どんっ!と強い衝撃と共に、キョーコは間一髪間に合うことができた蓮の胸に抱き止められた。

「っ!君は本当に無茶をする……!!
あの高さから落ちたら、ただじゃ済まないんだぞ!?」
「ごっ、ごめんなさいごめんなさい!!でも今日はもう疲れてて、力が入らなくてですね…」

本気で怒っている蓮の声に、キョーコはビクビクしながら謝るが…
力一杯ぎゅうと抱き締められて、苦しさから言葉が出なくなってしまった。

「……本当に、怪我しなくてよかった。お願いだから無茶しないでくれ………」
「敦賀さ……」

自分を抱きすくめるその大きな体は少し震えていて、蓮に怪我を負わせてないか心配にもなったが。
自分の身を一番に案じてくれるその姿に、自分を包み込む暖かな温もりと香りに、キョーコの心がほわんと緩む。

「……あの、助けていただいてありがとうございます。」
「うん。……うん。」

蓮はしばらくそのままキョーコを抱きすくめたままじっとしていたが、ふと気が付き、キョーコの顔を覗き込んだ。

「そう言えば、俺、最上さんのこと捕まえたよね。
俺、ずっと最上さんのこと……」

〈ピピピピーーーっ!!!〉

蓮がキョーコを抱き締めたまま想いを告げようとした時、突然ホイッスルの音が夜闇の中に響き、褐色の青年が現れた。

黒づくめのスーツな為に、本当にすぐ側まで寄られないとわからない。
突然現れた彼に本気でビックリした二人は、慌てて体を離した。

「敦賀様。本日の鬼ごっこ時間は終了しております。
よって、今の確保はノーカウントになります。」
「え…でも抱き止めた時、時間はまだ大丈夫だったんじゃ」
「いえ。0時を3秒ほど過ぎておりましたので無効です。」
「3秒って………」

『と言うか、最上さんが落ちそうになってるところからこの人はいたのか!』と、蓮の顔は盛大にひきつる。

(なら、最上さんを助けるのを手伝ってくれても…
いや、彼女には例えこの人でも触れてほしくはないし)

蓮が悶々と葛藤をしていると、どこからともなく黒スーツに身を包んだ男たちが集団でやって来て、そのうちの一人がキョーコの腕をとり症状を見る。

「大丈夫です。特別筋を痛めたわけではなさそうですね。
念の為、今夜は腕に冷湿布などを貼って患部を冷やしてください。」
「はい、ありがとうございます。」

簡単に応急処置を済ませると、褐色の執事が持ってきていたクラシックカーが裏まで持ってこられ、キョーコに乗るように促した。

「あれ?もう今の時間は鬼ごっこ休止時間ではないの?」
「はい、お休みです。しかし、ルールでは必要以上の接触は禁止されておりますので、本日は私の乗ってきた車でお帰りいただきます。」

せめて自分の車に乗せて送りたいと思っていた蓮の考えは、執事な彼によって簡単に崩される。

キョーコの手をとり、車までさりげなくエスコートする青年。
されるがままにすうっと彼のもとへ行ってしまったキョーコに、焦りを感じた蓮は思わず名前を叫んでしまう。

「もっ…キョーコちゃん!」

そのとたん、キョーコの表情が翳った。

切なそうに眉を寄せ、俯いてしまったキョーコに焦った蓮が再度声をかけようとすると、キョーコは強い口調でそれを遮る。

「もが…」
「あなたがそんな風に呼んでいいのは『きょうこちゃん』だけでしょう!?」

蓮にとっては意味不明な言葉を吐くと、後部座席にさっさと収まったキョーコ。

褐色の執事はそのまま扉を閉め、自身も車に乗り込むとそのまま走らせていってしまった。

「『呼んでいいのは』って……どういうことだ?」


昨夜に続き、たった数十センチの距離をもどかしい気持ちで見送ることになってしまった蓮は、キョーコの最後の言葉が気になり、社が探しに来るまでしばらくその場を動けなかった。



【鬼ごっこルール―一部抜粋―】

・0~7時の間は休憩時間。
その間に捕まえてもノーカウント。
そして必要以上の接触は禁止。



*第三ラウンド winnerキョーコ(タイムアウトによる棚ぼた勝ち)*




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数名の方には昨夜の時点で展開をバッチリ読まれていましたね。
そう!こんな簡単に終わるわけがなーい☆
すみませんすみません゚。(p>∧でもマックの残念な頭ではまだ終わらないのですよー。
もう10話超えましたしね…
この際マイルールを作ってしまおうかと思います。
『20話以下なら中編!』

………なんでマックの話は長いかなorz
1話の長さ倍にすれば、10話以下の中編になれるかな?