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2005-11-15 10:10:19

「ケルトの白馬」/白い馬

テーマ:ほるぷ出版 
ローズマリ サトクリフ, Rosemary Sutcliff, 灰島 かり
ケルトの白馬

イギリス、バークシャーの緑なす丘陵地帯には、地肌の白い土を露出させて描いた、巨大な白馬の地上絵がある(表紙写真)。これは、古代ケルト人の手による地上絵であり、時を超えて命の輝きを放ち続けている。

なぜ、どのようにして、この「アフィントンの白馬」が描かれたのか。
これは、そのあったかもしれない一つの物語。
**********************************************
イケニ族は馬を飼育する『馬族』であった。彼らは野生の馬を馴らし、仔馬を育てて、馬の数を増やしていく。白亜の丘陵地帯に辿り着いた彼らの祖先は、この草原が馬の放牧に適していることを見てとった。褐色の肌の先住民たちを追い払い、強固な砦を築き、ここを自分たちの土地とした。

族長のティナガンには、妻のサバとの間に生まれた息子が三人いた。末息子の名は、ルブリン・デュ。彼は大人びたまなざしと、白い肌と明るい色の髪を持つイケニ族には稀な、褐色の肌と黒い髪を持って生まれた。

ルブリンが他の者たちと違っていたのは、その外見だけではなかった。彼はつばめが舞うように飛ぶのを見ては、空に描かれる華麗な模様をつかまえようとし、竪琴弾きのシノックの音楽と詩を聞いては、それらが心の中で織りなす模様をつかまえようとする。

春が来て、ベルタイン祭りの火が消えた翌日、その年に九歳になった一族の少年は、揃って少年組に入る。少年組の子供たちは、背の低い長い建物で一緒に暮らし、戦士となる訓練を受ける。槍での戦い方や馬の群の扱い方、獲物の追い方、刀や投げ槍や投石器の使い方。戦車の組立て方。覚えることは数多い。祭司である樫の木の賢者イシュトラからは、呪文の読み方と書き方を、竪琴弾きのシノックからは、自分たちの歴史が読み込まれている歌を習う。一族の少年が、一人前の男になるとはこういうこと。

ルブリンとダラは、その性質は違うものの、言葉ではなく互いを理解したもの同士、親友として育つ。少年組三年目のある秋の日、一族のもとに北方から商人がやって来る。この商人の何気ない言葉と古い歌の記憶が重なり、二人の少年の間に一つの夢が生れ落ちる。彼らの一族は遠い昔この土地にやって来た。海と山の間に広い草原がある国、その北の国を求めて、祖先と同じようにダラとルブリンとで若者たちの集団を率いていけたら・・・。

ルブリンの部族では、族長の跡継ぎとなるのは、息子ではなく族長の娘と結婚した男。母サバの死により、ルブリンの妹テルリは十二歳で婿選びの儀式をしなくてはならなくなった。樫の木の賢者、イシュトラが告げた婿の名は、ダラ。ルブリンとダラの立場は、もう同じではない。二人で北の地へ向かうという夢は潰えた。

平和に暮らしていた彼らのもとに、南から不穏な影が忍び寄る。そしてそれは、テルリが十四歳となり、テルリとダラの婚礼がとり行われた新月の晩に、現実のものとなった。アトレバテース族が、とうとうルブリンたちの砦を攻めてきたのだ。闘いに出た一族の戦士たちから、ルブリンははじき出され、ドロクマイルとともに、残留組となり砦に残る。敵の襲撃に立ち向かうよりも、実は残ることは一番難しい仕事であると諭され、ルブリンは父ティナガンの信頼に応えようと思う。

戦い虚しく、ルブリンたちの一族は、敵であるアトレバテース族に征服される。ルブリンは唯一人生き残った族長の息子として、一族の生き残りをまとめること、敵の族長の口となり耳となることを要求される。族長とはそういうこと、敵の指揮官クラドックにもそれが分かり、ルブリンにも勿論それが分かる。そして族長の重責は、代わってくれるものもない。

ルブリンたちは、アトレバテース族の奴隷として、彼らの砦をより強固なものにするために働いていた。冬が過ぎ、春となった。クラドックは偶然、数本のゆれる線だけで、馬の群がすさまじい勢いで走る様子を描くことが出来る、ルブリンの絵の才能を知る。ルブリンの絵に執着するクラドックと、ルブリンはある取引を行う。

緑の丘いっぱいに広がる白い馬。丘の斜面を掘って描く、巨大な馬。

それは、もしクラドックの望みどおりの馬を作ることが出来たなら、一族の生き残りを自由の身とし、どこかよその土地で馬を飼う事が出来るように、雄馬と仔を産める雌馬を分けてくれ、というもの。ただし、族長である二人の男の約束は、そこで語られたことが全てではない。言葉にはされなかった何物かがあり、それは暗闇の中で時が満ちるのを待っている。

ルブリンが子供の頃から夢に見た白馬は軽やかに丘を駆け、一族の生き残りたちも自由の身となる。しかし・・・
**********************************************
全編を流れる風、彼らの女神エポナ、ルブリンのハルニレの木、彼らの慣習、全てが美しい本。最後のルブリンとダラの友情には、短い物語であるにも関わらず、涙が出た。

コメント

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1 ■サトクリフで馬族といえば

『王の印』が浮かんできて、これがもうむちゃ好きなのだけど、『ケルトの白い馬』は近年出たものなので日本ではいまひとつマイナーな気がする。
正直、自分も、とりあえず確保してはあるけど、まだ読む気が起こらず積んであるのです(笑)。
そろそろ手を出すかなー。

2 ■>とらさん

amazon見ました。『王の印』は面白そうですね~。私の場合、これが初サトクリフでしたので、短く美しく、でもジーンとくる、という点で、入門書としては良かったと思います。こんな「白馬」があることも、知らなかったし。ほんとに、どうして、こんな「白馬」が描かれたのでしょう。

うん、とらさんだったら、きっと一瞬で読めることでしょう。笑 サトクリフ、大丈夫そうだったので、もう少し、長いものも借りてこようと思います。

3 ■サトクリフ

イギリスの児童文学では避けて通れないサトクリフであります(笑)。
オクスフォードのペーパーバックで、子供とか英語学習者向けに、100語とか200語とか以内で書かれた物語のラインナップにも入っていたはず。手元にも探せばたぶん1冊はあるはずなんだが(爆)
ところでこの白馬ですが、先日記事に出した、星野之宣の漫画『神南火』にも登場しています。

4 ■>とらさん

避けて通れないというサトクリフ。
・・・どうして、私は軽やかにスルーしちゃったんでしょう。サトクリフのサの字も、知らんかったですのよ。しょんぼり。
とらさんの手元。ふふふ、黒後家蜘蛛も、まだ発見されてないのでは!笑

星野之宣の漫画も、一度も読んだことないんですよ(てか、名前も知らなかった)。とらさんの記事読んでも、もとさんの記事読んでも、面白そうですね~(あれ、マギステルも記事かいてらしたっけな)。

5 ■ケルトの白馬

↑読み始めてしまいました(笑)。
サトクリフは、たいてい、学校の図書室で出会うような気がしますねえ。だから、たまたま、つなさんが通った学校になかったという事も考えられるのでは?
で、中学はまだしも、高校以降は、この手の児童文学にはなかなか手を出さない気がするのですがどうでしょう。
でも、今までめぐりあう運がなかったとしても、その分他の本とめぐりあってるだろうし、ブログきっかけで改めてめぐりあうってのもいいじゃないですか(笑)。

6 ■>とらさん

おお、どうですか?
もう読み終わっていたりして。笑
私はこの雰囲気好きだったなぁ。
でも、これ、多少落丁というのか、平仮名が重なっちゃってる所などがありました。初版だったからでしょうか。
うーん、確かに図書館になかったのかも。ブログで改めてめぐり合うのも、確かにまた縁ですよね。

7 ■あとちょっと

で、読み終わります。
でも、記事は明日かも。
余韻にひたってから書きたいので(笑)。
雰囲気は、さすがサトクリフだなあ、と楽しんでます。

8 ■>余韻

>とらさん
うんうん、浸ってください♪
私も浸ってから、かきました。
記事、楽しみにしてますね。

9 ■では

たぶん、明日(笑)。
お楽しみに。

10 ■年末に。

コメントありがとうございました。
アレから怒涛の修羅場とプライベートのハプニングが続きちゃんとした記事に至っていませんで、別の作品と一緒に記事にしようかと目論んでいます。
その時は改めてTBさせていただきますね。
(今回のメモ程度のものじゃ申し訳ない)
旅先で、とらさんの記事も読みましたが、本当に人それぞれの感想を持つものであるナァと思いました。
良い本はつなさんの仰るとおり、厚さに関わらず無限の広がりと余韻が有るもので、再読する前なのに胸が一杯になります。

11 ■>ぐるぐるさん

年末、大変だったのですねえ。
ぐるぐるさんの体調の方はもう良いのですか?
わーい、では、記事楽しみにしてますねー。
私、結局、あれからサトクリフ読めてないんですよね…。気になってるタイトルもあるのですが。

とらさんの記事も良かったですよね。
ああやって、多角的に物事が見えるのは、うらやましいです。笑
短いけれど、本当に良い物語でしたね。

12 ■サトクリフ「闇の女王にささげる歌」

を読了しました。もう一気読みでした。
ブーディッカの最後は分かってるんですけどね。
良かったですよ。
つなさんのご感想を聞いてみたいです。

お気遣いありがとうございます。
いや~心配事が有るとすぐにお腹にクルのでちょっとゲンナリしちゃっています(^^;
まだちょっと引き摺っていますが、映画にいけるくらいなので元気です(笑

13 ■>ぐるぐるさん

おーう、その本なのですね。
私もサトクリフ読まなくっちゃ。笑
「ケルトの白馬」の訳者、灰島かりさんの他の本は最近読んだのですが…。

お腹は辛いですよねえ。
私も年末にちょっとお腹をこわしてたのですが、最近はすっかり治っちゃって、腹八分目をすでに忘れつつあります。笑

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  • 1 ブログタイトル:手当たり次第の本棚
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