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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

債務不履行による損害賠償につき「失火ノ責任ニ関スル法律」の適用があるか

 

最2小判昭和30年3月25日 民集9巻3号385頁 判例タイムズ48号42頁

損害賠償請求事件

【判示事項】 債務不履行による損害賠償につき「失火ノ責任ニ関スル法律」の適用があるか

【判決要旨】 債務不履行による損害賠償につき「失火ノ責任ニ関スル法律」の適用はない。

【参照条文】 民法415

       失火ノ責任ニ関スル法律(明治32年法律第40号)

 

道法

(債務不履行による損害賠償)

第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

一 債務の履行が不能であるとき。

二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

 

失火ノ責任ニ関スル法律

民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス

 

土地売買契約の当事者双方から所有権移転登記手続についての代理を嘱託された司法書士が嘱託を拒んだことに正当な事由がないとされた事例

 

最高裁判所第3小法廷判決/平成15年(受)第709号

平成16年6月8日

損害賠償請求事件

【判示事項】    土地売買契約の当事者双方から所有権移転登記手続についての代理を嘱託された司法書士が嘱託を拒んだことに正当な事由がないとされた事例

【判決要旨】    土地売買契約の当事者双方から所有権移転登記手続についての代理を嘱託された司法書士が,当該土地につき払下げを登記原因として所有権移転登記を受けた会社から売主に対して真正な登記名義の回復を登記原因として所有権移転登記がされていること並びに上記会社と商号及び本店所在地を同じくする株式会社が時期を異にして2社存在した事実がうかがわれることのみを理由に,上記売買契約の決済日の当日になって,突然,当事者双方に対し,当該土地についての実体的所有関係を確定することができず,上記売買契約によって当該土地の所有権が買主に移転するとは限らない旨を述べ,上記嘱託を拒んだことには,正当な事由があるとはいえない。

【参照条文】    司法書士法(平成14年法律第33号による改正前のもの)8

          民法709

【掲載誌】     最高裁判所裁判集民事214号363頁

          裁判所時報1365号279頁

          判例タイムズ1159号130頁

          金融・商事判例1204号18頁

          判例時報1867号50頁

          金融法務事情1721号44頁

 

司法書士法

(依頼に応ずる義務)

第二十一条 司法書士は、正当な事由がある場合でなければ依頼(簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く。)を拒むことができない。

 

第2章 本人確認

 

最判昭和36年5月26日民集15巻5号1440頁

宅地建物取引業者は、直接の委託関係はなくても、業者の介入に信頼して取引するに至った第三者に対して、信義誠実を旨とし、権利者の真偽につき格別に注意する等の業務上の一般的注意義務がある。

上告趣意は、不動産取引業者は委託関係のない第三者に対してまで当然に業務上の義務を負うものではないとの見解を前提として原判示を攻撃するものである。しかし原判決は、必ずしも取引業者の注意義務を一般第三者のすべてに対して肯定したのではなく、上告人が不動産仲介業者として本件貸地を同業者Aに紹介したに止まらず、訴外Bを真実の地主Cであるとして被上告人に紹介面接させ、契約書にも立会人として署名捺印して、被上告人をして右Bを地主Cであると誤信させたこと等を確定した上で、不動産仲介業者は、直接の委託関係はなくても、これら業者の介入に信頼して取引をなすに至った第三者一般に対しても、信義誠実を旨とし、権利者の真偽につき格別に注意する等の業務上の一般的注意義務があるとしているのであって、右判断は正当である。

 控訴審である東京高判昭和32年11月29日民集15巻5号1450頁によれば、事実関係は、以下のとおりです。

(一) 訴外平野は、印鑑証明書等を偽造し前示他人の土地を賃貸して権利金名義の下に金員を扁取せんことを企て、先ず東京法務局杉並出張所において登記簿上右土地の所有者が山形市在住の尾関謙一郎であることを確かめ、右土地の登記簿謄本の下附を受け、次いで共謀者の一人である訴外某をして東京都杉並区長作成名義の尾関の印鑑証明書を偽造せしめ、更に右土地の周囲を杭で囲い尾関の所有なることを表示した上、右所有者尾関を装い昭和二十九年十月中旬頃不動産仲介業者である第一審被告伊藤に対し該土地の賃貸方の仲介を申込んだ。

 (二) 第一審被告伊藤は右申込にもとずき現場を見分し、且つ杉並登記所同税務事務所等において担保権賃借権等の設定のないことを確かめた上、同業者である第一審被告佐々木に紹介した。ところが第一審被告伊藤はその頃同業者である和光土地建物にも借主のあっせんを依頼した関係もあってその要請にもとずき、その使用人である近藤を伴い地主尾関の止宿先であるという東京都杉並区西荻窪の中村某方を探索訪問したところ、尾関なる者は居住していないとのことで、当時尾関が同所に居住している点について別に確証は得られなかった。

  (三) 一方その頃第一審原告から土地賃借の仲介の委託を受けた第一審被告佐々本は、昭和二十九年十一月二十日頃第一審原告と一諸に第一審被告伊藤の紹介で土地所有者尾関の氏名を詐称していた平野と面接会合した。その際第一審被告等は、右平野から尾関名義の印鑑証明書、勤務先桧社の身分証明書(以上いずれも偽造)、前示土地の登記簿謄本、現場図面の提示を受けたが、尾関が昭和二年に本件土地の所有権を取得した旨の登記簿の記載から推して同人を相当年配と想像していたのに、予期に反し四十歳位と見受けられたので代理人かと問いただしたところ、同人の幼少時代に同人名義で父から買って貰ったという巧妙な言逃れの返事があったのを軽信し、また前示土地所有者尾関の住所は登記簿上は山形市鉄砲町百十五番地と八っているのに、前示印鑑証明書によると東京都杉並区西荻窪三丁目三十八番地とあって両者の記載に差異があり、殊に第一審被告伊藤としてはさきに認定したとおり、尾関と称する者が右印鑑証明書記載の現住所に居住しているかどうかを確知できなかったことを知っていた筈であるのに、何故か敢えてこれに触れず、両被告共それ以上権利証の提示を求めたり、住民登録票等について果して右尾関と称する者が真実の所有者であるかどうかを確める措置に出でず(後日調査の結果印鑑証明書記載の住所に尾関の住民登録がなされていないことが判明したのである。)そのまま同人が右土地所有者本人であると速断して第一審原告に紹介し、第一審被告伊藤淳司は該土地の賃貸人側の元付業者として、第一審被告佐々木喬は賃借人たる第一審原告から委託を受けた客付業者として、夫々右契約書に立会人の意味で記名または署名捺印し、以て第一審原告に対し夫々尾関と称する者が本件土地の真の所有者であるという趣旨のことを表明したので、第一審原告もこれを誤信し右尾関と称する者即ち平野との間に前示土地につき賃貸借契約を締結し、仲介者たる第一審被告佐々木の手を通じ前示権利金内金五万円、次いで同月二十二日二十五万円合計三十万円の授受がなされたものである。

 すなわち、①登記簿住所との相違、②年齢の相違、③現住所とされる場所に居住していないことを知っていたことから、過失が認定されました。

 

東京地判昭和34年12月16日判タ102号49頁

 本件についてこれを見るに、仲介業者の従業員らは、地主諸貫に全く面識がなく、その上自称諸貫こと永井は当時権利証を紛失したと称し、保証書を呈示しているのであるから、このような場合、自称諸貫が真実に地主諸貫であるか否かの点について特別に注意を払い、地主諸貫の居宅または勤務先などに電話で連絡するとか、または同所に行ってこれを確認するなどの調査をなすべきところ、これを怠り、前記認定した程度の調査をもって、自称諸貫を地主諸貫であると誤信して、この旨を原告に告知し、もって本件土地の売買の仲介をしたことは、鶴賀及び野本らの過失であり、不法行為として右によって原告の蒙った損害を賠償する義務がある。

 また被告遠藤は、前記損害賠償の額の認定につき、過失相殺を主張しているが、原告本人尋問の結果によれば、原告は本件土地の売買をなすについて、専ら不動産仲介業者として被告遠藤の有する不動産取引に関する智識、経験並びにその調査を信頼して本件取引の仲介を依頼したことが認められるのであって、原告が買主として自ら権利者の真偽について調査しなかったとしても、これをもって、原告の過失であるということはできない。よってこの点に関する被告の過失相殺の抗弁は理由がない。

 

神戸地尼崎支判昭和63年2月25日判時1299号117頁

1 他人の土地の売買につき所有権の確認を求める別件訴訟の相手方と和解を行った買主の売主に対する担保責任の主張立証型

2 売主に対する瑕疵担保責任が肯定されたが、他人の土地がなぜ生じたのか明らかではないため、売買の仲介業者の注意義務違反を否定した事例

 

第14章 土地基本法・土地基本方針など

2021年6月7日、所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議(第8回)が開催され、「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」及び「所有者不明土地等問題対策推進の工程表」が新たに決定されました。

土地基本法・土地基本方針・所有者不明土地関係

土地基本法・土地基本方針関係

〇土地基本法・土地基本方針

土地基本法(平成元年法律第84号) ※土地基本法等の一部を改正する法律(令和2年法律第12号)による改正後

 

土地基本方針(令和3年5月28日閣議決定)

 

〇関係通知

土地基本方針の策定について(都道府県宛)(国土企第23号)

土地基本方針の策定について(地方整備局等宛)(国土企第29号)

 

千葉県住宅供給公社の申立てた特定調停事件について、合議体に特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律20条(特定調停に代わる決定への準用)・民事調停法17条による決定がなされた事例

 

東京地方裁判所決定平成16年10月25日

特定調停申立事件

【判示事項】 千葉県住宅供給公社の申立てた特定調停事件について、合議体に特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律20条・民事調停法17条による決定がなされた事例

【参照条文】 特定調停法20 (特定調停に代わる決定への準用)

       特定調停法17-2 (調停委員会が定める調停条項)

       民事調停法17

【掲載誌】  判例時報1884号144頁

 

特定調停法

(調停委員会が定める調停条項)

第十七条 特定調停においては、調停委員会は、当事者の共同の申立てがあるときは、事件の解決のために適当な調停条項を定めることができる。

2 前項の調停条項は、特定債務者の経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものでなければならない。

3 第一項の申立ては、書面でしなければならない。この場合においては、その書面に同項の調停条項に服する旨を記載しなければならない。

4 第一項の規定による調停条項の定めは、期日における告知その他相当と認める方法による告知によってする。

5 当事者は、前項の告知前に限り、第一項の申立てを取り下げることができる。この場合においては、相手方の同意を得ることを要しない。

6 第四項の告知が当事者双方にされたときは、特定調停において当事者間に合意が成立したものとみなす。

 

(特定調停に代わる決定への準用)

第二十条 第十七条第二項の規定は、特定調停に係る事件に関し裁判所がする民事調停法第十七条の決定について準用する。

 

マンションの管理組合の組合員である原告が,マンション管理組合が発注した工事による振動および騒音等によって精神的な苦痛を受けたとして,同マンションの管理会社である被告に対し,債務不履行または不法行為に基づき損害賠償を請求した事案

 

東京地方裁判所判決/平成14年(ワ)第25260号

平成15年6月27日

損害賠償等請求事件

【判示事項】 マンションの管理組合の組合員である原告が,マンション管理組合が発注した工事による振動および騒音等によって精神的な苦痛を受けたとして,同マンションの管理会社である被告に対し,債務不履行または不法行為に基づき損害賠償を請求した事案

工事請負契約の主体はマンション管理組合であって,被告が原告主張のような指導や確認義務を負っているとは認められず,被告が原告に対し,本件工事に関して監理,監督者としての義務を負うものとも認められないとして,請求を棄却した事例

【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

 

1、都市計画法29条の開発工事にあたる宅地造成に関する工事をしようとする者は、都道府県知事の開発許可のほか宅地造成等規制法8条1項による許可をも受けなければならない
2、売買目的物件である建物につき建築基準法6条の確認を受けていないこと、およびその宅地につき右の宅地造成の許可、開発許可を受けていないことは、いずれも宅地建物取引業法47条1項にいう「重要事項」に該る

大阪高等裁判所判決/昭和49年(う)第1192号
昭和50年7月15日
宅地造成等規制法違反、都市計画法違反、建築基準法違反、宅地建物取引業法違反被告事件
【判示事項】    1、都市計画法29条の開発工事にあたる宅地造成に関する工事をしようとする者は、都道府県知事の開発許可のほか宅地造成等規制法8条1項による許可をも受けなければならない
2、売買目的物件である建物につき建築基準法6条の確認を受けていないこと、およびその宅地につき右の宅地造成の許可、開発許可を受けていないことは、いずれも宅地建物取引業法47条1項にいう「重要事項」に該る
【参照条文】    都市計画法92
          都市計画法29
          都市計画法4-8
          宅地造成等規制法24
          宅地造成等規制法8-1
          宅地造成等規制法2
          宅地造成等規制法施行令3
          刑法54-1
          宅地建物取引業法47
          宅地建物取引業法35-1
          宅地建物取引業法施行令3
          建築基準法6
【掲載誌】     判例タイムズ329号302頁
          判例時報815号119頁

都市計画法
(開発行為の許可)
第二十九条 都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市又は同法第二百五十二条の二十二第一項の中核市(以下「指定都市等」という。)の区域内にあつては、当該指定都市等の長。以下この節において同じ。)の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。
一 市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、その規模が、それぞれの区域の区分に応じて政令で定める規模未満であるもの
二 市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行うもの
三 駅舎その他の鉄道の施設、図書館、公民館、変電所その他これらに類する公益上必要な建築物のうち開発区域及びその周辺の地域における適正かつ合理的な土地利用及び環境の保全を図る上で支障がないものとして政令で定める建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為
四 都市計画事業の施行として行う開発行為
五 土地区画整理事業の施行として行う開発行為
六 市街地再開発事業の施行として行う開発行為
七 住宅街区整備事業の施行として行う開発行為
八 防災街区整備事業の施行として行う開発行為
九 公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)第二条第一項の免許を受けた埋立地であつて、まだ同法第二十二条第二項の告示がないものにおいて行う開発行為
十 非常災害のため必要な応急措置として行う開発行為
十一 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
2 都市計画区域及び準都市計画区域外の区域内において、それにより一定の市街地を形成すると見込まれる規模として政令で定める規模以上の開発行為をしようとする者は、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる開発行為については、この限りでない。
一 農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為
二 前項第三号、第四号及び第九号から第十一号までに掲げる開発行為
3 開発区域が、市街化区域、区域区分が定められていない都市計画区域、準都市計画区域又は都市計画区域及び準都市計画区域外の区域のうち二以上の区域にわたる場合における第一項第一号及び前項の規定の適用については、政令で定める。

建築基準法
(建築物の建築等に関する申請及び確認)
第六条 建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事又は建築副主事(以下「建築主事等」という。)の確認(建築副主事の確認にあつては、大規模建築物以外の建築物に係るものに限る。以下この項において同じ。)を受け、確認済証の交付を受けなければならない。当該確認を受けた建築物の計画の変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をして、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合も、同様とする。
一 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートルを超えるもの
二 木造の建築物で三以上の階数を有し、又は延べ面積が五百平方メートル、高さが十三メートル若しくは軒の高さが九メートルを超えるもの
三 木造以外の建築物で二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超えるもの
四 前三号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域若しくは準都市計画区域(いずれも都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴いて指定する区域を除く。)若しくは景観法(平成十六年法律第百十号)第七十四条第一項の準景観地区(市町村長が指定する区域を除く。)内又は都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内における建築物
2 前項の規定は、防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内であるときについては、適用しない。
3 建築主事等は、第一項の申請書が提出された場合において、その計画が次の各号のいずれかに該当するときは、当該申請書を受理することができない。
一 建築士法第三条第一項、第三条の二第一項、第三条の三第一項、第二十条の二第一項若しくは第二十条の三第一項の規定又は同法第三条の二第三項の規定に基づく条例の規定に違反するとき。
二 構造設計一級建築士以外の一級建築士が建築士法第二十条の二第一項の建築物の構造設計を行つた場合において、当該建築物が構造関係規定に適合することを構造設計一級建築士が確認した構造設計によるものでないとき。
三 設備設計一級建築士以外の一級建築士が建築士法第二十条の三第一項の建築物の設備設計を行つた場合において、当該建築物が設備関係規定に適合することを設備設計一級建築士が確認した設備設計によるものでないとき。
4 建築主事等は、第一項の申請書を受理した場合においては、同項第一号から第三号までに係るものにあつてはその受理した日から三十五日以内に、同項第四号に係るものにあつてはその受理した日から七日以内に、申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合するかどうかを審査し、審査の結果に基づいて建築基準関係規定に適合することを確認したときは、当該申請者に確認済証を交付しなければならない。
5 建築主事等は、前項の場合において、申請に係る建築物の計画が第六条の三第一項の構造計算適合性判定を要するものであるときは、建築主から同条第七項の適合判定通知書又はその写しの提出を受けた場合に限り、第一項の規定による確認をすることができる。
6 建築主事等は、第四項の場合(申請に係る建築物の計画が第六条の三第一項の特定構造計算基準(第二十条第一項第二号イの政令で定める基準に従つた構造計算で同号イに規定する方法によるものによつて確かめられる安全性を有することに係る部分に限る。)に適合するかどうかを審査する場合その他国土交通省令で定める場合に限る。)において、第四項の期間内に当該申請者に第一項の確認済証を交付することができない合理的な理由があるときは、三十五日の範囲内において、第四項の期間を延長することができる。この場合においては、その旨及びその延長する期間並びにその期間を延長する理由を記載した通知書を同項の期間内に当該申請者に交付しなければならない。
7 建築主事等は、第四項の場合において、申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合しないことを認めたとき、又は建築基準関係規定に適合するかどうかを決定することができない正当な理由があるときは、その旨及びその理由を記載した通知書を同項の期間(前項の規定により第四項の期間を延長した場合にあつては、当該延長後の期間)内に当該申請者に交付しなければならない。
8 第一項の確認済証の交付を受けた後でなければ、同項の建築物の建築、大規模の修繕又は大規模の模様替の工事は、することができない。
9 第一項の規定による確認の申請書、同項の確認済証並びに第六項及び第七項の通知書の様式は、国土交通省令で定める。

宅地建物取引業法
(業務に関する禁止事項)
第四十七条 宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
一 宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の契約の締結について勧誘をするに際し、又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
イ 第三十五条第一項各号又は第二項各号に掲げる事項
ロ 第三十五条の二各号に掲げる事項
ハ 第三十七条第一項各号又は第二項各号(第一号を除く。)に掲げる事項
ニ イからハまでに掲げるもののほか、宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額若しくは支払方法その他の取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であつて、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの
二 不当に高額の報酬を要求する行為
三 手付について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為

【解説】
 本件は、合計1、100平方メートルの土地について、知事の許可を受けないで形質の変更をし、その土地上に建築基準法6条の確認を受けないで建売住宅を建築したうえ、これら許可、確認を受けていないことを秘したままで他に売却した事案である。
 要旨第1は、都市計画法上の開発行為と宅造法上の宅地造成とは同義であり、都市計画法は宅造法の特別法であるから、本件土地の形質の変更については、都市計画法29条の許可申請のみをすれば足り、宅造法8条1項の許可申請は必要でないとする主張に対し、都市計画法上の開発行為と宅造法上の宅地造成の概念の相違、規制の目的および対象が異なることから、両者は特別法・1般法の関係になく、併存すべきものであるとして、両者の概念的競合を認めた原判決を相当としたものである。
 要旨第2は、宅地建物取引業法47条1項にいう「重要事項」は、同法の目的に徴し、購入者の利益に関する重要事項をいい、同法35条に定める重要事項のみを指すものではないとしたうえ、要旨掲記の事項もこれに該るとしたものである。
 

銃砲火薬類取締法と銃砲等所持禁止令との関係

 

最高裁判所第3小法廷判決/昭和23年(れ)第1928号

昭和24年5月17日

銃砲火薬類取締法違反被告事件

【判示事項】    銃砲火薬類取締法と銃砲等所持禁止令との関係

【判決要旨】    昭和13年警視庁令第60号第26条にいわゆる短刀匕首等の不法携帯を処罰する銃砲火薬類取締法の規定は、銃砲等所持禁止令とその適用の対象を異にした別個のものである。

【参照条文】    銃砲火薬類取締法12

          銃砲火薬類取締法15

          銃砲火薬類取締法17

          銃砲火薬類取締法施行規則48

          昭和13年警視庁令60号26

          銃砲等所持禁止令1-1

          銃砲等所持禁止令施行規則1

【掲載誌】     最高裁判所刑事判例集3巻6号725頁

 

銃砲刀剣類所持等取締法

(聴聞の方法の特例)

第十二条 第十一条第一項から第七項まで又は前条の規定による処分に係る聴聞を行うに当たつては、その期日の一週間前までに、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十五条第一項の規定による通知をし、かつ、聴聞の期日及び場所を公示しなければならない。

2 前項の通知を行政手続法第十五条第三項に規定する方法によつて行う場合においては、同条第一項の規定により聴聞の期日までにおくべき相当な期間は、二週間を下回つてはならない。

3 第十一条第一項から第七項まで又は前条の規定による処分に係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。

 

(登録証)

第十五条 都道府県の教育委員会は、前条第一項の登録をする場合においては、登録証を交付しなければならない。

2 登録を受けた銃砲又は刀剣類を所持する者は、登録証を亡失し、若しくは盗み取られ、又は登録証が滅失した場合においては、文部科学省令で定める手続により、速やかにその旨を当該登録の事務を行つた都道府県の教育委員会に届け出てその再交付を受けなければならない。

3 登録証の様式及び再交付の手続は、文部科学省令で定める。

 

(登録を受けた銃砲又は刀剣類の譲受け、相続、貸付け又は保管の委託の届出等)

第十七条 登録を受けた銃砲又は刀剣類を譲り受け、若しくは相続により取得し、又はこれらの貸付け若しくは保管の委託をした者は、文部科学省令で定める手続により、二十日以内にその旨を当該登録の事務を行つた都道府県の教育委員会に届け出なければならない。貸付け又は保管の委託をした当該銃砲又は刀剣類の返還を受けた場合においても、また同様とする。

2 登録を受けた銃砲又は刀剣類を試験、研究、研ま若しくは修理のため、又は公衆の観覧に供するため貸し付け、又は保管の委託をした場合においては、前項の規定にかかわらず、届出を要しない。

3 都道府県の教育委員会は、第一項の届出を受理した場合においては、速やかにその旨を当該届出に係る銃砲又は刀剣類の所有者の住所地を管轄する都道府県公安委員会に通知しなければならない。

 

第13章 所有者不明土地の利用の促進に関する支援について

○ 地方公共団体は、地域福利増進事業を実施しようとする者等、所有者不明土地を使用しようとする者の求めに応じ、以下のような援助を行うよう努めるものとされている。

・ 所有者不明土地の使用の方法に関する提案

例:まちづくり等の観点から地域のニーズに即した使い方を提案

・ 所有者不明土地の境界を明らかにするための措置に関する助言

例:境界を明らかにするために必要な資料の集め方、隣接地の所有者との境界確認の際の留意点等を助言

・ 土地の権利関係又は評価について特別の知識経験を有する者のあっせん

例:司法書士、土地家屋調査士、行政書士等の土地の権利関係の専門家や、不動産鑑定士等の経済価値評価の専門家のあっせん

地方公共団体による援助

都道府県・市町村の窓口、地方公共団体による援助

○ 地域福利増進事業の個別案件の相談(実施しようとしている事業が地域福利増進事業に該当するか、事業を実施しようとする土地についてどのような所有者等の探索を行う必要があるか、裁定申請手続、鑑定評価の際に設定する

評価条件に関する相談等)や土地所有者関連情報の請求に関する相談(請求手続に関する相談等)が、各都道府県・市町村に設置されている連絡窓口に寄せられた際には、関係部局と連携の上、対応することが望ましい。

○ 都道府県・市町村においては、事業者からの相談のほか、事業者から依頼を受けた専門家(司法書士、行政書士、不動産鑑定士、弁護士、土地家屋調査士、補償コンサルタント等)からの相談についても柔軟に応じることが望ましい。

都道府県・市町村の窓口

 

 

国の職員の派遣

○ 地方公共団体の長は、地域福利増進事業、収用適格事業又は都市計画事業の実施の準備のため、職員に土地所有者等の探索に関する専門的な知識を習得させる必要があるときは、国土交通大臣に対し、国土交通省の職員の派遣を要請することができる。

※ 日帰り~数日程度の比較的短期間で、講義・OJTの形式で実践的なノウハウの提供を行うことを想定。

【事例の概要】

A市では、庁舎建設を計画しているが、事業用地に所有者の一部が不在(※)の土地があり、所有者の探索の方法について技術的支援を求めていた。

※旧土地台帳には、その所有者と思料される者と一文字違いの氏名が記載されており、その者の名前では戸籍が存在し、その者の相続人は不在者1名・海外渡航者4名(住所不明)であった。

【経緯】

H31.2.15 A市より活用希望の申出があり、調整開始

H31.2.25 A市より派遣要請(職員派遣要請書の提出)

H31.2.26 B地方整備局より派遣通知

H31.2.28 職員派遣(第1回)

H31.3.11 職員派遣(第2回)

活用事例

・ 職員の派遣を要請する場合には、省令第57条に規定する職員派遣要請書を、当該地方公共団体の区域を管轄する地方整備局用地部、沖縄総合事務局開発建設部又は北海道開発局開発監理部に提出する。

・ 職員の派遣の要請に当たっては、地方整備局用地部用地企画課、沖縄総合事務局開発建設部用地課又は北海道開発局開発監理部用地課に、派遣の時期や期間等についてご相談下さい。

・ なお、職員の派遣に係る旅費等の費用は、派遣を要請する地方公共団体の負担となる。

【派遣の内容】

第1回(2時間30分)

これまでの探索の結果について

説明を受けた後、追加調査(地籍調査票の調査)や法務局への相談の必要性を助言

第2回(2時間)

追加調査(他の共有者への聞き取り調査等)の必要性のほか、想定される用地取得方法(不在者財産管理人の選任、土地収用、共有持分分割請求)を助言

【派遣の成果】

助言を踏まえ、財産管理人の選任手続を検討

所有者不明土地法に基づく地方公共団体への職員の派遣

○ 所有者不明土地法の円滑な施行のための情報共有、支援

・ 所有者不明土地の収用手続の合理化(都道府県知事による裁定等)

・ 所有者不明土地をポケットパークなど地域住民のために一定期間使用できる

事業(地域福利増進事業)の推進

・ 長期間(30年)、相続登記がされていない土地の相続人等を登記官が調査 等

○ 地方公共団体の用地業務への支援

・ 支援ニーズの把握、相談窓口の設置、講習会・講演会等の開催 等

 

地域福利増進事業を通じた土地の有効活用を促すため、地域福利増進事業の用に供するために土地を譲渡した者の譲渡所得に係る

特例措置及び地域福利増進事業の用に供する資産に係る固定資産税等を軽減する特例措置を令和元年度税制改正において創設。

特例措置の内容

適用のイメージ(土地について)

所有者不明土地

※共有者の一部が不明なもの

を含む。 所有者不明土地に

使用権を設定し

周辺の土地と

合わせて活用 ポケットパーク(公園)(出典)杉並区 直売所(購買施設)(出典)農研機構 広島県

地域福利増進事業に係る特例措置

① 所得税・法人税等

地域福利増進事業を実施する者に土地等(※1)を譲渡(※2)した場合の長期譲渡所得(2000万円以下の部分)に係る税率を20%→14 %に軽減(※3)

(~令和4年12月31日)

② 固定資産税・都市計画税

地域福利増進事業の用に供する土地及び償却資産(※1)に係る固定資産税等の課税標準を5年間2/3に軽減(~令和3年3月31日)

※1 所有者が判明している土地等に対する適用については、一定の地域福利増進事業である場合に限る。

※2 裁定後に行われるものに限る。

※3 法人の場合は、重課制度(長期5%)が適用除外(ただし、重課制度は令和4年末まで課税停止。)。

地域福利増進事業のイメージ

所有者が判明している土地

使用権を設定

税目 事業者が所有権を取得する場合 事業者が所有権を取得しない場合

所得税・

法人税等

固定資産税・

都市計画税

所有者

不明土地

(共有で一部不明の場合)

所有者が判明している土地

事業区域

確知所有者から持分を取得

→確知所有者の譲渡所得に係る税率を軽減

所有者から所有権を取得

→従前所有者の譲渡所得に係る税率を軽減

適用なし

事業区域※

所有者

不明土地

(共有で一部不明の場合)

所有者が判明している土地

事業区域

確知所有者が存在

→確知所有者の固定資産税等を軽減

所有者から借りる(無償である場合に限る)

→所有者の固定資産税等を軽減

所有者

不明土地

(共有で一部不明の場合)

所有者が判明している土地

事業区域

確知所有者から持分を取得

→事業者の固定資産税等を軽減

所有者から所有権を取得

→事業者の固定資産税等を軽減

適用なし

※ 裁定申請書に記載されているものに限る。

※ 地域福利増進事業に係る規定は、令和元年6月1日より施行。

 

所有者不明土地法の円滑な運用に向けた地域支援

○ 平成30年6月に成立(令和元年6月に全面施行)した所有者不明土地法に基づく地域福利増進事業等について、民間事業者等によ

る先進的な取組における所有者の探索、地域の合意形成等に要する経費を支援し、事業の円滑な運用、取組の普及を図る。

○ 「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」(関係閣僚会議決定(H30.6.1))等を踏まえ、全国10地区で地方整備局、法務局、

地方公共団体、関係士業団体により構成される「所有者不明土地等に関する連携協議会」を設置しており、その活動の支援を通して、

地方公共団体等に対する所有者探索のノウハウの提供、先進事例の情報共有等を行う。

背景・必要性

「所有者不明土地解決事例集」の作成

• 土地所有者等の探索や所有者不明土地の使用等に係る事

例について、全国に事例調査を行い「事例集」を作成

施 策

「講演会」を全国10地区の協議会で開催

• 所有者不明土地法の普及のため所有者不明土地対策等

に関する取組や土地政策に関するの周知等を実施

※ 本省と全国10地区の協議会が連携して実施

※総会(1~2回/年)・幹事会(3~4回/年)を実施、各県ごとに分科会を設置

「講習会」を全国50か所で開催

• 士業団体、学識経験者等による土地所有者等の探索方法

や所有者不明土地法の制度等に関するノウハウを提供

※ 各協議会(整備局用地部等)で講習会等支援方策を立案、実施

R2年度予算額:48百万円

R元年度予算額:54百万円

○ 未利用地を活用した地域の福祉・利便の増進、所有者不明土地の管理の適正化、地域環境の保全・向上

○ 所有者不明土地法に対応した市町村等職員のスキルアップ、全国的な用地事務の底上げ、早期の事業進捗・効果発現

効 果

地域福利増進事業等モデル調査の実施 協議会活動※支援

地域福利増進事業等について、所有者の探索、地域の合意

形成、所有者不明土地における使用権の設定等に関する先進

的な取組の支援(モデル調査)を通じて、事業化のノウハウ等

の整理・分析、他地域への普及を促進

【事業活用イメージ】

所有者不明土地

防災空地(広場)

【実施主体】

・ NPOや自治会、民間事業者、地方公共団体等

【 支援対象経費の例 】

・ 所有者の探索、事業計画等の作成、補償金の

算定等に必要な専門家への委託料等

・ 合意形成に向けた会議の開催費、外部講師へ

の謝金、補助員の賃金 等

【 支援額等】

・ 上限300万円/地区、公募により7地区程

 

第1章 総論

 

 不動産仲介業者は、宅地建物取引業法に定めるところに従い、国土交通大臣(旧・建設大臣)または都道府県知事の免許を得なければならず(同法3条)、その業者が自ら宅地建物取引主任者でないときは、事務所には宅地建物取引主任者を置かなければならず(同法15条)、宅地建物取引主任者になるためには所定の試験に合格し(同法16条)、専門的知識を有していなければなりません。そして、不動産仲介業者は法律行為をなすことの委託を受けるのではないから、依頼者と仲介業者間の関係は委任契約ではなく(民法643条)、準委任契約です(同法656条)。したがって、仲介業者は善管注意義務を負います(同法644条)。

宅地建物取引業者は、取引の関係者に対し、信義誠実に業務を行なわなければなりません(31条1項)。

宅地建物取引業者には、重要事項の説明義務があります(宅地建物取引業法35条1項)。

宅地建物取引業者は、業務に関して、相手方等に対し、宅地・建物の売買・交換・貸借の契約の締結について勧誘をするに際し、または、契約の申込みの撤回・解除もしくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、故意に事実を告げず、または、不実のことを告げる行為をしてはなりません(47条1号)。

 

 不動産仲介契約の性質は一般に準委任と解されており(幾代通・判評26号6頁、明石三郎『不動産仲介契約の研究』2頁、佐藤栄一『民事実務ノート3巻』95頁、最判昭和44年6月26日民集23巻7号1264頁)、善管注意義務があるのは当然であるが(民法644条)、このほかに(1)誠実義務)であるとの説と(ドイツ民法654条)、(2)民法1条の信義則で足るとの説があります(海老塚・判タ136号3頁以下、明石・前掲203頁)。

これとも関連して、取引当事者の処分権限の調査義務につき、(イ)調査義務を負わず、仲介人は特に保証した事項以外は、一般的推奨とか、相手方の言をそのまま伝えたことにつき責任を負わないとの消極説(ドイツの通説)、(ロ)不動産仲介につきこの調査義務を認める積極説がある(中川『注釈民法(16)』176頁、明石・前掲203頁、同・判評190号127頁)。

 判例は(1)の信義則説に基づき(ロ)の積極説をとっており、最高裁判例は「不動産仲介業者は、信義誠実を旨とし、権利者の真偽につき格別に注意する等の業務上の一般的注意義務がある」と論じ、業者が立会人として署名捺印した場合でも調査義務があると判示しています(最判昭和36年5月26日民集15巻5号1440頁)。

宅建業法は、宅建業者に対し、各種の業務上の禁止規定・義務規定を設けており(宅建業法32条以下)、これらの規定は、善管注意義務の重要な具体的内容をなすものと解されています(塩崎勤「宅地建物取引業者の責任」川井健=塩崎勤編『新・裁判実務大系(8)専門家責任訴訟法』166頁~167頁)。

不動産売買において仲介人または売主たる宅地建物取引業者の説明義務が問題とされた事例は多く、仲介の場合には受任者としての善管注意義務あるいは宅建業法31条の趣旨や35条の重要事項の説明義務などを理由に債務不履行責任(東京地八王子支判昭和54年7月26日判時947号74頁、東京地判昭和59年12月26日判時1152号148頁など)、または不法行為責任(最昭和36年5月26日民集15巻5号1440頁、最昭和55・6・5判タ606号15頁、大阪高判昭和58年7月19日判時1099号59頁など)が認められており、売主である場合には売買契約に附随する義務として重要事項を説明すべき義務があるとして、その不履行につき債務不履行責任が認められている(東京高判昭和52年3月31日判タ355号283頁、大阪高判昭和58年7月19日判時1099号59頁、東京高判平成2年1月25日金判845号19頁など)。

 なお、従来の裁判例は、明石三郎『不動産仲介契約の研究』202頁以下及び西垣道夫「宅地建物取引業者の取引と不法行為」NBL208号32頁以下を参照。

 不動産仲介業者の業務上の注意義務については最判昭36・5・26(民集15巻5号1440頁)が「宅地建物取引業者は直接の委託関係はなくても、業者の介入に信頼して取引するに至った第三者に対して、信義誠実を旨とし、権利者の真偽につき格別に注意する等の業務上の一般的注意義務がある。」と判示しているが、学説においても、専門業者としての高度の注意義務があるとする点で異論はありません(我妻『債権各論中(2)』673頁、河田貢「不動産仲介業者の責任」『裁判実務大系(11)』426頁、佐藤良雄「宅地建物取引業者の注意義務」不動産法大系I 545頁、西垣道夫「宅地建物取引業者の取引と不法行為(上)(中)」NBL208号・210号、明石三郎『不動産仲介契約の研究』202頁、同「不動産仲介契約の総合的判例研究(6)」判評190号124頁、来栖『契約法』567頁)。

 宅建業者の注意義務についての参考文献として、小島浩「宅地建物取引業者の注意義務」小川英明=長野益三編『現代民事裁判の課題(1)不動産取引』655頁、河田貢「不動産仲介業者の責任」塩崎勤編『裁判実務大系(11)不動産訴訟法』424頁、安田実「宅建業者の不法行為責任」山口和男編『裁判実務大系(16)不法行為訴訟法(2)』376頁などがあります。

 瑕疵担保責任の参考文献として、田中治「瑕疵担保責任」澤野順彦編『現代裁判法大系(2)不動産売買』126頁、草野芳郎=樋口英明「損害賠償の範囲」小川英明=長野益3編『現代民事裁判の課題(1)不動産取引』317頁などがあります。

 説明義務・情報提供義務をめぐる判例と理論については、中田裕康ほか編『説明義務・情報提供義務をめぐる判例と理論』判タ1178号を参照。

 

 なお、仲介業者(宅建業者)は、鑑定・評価人ではないのであるから、隠れた瑕疵の有無などにつき、原則として調査・鑑定の義務はないと解する見解があり(明石三郎『不動産仲介契約の研究』210頁~211頁)、裁判例は、瑕疵について知っていたか、または、認識可能であったことを理由としています。