信託設定が遺留分制度を潜脱する意図でなされたものであり公序良俗に反して無効であるとされた事例 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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信託設定が遺留分制度を潜脱する意図でなされたものであり公序良俗に反して無効であるとされた事例

 

 

共有権確認等請求事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/平成27年(ワ)第24934号

【判決日付】      平成30年9月12日

【判示事項】      1 信託設定が遺留分制度を潜脱する意図でなされたものであり公序良俗に反して無効であるとされた事例

             2 信託における遺留分減殺請求は受益権を対象とすべきであるとされた事例

【判決要旨】      1 本件信託のうち経済的利益の分配が想定されない不動産を信託財産とした部分は、遺留分制度を潜脱する意図で信託制度を利用したものであって公序良俗に反して無効である。

             2 信託契約による信託財産の移転は形式的な所有権移転にすぎないため、信託においては受益権を遺留分減殺の対象とすべきである。

【参照条文】      信託法91

             民法1031

【掲載誌】        金融法務事情2104号78頁

             登記情報687号64頁

 

信託法

(受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例)

第九十一条 受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。

 

民法

(遺留分侵害額の請求)

第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

2 遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。

一 遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額

二 第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額

三 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額