法人税法37条にいう寄付金の意義       法人税額更正処分取消請求控訴事件 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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法人税法37条にいう寄付金の意義      


法人税額更正処分取消請求控訴事件
【事件番号】広島高等裁判所松江支部判決/昭和56年(行コ)第1号
【判決日付】昭和57年9月30日
【判示事項】(1) 法人税法三七条にいう寄付金の意義      
(2) 子会社が親会社に対し親会社の欠損金を解消させるために支出した負担金は、法人税法上の寄付金に該当るとされた事例      
(3) 子会社が親会社に対し支出した負担金は、営業権の賃借料である旨の主張が排斥された事例      
(4) 子会社が親会社に対し負担金を支出するにつき、対価的意義を有する融資、債務保証、仕入保証及び営業指導の経済的利益を得たとはいえないとされた事例(原審判決引用)      
(5) 会社が関係会社に支出した負担金は、経理事務委託の対価ではなく、寄付金であると認定された事例(原審判決引用)
【判決要旨】(1) 法人税法三七条にいう寄付金とは、名義のいかんや業務との関連性の有無を問わず、法人が贈与又は無償で供与した資産又は経済的利益、換言すれば、法人が直接的な対価を伴わないでした支出を広く指称するものと解すべきである。     
 (2) 子会社が親会社に対し支出した負担金は、(イ)親会社が営業を分割して子会社を設立したことにより、親会社に残された不動産業による収入のみでは賄えない費用が生じた結果、これを親会社と控訴会社を含む子会社六社との契約によって子会社に負担させることになったものであること、(ロ)この負担金の額は、まず各事業年度の当初において親会社の減価償却費、支払利息、租税公課、人件費約二八項目からなる必要経費中各事業年度の収入で賄えないと見込まれる経費部分(欠損金)及び親会社の営業分割前の繰越欠損金のうち各事業年度の償却部分によって親会社に対する子会社六社の負担金総額の見込額が定められ、次に、この負担金総額が子会社の五項目(売上高、人件費、経営資本、使用固定資産、利益)の基準で各子会社に振り分けられることによって各子会社の負担金の見込額が定められ、各事業年度の終了直前における親会社と子会社の仮決算において各子会社の負担額が確定するものであることが認められる。      
 本件において、控訴会社を含む子会社が親会社に対して支出した負担金は、親会社に生じた欠損の補填を目的として、各係争事業年度の欠損金に相当する額を前記五項目の基準によって各子会社に振り分けたものであるから、控訴会社が親会社から対価的意義を有する経済的利益の供与を受けていると認めるべき特段の事情のない限り、控訴会社の親会社に対する負担金は寄付金に該当するものとみるのが相当である。      
(3) 控訴会社は、控訴人が親会社に支出した負担金の主要部分は控訴会社から五年間の約定で賃借した営業権の賃貸料である旨主張するが、(イ)その証拠として提出した書面は、単に、控訴人が親会社との間で、各係争事業年度における具体的な負担金の額を決定し、かつ、その支払を約したことを証する趣旨の書面に過ぎないし、(ロ)ほかに控訴会社を含む子会社がその負担金の支払に先立って親会社との間で、親会社の営業権の賃貸借に関する契約を締結したり、営業権の価額を客観的に評価してその賃貸料を取り決めたりしたことを窺わせる客観的資料は全く見当たらず、かえって、(ハ)負担金を定めた書面には「(親会社の)必要経費の負担金につき」なる文言が使用されていること、(ニ)他の子会社は、その設立直後の事業年度において全く負担金を支払うことなく営業したこと及び、(ホ)負担金の総額が親会社の当該事業年度における欠損金の額に応じて決定され、しかも、(ヘ)これが事業年度毎に変動する五項目の基準によって各子会社に割当てられること等の事情に鑑みると、右負担金は、営業権の賃貸料であるとは認められない。      (4)(5) 省略【掲載誌】 税務訴訟資料127号1132頁

法人税法
第四目 寄附金
(寄附金の損金不算入)
第三十七条 内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額(次項の規定の適用を受ける寄附金の額を除く。)の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
2 内国法人が各事業年度において当該内国法人との間に完全支配関係(法人による完全支配関係に限る。)がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額(第二十五条の二(受贈益)の規定の適用がないものとした場合に当該他の内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入される同条第二項に規定する受贈益の額に対応するものに限る。)は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
3 第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに次の各号に掲げる寄附金の額があるときは、当該各号に掲げる寄附金の額の合計額は、同項に規定する寄附金の額の合計額に算入しない。
一 国又は地方公共団体(港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)の規定による港務局を含む。)に対する寄附金(その寄附をした者がその寄附によつて設けられた設備を専属的に利用することその他特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものを除く。)の額
二 公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人又は団体に対する寄附金(当該法人の設立のためにされる寄附金その他の当該法人の設立前においてされる寄附金で政令で定めるものを含む。)のうち、次に掲げる要件を満たすと認められるものとして政令で定めるところにより財務大臣が指定したものの額
イ 広く一般に募集されること。
ロ 教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に寄与するための支出で緊急を要するものに充てられることが確実であること。
4 第一項の場合において、同項に規定する寄附金の額のうちに、公共法人、公益法人等(別表第二に掲げる一般社団法人、一般財団法人及び労働者協同組合を除く。以下この項及び次項において同じ。)その他特別の法律により設立された法人のうち、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものに対する当該法人の主たる目的である業務に関連する寄附金(出資に関する業務に充てられることが明らかなもの及び前項各号に規定する寄附金に該当するものを除く。)の額があるときは、当該寄附金の額の合計額(当該合計額が当該事業年度終了の時の資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える場合には、当該計算した金額に相当する金額)は、第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入しない。ただし、公益法人等が支出した寄附金の額については、この限りでない。
5 公益法人等がその収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業のために支出した金額(公益社団法人又は公益財団法人にあつては、その収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業で公益に関する事業として政令で定める事業に該当するもののために支出した金額)は、その収益事業に係る寄附金の額とみなして、第一項の規定を適用する。ただし、事実を隠蔽し、又は仮装して経理をすることにより支出した金額については、この限りでない。
6 内国法人が特定公益信託(公益信託ニ関スル法律(大正十一年法律第六十二号)第一条(公益信託)に規定する公益信託で信託の終了の時における信託財産がその信託財産に係る信託の委託者に帰属しないこと及びその信託事務の実施につき政令で定める要件を満たすものであることについて政令で定めるところにより証明がされたものをいう。)の信託財産とするために支出した金銭の額は、寄附金の額とみなして第一項、第四項、第九項及び第十項の規定を適用する。この場合において、第四項中「)の額」とあるのは、「)の額(第六項に規定する特定公益信託のうち、その目的が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものの信託財産とするために支出した金銭の額を含む。)」とするほか、この項の規定の適用を受けるための手続に関し必要な事項は、政令で定める。
7 前各項に規定する寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。次項において同じ。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。
8 内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額に比して低いときは、当該対価の額と当該価額との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、前項の寄附金の額に含まれるものとする。
9 第三項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない第三項各号に掲げる寄附金の額及び当該寄附金の明細を記載した書類の添付がある場合に限り、第四項の規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない第四項に規定する寄附金の額及び当該寄附金の明細を記載した書類の添付があり、かつ、当該書類に記載された寄附金が同項に規定する寄附金に該当することを証する書類として財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用する。この場合において、第三項又は第四項の規定により第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されない金額は、当該金額として記載された金額を限度とする。
10 税務署長は、第四項の規定により第一項に規定する寄附金の額の合計額に算入されないこととなる金額の全部又は一部につき前項に規定する財務省令で定める書類の保存がない場合においても、その書類の保存がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その書類の保存がなかつた金額につき第四項の規定を適用することができる。
11 財務大臣は、第三項第二号の指定をしたときは、これを告示する。
12 第五項から前項までに定めるもののほか、第一項から第四項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

法人税法施行令
(一般寄附金の損金算入限度額)
第七十三条 法第三十七条第一項(寄附金の損金不算入)に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、次の各号に掲げる内国法人の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 普通法人、法別表第二に掲げる労働者協同組合、協同組合等及び人格のない社団等(次号に掲げるものを除く。) 次に掲げる金額の合計額の四分の一に相当する金額
イ 当該事業年度終了の時における資本金の額及び資本準備金の額の合計額又は出資金の額を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額の千分の二・五に相当する金額
ロ 当該事業年度の所得の金額の百分の二・五に相当する金額
二 普通法人、協同組合等及び人格のない社団等のうち資本又は出資を有しないもの、法別表第二に掲げる一般社団法人及び一般財団法人並びに財務省令で定める法人 当該事業年度の所得の金額の百分の一・二五に相当する金額
三 公益法人等(前二号に掲げるものを除く。以下この号において同じ。) 次に掲げる法人の区分に応じそれぞれ次に定める金額
イ 公益社団法人又は公益財団法人 当該事業年度の所得の金額の百分の五十に相当する金額
ロ 私立学校法第三条(定義)に規定する学校法人(同法第六十四条第四項(私立専修学校等)の規定により設立された法人で学校教育法第百二十四条(専修学校)に規定する専修学校を設置しているものを含む。)、社会福祉法第二十二条(定義)に規定する社会福祉法人、更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)第二条第六項(定義)に規定する更生保護法人又は医療法第四十二条の二第一項(社会医療法人)に規定する社会医療法人 当該事業年度の所得の金額の百分の五十に相当する金額(当該金額が年二百万円に満たない場合には、年二百万円)
ハ イ又はロに掲げる法人以外の公益法人等 当該事業年度の所得の金額の百分の二十に相当する金額
2 前項各号に規定する所得の金額は、次に掲げる規定を適用しないで計算した場合における所得の金額とする。
一 法第二十七条(中間申告における繰戻しによる還付に係る災害損失欠損金額の益金算入)
二 法第四十条(法人税額から控除する所得税額の損金不算入)
三 法第四十一条(法人税額から控除する外国税額の損金不算入)
四 法第四十一条の二(分配時調整外国税相当額の損金不算入)
五 法第五十七条第一項(欠損金の繰越し)
六 法第五十九条(会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入)
七 法第六十一条の十一第一項(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)(適格合併に該当しない合併による合併法人への資産の移転に係る部分に限る。)
八 法第六十二条第二項(合併及び分割による資産等の時価による譲渡)
九 法第六十二条の五第二項及び第五項(現物分配による資産の譲渡)
十 法第六十四条の五第一項及び第三項(損益通算)
十一 法第六十四条の七第六項(欠損金の通算)
十二 租税特別措置法第五十七条の七第一項(関西国際空港用地整備準備金)
十三 租税特別措置法第五十七条の七の二第一項(中部国際空港整備準備金)
十四 租税特別措置法第五十九条第一項及び第二項(新鉱床探鉱費又は海外新鉱床探鉱費の特別控除)
十五 租税特別措置法第五十九条の二第一項及び第四項(対外船舶運航事業を営む法人の日本船舶による収入金額の課税の特例)
十六 租税特別措置法第六十条第一項、第二項及び第六項(沖縄の認定法人の課税の特例)
十七 租税特別措置法第六十一条第一項及び第五項(国家戦略特別区域における指定法人の課税の特例)
十八 租税特別措置法第六十一条の二第一項(農業経営基盤強化準備金)及び第六十一条の三第一項(農用地等を取得した場合の課税の特例)
十九 租税特別措置法第六十六条の七第二項及び第六項(内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例)
二十 租税特別措置法第六十六条の九の三第二項及び第五項(特殊関係株主等である内国法人に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例)
二十一 租税特別措置法第六十六条の十三第一項、第五項から第十一項まで及び第十五項(特定事業活動として特別新事業開拓事業者の株式の取得をした場合の課税の特例)
二十二 租税特別措置法第六十七条の十二第一項及び第二項並びに第六十七条の十三第一項及び第二項(組合事業等による損失がある場合の課税の特例)
二十三 租税特別措置法第六十七条の十四第一項(特定目的会社に係る課税の特例)
二十四 租税特別措置法第六十七条の十五第一項(投資法人に係る課税の特例)
二十五 租税特別措置法第六十八条の三の二第一項(特定目的信託に係る受託法人の課税の特例)
二十六 租税特別措置法第六十八条の三の三第一項(特定投資信託に係る受託法人の課税の特例)
3 第一項各号に規定する所得の金額は、内国法人が当該事業年度において支出した法第三十七条第七項に規定する寄附金の額の全額は損金の額に算入しないものとして計算するものとする。
4 事業年度が一年に満たない法人に対する第一項第三号ロの規定の適用については、同号ロ中「年二百万円」とあるのは、「二百万円を十二で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額」とする。
5 第一項及び前項の月数は、暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを切り捨てる。
6 内国法人が第一項各号に掲げる法人のいずれに該当するかの判定は、各事業年度終了の時の現況による。