今月上旬、マネーポストに日本電産の大量退職や値切りが5回必要などを報じた記事が掲載され、話題になりました。

 

この点についてコメントしたコラム(ブログ)「記事『日本電産で大量退職』について。あるいは社員ファーストじゃない会社の末路」を紹介します。

 

 

 

要約すると、

 

・仕事に個人崇拝を持ち込むのは最悪だ。個人崇拝を混ぜ込むと、間違ったことを言っても反論できなくなる。神様に反論する人はいないから。

・意味がある仕事を与えないと、どこででも働ける有能な人は働く意味を求めて転職してしまう。ここでしか働けないから、仕事の意味なんて考える余裕がない社員だけが残る。

・365日スタンバイする仕事熱心さ&業界最高レベルの優秀さの両方を兼ね備えた人間がいたとして、そんなに優秀な人が、この会社で働く必要があるのか。

・日本電産という会社も、それを作ってきた永守さんも偉大だとは思うけれども、徹底的に時代に合わなくなってきているし、それをアジャストもできていない。

 

非常に的確な指摘と思いましたので、紹介しました。

 

日本電産は5人の副社長候補を選びました。そのうち1名を来年社長にするそうです。

このような古い理不尽な文化を変えられるのでしょうか。

 

日本電産で大量退職 元幹部社員が告白「永守重信会長への過剰な忖度が蔓延している」


https://news.yahoo.co.jp/articles/73d446a7ef76e69aa2a7ed9d06a872e5312d3a46

という記事が大変話題になっていた。
もちろん僕は中の人ではないので、内容の妥当性については分からない。でも、いかにもありそうな話ではある。

日本電産にかぎらず、昭和の文化を引きずっている企業であれば、この記事で描写されている現象は、多かれ少なかれ起きている。
日本電産には永守さんという偉大なカリスマがいるために、その傾向が極端なのだ。もはやコミカルなレベルで極端。
さらに偉大なカリスマはまだ権力を握っているので、この傾向がいまでも温存されている。多くの会社は平成の30年間で少しずつ脱却したのに。

そういう意味で、「中のことは分からないけれども、いかにもありそうな話だなぁ」と思いながらこの記事を読んだ。
この記事から読み取れる「伝統的日本的経営のマズさ」は極めて示唆に富むので、記事を読んで僕が感じたこと(感想文)を皆さんに共有したい。

 

【1】トップへの過剰な忖度
永守さんより飯を早く食うとか食わないとか・・・。ブラインドの角度がどうとか・・。この記事、気楽な外部の人間として読むとむしろコミカルなのだが、それは文脈無視で永守さんの教えに沿おうとしているから。下々が言葉尻をそのまま実行しようとしている。だからちぐはぐなことが起きる。(文脈無視でトップの言葉に従うことを本人が強いている節もあるんでしょう・・)

それにこういうのって、仕事に全く関係ない、個人崇拝ですよね。
仕事に個人崇拝を持ち込むのは最悪だ。永守さんがすごいのは経営力が高く、彼の言う通りにすれば会社が成長するから。そこに個人崇拝を混ぜ込むと、間違ったことを言っても反論できなくなる。神様に反論する人はいないから。
でも実際にはどんなにすごい経営者も神様ではなく人間なので、間違える(特にトシを取ると)。

 

【2】働く意味を語れない

つまり現代では「社員に働く意味を提供すること」は経営者の重要な仕事なのだ。
例えばBullshit Job(世の中の役に立たない仕事。例えば偉い人のご機嫌を損ねないように社内会議の資料を5段階でレビューするとか)を排除し、有意義な仕事だけにするみたいなこと。
Bullshit Jobの排除は、生産性を上げて利益を確保するためだけでない。意味がある仕事を与えないと、どこででも働ける有能な人は働く意味を求めて転職してしまうのだ。そして「ここでしか働けないから、仕事の意味なんて考える余裕がない社員」だけが残る。当然組織の競争力は落ちる。

 

【3】土日のメール
永守さんから土日を問わず、一斉メールが次々と送られてくる。幹部はこれに即座に回答しなければいけないらしい。もはやお休みではない。

 

落ち着いて考えてみてください。
「365日スタンバイする仕事熱心さ&業界最高レベルの優秀さ」の両方を兼ね備えた人間がいたとします。
でもそんなに優秀な人が、なんでこの会社で働く必要があるんですか?
もっとステキな会社に転職してもいいし、起業してもいい。永守さんに怒鳴られながらその仕事を続ける理由は一つもないのでは??
現にこの記事のメインタイトルは「日本電産で大量退職」だ。こんな会社なんだから、いままで優秀な人が辞めなかったほうが、僕からすると不思議でしかない。きっと好業績高成長がこれらを覆い隠していたんでしょう。

 

【4】部下の箴言を受け入れない
この土日メールなどを改めるように、外部から連れてきた社長が永守さんに箴言したが、「日本電産が長年培ってきた企業文化を崩壊させるもの」と受け止めて激しく反発。社長の解任につながったらしい。

これなぁ。組織文化を競争力の源泉ととらえること自体は、賛成なんですよ。経営幹部のクビを切るほど大事、ということまで含めて。

でも上記【3】で書いたように、その組織文化はすでに会社に害を与えるものだった。

 

日本電産という会社も、それを作ってきた永守さんも偉大だとは思うけれども、徹底的に時代に合わなくなってきているし、それをアジャストもできていないと思う。この記事が本当ならば。