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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

ゴルフ場の建設は、ゴルフ場開場後も当分の間は債務超過の状態が継続するのが通常であるといえ、本格的に収益の計上を開始する三年ないし五年後の状況を見なければ、債務超過の状況が相当期間継続し、当該債務の弁済が不可能であるか否か(法人税基本通達九-六-一)及び債務者の資産状況、支払能力等からみて、債権の全額が回収できないものか否か(同通達九-六-二)は明らかにならないというべきであるとされた事例(


法人税更正処分等取消請求控訴事件
【事件番号】    東京高等裁判所判決/平成5年(行コ)第94号
【判決日付】    平成7年5月30日
【判示事項】    (1) ゴルフ場の建設は、ゴルフ場開場後も当分の間は債務超過の状態が継続するのが通常であるといえ、本格的に収益の計上を開始する三年ないし五年後の状況を見なければ、債務超過の状況が相当期間継続し、当該債務の弁済が不可能であるか否か(法人税基本通達九-六-一)及び債務者の資産状況、支払能力等からみて、債権の全額が回収できないものか否か(同通達九-六-二)は明らかにならないというべきであるとされた事例(原審判決引用)
          (2) 法人税基本通達九-四-一(子会社等を整理する場合の損失負担)の趣旨(原審判決引用)
          (3) 青色申告法人にかかる更正に理由附記を要する根拠
          (4) 更正の通知書に記載された更正理由は、法人税法一三〇条(青色申告書に係る更正)二項の要求する更正理由として不備があり、更正に理由付記する趣旨に沿った十分な記載がされていないとの控訴人会社の主張が、更正理由の記載内容は、課税庁の判断を抑制する趣旨からも、処分の相手方たる控訴人会社に不服申立ての便宜を与える趣旨からも法人税法所定の更正理由の記載として十分であるとして排斥された事例
          (5) 法人税基本通達九-六-一(貸金等の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ)によれば、債権額が貸倒れとして損金の額に算入されるためには、債務超過の状態が相当期間継続し、その貸金等の弁済を受けることができないと認められることが必要であるから、特定時点の計算書類の数額が債務超過の状態を示していることのみをもって、直ちに同規定に該当するということはできないとされた事例
          (6) 法人税基本通達九-六-二(回収不能の貸金等の貸倒れ)にいう債務者の資産状況の判断にあたっては、特定時点の計算書類の数額はひとつの判断資料になるが、それが決定的な意味を持つものではないと解され、同規定の支払能力を判断するについても、その財産のみならず、信用や労力を考慮すべきであるとされた事例
          (7) 債務超過の状況が相当期間継続し、当該債務の弁済が不能であるとし、あるいは、資産状況、支払能力等からみて、債権金額の回収不能が明らかであるということはできず、また債権放棄に相当な理由があるということもできないから、本件債権放棄にかかる金額を寄付金と認定したことは相当であるとされた事例
【判決要旨】    (1) 省略
          (2) 法人税基本通達九-四-一は、子会社の整理等の場合において、親会社が株主有限責任の原理を理由にその責任を回避することが社会的に許されないという状況が生じる場合があり(例えば、子会社の解散にあたり、その雇用者の退職金の支給できない状態であれば、親会社が退職金の源資を援助しなければならない状況が生じうる。)、その責任を果たすために親会社が損失の負担(右の例でいえば、退職金の源資の援助がこれにあたる。)をしたとすれば、これをもって、任意の、事実上の必要と離れて行われる単純な贈与等とは同視できないから、親会社自らが生き残るために必要不可欠なものとして負担した損失については、それが今後より大きな損失の生ずることを回避するためにやむを得ず行われたものであり、それが社会通念上も妥当なものとして是認されるような事情にあるときは、これを寄付金の額に該当しないものとするのである。
          (3) 法人税法一三〇条二項が青色申告に係る法人税について更正をする場合には更正通知書に更正の理由を附記すべきものとしているのは、同法が、青色申告制度を採用し、青色申告にかかる所得の計算については、それが法定の帳簿組織による正当な記載に基づくものである以上、その帳簿の記載を無視して更正されることがないことを納税者に保障した趣旨にかんがみ、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える趣旨に出たものというべきである(最高裁判所昭和六〇年四月二三日判決、民集三九巻三号八五〇頁)。
          (4)~(7) 省略
【掲載誌】     税務訴訟資料209号940頁


法人税法33,22,37
第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則
第二十二条 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。
2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。
3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
4 第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。
5 第二項又は第三項に規定する資本等取引とは、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引並びに法人が行う利益又は剰余金の分配(資産の流動化に関する法律第百十五条第一項(中間配当)に規定する金銭の分配を含む。)及び残余財産の分配又は引渡しをいう。

第二目 資産の評価損
第三十三条 内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
2 内国法人の有する資産につき、災害による著しい損傷により当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなつたことその他の政令で定める事実が生じた場合において、その内国法人が当該資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、その減額した部分の金額のうち、その評価換えの直前の当該資産の帳簿価額とその評価換えをした日の属する事業年度終了の時における当該資産の価額との差額に達するまでの金額は、前項の規定にかかわらず、その評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
3 内国法人がその有する資産につき更生計画認可の決定があつたことにより会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定に従つて行う評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、第一項の規定にかかわらず、その評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
4 内国法人について再生計画認可の決定があつたことその他これに準ずる政令で定める事実が生じた場合において、その内国法人がその有する資産の価額につき政令で定める評定を行つているときは、その資産(評価損の計上に適しないものとして政令で定めるものを除く。)の評価損の額として政令で定める金額は、第一項の規定にかかわらず、これらの事実が生じた日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
5 前三項の内国法人がこれらの内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人で政令で定めるものの株式又は出資を有する場合における当該株式又は出資及びこれらの規定の内国法人が通算法人である場合におけるこれらの内国法人が有する他の通算法人(第六十四条の五(損益通算)の規定の適用を受けない法人として政令で定める法人及び通算親法人を除く。)の株式又は出資については、前三項の規定は、適用しない。
6 第一項の規定の適用があつた場合において、同項の評価換えにより減額された金額を損金の額に算入されなかつた資産については、その評価換えをした日の属する事業年度以後の各事業年度の所得の金額の計算上、当該資産の帳簿価額は、その減額がされなかつたものとみなす。
7 第四項の規定は、確定申告書に同項に規定する評価損の額として政令で定める金額の損金算入に関する明細(次項において「評価損明細」という。)の記載があり、かつ、財務省令で定める書類(次項において「評価損関係書類」という。)の添付がある場合(第二十五条第三項(資産の評価益)に規定する資産につき同項に規定する評価益の額として政令で定める金額がある場合(次項において「評価益がある場合」という。)には、同条第六項に規定する評価益明細(次項において「評価益明細」という。)の記載及び同条第六項に規定する評価益関係書類(次項において「評価益関係書類」という。)の添付がある場合に限る。)に限り、適用する。
8 税務署長は、評価損明細(評価益がある場合には、評価損明細又は評価益明細)の記載又は評価損関係書類(評価益がある場合には、評価損関係書類又は評価益関係書類)の添付がない確定申告書の提出があつた場合においても、当該記載又は当該添付がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、第四項の規定を適用することができる。
9 前三項に定めるもののほか、第一項から第五項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

(寄附金の損金不算入)
第三十七条 内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(次項の規定の適用を受ける寄附金の額を除く。)の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
2 内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額(第二十五条の二(受贈益)の規定の適用がないものとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入される同条第二項に規定する受贈益の額に対応するものに限る。)は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
3 第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに次の各号に掲げる寄附金の額があるときは、当該各号に掲げる寄附金の額の合計額は、同項に規定する寄附金の額の合計額に算入しない。
一 国又は地方公共団体(港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)の規定による港務局を含む。)に対する寄附金(その寄附をした者がその寄附によつて設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものを除く。)の額
二 公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人又は団体に対する寄附金(当該法人の設立のためにされる寄附金その他の当該法人の設立前においてされる寄附金で政令で定めるものを含む。)のうち、次に掲げる要件を満たすと認められるものとして政令で定めるところにより財務大臣が指定したものの額
イ 広く一般に募集されること。
ロ 教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するための支出で緊急を要するものに充てられることが確実であること。
4 第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに、公共法人、公益法人等(別表第二に掲げる一般社団法人、一般財団法人及び労働者協同組合を除く。以下この項及び次項において同じ。)その他特別の法律により設立された法人のうち、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものに対する当該法人の主たる目的である業務に関連する寄附金(出資に関する業務に充てられることが明らかなもの及び前項各号に規定する寄附金に該当するものを除く。)の額があるときは、当該寄附金の額の合計額(当該合計額が当該事業年度終了の時の資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える場合には、当該計算した金額に相当する金額)は、第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入しない。ただし、公益法人等が支出した寄附金の額については、この限りでない。
5 公益法人等がその収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業のために支出した金額(公益社団法人又は公益財団法人にあつては、その収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業で公益に関する事業として政令で定める事業に該当するもののために支出した金額)は、その収益事業に係る寄附金の額とみなして、第一項の規定を適用する。ただし、事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることにより支出した金額については、この限りでない。
6 内国法人が特定公益信託(公益信託ニ関スル法律(大正十一年法律第六十二号)第一条(公益信託)に規定する公益信託で信託の終了の時における信託財産がその信託財産に係る信託の委託者に帰属しないこと及びその信託事務の実施につき政令で定める要件を満たすものであることについて政令で定めるところにより証明がされたものをいう。)の信託財産とするために支出した金銭の額は、寄附金の額とみなして第一項、第四項、第九項及び第十項の規定を適用する。この場合において、第四項中「)の額」とあるのは、「)の額(第六項に規定する特定公益信託のうち、その目的が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものの信託財産とするために支出した金銭の額を含む。)」とするほか、この項の規定の適用を受けるための手続に関し必要な事項は、政令で定める。
7 前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。
8 内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。
9 第三項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない第三項各号に掲げる寄附金の額及び当該寄附金の明細を記載した書類の添付がある場合に限り、第四項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない第四項に規定する寄附金の額及び当該寄附金の明細を記載した書類の添付があり、かつ、当該書類に記載された寄附金が同項に規定する寄附金に該当することを証する書類として財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用する。この場合において、第三項又は第四項の規定により第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。
10 税務署長は、第四項の規定により第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されないこととなる金額の全部又は一部につき前項に規定する財務省令で定める書類の保存がない場合においても、その書類の保存がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その書類の保存がなかつた金額につき第四項の規定を適用することができる。
11 財務大臣は、第三項第二号の指定をしたときは、これを告示する。
12 第五項から前項までに定めるもののほか、第一項から第四項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。



 

第3章 役員賠償責任保険の規定の新設

1,改正

役員等のために締結される保険契約についても明文で新たに規定が設けられました。改正法430条の3がこれについて規定しています。

 

役員等のために締結される保険契約(役員等賠償責任保険契約)とは、いわゆるD&O保険のことであり、 会社が保険者との間で締結する保険契約のうち、役員等がその職務執行に関して責任を負うこと、または責任の追及にかかる請求を受けることに よって生ずることのある損害を、保険者が補填することを約するものであって、役員等を被保険者とするものをいいます(改正法430条の3第1項)。

役員が職務執行の結果、会社や第三者に対して責任を負うことになったような場合に、保険者が役員に生じた責任を補填するものです。

 

旧法下でも、役員等のために会社が保険契約を、保険料について会社負担で締結することは行われていました。会社役員賠償責任保険(D&O保険)は、優秀な人材を確保し、役員が過度の萎縮なく職務遂行するための保険として、広く普及しています。

役員等が損害賠償責任を負うのは、損害填補機能・違法抑止機能の2つがあり、保険は損害填補を阻害するものではないこと、 保険が犯罪行為や違法行為を認識しながら行為を行った場合は補償の対象にならないこと、から、双方の機能を害せず、会社負担で D&O保険を締結することは有効であるとされていました。

一方で、役員の利益となる保険の保険料を会社が負担することが利益相反取引にならないかなどから、取締役会の承認、社外取締役の承認等で一定の合理性・適法性の確保を行うべきであるとされていました。

今回の改正ではこのような解釈にゆだねられていた点について、明文で規定が設けられました(改正法第430条の3)。

 

2,株主総会の決議など

会社は、役員等賠償責任保険契約の内容を決定するには、株主総会の決議によらなければならないとされました(改正法430条の3第2項)。

取締役会設置会社の場合には取締役会により、役員等賠償責任保険契約の内容を決定することができます。

 

また、役員等賠償責任保険契約の締結に際し、356条1項2項、423条3項の利益相反の規定や民法108条の自己代理の規定の適用は排除されています(改正法430条の3第2項、第3項)。

 

3,適用除外

なお、役員等賠償責任保険契約からは、当該保険契約を締結することにより被保険者である役員等の職務の執行の適正性が著しく損なわれるおそれがないものとして法務省令で定めるものは除かれることになります(改正法430条の3第1項かっこ書)。

 

具体的には、役員等賠償責任保険契約の内容を決定するのに、株主総会(取締役会設置会社の場合は取締役会)の決議が必要とされました。なお、「役員等賠償責任保険契約」は、以下のように定義されており、括弧内の法務省令では、生産物賠償責任保険(PL保険)や企業総合賠償責任保険(CGL保険)といったタイプの保険(主に法人に生じる損害を填補する保険で役員は付随的に被保険者になっている性質のもの)、自動車賠償責任保険や海外旅行保険といったタイプの保険(役員自身に生じる損害を填補するものだが、役員の職務執行の適正性が阻害される懸念が小さいもの)が指定されています(具体的な規定は改正施行規則第115条の2)。このような法務省令の除外規定によって、D&O保険に相当するものが「役員等賠償責任保険契約」に該当します。

 

【改正法第430条の3第1項抜粋】

保険者との間で締結する保険契約のうち役員等がその職務の執行に関し責任を負うこと又は当該責任の追及に係る請求を受けることによって生ずることのある損害を保険者が塡補することを約するものであって、役員等を被保険者とするもの(当該保険契約を締結することにより被保険者である役員等の職務の執行の適正性が著しく損なわれるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。第三項ただし書において「役員等賠償責任保険契約」という。)

 

また、「保険契約のうち役員等がその職務の執行に関し責任を負うこと又は当該責任の追及に係る請求を受けることによって生ずることのある損害を保険者が塡補することを約するものであって、役員等を被保険者とするもの」については、利益相反の規制は適用しないものとされました。新たな規律の対象となった「役員等賠償責任保険契約」のみならず、法務省令でその定義から除外されるPL保険なども、利益相反の規制の対象外となります。前者については新たな規律でカバーされますし、後者については類型的な利益相反性の低さや実務上の煩雑さの回避を考慮して、規制対象外であることが明記されました。

 

4,事業報告の記載事項

公開会社については、役員等賠償責任保険契約に関する一定の事項が事業報告の記載事項となります(改正施行規則第119条第2号の2、第121条の2)。

 

信託銀行において,法的な義務を負担するのではないにもかかわらず,相続発生時には,売主において,購入価格で買い取るという制度があると説明をしながら,相続発生時に売主に購入価格で買い取らせることをしなかったのは,説明義務に反するとされた事例

 

東京地方裁判所判決/平成12年(ワ)第11810号

平成14年7月26日

損害賠償請求事件

【判示事項】    1 信託銀行から不動産共有持分の購入資金を借り入れて,不動産会社から共有持分化された事業建物の持分権を購入し,これを11年間信託銀行に信託するという仕組みの不動産小口化商品について,信託銀行は,同商品は不動産投資であることが明らかであるから,元本保証がないことや信託終了時に地価が下落する可能性があることについて,説明する義務はない

2 信託銀行において,法的な義務を負担するのではないにもかかわらず,相続発生時には,売主において,購入価格で買い取るという制度があると説明をしながら,相続発生時に売主に購入価格で買い取らせることをしなかったのは,説明義務に反するとされた事例

3 信託銀行において,不動産市況が低迷したときに,上記不動産小口化商品の顧客の損害拡大を防止する義務は負わないが,委託者兼受益者を平等に扱う義務を負うから,受益権の中途売却を認め,買主を紹介するようになって以降は,すべての委託者兼受益者について,受益権の譲渡を行う機会を与えなければ平等義務に反する

【参照条文】    民法415

          民法709

          信託法

【掲載誌】     判例タイムズ1212号145頁

 

民法

(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

 

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

更生債権届出期間満了後に相殺適状となる更生債権を更生担保権として扱うことの可否(消極)

 

東京高等裁判所判決/平成14年(ネ)第990号

平成14年9月25日

更生担保権確定等請求控訴事件

【判示事項】    更生債権届出期間満了後に相殺適状となる更生債権を更生担保権として扱うことの可否(消極)

【判決要旨】    会社更生手続における債権届出期間満了後に、まず自働債権の弁済期が、引き続いて受働債権の弁済期が到来し、相殺適状の発生が予定され、自働債権者たる更生債権者が受働債権との相殺期待を有しているとしても、そのことをもって当該更生債権者を更生担保権者として扱うことはできない。

【参照条文】    金融機関等の更生手続の特例等に関する法律160の46-1

          金融機関等の更生手続の特例等に関する法律160の64

          会社更生法123-1

          会社更生法162-1

【掲載誌】     金融法務事情1662号67頁

 

金融機関等の更生手続の特例等に関する法律

(更生債権等の届出)

第二百四十八条 会社更生法第百三十八条及び第百三十九条の規定は、相互会社の更生手続における更生債権等の届出について準用する。この場合において、同法第百三十八条第一項中「第四十二条第一項」とあるのは「更生特例法第百九十六条において準用する第四十二条第一項」と、同項第一号中「原因」とあるのは「原因(更生債権が保険契約に係る債権である場合において、当該保険契約が保険契約者を社員とするものであるときは、その旨を含む。)」と、同項第二号中「又は約定劣後更生債権」とあるのは「、約定劣後更生債権又は基金に係る更生債権」と読み替えるものとする。

 

会社更生法

(更生債権等の届出)

第百三十八条 更生手続に参加しようとする更生債権者は、債権届出期間(第四十二条第一項の規定により定められた更生債権等の届出をすべき期間をいう。)内に、次に掲げる事項を裁判所に届け出なければならない。

一 各更生債権の内容及び原因

二 一般の優先権がある債権又は約定劣後更生債権であるときは、その旨

三 各更生債権についての議決権の額

四 前三号に掲げるもののほか、最高裁判所規則で定める事項

2 更生手続に参加しようとする更生担保権者は、前項に規定する債権届出期間内に、次に掲げる事項を裁判所に届け出なければならない。

一 各更生担保権の内容及び原因

二 担保権の目的である財産及びその価額

三 各更生担保権についての議決権の額

四 前三号に掲げるもののほか、最高裁判所規則で定める事項

(債権届出期間経過後の届出等)

第百三十九条 更生債権者等がその責めに帰することができない事由によって前条第一項に規定する債権届出期間内に更生債権等の届出をすることができなかった場合には、その事由が消滅した後一月以内に限り、その届出をすることができる。

2 前項に規定する一月の期間は、伸長し、又は短縮することができない。

3 前条第一項に規定する債権届出期間の経過後に生じた更生債権等については、その権利の発生した後一月の不変期間内に、その届出をしなければならない。

4 第一項及び第三項の届出は、更生計画案を決議に付する旨の決定がされた後は、することができない。

5 第一項、第二項及び前項の規定は、更生債権者等が、その責めに帰することができない事由によって、届け出た事項について他の更生債権者等の利益を害すべき変更を加える場合について準用する。

 

被相続人が相続開始直前に、借入金により第一会社を設立し、その会社に出資した後、右出資のすべてを安価に現物出資する方法により第二会社を設立した事例において、純資産価額方式により出資の評価をするに当たり、法人税額等相当額を控除する必要がないなどとした原審の判断は正当として是認できるとされた事例


相続税更正処分等取消請求上告事件
【事件番号】    最高裁判所第3小法廷判決/平成12年(行ツ)第326号
【判決日付】    平成14年10月29日
【判示事項】    被相続人が相続開始直前に、借入金により第一会社を設立し、その会社に出資した後、右出資のすべてを安価に現物出資する方法により第二会社を設立した事例において、純資産価額方式により出資の評価をするに当たり、法人税額等相当額を控除する必要がないなどとした原審の判断は正当として是認できるとされた事例
【判決要旨】    省略
【掲載誌】     税務訴訟資料252号順号9225

相続税法
(評価の原則)
第二十二条 この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。

 

信託設定が遺留分制度を潜脱する意図でなされたものであり公序良俗に反して無効であるとされた事例

 

 

共有権確認等請求事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/平成27年(ワ)第24934号

【判決日付】      平成30年9月12日

【判示事項】      1 信託設定が遺留分制度を潜脱する意図でなされたものであり公序良俗に反して無効であるとされた事例

             2 信託における遺留分減殺請求は受益権を対象とすべきであるとされた事例

【判決要旨】      1 本件信託のうち経済的利益の分配が想定されない不動産を信託財産とした部分は、遺留分制度を潜脱する意図で信託制度を利用したものであって公序良俗に反して無効である。

             2 信託契約による信託財産の移転は形式的な所有権移転にすぎないため、信託においては受益権を遺留分減殺の対象とすべきである。

【参照条文】      信託法91

             民法1031

【掲載誌】        金融法務事情2104号78頁

             登記情報687号64頁

 

信託法

(受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例)

第九十一条 受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。

 

民法

(遺留分侵害額の請求)

第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

2 遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。

一 遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額

二 第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額

三 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額

 

第2章 会社補償に関する規定の新設

1,改正の背景

優秀な役員の人材を確保し、役員の職務執行の過度の萎縮を避けるため、会社が役員との契約によって、責任追及の訴えの対応費用等を補償することを約したり、会社が保険料を負担して役員賠償責任保険に加入することが実務上行われています。これらについては、会社と取締役の利益が相反する側面もあり、利益相反取引の規律を適用すべきでないか等、会社法上の位置づけがクリアでありませんでした 。

 

今回の改正で、従前の利益相反取引の規制とは別枠で、上記の会社補償や役員賠償責任保険について、利益相反取引に準じて取締役会(取締役会非設置会社では株主総会)の承認を要する等の規定が新設され、規律が明確化されます。

 

2,会社補償の規律整備

新たな規律の対象となる「補償契約」とは、会社が役員に以下の金額の全部又は一部を補償する契約となります(改正法第430条の2第1項)。

 

職務執行に関し、法令違反を疑われ、又は責任追及の請求を受けた場合における、その対応費用(弁護士費用など)

職務執行に関し、第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、役員が支払う賠償金及び和解金

後述のとおり、「補償契約」に該当する場合、「利益相反」の規制は適用されない建付となっていることから、「補償契約」の範囲は役員を過剰に利さない一定の類型のものに限られます。例えば、上記2.では、「会社に生じた損害」を賠償する責任を負う場合は含まれていません。これを含めてしまうと、補償契約のスキームを利用して役員の会社に対する賠償責任を事実上免除することが可能になってしまい、会社法の別の条文で責任免除に厳格な要件を置いている意味がなくなってしまうためです。

 

補償契約を締結する場合、その内容について取締役会(取締役会非設置会社では株主総会)で承認を得る必要があります。一方で、補償契約については会社法の利益相反の規律(会社法第356条第1項、第365条第2項)は適用されません(改正法第430条の2第6項)。もし利益相反が適用されてしまうと、それに関連して生じた会社の損害について、利益相反取引の当事者である役員が自己の無過失を主張できない(会社法第428条第1項)、責任の一部免除や責任限定契約の適用を受けられない(同条第2項)といった厳しい規律を受けることになってしまうため、適用除外を明確化したものです。

 

制度の濫用を防ぐため、補償契約を締結しても、以下の金額については役員に補償することはできないものとされます(改正法第430条の2第2項)。2.については、損害を受けた第三者に対しては役員と会社が連帯して賠償責任を負うが、100%役員の職務懈怠に起因する問題であるため役員と会社との内部関係では役員が100%会社に対して責任を負うようなケースで、役員が第三者に賠償金を支払った後で補償契約によりそれを会社が補填してしまうのは、制度趣旨を逸脱してしまうため禁止されていると考えられます。

 

通常要する費用の額を超える対応費用(不当に高額な弁護士費用など)

会社が第三者に損害賠償した場合に、役員が責任を負うべき分として会社から役員に求償できる部分の金額

役員の悪意又は重大な過失により役員が第三者に対して負う賠償金及び和解金

また、補償契約に基づき紛争対応費用を補償した会社が、役員が自己若しくは第三者の不正な利益を図り、又は当該会社に損害を加える目的で職務を執行したことを知ったときは、役員に対し、補償した金額に相当する金銭を返還することを請求することができるものとされます(改正法第430条の2第3項)。上述のとおり、役員の重過失等がある事案での賠償金・和解金は、そもそも補償できないとされていますが、対応費用に関しては、第三者との紛争開始時から発生するもので、紛争が終わってみないと役員に重過失等があったかかどうか判断が難しいことから、さしあたりその点は問わずに対応費用を補償することはOKとしつつ、事後的に役員の悪質性が判明した場合には、補償した金額の返還を請求できるという建付になっています。

 

公開会社については、補償契約に関する一定の事項が事業報告の記載事項となります(改正施行規則第121条第3号の2)。

 

3, 会社補償

会社補償の制度は、改正法430条の2で新設された制度です。

会社法上、 「補償契約」とは、 役員等に対して改正法430条の2第1項各号に掲げる費用の全部または一部を 当該会社が補償することを約する契約のことをいいます。

 

補償の対象になるのは以下の2種の費用・損害です。

①当該役員等が、その職務の執行に関し、 法令の規定に違反したことが疑われ、又は責任の追及に係る請求を受けたことに対処するために支出する費用

 ②当該役員等が、その職務の執行に関し、第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合であって、

ⅰ当該損害を当該役員等が賠償することにより生ずる損失

ⅱ当該損害の賠償に関する紛争について当事者間に和解が成立したときは、当該役員等が当該和解に基づく金銭を支払うことにより生ずる損失

 

①は会社法423条の責任追及への対処の費用、例えば責任追及の訴え等の対応に必要な弁護士費用、②は会社法429条の責任によって生じる損失、などがあげられることになります。

 

なお、①の費用については、当該役員などが、自己もしくは第三者の不正な利益を図り、または会社に損害を与える目的で職務執行をしていたことを会社が 事後的に知った場合には、補償した金額に相当する部分の返還を請求できるとしています(改正法430条の2第3項)。

 

4,利益相反取引、自己代理など

今回の改正において、 会社は役員等と補償契約を締結し、役員等に生じた損害の一部または全部を保証することが明文で認められました。会社は役員等と補償契約を締結するには、株主総会の決議を得なければなりません。取締役会設置会社の場合は、取締役会の決定で締結することができます。

なお、役員と会社の取引は利益相反取引、自己代理に形式的に該当することが考えられますが、改正法430条の2第6項、7項はこれらの規定の適用を排除しています。

 

5,補償契約の補償の対象には限界があること

ただし、補償契約の補償の対象には限界があることも明記されています。改正法432条の2第2項は、以下の3つの費用・損害について、補償契約を締結して いた場合でも会社からの補償を受けられないことを明記しています。

 

・前述の①の費用のうち、通常要する費用の額を超える部分は補償することができない(改正法430条の2第2項1号)

 

・前述の②の損害のうち、役員等が第三者に生じた損害を賠償するとすれば、当該役員等が会社に対して423条1項の責任を負う場合についてはその部分については補償の対象とならない(第三者への損害賠償の基となる行為によって会社に対しても責任を負うような場合には、その部分は補償の対象にならない)

 

・②の責任のうち、役員等が職務を行うにあたって悪意・重過失があった場合には②の責任に関する損害のすべてについて補償の対象とならない

 

このように、補償契約を締結していても、すべての費用・責任が補償対象になるわけではないので注意が必要です。

 

取締役会設置会社が補償契約に基づく補償を行った場合、 補償を実行した取締役、および補償を受けた取締役は、遅滞なく補償についての 重要な事実を取締役会に報告しなければならないとしています(改正法430条の2第4項)。

 

もと入会林であった山林を森林組合へ現物出資した行為が錯誤により無効であるとの主張が排斥された事例

横浜地方裁判所小田原支部判決/昭和56年(ワ)第443号、昭和57年(ワ)第83号、昭和63年(ワ)第248号
平成元年2月14日
各共有者全員持分全部移転登記抹消登記手続請求事件
【判示事項】    もと入会林であった山林を森林組合へ現物出資した行為が錯誤により無効であるとの主張が排斥された事例
【参照条文】    民法95
          民法263
【掲載誌】     判例時報1333号134頁

民法
(錯誤)
第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

(共有の性質を有する入会権)
第二百六十三条 共有の性質を有する入会権については、各地方の慣習に従うほか、この節の規定を適用する。

 

外国人である控訴人が,被控訴人の設置する市立大学の講師として任期を定めて任用され,同任期後更新されないで退職したところ,控訴人は被控訴人に対し,退職手当に関する条例に基づき支給された退職金につき,整理退職の場合の金額が支給されるべきところ普通退職の場合の金額しか支払われなかったと主張し,その差額金の支払を求めた控訴事案

 

名古屋高等裁判所/平成13年(行コ)第49号

平成14年5月24日

退職手当差額金請求控訴

【判示事項】    外国人である控訴人が,被控訴人の設置する市立大学の講師として任期を定めて任用され,同任期後更新されないで退職したところ,控訴人は被控訴人に対し,退職手当に関する条例に基づき支給された退職金につき,整理退職の場合の金額が支給されるべきところ普通退職の場合の金額しか支払われなかったと主張し,その差額金の支払を求めた控訴事案につき、控訴人の請求は理由がなく,これを棄却した原判決を相当とした事例

【掲載誌】     LLI/DB 判例秘書登載

債務引受と財産引受との関係

 

 

              不当利得返還請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和35年(オ)第675号

【判決日付】      昭和38年12月24日

【判示事項】      1、債務引受と財産引受との関係

             2、開業準備行為と発起人の権限

【判決要旨】      1、発起人が会社の成立を条件としてなした法律行為のうち、単純な債務引受のごときは財産引受にあたらないが、積極消極両財産を含む営業財産を一括して譲り受ける契約は、財産引受にあたる。

             2、発起人は、会社設立自体に必要な行為のほかは、開業準備行為といえども原則としてこれをなしえず、ただ、原始定款に記載されその他法定要件を充たした財産引受のみを例外的になしうるものと解すべきである。

【参照条文】      商法168-1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集17巻12号1744頁

 

会社法

第二十八条 株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第二十六条第一項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。

一 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合にあっては、設立時発行株式の種類及び種類ごとの数。第三十二条第一項第一号において同じ。)

二 株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称

三 株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称

四 株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)

 

(定款の記載又は記録事項に関する検査役の選任)

第三十三条1項 発起人は、定款に第二十八条各号に掲げる事項についての記載又は記録があるときは、第三十条第一項の公証人の認証の後遅滞なく、当該事項を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない。

 

債務引受とは、債務の契約による引受け。

ある人が負っている債務を別の人(引受人)が債権者との合意によって承継することをいう。

 

開業準備行為

「会社設立自体に必要な行為」は、成立後の会社との関係でも有効であると判示されています。「会社設立自体に必要な行為」とは、例えば、定款の作成や設立の登記手続を指します。

 

次に、上記判例は、「開業準備行為」は会社との関係では無効であると判示しています。「開業準備行為」とは、成立後に予定する事業を円滑に開始するための準備行為を指します。例えば、会社の成立前に、会社の事業のための従業員を雇い入れるとか、会社の宣伝広告活動をするなどのことです。したがって、判例に照らすと、会社成立前に従業員を雇い入れたり、宣伝広告活動をしたりしても、その契約は「開業準備行為」に該当するため、成立後の会社との関係では無効(つまり、契約の相手方は代金等を会社に請求できない)ということになります。

 

ただ、上記判例は、「開業準備行為」に該当するものであっても、「財産引受け」(会社成立を条件として財産を購入するという契約)は、会社法上の厳格な要件(定款への記載及び検査役の調査)を満たすから、成立後の会社との関係でも有効であると判示しています。