被告会社の元従業員・原告が,①被告会社に対し,雇用契約終了が不当な雇止めであるとして,雇用契約上の地位確認及び賃金等の支払,離職票への虚偽事実記載によって生じた損害賠償を,②被告らに対し,客の被告による暴言等があったのに被告会社の安全確保配慮懈怠で生じた損害賠償を各求めた(カスタマーハラスメント)事案。
地位確認等請求事件
【事件番号】 東京地方裁判所判決/平成29年(ワ)第29254号
【判決日付】 平成30年11月2日
【判示事項】 被告会社の元従業員・原告が,①被告会社に対し,雇用契約終了が不当な雇止めであるとして,雇用契約上の地位確認及び賃金等の支払,離職票への虚偽事実記載によって生じた損害賠償を,②被告らに対し,客の被告による暴言等があったのに被告会社の安全確保配慮懈怠で生じた損害賠償を各求めた事案。
裁判所は,①のうち地位確認の訴えは,確認の利益を欠くとして却下し,賃金等請求は,原告が雇用契約の意思表示をしなかったため同契約は更新されなかったと認められるから理由がなく,損害賠償請求は,離職票記載に誤りはないので不法行為は成立しないとして棄却し,②請求につき,被告の行為で原告が精神的な傷害を被ったとは認められず,原告主張の被告会社による安全確保義務につき,被告会社は相応の体制及び措置を講じていて,いずれも不法行為は成立しないとして棄却した事例
【掲載誌】 LLI/DB 判例秘書登載
労働契約法
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
(有期労働契約の更新等)
第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。
主 文
1 本件請求のうち,被告会社に対する平成29年2月21日から同年8月20日までの間,雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める訴えを却下する。
2 原告の被告会社に対するその余の請求及び被告Y1に対する請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 原告が,被告会社に対し,平成29年2月21日から同年8月20日までの間,雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2 被告会社は,原告に対し,74万2068円及び内11万4000円に対する平成29年4月6日から,内13万5375円に対する同年5月6日から,内12万2193円に対する同年6月6日から,内12万1125円に対する同年7月6日から,内12万8250円に対する同年8月6日から,内12万1125円に対する同年9月6日から,各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3 被告らは,原告に対し,連帯して118万2780円及びこれに対する平成28年7月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告会社は,原告に対し,55万円及びこれに対する平成29年3月29日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 事案の概要
本件は,小型食品スーパーマーケットを経営する被告会社の従業員であった原告が,(1)被告会社に対し,平成29年2月20日をもって原告との雇用契約を終了したことが不当な雇止めであると主張して,同月21日から同年8月20日の間雇用契約上の地位にあることの確認並びに上記期間中の賃金(詳細は別表のとおりである。)及び賃金支払日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払,さらに被告会社が離職票に虚偽の事実を記載したと主張して,不法行為に基づく損害賠償として慰謝料等55万円及び不法行為の日である同年3月29日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払,(2)被告Y1の暴言及び乱暴な行為があったにもかかわらず,被告会社は原告の生命,身体の安全確保の配慮をせずおり,損害を被ったと主張して,被告らに対し,不法行為に基づき,損害金13万2780円及び慰謝料105万円並びにこれらに対する不法行為の日である平成28年7月20日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害の連帯支払を求めた事案である。