どうも、ハイレゾ音楽制作サークルBeagle KickのサウンドPをやっております橋爪です。
フュージョンやニューエイジを中心に生演奏特盛りでM3や配信サイトで頒布中です。

ときどきフリーで音声関係の音響エンジニアをやってます。
WEBラジオや公開録音・トークライブなどで活動させてもらっています。


現在までのアニメ系ハイレゾ感想記事はこちら……

のうりん挿入歌「コードレス☆照れ☆PHONE
ガルパンED Enter Enter MISSION!と1PLDK
「すぱそにっ♥(はぁと)」
「そにアニ オリジナルサウンドトラック」
「ハローグッバイ」歌:榊原ゆい
『「星刻の竜騎士」OP「聖剣なんていらない」/(榊原ゆい)』
『Anison Strings~弦楽四重奏で聴くランティスの歴史』
『僕らは今のなかで』『きっと青春が聞こえる』ラブライブ!
『「英雄伝説 閃の軌跡」サウンドトラック・オリジナルマスター』 前編後編
『閃光の行方 「英雄伝説 閃の軌跡Ⅱ」オープニングテーマ』
『軌跡 jdk アクースティックス』前編後編
『Beyond the Sky (日本語版)』
『「英雄伝説 閃の軌跡II」サウンドトラック・オリジナルマスター』


2014年9月23日、歌舞伎町は新宿BLAZEにてランティスの超人気アーテイスト3組が「深窓音楽演奏会」というライブで共演を果たした。
出演したのは、nano.RIPE、ChouCho、fhána
テレビアニメタイアップはもちろん、それぞれのアーテイスト活動でも数々の名曲を発表し、アニソンファンの心を捉えて放さない今最も勢いのある3組だ。
私は、このライブを聴きに行き、そこで衝撃の発表を耳にした。

「今日のライブの模様をハイレゾ配信します!」

耳を疑った。
ライブBDとかなら話は分かる。よくあるパターンだ。しかし、ハイレゾ配信。
特典とかに付くDVDでもない。シングルCDの最後のトラックに追加されるライブver’とかでもない。
アニソンライブのハイレゾ配信だ!!

発表の瞬間、会場は熱狂の渦に包まれた。

この感動と興奮で一体となった時間がハイレゾ配信で記録される。
全国の多くのファンに渡る。なんて素晴らしいことだろう。
きっと僕らの声援も音源として残るのだ。

実際に、会場を見渡すとあちこちにアンビエンスマイクが設置してあった。
その数は後方に2本だけといった生易しいものではなく、前方やリアセンターといったあちこちに設置されていた
これは相当な数のチャンネル数で録音しているに違いない……
音声関係で音響をやらせてもらっている自分は、何かを予想せずにはいられなかった。

制作過程としては、現地で96kHz/32bit 浮動小数点数で録音、ミキシングを経て、マスタリングも96/32で行い、リリース用のマスターは96/24で仕上げたということである。

【参考】
・32bit Floatは0dBを超えてもクリップしない
http://genxbeats.com/post/id/32bit-float

これは48/32や48/24がまだまだ音楽制作においてスタンダードである状況から考えると、破格の高音質プロジェクトといえるだろう。
何しろ機材をライブハウスに持ち込まなければいけない。
現場のPAとの調整も非常に苦労があったことと思う。
企画を承諾した新宿BLAZEにも敬意を表したい。

私は、ライブハウス内の後方やや下手側にいた。
800人のキャパは当然のごとくソールドアウト。ギュウギュウ詰めであった。
間口と奥行きに対して天井が低いため、窮屈な音、あるいは飽和気味の音になってしまう不安があった。

ハイレゾ配信発表を聴き、現地で聞いた音の所感をすぐにメモに残したのを覚えている。
下記のハイレゾ感想記事は、この日のメモを下に(音源化で)どのように音が変わったか、
どれほどライブの臨場感が再現されているか、またパッケージ音源としての音の整い具合にも注目しているので、参考にして欲しい。
私の居る場所がセンターではないので、判断に誤りがある可能性があることを先におことわりしておく。あくまで参考程度に……

では、アルバム情報!

アルバム名:深窓音楽演奏会 其ノ壱 (2014.9.23 at Shinjuku BLAZE)
アーティスト:nano.RIPE,ChouCho,fhana



販売:e-onkyo
フォーマット:96kHz/24bit FLAC/WAV


トップバッターは、
fhána

最初の数秒でもう幸せになれる音だ。
いわゆる楽しいライブ音源というやつだ。
試聴を忘れてつい聞き入ってしまう。
ハイエンドなオーディオ機器で再生したいライブ音源だと自信を持ってオススメできる。

現場で感じられた音の飽和感がかなり緩和されている。
ライブ全体を通して打ち込みトラックが流れた楽曲は、外音が飽和気味でゴチャゴチャした感じがどうしてもあった。
これはPAの問題と言うより、爆音に対して天井が低すぎるため、反響して歪んだ成分がスピーカーからの直接音に混ざることにより生じる違和感ではないかと思う。
歪み成分は理論上避けられないが、一定のレベルを超えて聞こえてくると人間は違和感を覚える。しかも、ライブハウスはコンサートホールのように心地よい響きを想定して設計されている空間でも無い。結果はやむを得ないだろう。
その惜しい部分が見事にミックスで改善されているのだ。これは相当なマルチトラック数で収録していないと不可能な結果では無いだろうか。
PAミキサーのフロア向け2MIXからではここまで補正することはできない。

実際、各楽器がクリアに定位し分離が良く調和も損なわれていない。カッコいい音というPOPSには欠かせない要素も音の良さと両立させている。
過剰に加工された音がカッコいい音とは限らない、良い見本だと思う。

それにオーディオ的な躍動感がライブを越えている!このダイナミクスはなんだ!?
聴感上の音量はある程度、アニソンだけはあって大きめに調整されているが、躍動感は失われていない。ミキシングの魔術を感じる。

マニュピレートとサンプラーによる生演奏のトラックがドラムやベース、ギターといった生楽器とけんかしていないのも特筆もの。
マスキング対策に相当な配慮を感じる。食べ合わせを考えて調理された定食のようだ。
ハイトーンなtowanaさんのボーカルは、リバーブが少なめ、ノイズ切りもまるでやっていないような生々しさ、ダイナミクスもコンプでつぶし過ぎていない。
可愛くて、くすぐられるような声質を存分に堪能できる。

観客の歓声はほどよく挿入され、音量は歌唱中・間奏・曲終わりで若干違うというこだわりよう。
拍手もきめ細かい。ハイビジョンで見る水しぶきのような美しさを感じた。
おまいらの拍手は美しかったんだよ……(ナニw


中を繋ぐのは…
ChouCho

マイクと口の距離の近さをEQなどで補正していない。
テレビやCDなどで親しみのあるChouChoより声が太めだが、それがよりライブらしいのだ。
『CDと違う!』、という拒否反応で敬遠したらもったいないと僕は訴えたい。
これはあえて補正していないのだ。
その場限りの真剣勝負、一発限りの空気感を届けるためには、こういった現場の音もあえてそのまま残す判断が必要になると僕は受け止めた。
これはこれでいい。ファンの諸君は、何度も聴いて噛みしめていただくと、その良さがお分かりいただけるのではと思う。

合いの手的な歓声もちゃんと生かしてくれているのも嬉しい。

マニュピレートトラックが音数多めなので、生楽器(ドラム。ベース、ギター)がどちらかというとそちらに合わせてミックスされているように思えた。生演奏だからといって存在感を主張しすぎない感じだ。
どうしてもゴチャゴチャ感が出てしまうが、そこはミックスで違和感が強くならないよう調整されている。
その調整において、ボーカルと伴奏の親和性がおかしくならないようトータルで厳しくコーディネートされていると感じた。
出番ラストの挨拶まで残しているのは、ライブに来ることの出来なかったファンにとってたまらないのではないだろうか。


fhánaとChouChoサポートベースを勤めたのは田辺トシノさん。
私がサウンドPを担当するBeagle Kickでもお世話になっている非常に味のあるベースを弾かれる方だ。
実際、このライブでもたまらないベースラインを披露してくれた。
あまりの素晴らしさに意識が全部ベースの音に持ってかれた時があったことを白状しておく。
大好きなガルパンのOPをトシノベースで聴けたときの感動と言ったら……!(以下自粛



大トリ
nano.RIPE

心を揺さぶるグルーブ感、会場にいるかのようなトリップ感がたまらない
生楽器ならではの分離や調和の良さ、見通しの良さ、すっきりとした感じに支えられ、それぞれが主張しまくっている。

他のアーティストに比べ前後感は強く演出していない。ライブハウスならではの近距離感とか、いい意味での窮屈感を大切にされている。ボーカルと伴奏の前後の距離が近い。

声援も比較的頻繁にかつ大きめに収録されている。演者と客の一体感を大切にした結果だろう。
会場も一緒になって歌うシーンでは、空間容積まで見えるようなリアル感があって鳥肌ものだ。
ギャップレス再生に対応していると1曲~2曲目で最高の演出になっている。

きみこさんのボーカルは、ライブならではのアドリブやフェイクなどを多用し、CD版とは違った楽しみというか期待感をあおってくれる。
マイクにかぶり付くような時もあれば、ギターの弦を見たり、目線が会場へ行ったおかげで若干オフ気味になるときもある。
すべてがそのまま補正されずに残っている
やろうと思えば、ある程度目立たなく出来るのだろうが、あえてやっていない。
もしくはやっているのだけど、無加工のように聞かせるプロテクニックが生きている。極めて秀逸だと思う。
きみこさんがPA無しで歌うシーンは、会場の静寂さも相まって空間の広がりと奥行きまで見える。息をのむ迫力だ。


ラストソング
ユートピア

フィナーレらしい豪華さだ。音数が多く、分離より調和に寄せているミックスだ。
各シンガーの歌声が生々しく、合唱シーンは3人が寄り添って仲良く歌ってる感が出ている。
「ららら~」の掛け合いは、シンガーと客のキャッチボールのよう。
お客さんの声がアルバムを通して一番大きくはっきりと聞こえる部分だ。
本当に感動的である。
またこのメンバーでライブが催されることを待ちたい。



以上です。

いかがでしたか?

これは私の主観的な感想ですので、全ての人に「このように感じられるはずだ」というモノではありません。
じっくりと聞き込み、確かに感じたことのみを記事にしています。
日々精進中の身ですので、一つの参考意見として捉えてもらえたらと思います。


ともあれ、ハイレゾ音楽の面白さが伝われば嬉しいです。

ハイレゾ再生は、対応ポータブルプレイヤーからはじまり、
ネットワーク対応のミニコンポ、専用ポータブルプレイヤー、対応AVアンプなどドンドン広がっています。
スマホにいくつか機材をくっつけることでそのクオリティーを手軽に楽しめるようにもなりました。対応スマホも続々発表されています。

パソコンにUSB-DACを付けてヘッドフォンやスピーカーで聴くというスタンダードな方法から、やはりオーディオはオーディオとして独立させたいという願いにも答えることができます。

ぜひ、音高音質音源の再生にチャレンジしてみてくださいね!
音楽生活がもっと豊かに楽しくなることでしょう。

どうも、ハイレゾ音楽制作サークルBeagle KickのサウンドPをやっております橋爪です。
フュージョンやニューエイジを中心に生演奏特盛りでM3や配信サイトで頒布中です。

ときどきフリーで音声関係の音響エンジニアをやってます。
WEBラジオや公開録音・トークライブなどで活動させてもらっています。


現在までのアニメ系ハイレゾ感想記事はこちら……

のうりん挿入歌「コードレス☆照れ☆PHONE
ガルパンED Enter Enter MISSION!と1PLDK
「すぱそにっ♥(はぁと)」
「そにアニ オリジナルサウンドトラック」
「ハローグッバイ」歌:榊原ゆい
『「星刻の竜騎士」OP「聖剣なんていらない」/(榊原ゆい)』
『Anison Strings~弦楽四重奏で聴くランティスの歴史』
『僕らは今のなかで』『きっと青春が聞こえる』ラブライブ!
『「英雄伝説 閃の軌跡」サウンドトラック・オリジナルマスター』 前編後編
『閃光の行方 「英雄伝説 閃の軌跡Ⅱ」オープニングテーマ』
『軌跡 jdk アクースティックス』前編後編
『Beyond the Sky (日本語版)』


発売から数日経ってもランキング上位をキープし続ける作品はなかなかありません。
特にアニメやゲーム系は瞬間風速的な売れ方をするソフトが多く、長いスパンで売れ続けるソフトは少ないのが現状です。

これはファンがとても熱心である、好きな人しか買わない、などの事情があるとは思いますが、いずれにせよアニソン独特な現象といえるでしょう。

今回題材とするファルコムのゲームは、発売から一年以上経ってもじわりじわりと売れていく傾向にあるようです。
とあるインタビュー記事を読んだら、軌跡シリーズは旧作が毎月数千本単位で売れていくとか……


そんな作品力に溢れたファルコムのゲーム、閃の軌跡Ⅱ。
私も発売日に購入しそれから一月半以上、秋アニメもほぼ見ずにクリアに熱中していました。
おかげで積み本、積みアニメが大量にあって今も頭を悩ます毎日です(←知るか

サントラの中身は、Ⅱから加えられた新曲でまとめられています。(Ⅰの曲は未収録)
全体的にイベント曲やダンジョン曲が多く、バトル曲などはより緊迫感のあるラインナップになっていますね。
Ⅰのモチーフをアレンジしたものもあり、ゲーム中に何度もニンマリしておりました。

では、アルバム情報です!


アルバム名:「英雄伝説 閃の軌跡Ⅱ 」サウンドトラック・オリジナルマスター
Falcom Sound Team jdk[作曲]



販売:e-onkyo / mora
フォーマット:48kHz/24bit FLAC/WAV



厳選した楽曲の感想は、「である調」でいきます。

まだファルコムの音楽は好きなのにハイレゾにはためらいを感じている方、
ぜひ下記を参考に気になった楽曲を購入してみてください。


まず全体を一聴して、音場の広がりや奥行きが拡大していることが分かる。
CDは未試聴であるが、スピーカーの上下左右に大きく広がるこの感覚はハイレゾならではの空間表現だろう。
各楽器ごとの奥行きが精密に設計されており、打ち込みメインのゲーム音楽だからこそ作り込みに熱を感じる

マスタリング前、かつオリジナルフォーマットであることから音の純度が尋常では無い。
特に響きがとてもキレイで、情感に訴える楽曲などは演出意図が明解に伝わってくるのだ。
音像のディテールもくっきりと立体的に捉えられる。
高域は自然で、低域は引き締まってクリアだ。中域は余計な誇張が無い。

24bitの恩恵とマスタリング前の音源ならではの躍動感も特筆ものだ。
音圧こそゲーム音楽のため高めになっているが、その中で躍動感を味わえるようにミキシングの段階で工夫がなされている。
CD版になると押し込められてしまうオリジナルのダイナミクスを存分に味わえるのだ
音の立ち上がりと立ち下がりが丁寧になり余韻が繊細に聞こえてくる。

マスタリングをしていないサウンドトラックのため聴感上の音量にはバラツキがある。
少し面倒だが、楽曲によって音量を変更して欲しい
開発現場の音は純度100%なのだ。

「明日への休息」ではギターの弦を指が滑る音が聞き取れた。
これはゲームでは気付かなかった音だ。
CD版では埋もれてしまうか聴きづらい状態になっているかもしれない。

「白銀の巨船」はストリングスがベッタリせず緻密さを表現できている。
「カレイジャス発進!」にいたっては、オーケストラのステージ配置をモデルに定位や奥行き表現を作り込んでいることが分かった。
「Heteromorphy」のパーカッションの緊迫感と迫力は打ち込みとは思えないほどだ。

「Awakening」や「Blue Destination」は包囲される感覚に驚いた。
前方だけでなく、自分の真横にスピーカーがあるのかと錯覚するほどグルッと音に取り囲まれる。
同時に音の津波というか押し寄せるエネルギーにも圧倒された。

ネイティブ96kHz/24bit の「Bring up Trust!」は、低域の重心の低さにまず驚く。
閃光の行方もそうだったが、非常に低い帯域までカットされずにクリアに収録されている。
バイオリンの音色もとてもリアルで、倍音の響きがとてもナチュラルだ。
ドラムのアタックやスピード感も優れており気持ちがいい。

「乾坤一擲」は音数が多く密度の高い楽曲なのであるが、
前後感・定位などをフルに駆使してゴチャゴチャしないよう緻密なミックスが施されている。
おかげで分離感に優れ、音のディテールを十分に味わえる。
細かい音までよく認識できるのだ。

佐坂めぐみさんの歌唱力の高さに圧倒される「I'll remember you」
ハイレゾは微妙なニュアンスの違いや情感表現が漏らさずリアルに伝わる。
ある意味でシンガー泣かせではあると思うが、佐坂さんの尋常ならざる表現力でもってすれば「音が良くて良かった!」とむしろ喜ばしい感動に変わる
空間の透明度や分離も良く、左右に定位するギターの生々しさには思わずグッとくる。
あまりに楽曲の完成度が高いので生のストリングスだったらもっと良かったのに、と高望みをしてしまった。



以上です。

いかがでしたか?

これは私の主観的な感想ですので、全ての人に「このように感じられるはずだ」というモノではありません。
じっくりと聞き込み、確かに感じたことのみを記事にしています。
日々精進中の身ですので、一つの参考意見として捉えてもらえたらと思います。


ともあれ、ハイレゾ音楽の面白さが伝われば嬉しいです。

ハイレゾ再生は、対応ポータブルプレイヤーからはじまり、
ネットワーク対応のミニコンポ、専用ポータブルプレイヤー、対応AVアンプなどドンドン広がっています。
スマホにいくつか機材をくっつけることでそのクオリティーを手軽に楽しめるようにもなりました。対応スマホも続々発表されています。

パソコンにUSB-DACを付けてヘッドフォンやスピーカーで聴くというスタンダードな方法から、やはりオーディオはオーディオとして独立させたいという願いにも答えることができます。

ぜひ、音高音質音源の再生にチャレンジしてみてくださいね!
音楽生活がもっと豊かに楽しくなることでしょう。

どうも、ハイレゾ音楽制作サークルBeagle KickのサウンドPをやっております橋爪です。
フュージョンやニューエイジを中心に生演奏特盛りで音系即売会M3に参加&配信サイトで頒布中です。

また、音声関係の音響エンジニアをやっています。
WEBラジオや公開録音・トークライブなどでお仕事させて頂いています。


今回はいつものハイレゾ試聴感想から離れ、オーディオ小話です。
狭い自宅から外へ出て、イベントレポをお届けしたいと思います。

では、文字数削減、もとい記事っぽくするために「である」調で行きたいと思います(笑



秋葉原損保会館にて先日行われた真空管オーディオフェア。
セカンドシステムは真空管アンプと漠然と考えている筆者も、後学と偵察のために参加してきた。

このイベント、日本列島に台風も迫る10月の12・13日に開催され、私は12日の昼過ぎに訪れた。
会場は、熱気がむんむん!アキバ臭もむんむん!
年齢層は、50代から60代以上が圧倒的。もちろん男性率99%。
こればかりは仕方ないと思っているが、やはり真空管ともなると年配のファンがどうしても多くなる。
20代から30代前半の若者は会場を一回りして4~5人は見かけたが、雰囲気は理工学系の大学を出ていそうな感じであった。
なんの根拠も無い主観であるが、筆者自身電気工学を5年間学んだ人間なので肌感覚で分かるのだ。(アニメオタクとアイドルオタクを見ただけで何となく区別できるアレと同じだ

残念ながら展示をゆっくり見て回る時間は無く、流し見程度であった。
自作アンプのための部品やシャーシの展示が非常に多く、さながら自作ファン向けのイベントになっていた。
完成品のアンプも魅力的であるが、あんなに所狭しと並べられた真空管の小箱やコンデンサー、トランスなどを見ると、クラフト欲求が刺激されていけない。
壮年期の趣味は真空管アンプの自作で決まりだなと、うっかり(?)思ってしまうほどだった。

さて、筆者のお目当ては試聴イベントであった。
「旬の音本舗*福田屋 今話題の新導体ケーブルを聴こう」ということで、読者の皆さんは『何が楽しいの?』と突っ込みたくなるタイトルだと思う。
そもそもケーブルを比較試聴という時点で、「ケーブルで音が変わるの?」という声が聞こえてきそうだ。
結論から言おう。もちろん、変わる。
変わるからこそ広い会議室が満杯になって立ち見が出るほどの盛況だったし、ケーブル大全2015(リンク貼る)なるムック本も発売されている。
ただし、ケーブルで音が変わる理由について科学的にはほとんど証明されていない。(『こういう構造・素材にしたら電気的に(あるいは物理的に)こうなるから、音はこう変わった』という結果論的な言い方はする)
オーディオファンは、音が変わるなら根拠はどうあれまずは導入しようと思える生き物なのだ(そうじゃない方々もいるが)。

音楽制作の現場でも似たような物差しらしい。
科学的根拠も大事だが、音がいい方向に変わるなら未解明であれ導入するというのがプロの考え方なのだそうだ。
我々、一音楽ファンとしては「最終結果が良くなればいいじゃん!」と気楽にいきたいものである。


今後、貴方がオーディオシステムを導入し、電源ケーブルやLINEケーブル(赤白のステレオ音声)、スピーカーケーブルを選ぶとき、次世代の導体を使ったケーブルを目にすることが多くなるだろう。(次世代の導体が登場した理由についてはPCOCCの製造終了のニュース記事を参照してほしい)
雑誌やネットのプロが聴いた評価をまず見てもらいつつ、以下に記した私の感想も参考にしてもらえたらと思う。

=おことわり=
※ケーブルの音質は導体だけでは決まらず、シースや絶縁材料、シールドやプラグなどが音質に大きく影響します。本記事は、傾向を知る参考程度に捉えてください。

※商品名は明示していません。ただし、調べれば分かる程度にヒントは載せています。メーカーのバイアスを無くしてまずはご一読ください。

※商品は全て電源ケーブルです。CDプレイヤーの電源ケーブルを変更して比較が行われました。

※プレイヤーはESOTERICのK-01。プリアンプ&パワーアンプは、MACTONEの真空管式の新モデル。スピーカーはJBLのS3900でした。部屋は奥行きのある大会議室です。天井高は一般的なオフィスと同程度です。



→導体:C1011(1種無酸素銅)  
絶縁体:塩ビ
音質傾向:中低域がふくよかで、やや甘めの音色だ。プレイヤー付属のケーブルから空気感が向上している。


→導体:102SSC 資料はこちら
絶縁体:ポリオレフィン
シールド:銅箔
音質傾向:帯域バランスはフラットな傾向だ。見通しが良く、響きも自然。倍音の純度も高いように感じた。



→導体:PC-Triple C  詳細はこちら
絶縁体:塩ビ
シールド:銅箔
エネルギー量が増大し、音場の再現力も向上している。S/Nがよくなって、楽器のディテールもクッキリと見えるようになった。高域にクセがあるのか、気になるピークを少し感じた。



→導体:PC-Triple C
絶縁体:ポリエチレン
シールド:銅箔
音の純度に優れている。透明度が高く、帯域バランスには癖が無い。楽器やボーカルを自然な音で鳴らし、ケーブルによる味付けが感じられない。混じり気の無い、音楽ソースそのままの響きを感じられる。


→導体:Hi-FC他、複数導体の混合 詳細はこちら

絶縁体:塩ビ(鉛レス、カドミレス)
シールド:アルミラップ
穏やかで暖かみのある音色。ふくよかな中域が特徴だ。音全体がコーティングされたようなヴェール感がある。音楽制作で言えば、マスタリング後の聞こえ具合に近い。人によって好みが分かれるかもしれない。音のフォーカスがややぶれ気味だった。


以上だ。

このほかにも関連する上位モデルや、会場限定披露の自作ケーブルなどもあった。
シースや絶縁体、シールドなど素材が違うのでどうしてもフェアな比較とはいかないが、各導体同士の音質傾向を知る上でとても有意義な時間だった。
そもそもケーブルの試聴は量販店でもなかなかできない。
まずパッケージから出さないといけないし、聴きたいケーブルが展示品として売り場に出ているケースはまれだろう。
一方で、メーカーによっては無料で貸し出しを行っている場合もある。
ぜひ気になるメーカーがあったらホームページで調べてみてほしい。

この記事が貴方のケーブル選びの一助となれば幸いだ。



いかがでしたか?
イベントレポートって、やっぱりブログの記事にすると長く感じてしまいますね(汗)