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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

東京都議会議員定数配分訴訟・最高裁令和4年10月31日

 

 

選挙無効等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/令和4年(行ツ)第78号、令和4年(行ヒ)第79号

【判決日付】      令和4年10月31日

【判示事項】      1 東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号)のいわゆる特例選挙区を存置する規定の適法性

             2 東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号)の議員定数配分規定の適法性

             3 東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号)のいわゆる特例選挙区を存置する規定の合憲性

             4 東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号)の議員定数配分規定の合憲性

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

 

地方自治法

第六章 議会

第一節 組織

第八十九条 普通地方公共団体に、その議事機関として、当該普通地方公共団体の住民が選挙した議員をもつて組織される議会を置く。

② 普通地方公共団体の議会は、この法律の定めるところにより当該普通地方公共団体の重要な意思決定に関する事件を議決し、並びにこの法律に定める検査及び調査その他の権限を行使する。

③ 前項に規定する議会の権限の適切な行使に資するため、普通地方公共団体の議会の議員は、住民の負託を受け、誠実にその職務を行わなければならない。

第九十条 都道府県の議会の議員の定数は、条例で定める。

② 前項の規定による議員の定数の変更は、一般選挙の場合でなければ、これを行うことができない。

③ 第六条の二第一項の規定による処分により、著しく人口の増加があつた都道府県においては、前項の規定にかかわらず、議員の任期中においても、議員の定数を増加することができる。

④ 第六条の二第一項の規定により都道府県の設置をしようとする場合において、その区域の全部が当該新たに設置される都道府県の区域の一部となる都道府県(以下本条において「設置関係都道府県」という。)は、その協議により、あらかじめ、新たに設置される都道府県の議会の議員の定数を定めなければならない。

⑤ 前項の規定により新たに設置される都道府県の議会の議員の定数を定めたときは、設置関係都道府県は、直ちに当該定数を告示しなければならない。

⑥ 前項の規定により告示された新たに設置される都道府県の議会の議員の定数は、第一項の規定に基づく当該都道府県の条例により定められたものとみなす。

⑦ 第四項の協議については、設置関係都道府県の議会の議決を経なければならない。

第九十一条 市町村の議会の議員の定数は、条例で定める。

② 前項の規定による議員の定数の変更は、一般選挙の場合でなければ、これを行うことができない。

③ 第七条第一項又は第三項の規定による処分により、著しく人口の増減があつた市町村においては、前項の規定にかかわらず、議員の任期中においても、議員の定数を増減することができる。

④ 前項の規定により議員の任期中にその定数を減少した場合において当該市町村の議会の議員の職に在る者の数がその減少した定数を超えているときは、当該議員の任期中は、その数を以て定数とする。但し、議員に欠員を生じたときは、これに応じて、その定数は、当該定数に至るまで減少するものとする。

⑤ 第七条第一項又は第三項の規定により市町村の設置を伴う市町村の廃置分合をしようとする場合において、その区域の全部又は一部が当該廃置分合により新たに設置される市町村の区域の全部又は一部となる市町村(以下本条において「設置関係市町村」という。)は、設置関係市町村が二以上のときは設置関係市町村の協議により、設置関係市町村が一のときは当該設置関係市町村の議会の議決を経て、あらかじめ、新たに設置される市町村の議会の議員の定数を定めなければならない。

⑥ 前項の規定により新たに設置される市町村の議会の議員の定数を定めたときは、設置関係市町村は、直ちに当該定数を告示しなければならない。

⑦ 前項の規定により告示された新たに設置される市町村の議会の議員の定数は、第一項の規定に基づく当該市町村の条例により定められたものとみなす。

⑧ 第五項の協議については、設置関係市町村の議会の議決を経なければならない。

 

 

公職選挙法

(地方公共団体の議会の議員の選挙区)

第十五条 都道府県の議会の議員の選挙区は、一の市の区域、一の市の区域と隣接する町村の区域を合わせた区域又は隣接する町村の区域を合わせた区域のいずれかによることを基本とし、条例で定める。

2 前項の選挙区は、その人口が当該都道府県の人口を当該都道府県の議会の議員の定数をもつて除して得た数(以下この条において「議員一人当たりの人口」という。)の半数以上になるようにしなければならない。この場合において、一の市の区域の人口が議員一人当たりの人口の半数に達しないときは、隣接する他の市町村の区域と合わせて一選挙区を設けるものとする。

3 一の市の区域の人口が議員一人当たりの人口の半数以上であつても議員一人当たりの人口に達しないときは、隣接する他の市町村の区域と合わせて一選挙区を設けることができる。

4 一の町村の区域の人口が議員一人当たりの人口の半数以上であるときは、当該町村の区域をもつて一選挙区とすることができる。

5 一の市町村(地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)にあつては、区(総合区を含む。第六項及び第九項において同じ。)。以下この項において同じ。)の区域が二以上の衆議院(小選挙区選出)議員の選挙区に属する区域に分かれている場合における前各項の規定の適用については、当該各区域を市町村の区域とみなすことができる。

6 市町村は、特に必要があるときは、その議会の議員の選挙につき、条例で選挙区を設けることができる。ただし、指定都市については、区の区域をもつて選挙区とする。

7 第一項から第四項まで又は前項の規定により選挙区を設ける場合においては、行政区画、衆議院(小選挙区選出)議員の選挙区、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならない。

8 各選挙区において選挙すべき地方公共団体の議会の議員の数は、人口に比例して、条例で定めなければならない。ただし、特別の事情があるときは、おおむね人口を基準とし、地域間の均衡を考慮して定めることができる。

9 指定都市に対し第一項から第三項までの規定を適用する場合における市の区域(市町村の区域に係るものを含む。)は、当該指定都市の区域を二以上の区域に分けた区域とする。この場合において、当該指定都市の区域を分けるに当たつては、第五項の場合を除き、区の区域を分割しないものとする。

10 前各項に定めるもののほか、地方公共団体の議会の議員の選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数に関し必要な事項は、政令で定める。

 

(特別区の特例)

第二百六十六条 この法律中市に関する規定は、特別区に適用する。この場合において、第三十三条第三項中「第六条の二第四項又は第七条第七項」とあるのは、「第二百八十一条の四第六項(同条第九項において準用する場合を含む。)又は大都市地域における特別区の設置に関する法律(平成二十四年法律第八十号)第九条第二項」とする。

2 都の議会の議員の各選挙区において選挙すべき議員の数については、特別区の存する区域以外の区域を区域とする各選挙区において選挙すべき議員の数を、特別区の存する区域を一の選挙区とみなして定め、特別区の区域を区域とする各選挙区において選挙すべき議員の数を、特別区の存する区域を一の選挙区とみなした場合において当該区域において選挙すべきこととなる議員の数を特別区の区域を区域とする各選挙区に配分することにより定めることができる。

 

(都道府県の議会の議員の選挙区の特例)

第二百七十一条 昭和四十一年一月一日現在において設けられている都道府県の議会の議員の選挙区については、当該区域の人口が当該都道府県の人口を当該都道府県の議会の議員の定数をもつて除して得た数の半数に達しなくなつた場合においても、当分の間、第十五条第二項前段の規定にかかわらず、当該区域をもつて一選挙区を設けることができる。

 

 

憲法

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

 

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告人の上告理由及び上告受理申立て理由について

 1 本件は、東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号。以下「本件条例」という。)に基づいて令和3年7月4日に行われた東京都議会議員一般選挙(以下「本件選挙」という。)について、江東区選挙区の選挙人である上告人が、本件選挙当時、本件条例のうち、①大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ヶ島村及び小笠原村の区域(以下「島しょ部」という。)を合わせて1選挙区(島部選挙区)とする規定(2条3項。以下「本件島部選挙区規定」という。)が公職選挙法271条、憲法14条1項等に違反するとともに、②各選挙区において選挙する議員の数を定める規定(3条。以下「本件定数配分規定」という。)が公職選挙法15条8項、憲法14条1項等に違反すると主張して、これらに基づき行われた本件選挙の江東区選挙区における選挙を無効とすること等を求める事案である。

 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。

 (1) 都道府県議会の議員の定数については、地方自治法において、条例で定めるものとされている(90条1項)。

 そして、都道府県議会の議員の選挙区については、公職選挙法において、一の市の区域、一の市の区域と隣接する町村の区域を合わせた区域又は隣接する町村の区域を合わせた区域のいずれかによることを基本とし、条例で定めるものとされ(15条1項)、選挙区は、その人口が当該都道府県の人口を当該都道府県議会の議員の定数をもって除して得た数(以下「議員1人当たりの人口」といい、当該選挙区の人口を議員1人当たりの人口で除して得た数を「配当基数」という。)の半数以上になるようにしなければならないが(同条2項前段)、昭和41年1月1日当時において設けられていた選挙区については、当該区域の人口が議員1人当たりの人口の半数に達しなくなった場合においても、当分の間、当該区域をもって1選挙区を設けることができるものとされている(271条。以下、この規定によって存置が認められた選挙区を「特例選挙区」という。)。なお、特別区については、市に関する規定が適用される(同法266条1項)。

 上記各規定等により定められた各選挙区において選挙すべき議員の数については、公職選挙法において、人口に比例して、条例で定めなければならないが(15条8項本文)、特別の事情があるときは、おおむね人口を基準とし、地域間の均衡を考慮して定めることができるものとされている(同項ただし書)。

 (2)ア 本件選挙当時、本件条例の定める選挙区及び各選挙区における議員の数は、原判決別紙1「都議会議員選挙区別議員1人当たりの人口及び較差」の「選挙区」欄及び「条例定数」欄記載のとおりであり、島部選挙区を含む42選挙区に127人の定数が配分されている。

 イ 島部選挙区は、昭和44年の本件条例の制定当時から、特例選挙区として存置されていたところ、東京都議会に設置された都議会のあり方検討会は、平成24年6月19日、東京都議会に対し、島部選挙区について、その地理的特殊性等を考慮して特例選挙区とされてきたもので、これを見直す状況には至っていないことから引き続き特例選挙区として存置すべきであるとの検討結果を報告した。

 ウ 本件条例については、令和2年東京都条例第80号により、2選挙区の定数を1増1減する改正がされた(以下「令和2年条例改正」という。)。なお、島部選挙区の配当基数は、令和2年条例改正当時、0.249(以下、配当基数に関する数値は概算である。)であったが、令和2年条例改正において、島部選挙区に関する改正はされていない。

 3(1) 前記2(1)の各規定に照らせば、特例選挙区の設置を適法なものとして是認し得るか否かは、その設置についての都道府県議会の判断が、当該都道府県の行政施策の遂行上当該地域からの代表を確保する必要性の有無・程度、隣接する他の市町村の区域との合区の困難性の有無・程度等に照らし、当該都道府県全体の調和ある発展を図るなどの観点からする裁量権の合理的な行使として是認されるかどうかによって決すべきものである(最高裁平成4年(行ツ)第172号同5年10月22日第二小法廷判決・民集47巻8号5147頁等参照)。

 (2) 前記事実関係等によれば、島部選挙区は、本件条例制定当時から特例選挙区として存置されているが、これは、島しょ部は、離島として、その自然環境や社会、経済の状況が東京都の他の地域と大きく異なり、特有の行政需要を有することから、東京都の行政施策の遂行上、島しょ部から選出される代表を確保する必要性が高いものと認められる一方、その地理的状況から、他の市町村の区域との合区が、地続きの場合に比して相当に困難であることなどが考慮されてきたものということができる。そして、東京都議会は、都議会のあり方検討会での検討を経た上で、令和2年条例改正の際にも、島部選挙区の配当基数は小さいものの、島しょ部の地理的特殊性等に照らし、島部選挙区を引き続き特例選挙区として存置することを決定したものとうかがわれる。本件選挙の直近に行われた令和2年の国勢調査の人口等基本集計による人口に基づいて計算すると(公職選挙法施行令144条参照)、島部選挙区の配当基数は、0.221となるが、以上で説示したところに鑑みれば、この配当基数が、東京都議会において島部選挙区を特例選挙区として存置することが許されない程度にまで至っているとはいえない。他に、同議会が令和2年条例改正後の本件条例において島部選挙区を特例選挙区として存置していたことが社会通念上著しく不合理であることが明らかであると認めるべき事情もうかがわれない。

 以上によれば、東京都議会が、島部選挙区を特例選挙区として存置していたことは、同議会に与えられた裁量権の合理的な行使として是認することができる。したがって、本件島部選挙区規定は、本件選挙当時、公職選挙法271条に違反していたものとはいえない。

 4(1) 公職選挙法15条8項は、憲法の要請を受け、都道府県議会の議員の定数の各選挙区に対する配分につき、人口比例を最も重要かつ基本的な基準とし、投票価値の平等を強く要求していると解されるところ、前記2(1)の各規定に照らせば、条例の定める定数配分が同項の規定に適合するかどうかについては、都道府県議会の具体的に定めるところが、上記各規定の定める選挙制度の下における裁量権の合理的な行使として是認されるかどうかによって決せられるべきものと解される。

 (2) 本件定数配分規定は、公職選挙法15条8項ただし書を適用して各選挙区に対する定数の配分を定めたものと解されるところ、令和2年の国勢調査の人口等基本集計による人口に基づいて計算すると、本件定数配分規定においては、特例選挙区以外の選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差は1対2.54(以下、較差に関する数値は概算である。)であって、人口比定数(配当基数に応じて同項本文の人口比例原則を適用した場合に各選挙区に配分されることとなる定数)による特例選挙区以外の選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差と差異がなく、また、6選挙区において人口比定数との差異がみられたが、その差はいずれも1人であり、いわゆる逆転現象は3通りにとどまり、定数差はいずれも1人であった。そうすると、前記2(1)の各規定の定める選挙制度の下においては、本件選挙当時における投票価値の不平等は、東京都議会において地域間の均衡を図るために通常考慮し得る諸般の要素をしんしゃくしてもなお一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達していたものとはいえず、また、令和2年条例改正時及び本件選挙当時において、同項ただし書に定める特別の事情があるとの評価が合理性を欠いていたなどというべき事情は見当たらない。

 以上によれば、本件選挙の施行前に本件定数配分規定を改正しなかったことは、東京都議会に与えられた裁量権の合理的な行使として是認することができる。したがって、本件定数配分規定は、本件選挙当時、公職選挙法15条8項に違反していたものとはいえない。

 5 所論は、さらに、本件選挙当時、本件島部選挙区規定及び本件定数配分規定が憲法14条1項、15条1項、3項、92条及び93条に違反する旨をいう。

 しかしながら、本件選挙当時の本件条例による特例選挙区の存置や各選挙区に対する定数の配分が東京都議会に与えられた裁量権の合理的な行使として是認することができることは、前記3(2)及び4(2)において説示したとおりであり、本件選挙当時、本件島部選挙区規定及び本件定数配分規定が憲法の上記各規定に違反していたものとはいえないことは、当裁判所大法廷判決(最高裁平成11年(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁等)の趣旨に徴して明らかというべきである(最高裁平成30年(行ツ)第92号、同年(行ヒ)第108号同31年2月5日第三小法廷判決・裁判集民事261号17頁参照)。

 6 以上の次第であるから、本件請求を棄却した原審の判断は、結論において是認することができる。論旨は、いずれも採用することができない。

 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

 

BOSS事件・ノベルティと商標法上の商品

 

 

              損害賠償請求事件

【事件番号】      大阪地方裁判所判決/昭和61年(ワ)第7518号

【判決日付】      昭和62年8月26日

【判示事項】      被告が電子楽器に使用している商標を電子楽器の宣伝広告及び販売促進用の物品であるTシャツ等に附して顧客に無償で配布する行為は、Tシャツ等を商品とする商標の使用にはあたらないとした事例

             (ボス商標事件)

【参照条文】      商標法

             商標法25

【掲載誌】        無体財産権関係民事・行政裁判例集19巻2号268頁

             判例タイムズ654号238頁

             判例時報1251号129頁

【評釈論文】      特許管理39巻1号45頁

             判例評論352号201頁

 

 

事案の概要

 Xは、指定商品を被服、布製身回品、寝具類(第17類)とする「BOSS」なる商標の商標権者である。

一方、Yは、楽器等の製造販売業者であり、その製造販売する電子楽器に「BOSS」の文字と図形を組み合わせた商標(別紙商標目録)を使用しているが、電子楽器の宣伝広告及び販売促進用の物品(ノベルティ)であるTシャツ等に右商標を附して、電子楽器の購入者に対し抽選等によって無償で配付していた。

XはYに対し、商標権侵害を理由に損害賠償を求めた。

 本判決は、ある物品がそれ自体独立の商品であるかそれとも他の商品の広告媒体等であるにすぎないかは、その物品がそれ自体交換価値を有し独立の商取引の目的物とされているものであるか否かによって判定すべきであると判示したうえで、本件のTシャツ等はそれ自体を取引の目的としているものではなく、将来市場で流通する蓋然性も認められないから、電子楽器の単なる広告媒体にすぎないとして、Yの行為はXの商標権を侵害しないと判断した。

 

 

商標法

(定義等)

第二条 この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。

一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの

二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)

2 前項第二号の役務には、小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供が含まれるものとする。

3 この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。

一 商品又は商品の包装に標章を付する行為

二 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為

三 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為

四 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為

五 役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為

六 役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為

七 電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。次号及び第二十六条第三項第三号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為

八 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為

九 音の標章にあつては、前各号に掲げるもののほか、商品の譲渡若しくは引渡し又は役務の提供のために音の標章を発する行為

十 前各号に掲げるもののほか、政令で定める行為

4 前項において、商品その他の物に標章を付することには、次の各号に掲げる各標章については、それぞれ当該各号に掲げることが含まれるものとする。

一 文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合の標章 商品若しくは商品の包装、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告を標章の形状とすること。

二 音の標章 商品、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告に記録媒体が取り付けられている場合(商品、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告自体が記録媒体である場合を含む。)において、当該記録媒体に標章を記録すること。

5 この法律で「登録商標」とは、商標登録を受けている商標をいう。

6 この法律において、商品に類似するものの範囲には役務が含まれることがあるものとし、役務に類似するものの範囲には商品が含まれることがあるものとする。

7 この法律において、輸入する行為には、外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為が含まれるものとする。

 

(商標権の効力)

第二十五条 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。

(商標権の効力が及ばない範囲)

第二十六条 商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。

一 自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標

二 当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又は当該指定商品に類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する商標

三 当該指定役務若しくはこれに類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又は当該指定役務に類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する商標

四 当該指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について慣用されている商標

五 商品等が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標

六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標

2 前項第一号の規定は、商標権の設定の登録があつた後、不正競争の目的で、自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を用いた場合は、適用しない。

3 商標権の効力は、次に掲げる行為には、及ばない。ただし、その行為が不正競争の目的でされない場合に限る。

一 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(平成二十六年法律第八十四号。以下この項において「特定農林水産物等名称保護法」という。)第三条第一項(特定農林水産物等名称保護法第三十条において読み替えて適用する場合を含む。次号及び第三号において同じ。)の規定により特定農林水産物等名称保護法第六条の登録に係る特定農林水産物等名称保護法第二条第二項に規定する特定農林水産物等(当該登録に係る特定農林水産物等を主な原料又は材料として製造され、又は加工された同条第一項に規定する農林水産物等を含む。次号及び第三号において「登録に係る特定農林水産物等」という。)又はその包装に同条第三項に規定する地理的表示(次号及び第三号において「地理的表示」という。)を付する行為

二 特定農林水産物等名称保護法第三条第一項の規定により登録に係る特定農林水産物等又はその包装に地理的表示を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

三 特定農林水産物等名称保護法第三条第一項の規定により登録に係る特定農林水産物等に関する広告、価格表若しくは取引書類に地理的表示を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に地理的表示を付して電磁的方法により提供する行為

 

 

 

       主   文

 

  原告の請求を棄却する。

  訴訟費用は原告の負担とする。

 

       事   実

 

 第一 当事者の求めた裁判

 一 請求の趣旨

 1 被告は原告に対し、金一二七六万六三三一円を支払え。

 2 訴訟費用は被告の負担とする。

 3 仮執行の宣言

 二 請求の趣旨に対する答弁

 主文同旨

第二 当事者の主張

 一 請求原因

 1 原告は、次の商標権(以下「本件商標権」といい、その登録商標を「本件商標」という。)を有している。

  登録番号 第六九五八六五号

  出願日 昭和三九年三月二八日

  公告日 昭和四〇年八月五日

  登録日 昭和四一年一月二二日

  更新登録日 昭和六一年三月一三日

  指定商品 第一七類 被服、布製身回品、寝具類

 登録商標の構成 別添商標公報のとおり

 2 被告は、本件商標と同一の標章を附したTシャツ、トレーナー、ジャンパー等の衣類を訴外ジャックマン株式会社に製造させ、被告の取引先を通じて多数の消費者に販売し、又は無償で引渡してきた。

 右Tシャツ等は商標法にいうところの「商品」であり、しかも本件商標の指定商品に属するから、被告の右行為は原告の本件商標権を侵害する。

 3 原告は、本件商標を使用して衣類の製造、販売を業としていたが、被告の本件商標権侵害行為により、原告の主力取引先等から本件商標を附した商品についての出所の誤認混同を生じることを理由に取引の停止を通知され、主力取引先への販売が不能となった。被告の本件商標権侵害行為により、原告は、昭和五九年五月二〇日から同六一年八月二〇日までの間に売上利益の減少額一二七六万六三三一円の損害を被った。

 4 よって、原告は被告に対し、本件商標権侵害に基づく損害金一二七六万六三三一円の支払を求める。

 

 

 

賃料債権に対する譲渡担保権について,民事再生法31条1項が類推適用され,担保権の実行手続の中止命令がされた事例

 

 

担保権実行手続中止決定に対する即時抗告事件

【事件番号】      福岡高等裁判所那覇支部決定/平成21年(ラ)第44号

【判決日付】      平成21年9月7日

【判示事項】      賃料債権に対する譲渡担保権について,民事再生法31条1項が類推適用され,担保権の実行手続の中止命令がされた事例

【判決要旨】      賃料債権に対する譲渡担保権について、民事再生法31条1項が類推適用されるとした上で、その実行手続を中止すれば、再生債務者が資金繰りに窮して破産に移行するのを回避させる見込みがあり(再生債権者の一般の利益に適合)、かつ、一時的に譲渡担保権の実行手続が中止されたとしても、譲渡担保権者が将来にわたって継続的に賃料を収受することができる(担保権者に不当な損害を及ぼすおそれがない)と見込まれるから、その中止命令によって被る損害は、不当なものと認めるに足りない。

【参照条文】      民事再生法31-1

【掲載誌】        判例タイムズ1321号278頁

             金融・商事判例1333号55頁

 

 

 

 1 事案の概要

 (1)当事者等及び譲渡担保権の設定等

 Xは,雑貨卸業を営む株式会社であったが,当該事業を提携先に営業譲渡するとともに,自社倉庫を当該提携先に賃貸した。

 Y銀行は,Xの取引先銀行であるが,上記賃貸に係る賃料債権について,Xから譲渡担保権の設定を受け,Yに開設したX名義の別段預金口座を賃料振込み口座として指定していた。Yは,当該賃料を,Yを含めた複数の金融機関に対する按分弁済の原資に充てていた。

 (2)民事再生の申立て及び本件譲渡担保の実行手続の中止命令の申立て

 その後,Xの申立てにより,Xにつき再生手続が開始された。

 Xは,そのころ,本件譲渡債権がXの年間売上高の約3割を占めていることなどを主張し,本件譲渡担保の実行手続の中止命令を申し立てた。

 

 

 

民事再生法

(担保権の実行手続の中止命令)

第三十一条 裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、再生債権者の一般の利益に適合し、かつ、競売申立人に不当な損害を及ぼすおそれがないものと認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、相当の期間を定めて、第五十三条第一項に規定する再生債務者の財産につき存する担保権の実行手続の中止を命ずることができる。ただし、その担保権によって担保される債権が共益債権又は一般優先債権であるときは、この限りでない。

2 裁判所は、前項の規定による中止の命令を発する場合には、競売申立人の意見を聴かなければならない。

3 裁判所は、第一項の規定による中止の命令を変更し、又は取り消すことができる。

4 第一項の規定による中止の命令及び前項の規定による変更の決定に対しては、競売申立人に限り、即時抗告をすることができる。

5 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

6 第四項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。

 

 

オランダ人戦後補償請求事件控訴審判決

 

 

              損害賠償請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成11年(ネ)第247号

【判決日付】      平成13年10月11日

【判示事項】      オランダ人戦後補償請求事件控訴審判決

             一 陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約三条は、戦争被害について、個人に交戦当事者である国に対する出訴権を与えるものではない

             二 サンフランシスコ平和条約一四条Bの連合国による放棄により、連合国及びその国民の日本国及びその国民に対する戦争被害に関する請求権は、実体的に消滅した

【参照条文】      陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約

             サンフランシスコ平和条約14のB

【掲載誌】        訟務月報48巻9号2123頁

             判例タイムズ1072号88頁

             判例時報1769号61頁

【評釈論文】      ジュリスト臨時増刊1246号266頁

             訟務月報48巻9号49頁

 

 

 

一 事案の概要

本件は、第二次世界大戦中の旧オランダ領東インド(現インドネシア)地域において、日本軍の構成員から虐待等の被害を受けたとして、日本軍の捕虜又は民間人抑留者であったオランダ人八名が、日本国に対して、一九〇七年の陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約(ヘーグ条約)三条に基づいて、原告一人当たり二万二〇〇〇米国ドルの賠償を求めた事案である。

 一審判決は、ヘーグ条約三条は、個人の出訴権を認めたものではないとして、請求を棄却したので、これに対して原告らから不服申立てがあった。控訴審では、この個人の出訴権の問題のほかに、国側から、サンフランシスコ平和条約一四条Bの請求権放棄によって、個人の請求は法律上不可能になった旨の主張が新たに出され、この点も争点になった。

 二 個人の出訴権の有無

 本判決は、個人の出訴権を否定した。その理由として、おおむね次のように述べている。

 国際社会において、個人の利益主張をどのような範囲、手続で認めるかは、国家間の外交交渉によって定められる。戦争被害の賠償については、外交交渉の結果、講和条約の一内容として国家間での合意がされる。そこでは、戦争の勝敗や戦敗国の経済力(支払能力)、戦後世界の復興、そのための資源の確保等あらゆる要素を考慮して交渉が行われる。

そして、その結果としての賠償は、国家間でやりとりされる。個人の被害の救済の在り方についても、外交交渉によって定められ、被害があるからといって出訴権が認められるわけではない。

 

 

 

陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約

前期規則の条項に違反したる交戦当事者は損害あるときは之が賠償の責を負ふべきものとす。交戦当事者はその軍隊を組成する人員の一切の行為に付き責任を負ふ。

 

 

サンフランシスコ平和条約

主な内容

戦争状態の終結、日本の主権の回復:日本は個別的および集団的自衛権をもち集団的安全保障条約に参加できること。

領土の規定:日本は朝鮮の独立を承認、台湾・澎湖諸島、南樺太・千島列島を放棄する。琉球諸島と小笠原諸島はアメリカの統治下に置かれた。

賠償:外国為替上の負担を日本にかけない、とされ事実上無賠償となった。

 

 

 

       主   文

 

 1 本件控訴をいずれも棄却する。

 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 当事者の求めた裁判

 1  控訴人ら

  (1) 原判決を取り消す。

  (2) 被控訴人は、控訴人ら各自に対し、二万二〇〇〇米国ドル及びこれに対する平成六年四月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

 2 被控訴人

  控訴棄却

第2 事案の概要

 1 本件は、控訴人らが、第二次世界大戦中、オランダ領東インドにあった日本軍捕虜収容所又は民問人抑留者収容所において、日本軍の構成員から、一九〇七年の陸戦の法規慣例に関する条約(ヘーグ陸戦条約)に附属する陸戦の法規慣例に関する規則(ヘーグ陸戦規則)及び一九二九年の捕虜の待遇に関する条約(ジュネーブ条約)の双方又は前者に違反する虐待等の被害を受けたとして、被控訴人に対し、へーグ陸戦条約の三条及び同条と同内容の国際慣習法に基づいて、損害の賠償を求めた事案である。

 原判決は、控訴人らの請求を棄却したので、これに対して控訴人らが不服を申し立てたものである。

 

 

手形の振出人が手形の記載上法人と個人のいずれであるか明らかでない場合における手形責任

 

 

              約束手形金請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和46年(オ)第209号

【判決日付】      昭和47年2月10日

【判示事項】      手形の振出人が手形の記載上法人と個人のいずれであるか明らかでない場合における手形責任

【判決要旨】      法人の代表者が手形に振出人として署名した場合において、手形の記載のみでは、その記載が法人のためにする旨の表示とも、代表者個人のためにする表示とも解されるときは、手形所持人は、法人または代表者個人のいずれに対しても、手形金の請求をすることができ、右請求を受けた者は、その振出が真実いずれの趣旨でなされたかを知つていた直接の相手に対しては、その旨の人的抗弁を主張することができる。

【参照条文】      手形法1

             手形法8

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集26巻1号17頁

 

 

手形法

第一条 為替手形ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ

一 証券ノ文言中ニ其ノ証券ノ作成ニ用フル語ヲ以テ記載スル為替手形ナルコトヲ示ス文字

二 一定ノ金額ヲ支払フベキ旨ノ単純ナル委託

三 支払ヲ為スベキ者(支払人)ノ名称

四 満期ノ表示

五 支払ヲ為スベキ地ノ表示

六 支払ヲ受ケ又ハ之ヲ受クル者ヲ指図スル者ノ名称

七 手形ヲ振出ス日及地ノ表示

八 手形ヲ振出ス者(振出人)ノ署名

 

第八条 代理権ヲ有セザル者ガ代理人トシテ為替手形ニ署名シタルトキハ自ラ其ノ手形ニ因リ義務ヲ負フ其ノ者ガ支払ヲ為シタルトキハ本人ト同一ノ権利ヲ有ス権限ヲ超エタル代理人ニ付亦同ジ

 

 

平和相互銀行事件・特別背任罪における第三者図利目的があるとされた事例

 

 

商法違反被告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷決定/平成7年(あ)第246号

【判決日付】      平成10年11月25日

【判示事項】      特別背任罪における第三者図利目的があるとされた事例

【判決要旨】      相互銀行の行員らが、土地の購入資金及び開発資金等の融資に当たり、右融資は土地の売主に対し遊休資産化していた土地を売却して代金を直ちに入手できるなどの利益を与えるとともに、融資先に対し大幅な担保不足であるのに多額の融資を受けられる利益を与えることになることを認識しつつ、あえて右融資を実行することとしたものであり、相互銀行と密接な関係にある売主に所要の資金を確保させることによりにひいて相互銀行の利益を図るという動機があったにしても、それが融資の決定的な動機ではなかったなどの事情の下では、右役員らに特別背任罪における第三者図利目的を認めることができる。

【参照条文】      商法(平2法64号改正前)486-1

             刑法(平7法91号改正前)247

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集52巻8号570頁

             裁判所時報1232号291頁

 

 

事案の概要

 本件は、当時の株式会社平和相互銀行(昭和61年10月住友銀行に吸収合併)の監査役で顧問弁護士であり、また経営上強い発言力を持っていた被告人が、代表取締役らと共謀の上、不正融資を行ったとして、特別背任の共謀共同正犯に問われた事案である。

起訴された融資は4件であり、一、二審でいずれも特別背任罪の成立が肯定され、被告人が上告を申し立てていたが、本決定は、上告趣意を不適法として排斥した上、時間的に最も先行し、かつ最も争われてきた、昭和57年の88億円の融資に関して、特別背任罪の成立を肯定し、殊に図利目的の存在を肯認する職権判断を示している。

 

 

会社法

(取締役等の特別背任罪)

第九百六十条 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一 発起人

二 設立時取締役又は設立時監査役

三 取締役、会計参与、監査役又は執行役

四 民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役又は執行役の職務を代行する者

五 第三百四十六条第二項、第三百五十一条第二項又は第四百一条第三項(第四百三条第三項及び第四百二十条第三項において準用する場合を含む。)の規定により選任された一時取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、会計参与、監査役、代表取締役、委員(指名委員会、監査委員会又は報酬委員会の委員をいう。)、執行役又は代表執行役の職務を行うべき者

六 支配人

七 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人

八 検査役

2 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は清算株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該清算株式会社に財産上の損害を加えたときも、前項と同様とする。

一 清算株式会社の清算人

二 民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された清算株式会社の清算人の職務を代行する者

三 第四百七十九条第四項において準用する第三百四十六条第二項又は第四百八十三条第六項において準用する第三百五十一条第二項の規定により選任された一時清算人又は代表清算人の職務を行うべき者

四 清算人代理

五 監督委員

六 調査委員

 

(株式会社と役員等との関係)

第三百三十条 株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

 

 

2時間後に返還する約束で自動車を借り受けた者が約1箇月後に起こした事故につき貸主が自動車損害賠償保障法3条にいう運行供用者に当たらないとされた事例

 

 

損害賠償請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成6年(オ)第1860号

【判決日付】      平成9年11月27日

【判示事項】      二時間後に返還する約束で自動車を借り受けた者が約一箇月後に起こした事故につき貸主が自動車損害賠償保障法三条にいう運行供用者に当たらないとされた事例

【判決要旨】      甲から二時間後に返還する約束で自動車を借り受けた乙が約一箇月間にわたってその使用を継続した後に起こした事故について、乙が、長期間乗り回す意図の下に、二時間後に確実に返還するかのように装い甲を欺いて借り受け、返還期限を経過した後は、甲に対してその場しのぎの約束を繰り返して返還を引き延ばしており、甲は乙から連絡を受ける都度自動車を直ちに返還するよう求めていたなど判示の事実関係の下においては、甲は、自動車損害賠償保障法三条にいう運行供用者に当たらない。

【参照条文】      自動車損害賠償保障法

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事186号227頁

             裁判所時報1208号408頁

             判例タイムズ960号95頁

             判例時報1626号65頁

 

 

自動車損害賠償保障法

(自動車損害賠償責任)

第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人らの負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人室野克昌、同杉山利朗の上告理由について

 原審の確定した事実関係によれば、1 本件自動車の所有者である被上告人は、平成三年一二月一〇日、友人である甲野太郎に対して、二時間後に返還するとの約束の下に本件自動車を無償で貸し渡したところ、甲野は、右約束に反して本件自動車を返還せず、約一箇月間にわたってその使用を継続し、平成四年一月一一日、本件自動車を運転中に本件事故を起こした、2 甲野は、本件自動車を長期間乗り回す意図の下に、二時間後に確実に返還するかのように装って被上告人を欺き、本件自動車を借り受けたものであり、返還期限を経過した後は、度々被上告人に電話をして、返還の意思もないのにその場しのぎの約束をして返還を引き延ばしていた、3 被上告人は、甲野から電話連絡を受けた都度、本件自動車を直ちに返還するよう求めており、同人による使用の継続を許諾したものではなかったが、自ら直接本件自動車を取り戻す方法はなく、同人による任意の返還に期待せざるを得なかった、というのであり、以上の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができる。そして、右事実関係の下においては、本件事故当時の本件自動車の運行は専ら甲野が支配しており、被上告人は何らその運行を指示、制御し得る立場になく、その運行利益も被上告人に帰属していたとはいえないことが明らかであるから、被上告人は、自動車損害賠償保障法三条にいう運行供用者に当たらないと解するのが相当である。右と同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。所論引用の各判例は、事案を異にし本件に適切ではない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

『ケースでわかる実践「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」』中央経済社

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 事業再生・倒産プラクティスグループ 著

 

定価:2,860円(税込)

中央経済社

発行日:2022/11/01

A5判 / 236頁

 

本の紹介

2022年4月15日から適用が開始された「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」を可能な限り平易に解説。想定事例を通して手続の選択や方針の決定などの新実務が理解できる。

 

 

コメント

非常に簡単な本。

ガイドラインの概要がわかる。

 

 

目次

はじめに―総論―

1 中小企業を取り巻く状況

2 中小企業の事業再生等に関するガイドライン等の策定

3 事業再生・倒産処理手続の概観

 

第1部 制度概要

第1 概要

1 「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の全体像

2 保証債務の整理

3 専門家費用の補助

4 税務処理

 

第2 再生型私的整理手続

1 再生型私的整理手続の概要

2 再生型私的整理手続の流れ(第1フェーズ)

3 再生型私的整理手続の流れ(第2フェーズ)

4 再生型私的整理手続の流れ(第3フェーズ)

 

第3 廃業型私的整理手続

1 廃業型私的整理手続の概要

2 廃業型私的整理手続の流れ(第1フェーズ)

3 廃業型私的整理手続の流れ(第2フェーズ)

4 廃業型私的整理手続の流れ(第3フェーズ)

5 廃業型私的整理手続から再生型私的整理手続への移行

 

第4 保証債務の整理(経営者保証に関するガイドライン)

1 保証ガイドラインの対象となりうる保証人

2 対象債権者

3 一体型

4 支援専門家

5 保証ガイドラインによる保証債務整理手続の概略

6 保証ガイドラインによる保証債務整理手続(第1フェーズ)

7 保証ガイドラインによる保証債務整理手続(第2フェーズ)

8 保証ガイドラインによる保証債務整理手続(第3フェーズ)

9 廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方

 

第2部 想定事例

事例1 スポンサーに頼らない自主再生による再生型私的整理手続

事例2 法人格を維持しつつスポンサーを選定する再生型私的整理手続

事例3 製造業のスポンサー型(会社分割を用いた「第二会社方式」)による再生

事例4 医療法人社団のスポンサー型(事業譲渡)による再生

事例5 事業継続を行っている法人の廃業型私的整理手続

事例6 事業を停止した後に、廃業型私的整理手続を利用する事例

 

第3部 資料

資料1 中小企業の事業再生等に関するガイドライン

資料2 「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」Q&A

資料3 「中小企業の事業再生等に関するガイドライン(再生型私的整理手続)」に基づき策定された事業再生計画により債権放棄等が行われた場合の税務上の取扱いについて

資料4 「中小企業の事業再生等に関するガイドライン(廃業型私的整理手続)」に基づき策定された弁済計画により債権放棄が行われた場合の税務上の取扱いについて

著者紹介

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 事業再生・倒産プラクティスグループ(あんだーそんもうりともつねほうりつじむしょ じぎょうさいせいとうさんぷらくてぃすぐるーぷ)

 

 

所有権移転仮登記に後れて目的物件につき権原を取得し占有を開始した第三者と本登記経由以前の不法占有を理由とする仮登記権利者に対する損害賠償責任

 

 

土地所有権移転本登記手続等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和52年(オ)第589号

【判決日付】      昭和54年9月11日

【判示事項】      所有権移転仮登記に後れて目的物件につき権原を取得し占有を開始した第三者と本登記経由以前の不法占有を理由とする仮登記権利者に対する損害賠償責任

【判決要旨】      甲が所有権移転仮登記を経由している乙所有の土地について、丙が乙からの代物弁済を原因として所有権移転登記を経由して占有を開始したのちに、甲が右仮登記に基づく本登記を経由した場合でも、丙は右本登記経由の時以前の時点における占有については甲に対し不法行為を理由とする損害賠償責任を負担することはない。

【参照条文】      不動産登記法7-2

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事127号451頁

             判例タイムズ399号116頁

             金融・商事判例585号10頁

             判例時報944号52頁

             金融法務事情921号34頁

 

 

不動産登記法

平成十六年法律第百二十三号

第六款 仮登記

(仮登記)

第百五条 仮登記は、次に掲げる場合にすることができる。

一 第三条各号に掲げる権利について保存等があった場合において、当該保存等に係る登記の申請をするために登記所に対し提供しなければならない情報であって、第二十五条第九号の申請情報と併せて提供しなければならないものとされているもののうち法務省令で定めるものを提供することができないとき。

二 第三条各号に掲げる権利の設定、移転、変更又は消滅に関して請求権(始期付き又は停止条件付きのものその他将来確定することが見込まれるものを含む。)を保全しようとするとき。

(仮登記に基づく本登記の順位)

第百六条 仮登記に基づいて本登記(仮登記がされた後、これと同一の不動産についてされる同一の権利についての権利に関する登記であって、当該不動産に係る登記記録に当該仮登記に基づく登記であることが記録されているものをいう。以下同じ。)をした場合は、当該本登記の順位は、当該仮登記の順位による。

 

 

 X(被上告人)は、訴外Aに対する債権の担保として同人所有の土地につき停止条件付代物弁済契約を締結し、所有権移転登記を経由したが、そののちY(上告人)は右土地につき占有権原を取得し、右土地の占有を開始した。

その後右土地の所有権を取得したXがYに対し本登記手続に対する承諾と土地不法占有を理由とする損害賠償を請求したのが本件である。

 本件の問題は、右損害賠償請求の本登記実行以前の時期におけるYの土地占有にも向けられている点である。

すなわち、仮登記に基づいて本登記がされた場合にその対抗力が仮登記の時まで遡及するかどうかについては遡及説と不遡及説の対立があり、近時の学説は、ほとんど一致して不遡及説をとる(我妻・物権法107頁、於保・物権法上78頁、幾代・不登法(旧版)166頁、杉之原・不登法110頁等)のに対し、判例は遡及説をとる(大決大13・8・2民集3巻467頁以下の多数の大審院判例、最二小判昭31・6・28民集12巻375頁等。不遡及説に立つことを明言するものとして大阪高判昭40・12・16高民集18巻572頁)。

しかし、遡及説をとることによつて直ちに本件のYのような後順位権利者の占有は本登記経由時から仮登記権利者の所有権取得の時点まで遡つて違法となり、これについて損害賠償請求義務が生ずることになるということはできない。

後順位権利者の占有は本登記がされるまでは適法なのであるから、これを遡つて違法とすることは法的安定を甚しく害するものといわなければならないからである(最高一小判昭36・6・29民集15巻1764頁に対する川添調査官の解説-同年度最判解説260頁-参照)。

本判決は、対抗力遡及の問題には触れずに、右のような違法の遡及は認め難いとの理由によつて、本登記経由以前の時期の占有につき本登記経由を条件として損害金支払義務を認めた原判決を破棄し、右時期の占有について損害金支払義務を否定した。

このように解すると、後順位権利者は、仮登記権利者に対する本登記承諾義務の履行を怠ることによつてそれだけ目的物件の占有による利益を収得できることになるという弊害を生ずることも考えられるが(幾代・不登法(新版)391頁以下、仲江「仮登記の効力と本登記手続」不登講座II総論(2)234頁以下参照)、これについては義務不履行ないし不当抗争に対する責任を追求するという方法によつて対応することも可能であろう。

 

 

 

 

 

       主   文

 

 被上告人の本訴請求中上告人に対し昭和三九年九月一四日以降別紙目録(一)記載の各土地につき被上告人が同目録(二)記載の仮登記に基づく本登記を経由するまでの期間について右土地の賃料相当額の金員の支払を求める請求を右本登記手続の完了を条件として認容した部分につき、原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。

 前項の被上告人の請求を棄却する。

 上告人のその余の上告を棄却する。

 訴訟の総費用は第一、二、三審を通じてこれを一〇分し、その一を被上告人の、その余を上告人の各負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人前田外茂雄の上告理由三について

 原審の確定した事実関係のもとにおいて、被上告人が遅くとも別紙目録(一)記載の各土地(以下「本件土地」という。)につき同目録(二)記載の仮登記(以下「本件仮登記」という。)に基づく本登記手続を求める訴訟において勝訴の確定判決を得た時に本件土地の所有権を取得したものとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

 その余の上告理由について

 原審の確定したところによれば、上告人は、訴外谷本猛の所有していた本件土地につき、被上告人が停止条件付代物弁済契約に基づく本件仮登記を経由したのちに谷本との間の代物弁済契約に基づいて所有権移転登記を経由し、遅くとも昭和三九年九月一四日までにこれを占有するに至つたものであるところ、被上告人が本件土地の所有権を取得したのは、前記本登記手続請求訴訟の判決の確定した日であることが記録上明らかな昭和四二年四月八日であるというのである。以上の事実関係に基づき、原審は、被上告人において将来右本登記手続を完了することを条件として、被上告人が本件土地の所有権を 得する以前の昭和三九年九月一四日以降右本登記経由までの期間についても、上告人が被上告人に対し右土地の賃料相当額の損害金の支払義務を負うものと認めたのであるが、右は、被上告人の土地所有権取得の時期より以前の期間についてその損害金請求を認容する点ですでに是認し難いものであるのみならず、被上告人が右停止条件付代物弁済契約に基づき本件土地の所有権を取得し本件仮登記に基づく本登記を経由しても、これによつて、上告人は遡つて右本登記以前の権原に基づく土地占有につき被上告人に対し不法占有者としての損害賠償責任を負うものではないから、原審はこの点においても法令の解釈適用を誤つたものというべきであつて、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は右の限度において理由があり、原判決の右部分は破棄を免れず、更に第一審判決中前記期間につき上告人に賃料相当額の損害金の支払を命じた部分は取消を免れない。被上告人の前記期間についての損害金請求は、失当として棄却すべきものである。

 よつて、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八六条、三八四条、九六条、九二条に従い、識判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

被告会社の元従業員・原告が,①被告会社に対し,雇用契約終了が不当な雇止めであるとして,雇用契約上の地位確認及び賃金等の支払,離職票への虚偽事実記載によって生じた損害賠償を,②被告らに対し,客の被告による暴言等があったのに被告会社の安全確保配慮懈怠で生じた損害賠償を各求めた(カスタマーハラスメント)事案。

 

 

地位確認等請求事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/平成29年(ワ)第29254号

【判決日付】      平成30年11月2日

【判示事項】      被告会社の元従業員・原告が,①被告会社に対し,雇用契約終了が不当な雇止めであるとして,雇用契約上の地位確認及び賃金等の支払,離職票への虚偽事実記載によって生じた損害賠償を,②被告らに対し,客の被告による暴言等があったのに被告会社の安全確保配慮懈怠で生じた損害賠償を各求めた事案。

裁判所は,①のうち地位確認の訴えは,確認の利益を欠くとして却下し,賃金等請求は,原告が雇用契約の意思表示をしなかったため同契約は更新されなかったと認められるから理由がなく,損害賠償請求は,離職票記載に誤りはないので不法行為は成立しないとして棄却し,②請求につき,被告の行為で原告が精神的な傷害を被ったとは認められず,原告主張の被告会社による安全確保義務につき,被告会社は相応の体制及び措置を講じていて,いずれも不法行為は成立しないとして棄却した事例

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

 

労働契約法

(解雇)

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

(有期労働契約の更新等)

第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

 

 

 

       主   文

 

 1 本件請求のうち,被告会社に対する平成29年2月21日から同年8月20日までの間,雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める訴えを却下する。

 2 原告の被告会社に対するその余の請求及び被告Y1に対する請求をいずれも棄却する。

 3 訴訟費用は,原告の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

 1 原告が,被告会社に対し,平成29年2月21日から同年8月20日までの間,雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

 2 被告会社は,原告に対し,74万2068円及び内11万4000円に対する平成29年4月6日から,内13万5375円に対する同年5月6日から,内12万2193円に対する同年6月6日から,内12万1125円に対する同年7月6日から,内12万8250円に対する同年8月6日から,内12万1125円に対する同年9月6日から,各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

 3 被告らは,原告に対し,連帯して118万2780円及びこれに対する平成28年7月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 4 被告会社は,原告に対し,55万円及びこれに対する平成29年3月29日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

 1 事案の概要

 本件は,小型食品スーパーマーケットを経営する被告会社の従業員であった原告が,(1)被告会社に対し,平成29年2月20日をもって原告との雇用契約を終了したことが不当な雇止めであると主張して,同月21日から同年8月20日の間雇用契約上の地位にあることの確認並びに上記期間中の賃金(詳細は別表のとおりである。)及び賃金支払日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払,さらに被告会社が離職票に虚偽の事実を記載したと主張して,不法行為に基づく損害賠償として慰謝料等55万円及び不法行為の日である同年3月29日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払,(2)被告Y1の暴言及び乱暴な行為があったにもかかわらず,被告会社は原告の生命,身体の安全確保の配慮をせずおり,損害を被ったと主張して,被告らに対し,不法行為に基づき,損害金13万2780円及び慰謝料105万円並びにこれらに対する不法行為の日である平成28年7月20日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害の連帯支払を求めた事案である。