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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

情報公開法の規定に基づき,農水大臣に対し,行政文書開示請求をした原告が,同請求に係る各行政文書には非開示情報が記録されているとして,それぞれの一部を開示する決定(異議決定の前後を含めて以下,本件各決定)を受けたところ,本件各決定の非開示部分はいずれも非開示情報に該当しないとして,本件各決定・本件異議決定の各取消しを求めた事案。

 

東京地方裁判所判決/平成24年(行ウ)第788号

平成27年2月13日

行政文書不開示決定処分取消請求事件

【判示事項】    情報公開法の規定に基づき,農水大臣に対し,行政文書開示請求をした原告が,同請求に係る各行政文書には非開示情報が記録されているとして,それぞれの一部を開示する決定(異議決定の前後を含めて以下,本件各決定)を受けたところ,本件各決定の非開示部分はいずれも非開示情報に該当しないとして,本件各決定・本件異議決定の各取消しを求めた事案。

裁判所は,情報公開法5条6号柱書きの規定に該当することを理由として本件不開示部分を開示しないものとした本件各決定及び本件異議決定は,いずれも適法である等とし,いずれの請求も棄却した事例

【掲載誌】     LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】    季報情報公開・個人情報保護59号29頁

 

行政機関の保有する情報の公開に関する法律

(行政文書の開示義務)

第五条 行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。

一 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項をいう。次条第二項において同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。

イ 法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報

ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報

ハ 当該個人が公務員等(国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第二条第一項に規定する国家公務員(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第四項に規定する行政執行法人の役員及び職員を除く。)、独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成十三年法律第百四十号。以下「独立行政法人等情報公開法」という。)第二条第一項に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)の役員及び職員、地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第二条に規定する地方公務員並びに地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の役員及び職員をいう。)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分

一の二 個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)第六十条第三項に規定する行政機関等匿名加工情報(同条第四項に規定する行政機関等匿名加工情報ファイルを構成するものに限る。以下この号において「行政機関等匿名加工情報」という。)又は行政機関等匿名加工情報の作成に用いた同条第一項に規定する保有個人情報から削除した同法第二条第一項第一号に規定する記述等若しくは同条第二項に規定する個人識別符号

二 法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。

イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの

ロ 行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたものであって、法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの

三 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報

四 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報

五 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの

六 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの

イ 監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ

ロ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ

ハ 調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ

ニ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ

ホ 独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ

 

育児休業者の処遇

 事業主は、育児休業中の労働者に賃金を支払う必要はありません。

ただし、雇用保険法により、育児休業者のうち一定の要件をみたす者について、休業前の賃金の62%を支給する育児休業給付制度が設けられています(雇用保険法61条の4、附則12条)。

事業主は、休業前の地位(原職)に復帰させる義務を負いません。

しかし、事業主は、労働者が育児休業申出をし、または、育児休業をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません(育児休業法10条)。したがって、育児休業をしたことを理由として、配転などの不利益な取扱いをする場合、違法・無効です。不法行為を構成します。

 

 労働者の配置に関する配慮

  事業主は、労働者の配置の変更で就業場所の変更を伴うもの(転勤命令)をしようとする場合において、就業場所の変更により就業しつつ子の養育・家族の介護を行うことが困難となる労働者がいる場合は、労働者の子の養育・家族の介護の状況に配慮しなければなりません(育児休業法26条)。

 その他の育成支援措置

1 所定労働時間の短縮措置等

2 小学校就学前の子を養育する労働者等に関する育児休暇・育児休業

3 時間外労働の制限

4 深夜業の制限

 

第4章 他人物

 

宮崎地判昭和58年12月21日判タ528号248頁

不動産仲介契約は準委任契約と解すべきところ、宅地建物取引業者(不動産仲介業者)が客の委託を受けた不動産売買の仲介をする場合には、民法644条に従い、仲介契約の趣旨に則り、善管注意をもって媒介すべき義務を負い、売買契約が支障なく履行されて当事者双方がその売買の目的物につき所有権の移転、登記の完了と代金の完済により契約の目的を達し得るように配慮すべき業務上の注意義務があると解すべきである。とくに、不動産仲介業者が他人の物の売買に関与するに当っては、通常の売買に比してより高度の注意を用いることを要し、事前に不動産登記簿を調査し所有者を確認するのはもとより売主の職業、信用度、所有者本人の売渡意思の有無、抵当権設定登記がある場合はその抹消の可否等を問合わせて確認するとともに、同人の委任状、印鑑証明書、権利証等を売主に提示させてその真偽を確認する等の措置をとり、売買物件の移転にいかんのないよう注意すべき業務上の義務があると考える。

法人税法37条にいう寄付金の意義      


法人税額更正処分取消請求控訴事件
【事件番号】広島高等裁判所松江支部判決/昭和56年(行コ)第1号
【判決日付】昭和57年9月30日
【判示事項】(1) 法人税法三七条にいう寄付金の意義      
(2) 子会社が親会社に対し親会社の欠損金を解消させるために支出した負担金は、法人税法上の寄付金に該当るとされた事例      
(3) 子会社が親会社に対し支出した負担金は、営業権の賃借料である旨の主張が排斥された事例      
(4) 子会社が親会社に対し負担金を支出するにつき、対価的意義を有する融資、債務保証、仕入保証及び営業指導の経済的利益を得たとはいえないとされた事例(原審判決引用)      
(5) 会社が関係会社に支出した負担金は、経理事務委託の対価ではなく、寄付金であると認定された事例(原審判決引用)
【判決要旨】(1) 法人税法三七条にいう寄付金とは、名義のいかんや業務との関連性の有無を問わず、法人が贈与又は無償で供与した資産又は経済的利益、換言すれば、法人が直接的な対価を伴わないでした支出を広く指称するものと解すべきである。     
 (2) 子会社が親会社に対し支出した負担金は、(イ)親会社が営業を分割して子会社を設立したことにより、親会社に残された不動産業による収入のみでは賄えない費用が生じた結果、これを親会社と控訴会社を含む子会社六社との契約によって子会社に負担させることになったものであること、(ロ)この負担金の額は、まず各事業年度の当初において親会社の減価償却費、支払利息、租税公課、人件費約二八項目からなる必要経費中各事業年度の収入で賄えないと見込まれる経費部分(欠損金)及び親会社の営業分割前の繰越欠損金のうち各事業年度の償却部分によって親会社に対する子会社六社の負担金総額の見込額が定められ、次に、この負担金総額が子会社の五項目(売上高、人件費、経営資本、使用固定資産、利益)の基準で各子会社に振り分けられることによって各子会社の負担金の見込額が定められ、各事業年度の終了直前における親会社と子会社の仮決算において各子会社の負担額が確定するものであることが認められる。      
 本件において、控訴会社を含む子会社が親会社に対して支出した負担金は、親会社に生じた欠損の補填を目的として、各係争事業年度の欠損金に相当する額を前記五項目の基準によって各子会社に振り分けたものであるから、控訴会社が親会社から対価的意義を有する経済的利益の供与を受けていると認めるべき特段の事情のない限り、控訴会社の親会社に対する負担金は寄付金に該当するものとみるのが相当である。      
(3) 控訴会社は、控訴人が親会社に支出した負担金の主要部分は控訴会社から五年間の約定で賃借した営業権の賃貸料である旨主張するが、(イ)その証拠として提出した書面は、単に、控訴人が親会社との間で、各係争事業年度における具体的な負担金の額を決定し、かつ、その支払を約したことを証する趣旨の書面に過ぎないし、(ロ)ほかに控訴会社を含む子会社がその負担金の支払に先立って親会社との間で、親会社の営業権の賃貸借に関する契約を締結したり、営業権の価額を客観的に評価してその賃貸料を取り決めたりしたことを窺わせる客観的資料は全く見当たらず、かえって、(ハ)負担金を定めた書面には「(親会社の)必要経費の負担金につき」なる文言が使用されていること、(ニ)他の子会社は、その設立直後の事業年度において全く負担金を支払うことなく営業したこと及び、(ホ)負担金の総額が親会社の当該事業年度における欠損金の額に応じて決定され、しかも、(ヘ)これが事業年度毎に変動する五項目の基準によって各子会社に割当てられること等の事情に鑑みると、右負担金は、営業権の賃貸料であるとは認められない。      (4)(5) 省略【掲載誌】 税務訴訟資料127号1132頁

法人税法
第四目 寄附金
(寄附金の損金不算入)
第三十七条 内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(次項の規定の適用を受ける寄附金の額を除く。)の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
2 内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額(第二十五条の二(受贈益)の規定の適用がないものとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入される同条第二項に規定する受贈益の額に対応するものに限る。)は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
3 第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに次の各号に掲げる寄附金の額があるときは、当該各号に掲げる寄附金の額の合計額は、同項に規定する寄附金の額の合計額に算入しない。
一 国又は地方公共団体(港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)の規定による港務局を含む。)に対する寄附金(その寄附をした者がその寄附によつて設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものを除く。)の額
二 公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人又は団体に対する寄附金(当該法人の設立のためにされる寄附金その他の当該法人の設立前においてされる寄附金で政令で定めるものを含む。)のうち、次に掲げる要件を満たすと認められるものとして政令で定めるところにより財務大臣が指定したものの額
イ 広く一般に募集されること。
ロ 教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するための支出で緊急を要するものに充てられることが確実であること。
4 第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに、公共法人、公益法人等(別表第二に掲げる一般社団法人、一般財団法人及び労働者協同組合を除く。以下この項及び次項において同じ。)その他特別の法律により設立された法人のうち、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものに対する当該法人の主たる目的である業務に関連する寄附金(出資に関する業務に充てられることが明らかなもの及び前項各号に規定する寄附金に該当するものを除く。)の額があるときは、当該寄附金の額の合計額(当該合計額が当該事業年度終了の時の資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える場合には、当該計算した金額に相当する金額)は、第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入しない。ただし、公益法人等が支出した寄附金の額については、この限りでない。
5 公益法人等がその収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業のために支出した金額(公益社団法人又は公益財団法人にあつては、その収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業で公益に関する事業として政令で定める事業に該当するもののために支出した金額)は、その収益事業に係る寄附金の額とみなして、第一項の規定を適用する。ただし、事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることにより支出した金額については、この限りでない。
6 内国法人が特定公益信託(公益信託ニ関スル法律(大正十一年法律第六十二号)第一条(公益信託)に規定する公益信託で信託の終了の時における信託財産がその信託財産に係る信託の委託者に帰属しないこと及びその信託事務の実施につき政令で定める要件を満たすものであることについて政令で定めるところにより証明がされたものをいう。)の信託財産とするために支出した金銭の額は、寄附金の額とみなして第一項、第四項、第九項及び第十項の規定を適用する。この場合において、第四項中「)の額」とあるのは、「)の額(第六項に規定する特定公益信託のうち、その目的が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものの信託財産とするために支出した金銭の額を含む。)」とするほか、この項の規定の適用を受けるための手続に関し必要な事項は、政令で定める。
7 前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。
8 内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。
9 第三項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない第三項各号に掲げる寄附金の額及び当該寄附金の明細を記載した書類の添付がある場合に限り、第四項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない第四項に規定する寄附金の額及び当該寄附金の明細を記載した書類の添付があり、かつ、当該書類に記載された寄附金が同項に規定する寄附金に該当することを証する書類として財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用する。この場合において、第三項又は第四項の規定により第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。
10 税務署長は、第四項の規定により第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されないこととなる金額の全部又は一部につき前項に規定する財務省令で定める書類の保存がない場合においても、その書類の保存がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その書類の保存がなかつた金額につき第四項の規定を適用することができる。
11 財務大臣は、第三項第二号の指定をしたときは、これを告示する。
12 第五項から前項までに定めるもののほか、第一項から第四項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

法人税法施行令
(一般寄附金の損金算入限度額)
第七十三条 法第三十七条第一項(寄附金の損金不算入)に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、次の各号に掲げる内国法人の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 普通法人、法別表第二に掲げる労働者協同組合、協同組合等及び人格のない社団等(次号に掲げるものを除く。) 次に掲げる金額の合計額の四分の一に相当する金額
イ 当該事業年度終了の時における資本金の額及び資本準備金の額の合計額又は出資金の額を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額の千分の二・五に相当する金額
ロ 当該事業年度の所得の金額の百分の二・五に相当する金額
二 普通法人、協同組合等及び人格のない社団等のうち資本又は出資を有しないもの、法別表第二に掲げる一般社団法人及び一般財団法人並びに財務省令で定める法人 当該事業年度の所得の金額の百分の一・二五に相当する金額
三 公益法人等(前二号に掲げるものを除く。以下この号において同じ。) 次に掲げる法人の区分に応じそれぞれ次に定める金額
イ 公益社団法人又は公益財団法人 当該事業年度の所得の金額の百分の五十に相当する金額
ロ 私立学校法第三条(定義)に規定する学校法人(同法第六十四条第四項(私立専修学校等)の規定により設立された法人で学校教育法第百二十四条(専修学校)に規定する専修学校を設置しているものを含む。)、社会福祉法第二十二条(定義)に規定する社会福祉法人、更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)第二条第六項(定義)に規定する更生保護法人又は医療法第四十二条の二第一項(社会医療法人)に規定する社会医療法人 当該事業年度の所得の金額の百分の五十に相当する金額(当該金額が年二百万円に満たない場合には、年二百万円)
ハ イ又はロに掲げる法人以外の公益法人等 当該事業年度の所得の金額の百分の二十に相当する金額
2 前項各号に規定する所得の金額は、次に掲げる規定を適用しないで計算した場合における所得の金額とする。
一 法第二十七条(中間申告における繰戻しによる還付に係る災害損失欠損金額の益金算入)
二 法第四十条(法人税額から控除する所得税額の損金不算入)
三 法第四十一条(法人税額から控除する外国税額の損金不算入)
四 法第四十一条の二(分配時調整外国税相当額の損金不算入)
五 法第五十七条第一項(欠損金の繰越し)
六 法第五十九条(会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入)
七 法第六十一条の十一第一項(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)(適格合併に該当しない合併による合併法人への資産の移転に係る部分に限る。)
八 法第六十二条第二項(合併及び分割による資産等の時価による譲渡)
九 法第六十二条の五第二項及び第五項(現物分配による資産の譲渡)
十 法第六十四条の五第一項及び第三項(損益通算)
十一 法第六十四条の七第六項(欠損金の通算)
十二 租税特別措置法第五十七条の七第一項(関西国際空港用地整備準備金)
十三 租税特別措置法第五十七条の七の二第一項(中部国際空港整備準備金)
十四 租税特別措置法第五十九条第一項及び第二項(新鉱床探鉱費又は海外新鉱床探鉱費の特別控除)
十五 租税特別措置法第五十九条の二第一項及び第四項(対外船舶運航事業を営む法人の日本船舶による収入金額の課税の特例)
十六 租税特別措置法第六十条第一項、第二項及び第六項(沖縄の認定法人の課税の特例)
十七 租税特別措置法第六十一条第一項及び第五項(国家戦略特別区域における指定法人の課税の特例)
十八 租税特別措置法第六十一条の二第一項(農業経営基盤強化準備金)及び第六十一条の三第一項(農用地等を取得した場合の課税の特例)
十九 租税特別措置法第六十六条の七第二項及び第六項(内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例)
二十 租税特別措置法第六十六条の九の三第二項及び第五項(特殊関係株主等である内国法人に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例)
二十一 租税特別措置法第六十六条の十三第一項、第五項から第十一項まで及び第十五項(特定事業活動として特別新事業開拓事業者の株式の取得をした場合の課税の特例)
二十二 租税特別措置法第六十七条の十二第一項及び第二項並びに第六十七条の十三第一項及び第二項(組合事業等による損失がある場合の課税の特例)
二十三 租税特別措置法第六十七条の十四第一項(特定目的会社に係る課税の特例)
二十四 租税特別措置法第六十七条の十五第一項(投資法人に係る課税の特例)
二十五 租税特別措置法第六十八条の三の二第一項(特定目的信託に係る受託法人の課税の特例)
二十六 租税特別措置法第六十八条の三の三第一項(特定投資信託に係る受託法人の課税の特例)
3 第一項各号に規定する所得の金額は、内国法人が当該事業年度において支出した法第三十七条第七項に規定する寄附金の額の全額は損金の額に算入しないものとして計算するものとする。
4 事業年度が一年に満たない法人に対する第一項第三号ロの規定の適用については、同号ロ中「年二百万円」とあるのは、「二百万円を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額」とする。
5 第一項及び前項の月数は、暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを切り捨てる。
6 内国法人が第一項各号に掲げる法人のいずれに該当するかの判定は、各事業年度終了の時の現況による。


 

前年の稼働率によって従業員を翌年度の賃金引上げ対象者から除外する旨の労働協約条約の一部が公序に反し無効とされた事例

 

最高裁判所第1小法廷判決/昭和58年(オ)第1542号

平成元年12月14日

賃金請求事件

日本シェーリング事件

【判示事項】    前年の稼働率によって従業員を翌年度の賃金引上げ対象者から除外する旨の労働協約条約の一部が公序に反し無効とされた事例

【判決要旨】    すべての原因による不就労を基礎として算出した前年の稼働率の80パーセント以下の従業員を翌年度のベースアップを含む賃金引上げの対象者から除外する旨の労働協約条項は、そのうち労働基準法又は労働組合法上の権利に基づくもの以外の不就労を稼働率算定の基礎とする部分は有効であるが、右各権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎とする部分は公序に反し無効である。

【参照条文】    民法90

          労働基準法3

          労働基準法65

          労働基準法66

          労働基準法67

          労働基準法68

          労働基準法76

          労働組合法2章

          労働組合法14

          労働組合法16

          憲法28

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集43巻12号1895頁

 

道法

(公序良俗)

第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

 

労働基準法

(年次有給休暇)

第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

六箇月経過日から起算した継続勤務年数

労働日

一年

一労働日

二年

二労働日

三年

四労働日

四年

六労働日

五年

八労働日

六年以上

十労働日

 次に掲げる労働者(一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く。)の有給休暇の日数については、前二項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第一号において「通常の労働者の週所定労働日数」という。)と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。

 一週間の所定労働日数が通常の労働者の週所定労働日数に比し相当程度少ないものとして厚生労働省令で定める日数以下の労働者

 週以外の期間によつて所定労働日数が定められている労働者については、一年間の所定労働日数が、前号の厚生労働省令で定める日数に一日を加えた日数を一週間の所定労働日数とする労働者の一年間の所定労働日数その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める日数以下の労働者

 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。

 時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲

 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(五日以内に限る。)

 その他厚生労働省令で定める事項

 使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。

 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし、第一項から第三項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。

 前項の規定にかかわらず、第五項又は第六項の規定により第一項から第三項までの規定による有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が五日を超える場合には、五日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。

 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。

 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第一号に規定する育児休業又は同条第二号に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間は、第一項及び第二項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。

 

第六章の二 妊産婦等

(坑内業務の就業制限)

第六十四条の二 使用者は、次の各号に掲げる女性を当該各号に定める業務に就かせてはならない。

一 妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後一年を経過しない女性 坑内で行われるすべての業務

二 前号に掲げる女性以外の満十八歳以上の女性 坑内で行われる業務のうち人力により行われる掘削の業務その他の女性に有害な業務として厚生労働省令で定めるもの

(危険有害業務の就業制限)

第六十四条の三 使用者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性(以下「妊産婦」という。)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺ほ育等に有害な業務に就かせてはならない。

② 前項の規定は、同項に規定する業務のうち女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務につき、厚生労働省令で、妊産婦以外の女性に関して、準用することができる。

③ 前二項に規定する業務の範囲及びこれらの規定によりこれらの業務に就かせてはならない者の範囲は、厚生労働省令で定める。

(産前産後)

第六十五条 使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。

② 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

③ 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

第六十六条 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十二条の二第一項、第三十二条の四第一項及び第三十二条の五第一項の規定にかかわらず、一週間について第三十二条第一項の労働時間、一日について同条第二項の労働時間を超えて労働させてはならない。

② 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十三条第一項及び第三項並びに第三十六条第一項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。

③ 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。

(育児時間)

第六十七条 生後満一年に達しない生児を育てる女性は、第三十四条の休憩時間のほか、一日二回各々少なくとも三十分、その生児を育てるための時間を請求することができる。

② 使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。

(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)

第六十八条 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。

 

(休業補償)

第七十六条 労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。

② 使用者は、前項の規定により休業補償を行つている労働者と同一の事業場における同種の労働者に対して所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金の、一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの各区分による期間(以下四半期という。)ごとの一箇月一人当り平均額(常時百人未満の労働者を使用する事業場については、厚生労働省において作成する毎月勤労統計における当該事業場の属する産業に係る毎月きまつて支給する給与の四半期の労働者一人当りの一箇月平均額。以下平均給与額という。)が、当該労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた日の属する四半期における平均給与額の百分の百二十をこえ、又は百分の八十を下るに至つた場合においては、使用者は、その上昇し又は低下した比率に応じて、その上昇し又は低下するに至つた四半期の次の次の四半期において、前項の規定により当該労働者に対して行つている休業補償の額を改訂し、その改訂をした四半期に属する最初の月から改訂された額により休業補償を行わなければならない。改訂後の休業補償の額の改訂についてもこれに準ずる。

③ 前項の規定により難い場合における改訂の方法その他同項の規定による改訂について必要な事項は、厚生労働省令で定める。

 

パワーハラスメントの定義・現状

 

1            定義

パワーハラスメントとは、①職場における優位性を背景に、②業務の適正な範囲を超えて、③身体的・精神的な苦痛を与えること、または、就業環境を害することをいいます。

 

パワハラ防止の法的義務

 

労働施策総合推進法の正式名称は、

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律

昭和41年法律第132号

です。

労働施策総合推進法の改正 (パワハラ防止対策義務化)について 職場におけるパワーハラスメント対策が 令和2年6月1日から大企業の法的義務になります。

根拠条文は、同法「第九章 職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置等」であり、30条の2,30条の3です。

 パワハラの定義は、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」です(30条の2)。

 

 

 

2            現状

労働局における総合労働相談において、2012年~2017年において、相談件数はトップ、約3割をしめる。

 

3 提言・通達

パワーハラスメントは、 使用者の労働者に対する安全配慮義務違反または不法行為となります。

平成24年3月に「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言 」(以下「提言」といいます。)が厚生労働省によって取りまとめられました。提言の中では、 定義や類型について、 以下のように取りまとめられました。

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、 職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、 業務の適正な範囲を超えて、 精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為と定義をしました。

職場のパワーハラスメントは、①身体的な攻撃(暴行、傷害)、②精神的な攻撃(脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言)、③人間関係からの切り離し(隔離、仲間外し、無視)、④過大な要求(業務上明らかに不要なこと・遂行不可能なことの強制、 仕事の妨害)⑤過小な要求(業務上の合理性なく、 能力・経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること、仕事を与えないこと)、⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること) が典型例です。

なお、パワーハラスメントが退職勧奨の一環としてなされる場合がありますが、本稿は退職勧奨を扱うことを目的としておりませんので、必要な限度で言及するにとどめます。

 

第3章 代理権

 

最判昭和44年11月21日民集23巻11号2097頁

甲が、金融業者乙の被用者であるが代理権を有しない丙との間に、乙の不動産を買い受ける契約を締結し、代金を丙に支払うに際し、売買契約書等の表示、乙に対する登記抹消の訴に関する予告登記の存在、交渉中における代金減額の経過など、原判示のような丙の権限を疑うべき事情(原判決理由参照)があるにかかわらず、丙を乙の支配人と紹介した仲介人の言葉のみを信用し、丙の代理資格および売買の意思の有無につき乙に問い合わせるなどの調査をすることなく、丙にその権限があるもの信じて、右契約を締結し多額の代金を丙に支払った場合であっても、甲がこのように信じたことにいまだ重大な過失があるとはいえず、甲は、乙に対し、民法715条に基づき損害賠償を請求することを妨げられない。

控訴審は大阪高判昭和43年9月25日金判202号17頁、1審は大阪地判昭和41年1月20日判タ188号164頁

当時本件物件に関しては、前記浜田から被告中沢に対し、代物弁済の無効を主張して所有権移転登記抹消手続請求の訴が提起され大阪地方裁判所に係属中であり、またこれに関連する調停も進行中であって、被告中沢としても浜田らから金員を支払ってもらえば本件物件は同人らに返還する意向であったので、原告にその所有権を移転できる見込みはなく、しかも被告森本には本件物件を売却する具体的権限は何ら与えられていなかったのであるが、被告森本はこれらの事情を秘し、売買代金名下に原告から金員を詐取する目的で、あたかも同被告であって本件物件を売却処分する代理権を有しており、原告に直ちにその所有権を移転できるかのように装って、交渉にあたった原告代表者渋谷昇及び営業部長高橋至をしてその旨誤信させ、その結果、原告は昭和30年6月30日、右高橋至を代理人として、仲介人たる被告岡部らの立会のもとに、被告森本との間で、本件物件を代金1千7百万円で被告中沢より買受ける旨の契約をなし、同日手付金として現金350万円、同年7月7日に内金として現金650万円、計1千万円をいずれも右高橋を通じて被告森本に交付した。しかし、結局、原告は本件物件を取得することができず、右金員は被告森本の右詐欺行為によって売買代金名下に欺し取られたのである。

 

東京高判昭和40年4月14日判タ176号181頁

宅地建物取引業者としては、不動産の売買を媒介するに際しては当該不動産を現地において調査するはもちろん、関係人への問い合せあるいは登記簿その他の資料の調査等の方法により、不動産の公簿上の所有名義人が何人となっているか、真実の所有者が何人であるか、担保権、賃貸借等の負担が存するか否か等を確認し、さらに現実に売買契約をなす者が代理人である場合においては、委任状、印鑑証明等によってその代理権の存否あるいはその範囲を調査すベきはもちろん、もしこれらの点について疑がある場合には、直接本人に照会する等の方法によってこれを明確にし、さらに以上の調査結果を依頼者に報告して、依頼者に不測の損害を及ぼすことのないように注意すべき義務あるものというべきである(宅地建物取引業法第一八条第一号参照)。そうしてこれを本件について見れば、控訴人は登記簿上本件家屋が亡西山末吉名義となっており、本件宅地は第三者の名義となっていること末吉の相続人としては長男勘一の外数名の子がおり、勘一は精神病者で入院治療中であること等を知っていたのであるから、契約締結前にこれを依頼者である被控訴人に告げるべきであることはいうまでもなく、右のような複雑な事情があり、果して菊田の言うように相続人等の間で本件不動産を菊田の妻であった西山光の所有とする旨の協議ができているのか否か、また菊田がこれを売却処分する権限を与えられているのか否かについても疑念を持っていたのであるから、この点につき前記のような方法により十分調査してその結果を被控訴人に報告すべき義務あるものというべきである。

 

東京高判昭和50年11月27日判タ336号251頁

 不動産業者が依頼者に対する注意義務を怠ったことよって依頼者に損害賠償責任を負う場合に、業者の注意義務違反または損害の発生もしくは拡大につき、依頼者にも過失があるときは、過失相殺されるべきものであることはいうまでもないが、業者は免許という形で一定の資格審査を受けて専門的知識を有するものとされ、依頼者はまさに右専門的知識・経験を信頼して業者に仲介を依頼するものであるから、両者の要求される注意義務の程度には相当の差があり、これを如何に評価するかが問題となる。

  本件は、X(原告、被控訴人)がY(被告、控訴人)に依頼し、その仲介で所有者から一任されていると称するAを通してB所有の土地と建築中の建物を買受け代金を支払ったところ、実際にはAはB所有の土地・建物を処分する権限がなく、Xから代金を受け受取ったまま逃亡してしまったので、XからYに損害賠償を求めたものであるが、Yはその責任を争うとともに、予備的にXにも過失があったとして過失相殺を主張した。

  本判決は、業者に仲介を依頼する者としても、土地登記簿により所有権者を確認し、売手が所有者と異なる場合には委任状や印鑑証明書の提出を求め、建築中の建物ならばその設計見積書の作成などの手続を明確にしておく等の手段を講ずる注意義務を負うものであるに、Xはこれを怠ったとし、Yの過失相殺の主張を認め、損害の2割を減額した。

  仲介業者の専門的知識・経験を信頼し、みずから相手方の事情を調査しなかったとしても、依頼者に過失がないとするものが多いようである(東京高判昭和28年1月30日高民集6巻138頁、東京高判昭和32年7月3日高民集10巻5号268頁、東京地判昭和41年2月19日判タ189号173頁など)が、本件と同じく依頼者に過失があるとするものもある(名古屋高判昭和36年3月31日高民集14巻3号213頁など)。

 

東京地判昭60年9月25日判タ599号43頁は、「被告Yは委託を受けて本件不動産取引を仲介する者として、原告Xに対し、善良な管理者としての注意義務を負うものというべきところ、YはXに対して本件不動産を紹介した当初から、本件不動産はAがBから買い受けて直ちにXに転売するものであることを知っていたのであるから、YはXに対する関係においても、BとAとの間の本件先行売買契約が有効にされたか否か、すなわち、Bに真に本件不動産を売却する意思があるのかどうか、あるいはBの自称代理人Cに真に代理権があるのかどうかを確認すべき注意義務があったものというべきである」と判示し、不動産所有者・売主の自称代理人の権限につき調査をしなかった不動産仲介業者に損害賠償責任があるとしている。

 

東京高判平成元年2月6日金融法務事情1241号36頁

1 不動産仲介業者が所有者の自称代理人から不動産売買の仲介を委託された場合においては、自称代理人の持参した本人の実印、印鑑証明書等により代理権の調査・確認をするだけでは十分ではなく、代理権限に疑問を抱く余地のないような特段の事情の存在しない限り、本人に照会して意思を確認する注意義務がある。

2 不動産の売主の自称代理人に代理権がなかった場合において、不動産仲介業者が、代理権の調査・確認を怠ったため、買主に瑕疵ある売買契約を締結させ、売買代金名下に300万円を支払わせて同額の損害を被らせたときは、仲介業者は右代金相当額の損害賠償をすべき義務を負い、右不動産の時価相当額の損害賠償義務を負うものではない。

 

東京高判平成元年2月6日金判823号20頁、1審は東京地判昭和62年11月27日判時1280号97頁

1 不動産仲介業者が所有者の自称代理人から不動産売買の仲介を委託された場合においては、自称代理人の持参した本人の実印、印鑑証明書等により代理権の調査・確認をするだけでは十分ではなく、代理権限に疑問を抱く余地のないような特段の事情の存在しない限り、本人に照会して意思を確認する注意義務がある。

2 不動産の売主の自称代理人に代理権がなかった場合において、不動産仲介業者が、代理権の調査・確認を怠ったため、買主に瑕疵ある売買契約を締結させ、売買代金名下に300万円を支払わせて同額の損害を被らせたときは、仲介業者は右代金相当額の損害賠償をすべき義務を負い、右不動産の時価相当額の損害賠償義務を負うものではない。

1審は東京地判昭和62年11月27日判時1280号97頁

不動産仲介業者の買主に対する所有権移転登記手続及び引渡が履行されるように努力すべき義務の不履行がなかったとされた事例。控訴審は原審を変更。

 

第15章 土地基本法 (平成元年法律第84号)

・ 我が国における土地についての基本理念を定めた法律

・ バブル期の地価高騰における投機的取引の抑制の要請等を背景に制定

・ 地価が継続的に上昇し、高い利用ニーズの下で土地が利用・取引されていくことを前提に、適正な土地利用を志向する規定

土地に関する制度の現状と課題

検討の背景 (土地所有を取り巻く現状)

対応の必要性 (土地基本法の見直し)

○ 国民の諸活動の基盤であり、その利用・管理が他の土地の利用と密接な関係を有する等の土地の特性に鑑み、公共の福

祉の観点から、土地は条件に応じて適切に利用・管理されなければならない。

○ 憲法、土地基本法に則り、土地所有権には制約が伴う。土地については公共の福祉が優先され、所有者が責務を果たさずに悪影響が生じている場合には、土地の適切な利用・管理の確保のため、土地所有権は制限され得る。

○ 所有者をはじめ土地に関係する者の適切な役割分担を明らかにした上で、人口減少社会に対応した土地の適切な利用・管理の確保のため、土地に関する制度・施策を再構築すべき。

土地の利用・管理に関する責務と役割分担

所有者:

・土地の条件に応じて適切に利用・管理

・利用希望者に譲渡・賃貸

・登記を適時に行い、境界画定に努力・協力(法的管理)

近隣住民、地域コミュニティ等:

・利用・管理による悪影響・受益等を踏まえ、自らの、あるいは地域の利益の観点から、必要に応じて利用・管理に関与

地方公共団体:地域の公益を実現する立場から

・所有者や地域住民等が役割を担うことを支援、促進

・悪影響の度合い・緊急性が高い等の場合には直接対応

(代執行等)

・必要に応じて地域の土地を利用・管理、取得

・土地利用・管理の計画・指針等の提示

まちづくり団体等:

・地方公共団体の役割を一部分担し、連携・支援

国:最終的な土地政策の責任を担う立場から

・関連制度を構築、地方公共団体等の取組を支援

・地方公共団体と協力して法的管理等を支える情報インフラ(所有者、境界等の土地情報)を整備、最終的な管理の受け皿機能を確保

土地についての基本理念と責務

所有者 :

近隣住民等 :

国、地方公共団体等:

第一次的には、所有者自らが土地の適切な利用・管理を確保することが求められる(所有者の責務)

必要に応じて役割を担うことで、土地の適切な利用・管理が確保され、住民、地域の利益につながる場合がある(所有者の責務を補完)

①所有者や近隣住民等が役割を担うことの支援・促進、そのための制度構築を行う

②生活環境の保全、住民の安全確保等の観点から必要な場合には、市町村、都道府県、国は、適切な役割分担の下、自ら適切な利用・管理、取得の確保に努める

【参考】国土審議会土地政策分科会特別部会とりまとめ概要 ②

土地の利用・管理に関して必要な措置の方向性

 

補完 支援

○ 所有者や所有者以外の者が責務や役割を担うことを支援し、促すための措置について、関係各省が具体的な制度設計等について検討を深め、関係する個別法や行政の施策等により講じていくことが求められる。

地方公共団体(まちづくり団体等と連携・協力)

所有者による利用・管理(所有者の責務)

・土地取引の円滑化・促進

(マッチング機能の強化等) 所有者以外の者の協力による利用・管理

・土地の利用を促す措置

・所有者に管理を促す措置

(行政指導、管理委託の斡旋等)

・ 土 地の 適切な利用・管理、円滑な取引を支える情報基盤整備

(登記の促進、地籍調査の・地域における 推進等)

合意形成の促進(相談窓口、コーディネート等)

・地域における利用・管理への支援

(地域コミュニティへの支援等)

所有者以外が悪影響の除去を一定の手続により行うことを可能にする措置(相隣関係、代執行等)

共有者に合理的な手続に基づき土地の利用・処分を可能にする措置

悪影響が生じている土地の場合

悪影響が生じている放置土地(所有者不明土地を含む)の場合

近隣住民、地方公共団体等が悪影響の除去を合理的に実施利用・管理の内容、水準について、必要に応じて地域において話合いを行い合意形成を図る

地域で利用・管理するとされた土地

地域による利用・管理(近隣住民が草刈りを実施等)

公共性がある場合には、地方公共団体等が自ら管理・取得

公共的目的のための利用・管理・取得を円滑化

所有者以外が悪影響の除去を合理的な手続により行うことを可能にする措置

地域での利用・管理までは不要とされた土地

所有者が引き続き最低限の管理

一定の条件を満たす場合、国が取得

所有者による利用・管理が困難な土地

所有者自身による利用・管理

所有者による利用

管理委託等による管理

新たな所有者等による利用・管理

新たな所有者・賃借人等による利用

共有者による適切な利用・管理

所有者による利用・管理と比較衡量の上、近隣住民、地方公共団体等が悪影響の除去を実施

・地方公共団 体 等 の取組を支援

土地の適切な利用・管理のため必要な措置(基本的施策)

【参考】国土審議会土地政策分科会特別部会とりまとめ概要 ③

土地の利用・管理に関して必要な措置の方向性

 

地籍調査の円滑化・迅速化のため必要な措置の方向性(概要)

民間等の測量成果

官民境界の先行調査

調査する官民の境界

○ 防災やまちづくりの観点から、道路等と民地との境界(官民境界)を先行的に調査し、国土調査法上の認証を得て公表。

尾根

畑跡

林道

○ 里道 リモートセンシングデータを活用した新手法の導入により、現地での立会や測量作業を効

 

法人が支給する使用人賞与の損金算入時期についての平成18年政令第125号による改正前の法人税法施行令134条の2の定めは,租税法律主義又は法人税法の定める損金算入基準に違反するか


法人税更正処分取消請求控訴事件
【事件番号】    大阪高等裁判所判決/平成21年(行コ)第24号
【判決日付】    平成21年10月16日
【判示事項】    1 法人税の確定申告に対して,課税庁が所得金額の加算とともに減算をして行った増額更正処分に対する取消訴訟において,確定申告に係る申告所得金額・税額を超える部分の取消しを求めることは不適法か
          2 法人が支給する使用人賞与の損金算入時期についての平成18年政令第125号による改正前の法人税法施行令134条の2の定めは,租税法律主義又は法人税法の定める損金算入基準に違反するか
【参照条文】    国税通則法16-1
          国税通則法23-1
          国税通則法29-1
          憲法30
          憲法84
          法人税法(平18法10号改正前)22-3
          法人税法(平18法10号改正前)65
          法人税法施行令(平18政令125号改正前)134の2、現行72条の3
【掲載誌】     判例タイムズ1319号79頁
          税務訴訟資料259号順号11293
          LLI/DB 判例秘書登載

国税通則法
(国税についての納付すべき税額の確定の方式)
第十六条 国税についての納付すべき税額の確定の手続については、次の各号に掲げるいずれかの方式によるものとし、これらの方式の内容は、当該各号に掲げるところによる。
一 申告納税方式 納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とし、その申告がない場合又はその申告に係る税額の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつた場合その他当該税額が税務署長又は税関長の調査したところと異なる場合に限り、税務署長又は税関長の処分により確定する方式をいう。
二 賦課課税方式 納付すべき税額がもつぱら税務署長又は税関長の処分により確定する方式をいう。
2 国税(前条第三項各号に掲げるものを除く。)についての納付すべき税額の確定が前項各号に掲げる方式のうちいずれの方式によりされるかは、次に定めるところによる。
一 納税義務が成立する場合において、納税者が、国税に関する法律の規定により、納付すべき税額を申告すべきものとされている国税 申告納税方式
二 前号に掲げる国税以外の国税 賦課課税方式

(更正の請求)
第二十三条 納税申告書を提出した者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該申告書に係る国税の法定申告期限から五年(第二号に掲げる場合のうち法人税に係る場合については、十年)以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等(当該課税標準等又は税額等に関し次条又は第二十六条(再更正)の規定による更正(以下この条において「更正」という。)があつた場合には、当該更正後の課税標準等又は税額等)につき更正をすべき旨の請求をすることができる。
一 当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたこと又は当該計算に誤りがあつたことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があつた場合には、当該更正後の税額)が過大であるとき。
二 前号に規定する理由により、当該申告書に記載した純損失等の金額(当該金額に関し更正があつた場合には、当該更正後の金額)が過少であるとき、又は当該申告書(当該申告書に関し更正があつた場合には、更正通知書)に純損失等の金額の記載がなかつたとき。
三 第一号に規定する理由により、当該申告書に記載した還付金の額に相当する税額(当該税額に関し更正があつた場合には、当該更正後の税額)が過少であるとき、又は当該申告書(当該申告書に関し更正があつた場合には、更正通知書)に還付金の額に相当する税額の記載がなかつたとき。
2 納税申告書を提出した者又は第二十五条(決定)の規定による決定(以下この項において「決定」という。)を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する場合(納税申告書を提出した者については、当該各号に定める期間の満了する日が前項に規定する期間の満了する日後に到来する場合に限る。)には、同項の規定にかかわらず、当該各号に定める期間において、その該当することを理由として同項の規定による更正の請求(以下「更正の請求」という。)をすることができる。
一 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき その確定した日の翌日から起算して二月以内
二 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算に当たつてその申告をし、又は決定を受けた者に帰属するものとされていた所得その他課税物件が他の者に帰属するものとする当該他の者に係る国税の更正又は決定があつたとき 当該更正又は決定があつた日の翌日から起算して二月以内
三 その他当該国税の法定申告期限後に生じた前二号に類する政令で定めるやむを得ない理由があるとき 当該理由が生じた日の翌日から起算して二月以内
3 更正の請求をしようとする者は、その請求に係る更正後の課税標準等又は税額等、その更正の請求をする理由、当該請求をするに至つた事情の詳細、当該請求に係る更正前の納付すべき税額及び還付金の額に相当する税額その他参考となるべき事項を記載した更正請求書を税務署長に提出しなければならない。
4 税務署長は、更正の請求があつた場合には、その請求に係る課税標準等又は税額等について調査し、更正をし、又は更正をすべき理由がない旨をその請求をした者に通知する。
5 更正の請求があつた場合においても、税務署長は、その請求に係る納付すべき国税(その滞納処分費を含む。以下この項において同じ。)の徴収を猶予しない。ただし、税務署長において相当の理由があると認めるときは、その国税の全部又は一部の徴収を猶予することができる。
6 輸入品に係る申告消費税等についての更正の請求は、第一項の規定にかかわらず、税関長に対し、するものとする。この場合においては、前三項の規定の適用については、これらの規定中「税務署長」とあるのは、「税関長」とする。
7 前二条の規定は、更正の請求について準用する。

(更正等の効力)
第二十九条 第二十四条(更正)又は第二十六条(再更正)の規定による更正(以下第七十二条(国税の徴収権の消滅時効)までにおいて「更正」という。)で既に確定した納付すべき税額を増加させるものは、既に確定した納付すべき税額に係る部分の国税についての納税義務に影響を及ぼさない。
2 既に確定した納付すべき税額を減少させる更正は、その更正により減少した税額に係る部分以外の部分の国税についての納税義務に影響を及ぼさない。
3 更正又は決定を取り消す処分又は判決は、その処分又は判決により減少した税額に係る部分以外の部分の国税についての納税義務に影響を及ぼさない。

憲法
第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

法人税法
第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則
第二十二条 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。
2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。
3 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
4 第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。
5 第二項又は第三項に規定する資本等取引とは、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引並びに法人が行う利益又は剰余金の分配(資産の流動化に関する法律第百十五条第一項(中間配当)に規定する金銭の分配を含む。)及び残余財産の分配又は引渡しをいう。

(各事業年度の所得の金額の計算の細目)
第六十五条 第二款から前款まで(所得の金額の計算)に定めるもののほか、各事業年度の所得の金額の計算に関し必要な事項は、政令で定める。

法人税法施行令
(使用人賞与の損金算入時期)
第七十二条の三 内国法人がその使用人に対して賞与(給与(債務の免除による利益その他の経済的な利益を含む。)のうち臨時的なもの(退職給与、他に定期の給与を受けていない者に対し継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づいて支給されるもの、法第五十四条第一項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)に規定する特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式によるもの及び法第五十四条の二第一項(新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)に規定する特定新株予約権又は承継新株予約権によるものを除く。)をいう。以下この条において同じ。)を支給する場合(法第三十四条第六項(役員給与の損金不算入)に規定する使用人としての職務を有する役員に対して当該職務に対する賞与を支給する場合を含む。)には、これらの賞与の額について、次の各号に掲げる賞与の区分に応じ当該各号に定める事業年度において支給されたものとして、その内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する。
一 労働協約又は就業規則により定められる支給予定日が到来している賞与(使用人にその支給額の通知がされているもので、かつ、当該支給予定日又は当該通知をした日の属する事業年度においてその支給額につき損金経理をしているものに限る。) 当該支給予定日又は当該通知をした日のいずれか遅い日の属する事業年度
二 次に掲げる要件の全てを満たす賞与 使用人にその支給額の通知をした日の属する事業年度
イ その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること。
ロ イの通知をした金額を当該通知をした全ての使用人に対し当該通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から一月以内に支払つていること。
ハ その支給額につきイの通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。
三 前二号に掲げる賞与以外の賞与 当該賞与が支払われた日の属する事業年度

 

1 有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることと労働契約法20条にいう「その他の事情」
2 有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるか否かについての判断の方法
3 無期契約労働者に対して能率給及び職務給を支給する一方で定年退職後に再雇用された有期契約労働者に対して能率給及び職務給を支給せずに歩合給を支給するという労働条件の相違が,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例

最高裁判所第2小法廷判決/平成29年(受)第442号
平成30年6月1日
地位確認等請求事件
【判示事項】    1 有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることと労働契約法20条にいう「その他の事情」
2 有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるか否かについての判断の方法
3 無期契約労働者に対して能率給及び職務給を支給する一方で定年退職後に再雇用された有期契約労働者に対して能率給及び職務給を支給せずに歩合給を支給するという労働条件の相違が,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例
【判決要旨】    1 有期契約労働者が定年退職後に再雇用された者であることは,当該有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かの判断において,労働契約法20条にいう「その他の事情」として考慮されることとなる事情に当たる。
2 有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるか否かを判断するに当たっては,両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく,当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきである。
3 乗務員である無期契約労働者に対して能率給及び職務給を支給する一方で,定年退職後に再雇用された乗務員である有期契約労働者に対して能率給及び職務給を支給せずに歩合給を支給するという労働条件の相違は,両者の職務の内容並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲が同一である場合であっても,次の(1)~(6)など判示の事情の下においては,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらない。
          (1) 有期契約労働者に支給される基本賃金の額は,当該有期契約労働者の定年退職時における基本給の額を上回っている。
          (2) 有期契約労働者に支給される歩合給及び無期契約労働者に支給される能率給の額は,いずれもその乗務するバラセメントタンク車の種類に応じた係数を月稼働額に乗ずる方法によって計算するものとされ,歩合給に係る係数は,能率給に係る係数の約2倍から約3倍に設定されている。
          (3) 団体交渉を経て,有期契約労働者の基本賃金が増額され,歩合給に係る係数の一部が有期契約労働者に有利に変更されている。
          (4) 有期契約労働者の賃金体系は,乗務するバラセメントタンク車の種類に応じて額が定められる職務給を支給しない代わりに,前記(1)により収入の安定に配慮するとともに,前記(2)により労務の成果が賃金に反映されやすくなるように工夫されたものである。
          (5) 有期契約労働者に支給された基本賃金及び歩合給を合計した金額並びに当該有期契約労働者の賃金に関する労働条件が無期契約労働者と同じであるとした場合に支払われることとなる基本給,能率給及び職務給を合計した金額を計算すると,前者の金額は後者の金額より少ないが,その差は約2%から約12%にとどまる。
          (6) 有期契約労働者は,一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることができる上,その報酬比例部分の支給が開始されるまでの間,調整給の支給を受けることができる。
【参照条文】    労働契約法20
【掲載誌】     最高裁判所民事判例集72巻2号202頁

短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)
第九条 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。