石井光太氏の「物乞う仏陀」を読了いたしました。照れ

こちらは2008年が初版ですが、石井光太氏31才での衝撃デビュー作でもあります。


25才の夏、石井氏は仕事を辞めて東南アジアへと旅立ちました。

P12本書引用

どの国にも、障害のある物乞いはいた。盲人、ろうあ者、手足の欠損者、ハンセン病や象皮病を患ったもの、あらゆる種類の障害者が路上に座り込み手を出し慈悲を乞うていた。


石井氏が出会ったベトナムの物乞い達は、常に歩き回らなければならなかったそうです(定位置にいると追い払われる)。 ある物乞いの少年は、人を見れば近づいて金をねだります。勿論怒鳴り散らされるばかりで、小銭を恵んでくれるのは数十人に1人~100人に1人ですが、少年は村に残してきた弟を学校に行かせるために飲まず食わずで働いているのです。


雨の日の街人が足早に往来する、そんな日でも少年はびしょ濡れになって金を乞いますが、そんな少年を街人は嫌悪感をあらわにして突き飛ばします。少年が帰る大部屋には、同じ物乞いの数家族が(家族みんなで物乞い業)、物乞いの仕事を終えて楽しげに団欒をして過ごしています。 そんな毎日が彼らの日常なのです。(貧困による家族からの孤立はない)


P162本書引用

「日本ではホームレスになることを恥ずかしいと思っている」 という著者に対して


「恥ねぇ」とベトナムのホームレスはつぶやいた。「そんなこと考えたことないよ。だって仕事だから。わしは眼が見えないし、学歴もない。できるのは物乞いしかない。だから乞食になったんだ。なぜそれが恥ずかしいんだ」中略


どんなに貧しくても、彼らにとって物乞いは生きるための糧を得る正当な手段であり仕事なのだ。


~インドのストリートチルドレン~(画像ネット)


インドでは子供の浮浪者は珍しくありません。インドの貧しい子供たちは、マフィアにより物乞いの際により多くの憐れみを買うように、手足を切り取られたり、下唇を剥がされたり、目に硫酸をいれて失明させられたりします。 これは特殊な事例ではなく、ある日突然に断りもなく起こることなのです。

足を切り取られ障害を持った少年たちは、障害を持ったことにより物乞いで得るお金は増えますが、足の治療費として収入の大半をマフィアに奪われてしまうそうです。ある42歳の男性は27年間もマフィアに「足の治療費」としてのお金を取られ続けているそうです。

インドのマフィアは乞食の家に生まれたり、誘拐されたり、親の暴力から逃げ出してひとりになったストリートチルドレンを捕まえて足を切断し、何十年にもわたって物乞いをさせて金を搾取するのです。

ストリートチルドレンたちは常にマフィアに見張られているので逃げ出すことはできません。さらにマフィアは彼らの臓器を摘出し売買します。(マフィアは睡眠薬を使って彼らを眠らせている間に内臓を取り出す)

インドにはマフィア管轄のレンタ チャイルドのコロニーがあり、赤ん坊のうちは5歳までは乞食に貸し出しをされ(大人が物乞いをするにあたって、赤ん坊を抱いた方が多くのお金が集まるため)、その赤ん坊が5歳を過ぎると手や足を切断し、路上で物乞いをさせます。

障害者となった物乞いが稼ぐ日当のうちの75%をマフィアが奪い、逃げようとすれば必ず殺されます。そんなマフィアたちもまた、ストリートチルドレンとして育ち、マフィアとなる運命を背負わされた人たちなのです。

石井光太氏は1人でインドのマフィア組織に潜入し、ストリートチルドレンの闇を暴きました。本書は彼が31歳で綴った衝撃のノンフィクションであり、16年前に綴られた一冊であります。


石井氏はレンタル チャイルドについて、さらに詳しくこちらの著書で綴っておられますので、こちらもポチってみました。

 

我々が経験したことのないような、抗うことのできないほどの絶対宿命の中に生まれ落ちる人々がいます。不平等などという言葉では言い表せないほどの環境のなかで、貧困にあえぐ人々のなかにわけいり、ともに泣き、笑い、唇を噛みしめた石井氏の渾身の一冊となりました。