ブログを始めてから月日が経ち、月ごとに作成している「月別目次」も一ページでは収まりきらなくなってきました。ベスト10には入れなかったけれど、印象に残った本について、ここで少し書き留めておきたいと思います。
(本のタイトルに、過去記事をリンクさせています)
■大江 健三郎 「あいまいな日本の私」
1994年ノーベル文学賞受賞記念講演ほか、全九編の講演がまとめられたもの。
読まなければならないと思いつつも、いつも挫折していた大江健三郎さん。講演をおこしたこの本は、思いのほか読み易い。氏の言動には、色々批判もあることを耳にするけれど、その言葉はしごく真っ当で、謙虚な方なのだなぁ、という印象を受けた。今年は小説にも再度チャレンジしてみたい。
■デヴィッド・マドセン 「グノーシスの薔薇」
時は十五世紀末から十六世紀初頭のルネサンス爛熟期。教皇レオ十世(ジョヴァンニ・デ・メディチ)に仕える小人、ジュゼッペ・アマドネッリ(ペッペ)の手記という形で進む物語。
本の帯には、『「薔薇の名前」の荘厳さに「ダ・ヴィンチ・コード」の面白さが出会った!!』とある。どちらも私は読んでいないけれど、聖と俗が混沌としたこの物語、穢れも極まれば聖となるのか、と思った。
■ケリー・ジェームズ 「哀しいアフリカ 国際女探偵、呪術の大陸を行く」
とびきりの冒険と、人間的な体験に関するとびきりの洞察が実現できたという、アフリカの地における、国際的私立探偵であるケリー・ジェームズ氏の冒険譚。
どれも読み応えのある、とても本当にあったこととは思えない、三つの話が収められている(実際はどれも本当にあったこと)。骨太のタフな物語で、ケリーは小説の中の女性探偵よりも、更にタフな肉体と精神の持ち主だと思う。
■山本一力 「深川駕籠」
短編が重なっていくスタイル。主人公となるのは、元臥煙の新太郎、元力士の尚平の駕篭舁きコンビ。彼らが江戸の町を走り抜ける!スピード感溢れる、まさに大江戸アクション!といった趣きの一冊。
人情べったりでも、懐古調べったりでもない話は、江戸時代モノとして新鮮だった。続編の「お神酒徳利」も出版されている(が、ハードだしまだ手が出ない)。
■ローズマリ サトクリフ 「ケルトの白馬」
イギリス、バークシャーの緑なす丘陵地帯には、地肌の白い土を露出させて描いた、古代ケルト人の手による巨大な白馬の地上絵がある。なぜ、どのようにして、この「アフィントンの白馬」が描かれたのか。これは、そのあったかもしれない一つの物語。
大人向けの本もあるそうだけれど、サトクリフは児童文学者として有名なのかな。子供の頃になぜか出会わず、これが初読み。彼女の本の中では、他のものと比べ、この本はあまりメジャーではないようだけれど、静かで力強く美しい物語に、非常に好感を持った。
■パトリシア・ライトソン, 猪熊 葉子 「星に叫ぶ岩ナルガン」
オーストラリアのアボリジニの間に伝わる伝説をもとにした物語。両親をなくした少年サイモンは、年老いた遠縁の親戚兄妹が住む、ウォンガディラに引き取られる。そこで、彼が出会った太古からの生き物たちとの交流と、歓迎されざる闖入者「叫ぶ岩ナルガン」との戦いが描かれる。
見知らぬ土地にやって来た少年の物語は、なぜ心を擽るのか。カポーティの「遠い声遠い部屋」の雰囲気を思い出す。
その他、さくまゆみこ「イギリス7つのファンタジーをめぐる旅
」、南條竹則「ドリトル先生の英国
」、南川三治郎「カルチャー紀行 ヘルマン・ヘッセを旅する
」、アガサ クリスティー「さあ、あなたの暮らしぶりを話して―クリスティーのオリエント発掘旅行記
」 なども、懐かしい本、作家の背景を知るという意味で、面白かった本だった。
まだ全くの未読なのだけれど、今年は是非読んでみたいなぁ、と思っている作家さんは、古川日出男、花村萬月、島田荘司 、米原万里、ジャック・ケッチャムなど。これらは全て、他の方のブログで興味が湧いたもの。つい好きで見知った本にばかりいってしまうのだけれど、さあ、今年はどれだけ読めるかなぁ。
読みたい本が沢山あって困ってしまうのも、雑誌や新聞の書評程度しか、指針がなかった頃から比べると、嬉しい悩みだなぁと思います。