貸倒損失を法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として損金の額に算入するための要件及びその要件該当性の判断

             2 経営の破たんした住宅金融専門会社の設立母体である銀行が放棄した同社に対する貸付債権相当額が法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として損金の額に算入されるべきであるとされた事例

【判決要旨】      1 法人の各事業年度の所得の金額の計算において,金銭債権の貸倒損失を法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として当該事業年度の損金の額に算入するためには,当該金銭債権の全額が回収不能であることが客観的に明らかでなければならず,そのことは,債務者の資産状況,支払能力等の債務者側の事情のみならず,債権回収に必要な労力,債権額と取立費用との比較衡量,債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれきなどによる経営的損失等といった債権者側の事情,経済的環境等も踏まえ,社会通念に従って総合的に判断されるべきである。

             2 経営の破たんした住宅金融専門会社A社の設立母体である甲銀行が閣議決定等で示された処理計画に沿ってA社に対する貸付債権を全額放棄した場合において,当時A社の資産からの回収見込額がA社の設立母体以外の金融機関のA社に対する債権の合計額を下回っていたこと,甲銀行が,A社の経営に深くかかわり,A社の再建計画に責任を持って対応することを明確にしていた等の事情により,上記金融機関の一部から同金融機関がA社に対して有する債権の元本損失部分についても責任を負うように求められていて,せいぜい甲銀行の上記債権を放棄する限度で損失を負担する旨を主張してそれ以上の責任を回避することしかできない情勢にあったことなど判示の事実関係の下では,上記債権相当額は,放棄の時点でその全額が回収不能であることが客観的に明らかになっており,法人税法22条3項3号にいう「当該事業年度の損失の額」として上記放棄の日の属する事業年度の損金の額に算入されるべきである。

【参照条文】      法人税法22-3

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集58巻9号2637頁

 

法人税法

第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則

第二十二条 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。

2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。

一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額

二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額

三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

4 第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。

5 第二項又は第三項に規定する資本等取引とは、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引並びに法人が行う利益又は剰余金の分配(資産の流動化に関する法律第百十五条第一項(中間配当)に規定する金銭の分配を含む。)及び残余財産の分配又は引渡しをいう。

 

道路法70条1項の定める損失の補償の対象

 

 

損失補償裁決取消等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和54年(行ツ)第155号

【判決日付】      昭和58年2月18日

【判示事項】      道路法70条1項の定める損失の補償の対象

【判決要旨】      道路法70条1項の定める損失の補償の対象は、道路工事の施行による土地の形状の変更を直接の原因として生じた隣接地の用益又は管理上の障害を除去するためにやむをえない必要があつてした通路、みぞ、かき、さくその他これに類する工作物の新築、増築、修繕若しくは移転又は切土若しくは盛土の工事に起因する損失に限られ、道路工事の施行の結果、危険物の保管場所等につき保安物件との間に一定の離隔距離を保持すべきことを内容とする技術上の基準を定めた警察法規に違反する状態を生じ、危険物保有者が右の基準に適合するように工作物の移転等を余儀なくされたことによつて被つた損失は、右補償の対象には属しない。

【参照条文】      道路法70-1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集37巻1号59頁

 

道路法

(道路の新設又は改築に伴う損失の補償)

第七十条 土地収用法第九十三条第一項の規定による場合の外、道路を新設し、又は改築したことに因り、当該道路に面する土地について、通路、みぞ、かき、さくその他の工作物を新築し、増築し、修繕し、若しくは移転し、又は切土若しくは盛土をするやむを得ない必要があると認められる場合においては、道路管理者は、これらの工事をすることを必要とする者(以下「損失を受けた者」という。)の請求により、これに要する費用の全部又は一部を補償しなければならない。この場合において、道路管理者又は損失を受けた者は、補償金の全部又は一部に代えて、道路管理者が当該工事を行うことを要求することができる。

2 前項の規定による損失の補償は、道路に関する工事の完了の日から一年を経過した後においては、請求することができない。

3 第一項の規定による損失の補償については、道路管理者と損失を受けた者とが協議しなければならない。

4 前項の規定による協議が成立しない場合においては、道路管理者又は損失を受けた者は、政令で定めるところにより、収用委員会に土地収用法第九十四条の規定による裁決を申請することができる。

 

 

 

  

       主   文

 

 原判決中上告人敗訴部分を破棄し、第一審判決中右部分を取り消す。

 前項の部分に関し、香川県収用委員会が被上告人のためにした昭和五二年九月二四日付損失補償裁決中、損失補償額八九六万九七八〇円にかかる部分を取り消し、上告人の被上告人に対する右部分の損失補償金支払債務が存在しないことを確認する。

 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人蓑田速夫、同渡邊剛男、同鈴木芳夫、同前川典和、同福富昌昭、同岩部承志、同三木克彦、同染谷武、同堀江忠義、同轟雄介、同中島正敬、同江口慎一の上告理由について

 道路法七〇条一項の規定は、道路の新設又は改築のための工事の施行によつて当該道路とその隣接地との間に高低差が生ずるなど土地の形状の変更が生じた結果として、隣接地の用益又は管理に障害を来し、従前の用法に従つてその用益又は管理を維持、継続していくためには、用益上の利便又は境界の保全等の管理の必要上当該道路の従前の形状に応じて設置されていた通路、みぞ、かき、さくその他これに類する工作物を増築、修繕若しくは移転し、これらの工作物を新たに設置し、又は切土若しくは盛土をするやむを得ない必要があると認められる場合において、道路管理者は、これに要する費用の全部又は一部を補償しなければならないものとしたものであつて、その補償の対象は、道路工事の施行による土地の形状の変更を直接の原因として生じた隣接地の用益又は管理上の障害を除去するためにやむを得ない必要があつてした前記工作物の新築、増築、修繕若しくは移転又は切土若しくは盛土の工事に起因する損失に限られると解するのが相当である。したがつて、警察法規が一定の危険物の保管場所等につき保安物件との間に一定の離隔距離を保持すべきことなどを内容とする技術上の基準を定めている場合において、道路工事の施行の結果、警察違反の状態を生じ、危険物保有者が右技術上の基準に適合するように工作物の移転等を余儀なくされ、これによつて損失を被つたとしても、それは道路工事の施行によつて警察規制に基づく損失がたまたま現実化するに至つたものにすぎず、このような損失は、道路法七〇条一項の定める補償の対象には属しないものというべきである。

 これを本件についてみると、原審の適法に確定したところによれば、被上告人は、その経営する石油給油所においてガソリン等の地下貯蔵タンクを埋設していたところ、上告人を道路管理者とする道路工事の施行に伴い、右地下貯蔵タンクの設置状況が消防法一〇条、一二条、危険物の規制に関する政令一三条、危険物の規制に関する規則二三条の定める技術上の基準に適合しなくなつて警察違反の状態を生じたため、右地下貯蔵タンクを別の場所に移設せざるを得なくなつたというのであつて、これによつて被上告人が被つた損失は、まさしく先にみた警察規制に基づく損失にほかならず、道路法七〇条一項の定める補償の対象には属しないといわなければならない。そうすると、これと異なる見解に立つて被上告人の被つた右損失が右補償の対象になるものとした原審の判断には法令の解釈、適用を誤つた違法があり、右違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。

 そこで、進んで、原審が適法に確定した事実関係に基づき、右破棄部分にかかる上告人の請求の当否について判断すると、被上告人の被つた前記損失につき原判決と同様の見解に立つて上告人が損失補償義務を負うものとした本件損失補償裁決には法令の解釈、適用を誤つた違法があつて取消を免れず、また、右裁決にかかる上告人の被上告人に対する損失補償金支払債務が存在しないことは、いずれも前記説示に照らして明らかであるから、上告人の右請求は理由がある。したがつて、上告人の右請求を排斥した第一審判決を取り消して、右請求を認容すべきである。

 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八六条、九六条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第二小法廷

『遺言だけじゃない!?弁護士だからできる 生前の相続対策のすべて』

 

 

「生前の相続対策」の実務について、信託や相続税等も含む相続各分野を相互補完的に解説した唯一の書。

 

 

第一法規

 

遺言だけじゃない!?弁護士だからできる 生前の相続対策のすべて画像を拡大する

予約購入

 

定価

4,400円

(本体:4,000円)

 

 

編著者名

 

東京弁護士会 二一会研究部 編著

 

 

発刊年月日          2024-02-14

 

 

コメント

贈与税の非課税学についての記載がない。

 

 

商品概要

 

弁護士が対応できる相続に関する各分野(遺言、信託、相続税等)を事例を用いて解説。「生前の相続対策」の相談を受けた際のクライアントとの相談内容・相談テーマを想定して章立てを行ったうえで、相続に関する各分野を相互補完的に解説する。

 

目次

 

第1章 生前対策の概要・必要性

第2章 生前対策の準備

 1 親族関係の把握

  (1) 推定相続人は誰か

  (2) 推定相続人の法定相続分はどのようになっているか

  (3) 推定相続人以外に財産を承継させたい場合

 2 財産状況の把握

  (1) 財産目録作成の必要性

  (2) 相続財産に該当するもの・しないもの

  (3) 情報の取得の方法

 3 遺留分との関係

  (1) 遺留分の算定

  (2) 遺留分の対策

  (3) 経営承継円滑化法

 4 将来の税金の試算(相続税・贈与税)

  (1) 相続税の概要

  (2) 相続税の計算

  (3) 贈与税の概要

第3章 生前の財産管理

 1 財産管理契約

  (1) 財産管理契約の意義

  (2) 財産管理契約のメリット・デメリット

  (3) 任意後見契約との併用

  (4) 財産管理契約締結の手続

  (5) 財産管理契約の内容の変更及び終了

 2 任意後見

  (1) 任意後見制度の意義

  (2) 任意後見制度の3類型

  (3) 任意後見人の資格・職務

  (4) 任意後見監督人の資格・職務

  (5) 契約書・契約手続

  (6) 任意後見監督人選任の申立て

  (7) 任意後見契約の変更・解除

  (8) 任意後見制度に適したケース

 3 成年後見

  (1) 成年後見制度の意義

  (2) 法定後見と任意後見との関係性

  (3) 申立て手続

  (4) 成年後見人就任時の注意点

  (5) 成年後見人による報告

  (6) 定期報告及び臨時報告

  (7) 後見制度支援信託・後見制度支援預金

 4 信託

  (1) 民事信託の概要

  (2) 後継ぎ遺贈型信託

  (3) 信託と遺留分

  (4) 民事信託業務に関するガイドラインについて

第4章 存命中の資金の確保

 1 資産の整理

  (1) 生前整理とは

  (2) 生前整理をすることのメリット

  (3) 資産ごとの処分・活用方法

 2 借入(リバースモーゲージ)

  (1) 借入れ

  (2) リバースモーゲージ

第5章 生前の相続対策の方法

 1 遺言

  (1) はじめに

  (2) 遺言能力

  (3) 遺言の方式

  (4) 共同遺言の禁止

  (5) 遺言の有効性を争う方法

  (6) 遺言の具体例

 2 信託

  (1) 遺言代用信託

  (2) 遺言信託

  (3) 設定した信託が無効とされないために

 3 生命保険

  (1) 生命保険を利用するメリット

  (2) 生命保険金の受取人に対する課税関係

  (3) 利用可能な生命保険

  (4) 保険料の贈与

  (5) 保険金請求の時効

 4 贈与(生前)

  (1) 生前贈与の内容(遺産分割方法の指定、死因贈与、遺贈との比較)

  (2) 生前贈与をする場合の検討事項

  (3) 贈与税との関係(暦年課税/相続時精算課税 令和5年度税制改正)

  (4) 配偶者への贈与

  (5) 住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例

  (6) 教育資金贈与(令和8年まで延長)

  (7) 結婚・子育て資金贈与(令和7年まで延長)

 5 死因贈与

  (1) 死因贈与とは

  (2) 死因贈与を利用するメリット・デメリット

  (3) 生前贈与・遺贈との比較

  (4) 死因贈与契約の成立要件

  (5) 遺贈の規定の準用

  (6) 死因贈与の撤回の可否

  (7) 死因贈与の活用方法

 6 配偶者の保護のための制度

  (1) 配偶者居住権

  (2) 配偶者短期居住権

  (3) 持戻し免除

  (4) 配偶者の保護制度を利用するための準備事項

 7 相続財産の評価額の減額

  (1) 不動産の評価額

  (2) 小規模宅地等の特例

  (3) 不動産の賃貸

  (4) 相続前の修繕

  (5) 不動産の新規購入

  (6) 最後に

 8 養子縁組

  (1) 養子縁組の利用

  (2) 相続対策上のメリット

  (3) 相続対策との関係で養子縁組を活用する場合の留意点

  (4) 養子縁組を行う方法

 9 死後事務委任契約

  (1) 死後事務委任契約とは

  (2) 死後事務委任契約の有効性(民法653条1項の関係)

  (3) 死後事務委任契約と遺言との関係

  (4) 相続人による死後事務委任契約の任意解除

  (5) 委任する死後事務の範囲

  (6) 契約締結におけるポイント

 10 資産管理会社の活用

  (1) 資産管理会社とは

  (2) 相続税対策

  (3) メリット・デメリット

  (4) 資産管理会社の形態

  (5) まとめ

 11 納税資金の確保

  (1) はじめに

  (2) 相続税の申告

  (3) 納税資金の確保等

第6章 生前対策実行時・後の問題

 1 遺言の執行

  (1) 遺言書を手に入れる

  (2) 遺言の検認

  (3) 遺言の撤回(撤回擬制を含む)

  (4) 遺言執行者への就任

  (5) 遺言執行者への就任を辞退した場合

  (6) 遺言の執行

  (7) 遺言執行者の報酬

 2 遺留分侵害額請求

  (1) 遺留分侵害額請求があった場合

  (2) 遺留分侵害額請求をする場合

第7章 具体的相談事例

 1 子を自宅に住み続けられるようにしたい

 2 妻を自宅に住み続けられるようにしたい

 3 家族経営の事業を孫の代まで直系血族で経営していきたい

 4 遺留分を侵害する遺言書の作成

 5 信託の活用

執筆者一覧

 ◆編集・執筆者

  松本 甚之助(まつもと じんのすけ)

  川口 智也 (かわぐち ともや)

  新美 智彬 (にいみ ともあき)

  喜納 直也 (きな なおや)

 ◆執筆者

  寅本 章人 (とらもと あきひと)

  加藤 賢  (かとう けん)

  近藤 純司 (こんどう じゅんじ)

  辻本 奈保 (つじもと なお)

  宮島 哲子 (みやじま のりこ)

  佐伯 織江 (さえき おりえ)

  竹下 茂臣 (たけした しげおみ)

  古橋 夏樹 (ふるはし なつき)

  大伍 将史 (だいご まさと)

  深野 葉月 (ふかの はづき)

第2章 株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備

改正で、株主提案権の濫用的行使の防止に関する規律が新たに設けられたので、これについて解説します。

1,改正の背景

株主総会では通常、会社側が提案した決議事項が審議、決議されますが、法律上、一定の要件のもとで、株主の方から決議事項を提案することが可能です。今回の改正では、株主総会で株主から100件の議案が提出されたなどの事例も踏まえ、円滑な株主総会運営のため株主の権利の濫用を抑制するべく、株主の議案の提案権に数量制限が加えられます。

 

旧法上、株主(取締役会設置会社の場合、一定の持株比率等の要件を満たす株主)は、自己が株主総会に提出しようとする議案の要領を、予め招集通知に記載して各株主に通知するよう、会社に請求することができました。

近年、1人の株主が膨大な数の議案が提案されたり、株主から会社を困惑させる目的で議案が提出されたりするなどの株主提案権の濫用ともいうべき事態が発生しており、これにより、株主総会における審議時間等が無駄に割かれ、株主総会の意思決定機関としての機能が害されたり、株主総会における検討や招集通知の印刷等に要するコストが増加したりする弊害が生ずることが指摘されていました。このような濫用的な株主提案権の行使について 歯止めが必要な状況となっていました。

2,提案の個数制限

そこで、今回の改正では、株主の提案できる議案の数について、10個を上限とするなど、濫用的行使を防止する対策がとられました(改正法305条4項・5項)。

 

改正法305条4項は、株主が305条1項に基づいて議案を提出しようとしている場合において、 株主の提出しようとする議案の数が10を超える場合には、10を超えた議案の数については305条1項から3項が適用されない、 つまり議案の要領の通知請求権がない、ということを定めています。

すなわち、株主が一つの株主総会において議案の通知を請求することのできる議案の数は10まで、ということになります。 なお、議場において提案する議案の数に制限が加えられたわけではないので、この点は注意が必要です。

3,議案数の数え方

 役員等(取締役・会計参与・監査役または会計監査人)の選解任等議案は、役員等の数にかかわらず1つと数え、制限議案数に含めて数えることとなります。

 

 定款変更議案については、従前、関連性のない多数の条項を追加する定款変更議案であっても、株主が当該議案を分けて提案しない場合は、形式的には1つの議案として扱われる場合がありました。これが1つの議案として扱えることになると、議案数の制限の潜脱が容易になってしまいます。そこで、改正法では、「2以上の議案について異なる議決がされたとすれば当該議決の内容が相互に矛盾する可能性がある場合には、これらを1の議案とみなす」と定めることとされました(改正法305条4項4号)。相互に矛盾するか否かの判断は、解釈に委ねられることになります。

 

では、10個の議案はどのように算出するのでしょうか。議案の数の数え方については、改正法305条4項各号が規定しています。

役員等の選任、役員等の解任、会計監査人の不再任については、議案の数にかかわらず1個の議案とみなされます(改正法305条4項1号、2号、3号)。 なお、「役員等」とは取締役、会計参与、監査役、会計監査人の総称とされています(改正法305条4項1号かっこ書き)。

次に、定款変更に関する2以上の議案については、当該2つ以上の議案について異なる議決がされたとすれば当該議決の内容が相互に矛盾する可能性があるような場合には 1つの議案とみなす、としています。2つ以上の定款変更が密接に連動しているような場合は1つとみなす、という趣旨です。

4、上限を超えた提案

 上限を超える数の議案が提案された場合、会社は上限超過部分の提案を拒絶することができます。上限を超える数の議案の決定方法について、株主が議案の優先順位を定めていない場合は取締役が定める順位に従い、株主が優先順位を定めた場合は、その順位に従うこととなります(改正法305条5項)。

 

これまで述べてきたように、改正法305条4項は10を超える数に相当する議案について株主提案権を認めないとするものです。では、 10を超える数に相当する議案が提出された場合、どの議案を取り上げるか、はどのように決めるのでしょうか。

 

改正法には、10個の具体的なカウントの仕方や、10を超過した場合にどの議案を採用するかに関するルールなどが定められています。

 

この点について改正法305条5項本文は、取締役が定める、としています。したがって、10を超える数の議案が提出された場合、原則として取締役が株主提案権の行使を認めない議案の決定を行うことになります。

 

しかし、株主が議案の提出の際に、 株主が提出しようとする2以上の議案の全部、又は一部につき議案相互間の優先順位を定めている場合には、 取締役は、当該優先順位に従いこれを定める、とされています(改正法305条5項ただし書)。 すなわち、議案の提出を行う株主が優先順位をつけてこれを行った場合、優先順位に従って10を超える数に相当する議案を定める、 ということです。

取締役が自己に都合の良い議案を優先的に取り上げるような濫用的な事態を防止する趣旨です。

 

なお、株主総会の決議事項は、定款変更、取締役3名選任といった決議のテーマを示す「議題」と、定款の新旧対照表や取締役候補者といった具体的な決議内容を意味する「議案」から構成されます。株主には、「議題」を提案する権利(会社法第303条)、株主総会の会場で動議として「議案」を提案する権利(同第304条)、提案しようとする「議案」を予め招集通知に記載請求する権利(同第305条)がありますが、今回の数量制限は、最後の提案しようとする「議案」を予め招集通知に記載請求する権利のみを制限するものとなります。

5,国会での議論

 国会に提出された改正法案では、株主提案権に関して、もっぱら人の名誉を侵害し、侮辱する等の目的でなされた場合や、株主総会の適切な運営が著しく妨げられ、株主の共同の利益が害されるおそれがあると認められる場合には、会社は株主提案を認めないとする明文の規定が置かれていましたが、審議過程で削除されることとなりました。ただし、濫用的な株主提案権の行使を拒否できる場合があること自体が否定されたものではありません。

 

本改正は、取締役会設置会社のみに適用され、株主によるガバナンスが重視される取締役会非設置会社には適用されません。また実務的には、非上場会社では株主が議案を提案すること自体稀ですので、主に改正の影響を受けるのは上場会社と思われます。

 

知事の許可を条件としてなされた売買契約は、その後農振法6条・8条3項による知事の指定がなされたとしても、条件の不成就により失効するものではないとされた事例

名古屋高等裁判所判決/昭和52年(ネ)第46号
昭和53年1月26日
所有権移転仮登記抹消登記手続請求控訴事件
【判示事項】    知事の許可を条件としてなされた売買契約は、その後農業振興地域の整備に関する法律6条・8条3項による知事の指定がなされたとしても、条件の不成就により失効するものではないとされた事例
【判決要旨】    農地法5条の知事の許可を条件としてなされた売買契約は、当該農地が農業振興地域の整備に関する法律6条、8条3項による知事の指定がなされた場合においても、条件不成就となったということはできない。
【参照条文】    農業振興地域の整備に関する法律6
          農業振興地域の整備に関する法律8-3
          農地法5
          民法127
          民法133
【掲載誌】     判例タイムズ369号212頁
          金融・商事判例553号40頁
          判例時報890号98頁

農業振興地域の整備に関する法律
(農業振興地域の指定)
第六条 都道府県知事は、農業振興地域整備基本方針に基づき、一定の地域を農業振興地域として指定するものとする。
2 農業振興地域の指定は、その自然的経済的社会的諸条件を考慮して一体として農業の振興を図ることが相当であると認められる地域で、次に掲げる要件のすべてをそなえるものについて、するものとする。
一 その地域内にある土地の自然的条件及びその利用の動向からみて、農用地等として利用すべき相当規模の土地があること。
二 その地域における農業就業人口その他の農業経営に関する基本的条件の現況及び将来の見通しに照らし、その地域内における農業の生産性の向上その他農業経営の近代化が図られる見込みが確実であること。
三 国土資源の合理的な利用の見地からみて、その地域内にある土地の農業上の利用の高度化を図ることが相当であると認められること。
3 農業振興地域の指定は、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第七条第一項の市街化区域と定められた区域(同法第二十三条第一項の規定による協議を要する場合にあつては、当該協議が調つたものに限る。)については、してはならない。
4 都道府県知事は、農業振興地域を指定しようとするときは、関係市町村に協議しなければならない。
5 農業振興地域の指定は、農林水産省令で定めるところにより、公告してしなければならない。
6 都道府県知事は、農業振興地域を指定したときは、農林水産省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を農林水産大臣に報告しなければならない。

(市町村の定める農業振興地域整備計画)
第八条 都道府県知事の指定した一の農業振興地域の区域の全部又は一部がその区域内にある市町村は、政令で定めるところにより、その区域内にある農業振興地域について農業振興地域整備計画を定めなければならない。
2 農業振興地域整備計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 農用地等として利用すべき土地の区域(以下「農用地区域」という。)及びその区域内にある土地の農業上の用途区分
二 農業生産の基盤の整備及び開発に関する事項
二の二 農用地等の保全に関する事項
三 農業経営の規模の拡大及び農用地等又は農用地等とすることが適当な土地の農業上の効率的かつ総合的な利用の促進のためのこれらの土地に関する権利の取得の円滑化その他農業上の利用の調整(農業者が自主的な努力により相互に協力して行う調整を含む。)に関する事項
四 農業の近代化のための施設の整備に関する事項
四の二 農業を担うべき者の育成及び確保のための施設の整備に関する事項
五 農業従事者の安定的な就業の促進に関する事項で、農業経営の規模の拡大及び農用地等又は農用地等とすることが適当な土地の農業上の効率的かつ総合的な利用の促進と相まつて推進するもの
六 農業構造の改善を図ることを目的とする主として農業従事者の良好な生活環境を確保するための施設の整備に関する事項
3 農業の振興が森林の整備その他林業の振興と密接に関連する農業振興地域における農業振興地域整備計画にあつては、前項第二号から第六号までに掲げる事項を定めるに当たり、あわせて森林の整備その他林業の振興との関連をも定めるものとする。
4 市町村は、第一項の規定により農業振興地域整備計画を定めようとするときは、政令で定めるところにより、当該農業振興地域整備計画のうち第二項第一号に掲げる事項に係るもの(以下「農用地利用計画」という。)について、都道府県知事に協議し、その同意を得なければならない。

農地法
(農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限)
第五条 農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。次項及び第四項において同じ。)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 国又は都道府県等が、前条第一項第二号の農林水産省令で定める施設の用に供するため、これらの権利を取得する場合
二 農地又は採草放牧地を農地中間管理事業の推進に関する法律第十八条第七項の規定による公告があつた農用地利用集積等促進計画に定める利用目的に供するため当該農用地利用集積等促進計画の定めるところによつて同条第一項の権利が設定され、又は移転される場合
三 農地又は採草放牧地を特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画に定める利用目的に供するため当該所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第二条第三項第三号の権利が設定され、又は移転される場合
四 農地又は採草放牧地を農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画に定める利用目的に供するため当該所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第五条十項の権利が設定され、又は移転される場合

五 土地収用法その他の法律によつて農地若しくは採草放牧地又はこれらに関する権利が収用され、又は使用される場合

六 前条第一項第七号に規定する市街化区域内にある農地又は採草放牧地につき、政令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て、農地及び採草放牧地以外のものにするためこれらの権利を取得する場合

七 その他農林水産省令で定める場合

2 前項の許可は、次の各号のいずれかに該当する場合には、することができない。ただし、第一号及び第二号に掲げる場合において、土地収用法第二十六条第一項の規定による告示に係る事業の用に供するため第三条第一項本文に掲げる権利を取得しようとするとき、第一号イに掲げる農地又は採草放牧地につき農用地利用計画において指定された用途に供するためこれらの権利を取得しようとするときその他政令で定める相当の事由があるときは、この限りでない。

一 次に掲げる農地又は採草放牧地につき第三条第一項本文に掲げる権利を取得しようとする場合

イ 農用地区域内にある農地又は採草放牧地

ロ イに掲げる農地又は採草放牧地以外の農地又は採草放牧地で、集団的に存在する農地又は採草放牧地その他の良好な営農条件を備えている農地又は採草放牧地として政令で定めるもの(市街化調整区域内にある政令で定める農地又は採草放牧地以外の農地又は採草放牧地にあつては、次に掲げる農地又は採草放牧地を除く。)

(1) 市街地の区域内又は市街地化の傾向が著しい区域内にある農地又は採草放牧地で政令で定めるもの

(2) (1)の区域に近接する区域その他市街地化が見込まれる区域内にある農地又は採草放牧地で政令で定めるもの

二 前号イ及びロに掲げる農地(同号ロ(1)に掲げる農地を含む。)以外の農地を農地以外のものにするため第三条第一項本文に掲げる権利を取得しようとする場合又は同号イ及びロに掲げる採草放牧地(同号ロ(1)に掲げる採草放牧地を含む。)以外の採草放牧地を採草放牧地以外のものにするためこれらの権利を取得しようとする場合において、申請に係る農地又は採草放牧地に代えて周辺の他の土地を供することにより当該申請に係る事業の目的を達成することができると認められるとき。

三 第三条第一項本文に掲げる権利を取得しようとする者に申請に係る農地を農地以外のものにする行為又は申請に係る採草放牧地を採草放牧地以外のものにする行為を行うために必要な資力及び信用があると認められないこと、申請に係る農地を農地以外のものにする行為又は申請に係る採草放牧地を採草放牧地以外のものにする行為の妨げとなる権利を有する者の同意を得ていないことその他農林水産省令で定める事由により、申請に係る農地又は採草放牧地の全てを住宅の用、事業の用に供する施設の用その他の当該申請に係る用途に供することが確実と認められない場合

四 申請に係る農地を農地以外のものにすること又は申請に係る採草放牧地を採草放牧地以外のものにすることにより、土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがあると認められる場合、農業用用排水施設の有する機能に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合その他の周辺の農地又は採草放牧地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがあると認められる場合

五 申請に係る農地を農地以外のものにすること又は申請に係る採草放牧地を採草放牧地以外のものにすることにより、地域における効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対する農地又は採草放牧地の利用の集積に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合その他の地域における農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる場合として政令で定める場合

六 仮設工作物の設置その他の一時的な利用に供するため所有権を取得しようとする場合

七 仮設工作物の設置その他の一時的な利用に供するため、農地につき所有権以外の第三条第一項本文に掲げる権利を取得しようとする場合においてその利用に供された後にその土地が耕作の目的に供されることが確実と認められないとき、又は採草放牧地につきこれらの権利を取得しようとする場合においてその利用に供された後にその土地が耕作の目的若しくは主として耕作若しくは養畜の事業のための採草若しくは家畜の放牧の目的に供されることが確実と認められないとき。

八 農地を採草放牧地にするため第三条第一項本文に掲げる権利を取得しようとする場合において、同条第二項の規定により同条第一項の許可をすることができない場合に該当すると認められるとき。

3 第三条第五項及び第六項並びに前条第二項から第五項までの規定は、第一項の場合に準用する。この場合において、同条第四項中「申請書が」とあるのは「申請書が、農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。)にするためこれらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を取得する行為であつて、」と、「農地を農地以外のものにする行為」とあるのは「農地又はその農地と併せて採草放牧地についてこれらの権利を取得するもの」と読み替えるものとする。

4 国又は都道府県等が、農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のものにするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を取得しようとする場合(第一項各号のいずれかに該当する場合を除く。)においては、国又は都道府県等と都道府県知事等との協議が成立することをもつて第一項の許可があつたものとみなす。

5 前条第九項及び第十項の規定は、都道府県知事等が前項の協議を成立させようとする場合について準用する。この場合において、同条第十項中「準用する」とあるのは、「準用する。この場合において、第四項中「申請書が」とあるのは「申請書が、農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。)にするためこれらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を取得する行為であつて、」と、「農地を農地以外のものにする行為」とあるのは「農地又はその農地と併せて採草放牧地についてこれらの権利を取得するもの」と読み替えるものとする」と読み替えるものとする。

 

民法

(条件が成就した場合の効果)

第百二十七条 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。

2 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。

3 当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。

 

(不能条件)

第百三十三条 不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。

2 不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする。