こんにちは、美花です!

本日公開のこちらのお話は、2年ほど前にアメンバー様限定で公開したお話の加筆改訂版です。

タイトル通り、人魚姫なキョコたんと王子様敦賀さんのパラレル話です。

1話のみの公開以降、続きを書きたいと思いつつもなかなか書けないままでいたのですが、ここにコミック34巻の人魚姫中表紙がキタ!!

上半身裸(!)で、髪の毛だけでお胸を隠すセクシーキョコ姫と、生脚を海に浸した海賊スタイル黒髪敦賀さんに背中を押される形で、続きを書いてみようと思えるようになりました^^
(しかしキョコたん、そんな無防備なお姿で敦賀さんの前にいるのは大変危険だと思います。今のところは紳士モード状態のようですが、いつまでそれが持つのやら…むにゃうにゃ)

そこでまず、リハビリを兼ねつつ色々説明不足だった1話目を加筆。
2年も前の自分の文章を改めて見つめ直すのは精神的に結構大変でした…て、今もあんまり変化は見られないかも、ですがorz
訂正前のお話も限定のまま公開しておりますので、お暇でしたら読み比べてみて下さいませね…(自棄)

公開当初は限定にした方がいいかなと考えていたのですが、桃色加減もそれほどではないかなと思い直し、今回は通常公開に切り替えです。

2度目の公開ですが、既読の方も未読の方も、お楽しみ頂けたらいいなと思います。

ではでは、パラレルOKと言う方のみ、どうぞ~!

***



*人魚姫の恋*1



SIDE レン



紺色の夜空には瞬く星と、真円を描く満月が煌々と輝いておりました。

耳に聞こえてくるのは、寄せては返す波の音と、吹き抜ける春の緩やかな風の音だけ。
星々は煌びやかな宝石のように夜空に散らばり、淡く輝く満月は、柔らかな檸檬色の光を凪いだ海に静かに降り注いでおります。

とても穏やかな、春の宵でした。

そんな月明かりが照らし出す海岸を、その夜、レンは共も連れずに一人で歩いておりました。
一人分の足跡が、歩いた道筋を示すかのように砂の上に転々と残されています。

見上げれば、海に張り出した崖の上には明かりの灯された白亜の宮殿が臨めます。
ここは、そんな宮殿から直に通じている小さな砂浜。

この場にはレン以外の人影はありません。
宮殿は、この国の王家が所有する離宮なのです。砂浜も含めてこの近辺は、おいそれと人が立ち入れる場所ではありませんでした。

レンの足跡は、そんな宮殿から砂浜へと真っ直ぐ降りて来ています。

彼の父は、海の利権の殆どを手にする大国の王様でした。
王様の唯一の息子である彼はこの国の皇太子で、将来は父の跡を継いでこの国の国王となることが、生まれた時から既に決められておりました。

王になる為の他国での十年に渡る留学を終えたレンは、海辺の離宮へと居を移したばかりでした。

本当ならもっと早くにここに来るつもりでしたが、帰国を祝う王宮での様々な宴に追われ、漸く今夜、離宮に落ち着くことが出来たです。

一時も一人の時間のなかったここ何日かを思って、その理由にレンは堪らず苦笑を零してしまいます。

「相変わらずだなあ、うちの両親は」

国王とその王妃である両親の、久々に帰国した息子への手放しの歓迎はありがたかったのですが…いかんせん、愛が重すぎました。

いつまでも小さな子供のままではありません。

帰国から暫くの後、親孝行もこれくらいでいいだろうと判断したレンは、身の回りの世話をしてくれる数名の従者を連れて離宮へやって来ました。
細かい仕来りに捕らわれた王城の者もいない今、やっと気ままな夜の散歩にも自由に出られるようになったのです。

海からの弱い風に吹かれるままに髪を弄らせながら、レンは目的を持って足を進めます。
この離宮の傍には、レンにとって、懐かしく幸せな思い出の残る場所がありました。

そこは離宮の地下にも繋がる小さな洞窟。

幼い頃のレンは、離宮にやって来る度に、そんな小さな空間を自分のとっておきの場所にしておりました。
懐かしい記憶の残るその洞窟を、レンは今宵の散歩の行き先へと決めたのでした。

洞窟へ向かってゆっくりと歩いて行くレンは、装飾の一切ない白いシャツにズボンとブーツを身に着けています。

大国の王子にしては、随分と飾らない服装です。
けれど彼には、それで十分でした。

レンはそんなシンプルな服装でも自身を華美な印象に見せてしまうほど、優美で華やかな美貌の持ち主だったのです。

黒い髪と黒い瞳は、いかにも王子らしい夢のようなその面差しを鮮やかに際立たせています。
高い鼻梁、凛々しい眉は男らしさを、甘やかなカーブを描く唇は白皙の美貌に何ともいえない艶めかしさを与えていて…

見上げるような長身と、鍛えられた体躯がそこに加わり、その姿を見た者全ての心を惹きつけて止まない魅力を彼は有していたのです。

砂浜を踏み、洞窟の入り口を超え、レンはごつごつとした岩場へと足を踏み入れます。

洞窟は海へと繋がっていて、砂浜からの入り口の反対側には、離宮の地下に繋がる人工の階段が存在していました。
この洞窟の上に、レンが滞在する離宮が建てられているのです。

寄せては返す波の音が、人気のない洞窟内に大きく反響しています。
真夜中に近い時間でありながらも、海側から差し込む月の光に照らされて、洞窟は思うほど暗い場所ではありませんでした。

昼にこの場を訪れれば、日の光が帯となって入り込み、穏やかな隠れ家のような雰囲気を纏うのです。

離宮の傍を流れる川から海へと落ちる滝も、深い色を湛えた海の色も、記憶の中にある景色そのままでした。

何もかもが昔と変わらないその場所に、レンは瞳を細めます。
帰って来たのだという感覚が胸いっぱいに広がって…それと同時に、甘やかな切なさが心に広がります。

この場所は…

幼い頃別れたきりの、大切な初恋の少女との思い出の場所でもありました。

有耶無耶のまま別れてしまった少女との記憶は、今も色褪せることなく鮮明にレンの胸の中に残っています。
楽しかった日々はほんの少しの間のことでしたが、その日々は、レンにとっての何よりもの大切な宝物でした。

大人になり、様々な場所で多くの女性と知り合うようになっても…
少女と共にいる時のような、あの幸せな気持ちを感じることは一度だってありませんでした。

波の音は、洞窟の変わらぬ雰囲気は、その頃の記憶をレンに思い出させます。

…彼はいまだ、初恋の少女に心を捕らわれたままなのです。

今頃少女はどこにいるのでしょう。大人に成長した彼女も、今のレンと同じように過去の記憶を覚えていてくれているのでしょうか。

もしそうだったのなら、どれほど幸せなことでしょう。

そんなことを考えながら、岩場に打ち寄せては解けるように散る波の様子をレンが一人、眺めていたら…

ぱしゃりと。

これまで規則的に聞こえてきていた波の音の狭間に、不意に異質な音が混じり合いました。

それはまるで、何かが海面を叩いたかのような音。

なにか生き物がこの近くにいるのでしょうか。
確かにこの洞窟は深海にまで繋がり、時折驚くほど大きな魚が迷い込むこともあるのです。

浅瀬の岩肌に身をぶつけ、怪我をしなければいいけれど。

…そんなことを思ったレンが波間に目を凝らしていると…

月の光を受けてキラキラしたと輝きを見せる海面に、するりと姿を現すものがありました。

波間に紛れるようにして現れたそれは、淡いピンクの色をしたひれでした。

目を瞠るレンの眼前で、ひらひらとしたそれは波間にほんの少しの間現れ、またぱしゃりと言う水を弾く音と共に姿を消します。

月の光を浴び、その光の加減によってむらさきにも見える淡い色のひれ。

レンにはそのひれの色に見覚えがありました。

…驚いたレンは、慌てて岩場の淵まで走り寄って…

「…キョーコ…!?」

驚きを伴った声音で女性の名前を口にしました。

『キョーコ』。

それは、レンが今も心に想いを抱く、初恋の少女の名前でした。

レンの声は洞窟に反響して行き、波の音に紛れそのまま消えていきます。
大きく聞こえる波の音の中に、違う音を見つけようとレンは懸命に耳をそばだてます。

…永遠にも似た、僅かな間ののち…

ぱしゃりと、また水の音が聞こえました。

そして…

「…あなたは誰…?どうして、私の名前を知っているの…?」

そんな女の子の不思議そうな、密やかな声が聞こえて来て…
願うような想いで見つめていた波間から、水音と共にそろそろと姿を現す者がおりました。

そこにいたのは、長い栗色の髪を波間にゆらゆらと漂わせた1人の少女でした。

年の頃は17,8歳。
抜けるような白い肌と、大きな瞳を持った少女です。

海の中からレンを見上げる少女は、

「…私、あなたみたいに真っ黒な髪と瞳の人間は知らないわ…なのに、何故?あなたは、私の名前をどこで知ったの…?」

そう言って、困ったように綺麗な眉根を寄せて見せます。
彼女の顔には困惑と警戒、そしてほんの少しの驚きの表情が浮かんでいます。

焦げ茶色の大きな瞳、小さな鼻梁、花びらのような唇を持った面差しは愛らしく、不思議そうに小首を傾げる姿はとても可憐なものでした。

その顔を見た途端、レンはふわりと表情を綻ばせます。
押さえていた歓喜が、一気に表に出たようにその美貌が輝きました。

彼女の面差しは、10年前のレンの記憶の中のものとぴたりと重なったのです。

「キョーコ…!俺だよ、10年前ここで会ったクオンだ!ここで毎日会ったことを、君はもう忘れてしまった…?」

『クオン』はレンの聖名です。

王族のみが持つその名前には、密かに大きな力が宿っていました。
聖名を知られることは、その命を握られていることと同義の意味を持っているのです。

だからこの名は、通常は家族以外の相手には秘したまま、一生を過ごすこととなるのですが…

幼い頃のレンはその名前を、自分の名前としてキョーコへと告げていたのです。

岩場に膝を付き波間の少女の顔を覗き込むと、その言葉を聞いた彼女は更に瞳を大きく見開いて。

「…クオン…!?あなた、あのコーンなの!?嘘、どうして?あなた昔と全然違うわ、髪も瞳も、真っ黒じゃない…!」

幼い彼女は『クオン』の名前を聞き違い、その違いに気付いた後も、ずっとレンを『コーン』と呼んでいました。

少女の驚きの声に、レンは笑みを零します。

キョーコのそんな驚きは当然のものでした。なぜなら彼女とここで会っていた『クオン』は、今の姿とはまったくと言っていいほど違っていたのですから。

「昔、話をしただろう?俺は王の子供だと…王位を継ぐまで、姿を変え災いから身を隠すのが、古くからの慣わしなのだと。今の俺には、目晦ましの魔法がかけられているんだよ」

微笑んだレンが瞳を閉じ、その唇で短い呪文を唱えると…

黒髪が淡い金髪に、そして押し上げた瞼の奥の瞳が黒から碧へと、瞬く間に色を変えました。
闇の色にも似た黒を纏っていた『レン』は、煌びやかな色彩を持った『クオン』へと姿を変えたのです。

その姿を見るなり、目の前の少女が表情を輝かせます。

「…コーンだわ…!あなた、本当にコーンなのね?凄い、色が違うだけでこんなに印象が違うなんて!さっきのあなたは全然別人だったわ。またあなたに会えるなんて…ああ、どうしよう、とっても嬉しいわ…!」

彼女は満面の笑顔を浮かべ、嬉しげに細身の身体を捩ります。
それと同時に、彼女のひれが海面を叩いて小さな水飛沫を上げました。

ピンクのひれは月の光を浴びた海面から出たり入ったりを繰り返し、表情と一緒に喜びの色をレンに伝えてきます。


…そうなのです。

レンの初恋の少女であるキョーコは、人魚のお姫様だったのです。


出会いは10年前。

イルカを追ってこの洞窟の傍までやって来た際、浅瀬にある珊瑚で鱗に傷を負ってしまった彼女をレンが見つけ、誰にも内緒で治療をしたのが出会いのきっかけでした。

人魚はその魔力を持った歌声で人を惑わし海底へ引きずり込む恐ろしい魔物なのだと、海を生活の場所とする国の人々は恐れていましたが…

ひょんなことから知り合った人魚のキョーコは、無邪気で夢見がちな可愛らしい女の子で、人間の女の子となんら変わりのない少女でした。

レンとキョーコが親しくなり、互いに好意を寄せ合うようになるのはあっという間のことでした。

可愛い笑顔と真っ直ぐな信頼を向けてくれる彼女が、大人になっても今と変わらず自分の隣に、妃として傍にいてくれたなら…
毎日がどんなに幸せで楽しいだろうかと、その時既に、レンは考えておりました。

唐突の別れさえなければ、この10年、ずっと一緒にいられたはずでした。

「君は、どうして突然ここに来てくれなくなったの?探しに行こうにも君の住む場所はこの広い海の底で…何も出来なかった俺は、随分と切ない思いをしたんだよ」

子供の頃から今まで悲しい思いを抱えていた分、レンはほんの少しのあてつけも込めて…これまでずっと気になっていたことを、やや意地悪な言い方で問い掛けました。

2人が会えなくなった理由、それは、彼女が突然姿を消したことにあったのです。
以来、レンがどれほどこの洞窟を訪れても、彼女に会うことは一度もありませんでした。

キョーコの前髪を指先で払い、その頬を掌で包み彼女の顔を繁々と覗き込むと、キョーコが表情を曇らせます。

「ごめんなさい、コーン…あの時、あなたとここで会っていることをすぐ上の姉に見つかってしまったの。お母様に人間と必要以上に親しくなるなって怒られて、暫くの間、自分の部屋に閉じ込められてしまっていたの…」

そしてそう言った彼女は、そのまま拗ねた顔を作ります。

「でも私、何とか監視の目を盗んで抜け出して、ここに戻ってきたのよ。ちょっと、時間が掛かっちゃったけど…なのにあなたこそ、何度来てもここに顔を見せてくれなくて」

唇を尖らせ上目遣いに見上げられて、今度はレンが謝る番になってしまいます。

「ごめん、キョーコ。君をずっと待ちたかったのだけど…あの後、急に留学の話が進んでしまったんだ。俺はずっと国の外にいて、何日か前にやっとこの国に戻って来れたんだよ」

困ったように目線を伏せたレンは、苦しげにキョーコの顔を見つめます。

「そうだったのか…俺達、すれ違いをしていたんだな…」
「本当だわ…私、あなたに嫌われちゃったのかと思って、凄く悲しかったのよ」

そんなことを寂しそうな顔で言うキョーコの頬を撫でたレンは、そっと瞳を細めます。

10年ぶりに再会したキョーコは、可愛らしい女の子へと成長しておりました。

栗色の髪をオレンジ色の珊瑚の珠を連ねた髪飾りで飾った彼女は、綺麗に整えられた爪には華やかな飾りを施し、貝殻で出来たビキニでなだらかな丸みを描く胸元を覆っています。

そして、月の光りを受けた白い肌が、レンの心を誘うように艶かしく光り輝いて…

記憶の中の幼い少女は、その面影をしっかりと残したまま、すっかり1人の女性へと姿を変えていたのです。

子供の頃の恋心が、レンの中で新しい形となって大きく膨らんで行きます。

キョーコを愛しいと思う気持ちが、改めて、強く強く心の中に広がっていって。

もう二度と彼女を手放したくはない、そんな思いを、自分自身が驚くほどに急速に深めていきます。

「キョーコ…もう、君を離したくない。俺との昔の約束を、今も覚えてくれている…?」

悪戯っぽい色を浮かべた瞳でキョーコを見つめると、彼女の白い頬が夜目でも分かるほど薔薇色に染まります。

「…覚えているわ…あなた、私のことをお嫁さんにしてくれるのでしょう?」
「よかった、覚えていてくれて。その約束は、今も有効?」

キョーコの指先を掬うように持ち上げたレンは、その指先にくちづけながら瞳を覗いて囁きます。

「キョーコ。大人になったら、俺の妃になってくれますか…?」

幼い頃のレンは、人生初で最後になる予定のプロポーズの言葉を、キョーコに対して既に告げていたのです。

『大人になったら』

それは、まさに今なのだとレンは思います。
このタイミングで再会できた幸運を、レンは逃せません。

するとレンの目の前で、キョーコが嬉しそうに表情を綻ばせました。

「勿論よ!その為に、私はずっとあなたをここで待っていたんだから…私、あなたと会えなくなってからも、出来る限り毎晩ここに来ていたのよ。あなたに会いたくて」
「…キョーコ…」

そんな花のような可愛い笑顔に、レンの目線が釘付けになってしまいます。

そして、レンの表情が甘く蕩けます。
笑みを零すキョーコのそんな嬉しい物言いに、完全にその心を捕らえられてしまったのです。

海の中から手を伸ばしたキョーコが、レンの頬を指先で辿ります。

「ああ、大人になってもあなたはやっぱり素敵…!花嫁になるのなら、あなたじゃなきゃイヤだってずっと思っていたの!」

幸せそうに微笑んだキョーコは、そして…

「ねえねえ、コーン!私と一緒に海の底に行ってみない?海の底は素敵なところよ、そこで私と子供を作りましょう?」

華やいだ声でそう言われて、レンは虚を突かれます。

「…海の底?」

キョーコの言葉は嬉しい言葉ばかりですが…

想定とはかなり違う台詞も、彼女が口にした物の中に含まれていたのです。

「子供を作ることは物凄く大賛成だけど…待ってキョーコ、俺が海の底の君のところに行くとなると、問題がたくさん出てくるよ。人間の俺は、海の底では生きられないからね」
「そうなのよねえ、人間の男は海の底に引きずり込むとすぐに死んでしまうって、姉様方が嘆いているわ。残念な話ね」

瞳を翳らせたキョーコは、それでもすぐに唇を笑みの形に引き上げます。

「でもね、これが人魚の恋なのよ。人間の男と恋をして、そのお相手の身も心も食べ尽くしてこそ、やっと一人前の人魚姫になれるの!素敵な話でしょう?私、この冬には18歳になるのよ。大人になるのには、とってもいいタイミングの再会だったと思うわ」

ふふっと微笑むキョーコは、可愛らしい仕草で口元に指先を押し当てます。

…綺麗に磨かれた長い爪は鋭く煌いて、真珠のようなちいさな歯はきらりと光って…

その爪で切り裂かれ、その歯で頭から愛しい少女にばりばりと食べられる自分を想像して、レンは頭を横に振ります。

キョーコに食べられその血肉になる、それはそれで新しい愛の形かもしれませんが…
どうせなら、2人共にいられる幸せな未来を思い描きたいと、強く思います。

「それに…食べるのは、やっぱり俺の専門にさせて貰いたいな…」
「? コーン、それはどういう意味?」

きょとんと自分を見上げてくるキョーコに対し、笑みを深めたレンは緩く首を横に振って見せて。

「なんでもないよ、キョーコ…君を、なんとしてでも俺の妻にしようと改めて思っただけ。君にまた会えて嬉しいよ。もう二度と、俺の傍を離れないで」
「きゃ…やだもう、コーンたら…」

額に唇を押し当てると、キョーコの頬がまた鮮やかに色付きます。

過激なことを口にしつつも、小さなことにも真っ赤になる彼女の初心な様子にレンは表情を緩めます。


今後について、自分達には長い長い話し合いが必要だと強く感じながら…



レンは、何はともあれキョーコとの幸せな再会の夜をしっかりと楽しもうと。


「キョーコ…今も変わらず、君を愛してるよ」


ほっそりとした彼女の身体を優しく引き寄せて…その唇に、柔らかなくちづけを落としたのでした。




*2につづく*
こんにちは、美花です♪

文章を書くリハビリがてら、25日発売のザ・花とゆめ掲載のスキビ番外編の感想を語らせて頂きます。
というか、感想(熱い想い)を叫びたい>>>>>リハビリなんですがね…!!はあはあ。

ザ・花とゆめまだ読んでない!ネタバレは絶対にイヤ!!と言う方は立ち入りにお気をつけ下さいませ。






忙しさにかまけてスキビも本誌を追いつつすっかり読み専になっていたんですが、色々と進展がありましたね♪
金髪敦賀さんの甘さ&年相応振りに「まあまあ、コーンたら」と、何故かママン的な立場で見守っていたのですが…

ここに来て落とされたザ・花とゆめの衝撃的なスキビ番外編!!

ごめんなさい、あの、あの、あの!

わわわわ、私、やっぱり黒髪敦賀さんが大・大・大好きな模様です…!!!

待ってた、待ってたよ黒髪敦賀さん!!

キョーコちゃんも初々しい片想いが可愛らし過ぎて萌死ぬかと思いました!!!
敦賀さんへの気持ちの自覚後だからこそ描ける、甘酸っぱい感じが溜まりません…!はあはあ。

いやいやもう、たった13ページの短編だったんですが、望み願う展開が繰り広げられててぎゃー!となりました♪
こう言う蓮キョが読みたかったー!いえ、金髪敦賀さんを否定するつもりはないんですが…ね?←

この番外編で漸く登場のキョコたんからの敦賀さんへの誕生日プレゼントですが、大方の予想通り枕だったのですが…あんなにもふもふなものだったとはラブラブ

もこもこ羊さん枕、確かにキョコたんの趣味ですね^^あれを可愛いと思い、お仕事の度に持ち歩いているキョコたんを想像すると、勝手に顔がによによして来てしまうんですが…

実際に贈られたのは敦賀さんで、当然ながら、持ち歩いているのも敦賀さんなわけでして!!

『無人島に何か3つ持って行くとしたら』と言うお題の雑誌の質問に答えた敦賀さんがイケメン顔でもふもふ羊さん枕を捧げもつ姿はシュールと言うかなんと言うか、物凄い破壊力がありました!何あのドヤ顔!

いやいや、そりゃあキョコたんも『後悔と後悔と後悔の塊』と枕の事を言うと思います。スーツ姿にらぶりーもふもふ羊さん枕って…何あのどえらいミスマッチぶり!ファン以外の女子が見て大爆笑するのも分かりますね、本気で破壊力があり過ぎる。

あれを敦賀さんに贈れたキョコたんも、ある意味凄いです。誕プレなら贈る相手に似合うものを選びそうですが…京都のおもてなしの心はどうしたんでしょうか、キョコたんたらw

そして贈られた側の敦賀さん…嬉しかったんでしょうね、キョコたんからの贈り物。雑誌のインタビューの撮影写真に載せちゃうとか、物凄く自慢したかったんだろうなあ。『敦賀蓮』に似合う似合わないとか、結構どうでもよさそう。
それにある一点への有効な敬遠になりそうですしね。敦賀蓮×らぶりーもふもふ羊さん枕と言う組み合わせ、もしもショータローが見たなら、贈り主が誰なのか一発で気付きそうですもの。本編にその辺出てきたらいいのになあと思ってみたり。

て言うか敦賀さん…無人島に持って行きたいのはむしろその送り主でしょーが!w
早く本音をキョコたんに言えるようになるといいなあ(* ´艸`)もどかしい両片想いですね…

それからキョコたんですが…

敦賀さんのインタビュー掲載雑誌を購読用1、保存用2と3冊購入しそうになるって、好きになった人への接近方法がどうにもマニアックです!w

これは過去の弊害なんでしょうねえ、ショータローめ。あとは…キョコたん、恋愛への姿勢が崇拝及び観察系というか…元々マニア的な部分があるんですよね…
こちらも早く、敦賀さんと言う生身の存在に身も心も近付いて行けるといいですね。向こうの受け入れ態勢は万全ですよ、キョコたん!

そして今回の番外編のGJ賞は、相変わらず蓮キョに対して素晴らしいナイスアシストをしてくれる社さんですね!
ほんとにほんとにやっしーはいいお兄ちゃんでいいマネージャーさん過ぎます(゚ーÅ)ほろり

やっしーに雑誌に羊枕を載せたいと言った敦賀さんの様子も見てみたかったです♪
これまで、キョコたんへの気持ちをやっしーには完全否定してきた敦賀さんですが、そういう事情のある羊枕を彼に持ち出せるようになったんですね。自分と枕のあれほどのミスマッチぶり、敦賀さん自身も当然自覚があるだろうし、そんな出所のものを出したらやっしーがどんだけ食いつくかも分かってるでしょうし…だんだんこの2人の距離も縮まっているようで、嬉しい限りです。

で、ラブミー部の部室を憩いの場にし、誰にも邪魔されずのんびり時間を潰しつつ、そこを待ち合わせの場所に指定する敦賀さんですが…

寝てる!もふもふ羊さん枕使っておねむ中です!
寝顔全開!!ちょ、え、可愛すぎる!!ずるいでしょ!←

ここだけのお話ですが、敦賀さんご愛用のもふもふ羊さん枕、凄くいい匂いがしそうですね…///
(変態発言すみませんw)

雑誌ではスーツ姿+ラブリーグッズで違和感アリアリでしたが、今回のニットとの相性はまだありな感じでしたよね^^『敦賀蓮』とはミスマッチだけど可愛いです♪

敦賀さんを見つけて真っ赤になるキョコたん、ここで退場するやっしー(ほんとGJ過ぎる)、キョコたんが近付いても気付かず寝ている敦賀さん!寝顔見つめてふよよとなっちゃうキョコたんも可愛らしくて、もーこの2人どうしてくれよう!と言う感じです。

理想の展開・状況が素晴らし過ぎて言語が追いつきません。はあはあ。

うっかりそんな寝顔を写メっちゃうキョコたんが、収集欲的マニアさの限りで本人もそれにがっくりと落ち込んでいますが、(というか、普通の少女マンガだときっと立場が逆なんだろうな…と言うことに今気付いたんですがwさすがスキビ)この寝顔を残しておきたい気持ちは凄くよく分かるよ、キョコたん!

そして!

敦賀さんの寝顔写メというお宝画像を見つめつつ、

『こっそりと大切に育てたい この気持ちと同じくらい
秘密の 宝物にするから―――――――――――― 』

と独白しながら、

『…へへ…可愛い…///』

とか思っちゃうキョコたんに、見事にノックアウトされました///

うおい、敦賀さん!!
写メの音に「ん、気のせい?」とか思って寝起きしてる場合じゃないよ、ドアの外で好きな子があなたの画像見ながらによによしてるよ!!あのキョコたんが(大事)あなたを可愛いですってよ…!

こんなにこんなにあからさまなのに…何でその恋心に気付かないの、このにぶちんめー!
お互い恋愛初心者って、恋愛初心者って!その顔でそれは犯罪です、敦賀さん!(八つ当たり)

話を読みながら『さっさとくっついたらいいのにーーー!』とぜいぜいしていました。何だこの両片想い、本当にもどかしいです!


あ、ちなみにキョコたん…

あなたは知らないかもしれないけど(ちょっとは知りつつあるかな)、実は敦賀さんも見事なくらいにラブミー部に所属できる権利を持っているんですよ…ユーレイ部員どころか正部員でも全く問題ないほどです。190cmのでかい男性用ドピンクつなぎ、特注で作ってあげて下さい(ノДT)


短い短編でしたが、内容がぎっしり詰まっていて大満足のお話でした♪ううん、お腹いっぱい。
当分ザ・花とゆめを読み返してはにやにや出来そうです(≧▽≦)

本誌の次の展開も気になるところですが、時々今回のように日本での芸能活動中な蓮キョの短編も書いて頂けると嬉しいなあと思います^^


ではでは、また。ここまでのお付き合い、ありがとうございました!
お久し振りです、美花です!

昨年の11月末以来、放置ブログにしてしまっていてすみませんでした…
4月の増税のお陰でリアル仕事が大特需を受け、毎週6連勤、一ヶ月のお休みが日曜だけって生活が何ヶ月も続くてんやわんやの事態になってしまい、二次活動に全く手が回らない形になってしまってました。

増税の影響がこれほどのものとは…3%でこれなんだから、以前の3%、5%の時も大変だったんでしょうねえ…(思い出し死相)

もともとうちの職種は3月が繁忙期で毎年忙しいんですが、今期はその3倍の量が一気に入ったそうです。
もう最後の3、4月の2ヶ月くらいは殆ど会社に住んでるみたいな状況で、取引先の担当さんとも、

担当さん「美花さん(仮)、最近ちゃんと家に帰れてます~?」
美花   「うふふ、もう、単に寝に帰ってるだけって感じですドキドキ
担当さん「うちもですよー、終電で帰って何時間か後には職場にいるって言うね!お互い、体調だけは本気で気をつけましょうねー…」

と言う会話をしてました。おそるべし、増税特需。

今年は気がついたら桜が咲いてて、気がついたら全部散ってました。花見、したかった…
増税に振り回された半年でしたが、私がリアルに増税を実感したのは、夕食として用意されていたパンの値段が『108円』になってたこと、くらい。ま、そんなものですよね…。

しかし、あんまりにも普通に毎日遅くまで仕事していてどこもこんな感じだと思ってたんですが、現状を知人に話したら「普通の事務職って定時上がりが基本だよ…」と言われあれー?となりました。そんな「普通」は私の辞書にはなかったよ…?

うちの職場の未婚率が高いのは、全体に行き渡ってるこの思考のせいだよね、きっと。
そう気付いた4月の終わりでしたー(色々遅いですね、ええ、分かってます…)

と、半年ほどそんな状況でしたが、どうにかこうにかそれを乗り切り、やっと余裕が出てきて今に至ってます。
もうGWか!月日が経つのがあっという間すぎて参ります;日常復帰に頑張らねばいけません…!

ブログもつぶやき系も、書く元気も見る元気もなくて全て放置とか、ほんと申し訳ない限りです。
久々に文章を書くので慣れない感じがあるのですか(半年のブランクがあると色々忘れますね…)、リハビリをしつつ、ゆっくりとですが二次活動をまた始めたいと思います。

こんなブログもあったわねーと言う感じですが^^;、どうぞ、またよろしくお願い致します。



美花 拝

こんばんは、美花です!

本誌前回発売時は「続きは一ヵ月後かー、先が長い…!」と思っていたのですが、あっという間に一ヶ月が過ぎ、気が付けば11月も後半となっておりました。今年も残すところ、あと少し。早いですね…!

すっかり寒くなりましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

私はここ何日かの冷え込み振りで、どうやら風邪を引いてしまったようなのですが…
ぼんやりする頭も、本誌を読んだら少し元気になってきたような気がしましたw

そんな訳で、本誌23号、ACT.206『原色の楽園』感想です。ネタバレがありますので、立ち入りにはお気をつけ下さいませね。

まずは表紙!

キョコたんがななんと、のーぶらなお胸をどどーんとご開帳しております…!!

キョキョキョ、キョコたーん!?

いやいやいや!

いつも、おっきくなったりぺたんとなったり伸縮自在だわーと注目していたキョコたんのお胸ですが、未成年のお嬢さんが、歩く天然記念物な純情乙女が、こんなにサービスしちゃうなんてどうしちゃったのキョコたんー!?(でもにやにや)

しかも、

『視線の先に煌くのは海と太陽と…。』

の煽りあり。

海と太陽と…そのあとに続くのは、勿論『敦賀さん』、ですよね…!?

いやいやいやいや。

こんなキョコたん見たら、敦賀さんのいろいろなものが崩壊しちゃいますって!
敦賀さんの心の平穏のためにも、てーそーの危機を未然に防ぐためにも←、露出はほどほどにお願いします、キョコたんたら。

そしてお話を読んでまず思ったのは…

敦賀さん、キョコたんの特殊能力をよおうくご存知ですこと!!
うん、キョコたんはやっぱりこうじゃなくちゃね!


でしたw

キョコたんのコワ可愛さ的魅力は、この能力を抜きにしては語れませんよね♪

敦賀さんのこの能力への警戒振りが凄まじかったです。
そりゃあ、その恐怖を唯一、身を持って体験した方ですものね ( ´艸`)ウププ。

(いやいや、愛ですよ、愛。
当時は若干身体目当て的な空気もありましたが、それでもしっかり愛されてましたよ、敦賀さん 笑


むしろ、一発で見抜かれなかったのが不思議なくらいですな、敦賀さん的には。

そんな敦賀さんですが、うっかり触れようとしちゃって「ちょっと待てー!」となったり(『敦賀さんと触り方、撫で方が似てる』って、キョコたんものっ凄く言いそうですよ、敦賀さん!)、キョコたんに奢らせちゃってスコーンと抜け殻になったり、今号はいろんな表情を見せてくれていますねっ(°∀°)b

この抜け殻ぶり、美形俳優としてはかなりアレですが、新たな一面ですw
こんな顔になっちゃうなんて、敦賀さんにとっては余程衝撃的なことだったんですねえ。

キョコたんの『敦賀さんの声でキョーコちゃんと呼ばれる』ことへのぎゃーっとなりぶりも、凄く分かりますねー!

敦賀さんは「そんなに嫌なの、この声が」と怒りマーク飛ばしてますが、いやいや、その逆ですってばw

なんか思ったんですが、敦賀さんとキョコたんてホント似た者同士と言うか…相手の中での、自分に対しての自己評価が低過ぎますね。

『あの子にとっての敦賀蓮は…』とか言っちゃってる敦賀さんに、キョコたんの内心の声を聞かせてやりたいところです 笑 それを聞いたらどうなっちゃうんでしょう、敦賀さんたら^^いろいろ怖いなあ。

内心と言えば、キョコたんが準備を整えた時の『他の男性』な社さんが、何気にキョコたんの仕事の予定を聞き出しててウケましたw

こんなにダイレクトに聞き出してるとは思いませんでしたが(キョコたん、「どうして私、社さんに毎月スケジュールを聞かれてるのかしら…?」とか思わないのか)、これ、敦賀さんのためですよね。ううう、本気でいい人過ぎるよ、やっしー・°・(ノД`)・°・!!

こんなに出来たマネージャー、金のわらじを履いても見つけられないよ、敦賀さん!て、年上女房か。
敦賀さんは、ぜひとも社さんに特別ボーナスを個人的に出すべきだと思います、ハイ。


そうそう、敦賀さん本人も言ってますが今回のキョコたん、コーンに再会したことで子供返りしていると言うか、反応が自然で歳相応な感じがしますよね。

そしてそれは、敦賀さんにも言えること。

これまでは、金髪時の『久遠』は『久遠』の顔、黒髪な『敦賀さん』は『敦賀さん』と分かれていた気がしますが、今号は(前号もそうでしたが)金髪姿でも、表情がしっかりいつもの敦賀さんぽいんですよねー

そりゃあ中身が同じだから当然ですが…

今の彼は、演じている『敦賀蓮』でも、事件を起こした当時のままの『久遠』でもない、コーンから21歳に成長した素の彼自身なのかなあと思います。

(一日一回しか魔法が使えないんだ ごめんね。とか 大人って不便だね とか さらっと言う辺り、イイ性格してるなと思いますねえ)

今回個人的に好きなシーンは、敦賀さんの『――――した のか 反芻――――』の流れでした(*^▽^*)

後半では期待してない風の敦賀さんですが、この一瞬は『一体どんな…(どきどき)』とか、ちょびっと期待してますよね、敦賀さんたら♪

男子的期待振りが愛しいです( *´艸`)

て言うか、さっさと告白したらいいよと思いますよ、もう。(乱暴)

キョコたんは「声?」と敦賀さんを見るところが可愛くて、魔法をかけられるのにおでこに触れられる時の顔が綺麗ですねえ:*:・( ̄∀ ̄)・:*:

ちゅっとか思わずしちゃわなかった敦賀さんは、紳士なんでしょうか、へたれなんでしょうかw(許可なく触れないとか以前言ってましたが)

そうして最後。

やっぱり冷静になったキョコたんに、身体のサイズが敦賀さんと同じことを見抜かれてしまいましたが…

正体バレはどうでしょうね?

『声を借りたらサイズまで似て来たんだよ。魔法って不思議だね☆』とかで切り抜けるのか、はたまた今のシリアス具合から『やっぱり、分かっちゃった?』とか困ったように言うのか。

可能性は低いかなあと思いますが、ここで正体バレになった場合、今号での敦賀さん設定の妖精話&行動が、とんだ茶番になっちゃいそうでひやひやしますw

ここまで語ったんだから押し通して!
そして後々バレることになって、積み重なってしまったからこその怒り爆発で『今までのこと、全部嘘ですかー!!』とキョコたんにこってり怒られたらいいと思います☆

うん、不憫敦賀さんが大好物でごめんなさい。だって、大好きなんですものw

詳細は、待て次号ですね!

来月を楽しみにしつつ、今号をにやにやしながら読み返したいと思います!
今号は読み応えがあって、話しも綺麗に動いていて、何回読んでもニヤニヤ出来ます。

次号が出る頃って、もう年末かー…はわわ。

今号を糧に、慌しい12月を乗り切りたいですー

美花です!

【蓮キョde都市伝説】第3弾です。

読書傾向がひっそり猟奇的な私、都市伝説も大好きです。

キョコたんが新人OLさん、敦賀さんが…な、お話の続編です。

蓮キョだからこそのお話つくりをしておりますが、ええええと思われる蓮キョスキーさんが多いと思いますので、立ち入りには十分お気をつけ下さいませね。

元ネタをご存知の方も、ご存知でない方も、この手のお話がお好きな方にお楽しみいただけたらなと思います。

ではでは、どうぞ~


***


「ねえ、キョーコ。そう言えばさっきの電話の人って、噂の『敦賀さん』?」

奏江にそう問われたのは、夕食の片付けの後のことだった。

暦上では既に秋だけど、夏の暑さを引き摺る蒸し暑い毎日がいまだ続いている。
そんな中、奏江とキョーコは帰宅早々交互にシャワーを浴び、今は互いに部屋着姿に着替えていた。

キョーコの部屋は6畳のワンルーム。

ベッドを置いて、低めのソファーとローテーブル、TVを置くラックを揃えただけでいっぱいになってしまう狭い部屋だけど、自室はキョーコお気に入りの空間だ。

淡い色味のベッドカバーも可愛らしいフォルムの家具達も、自分の好みに合わせて一から揃えたもの。

女性専用アパートと言うこともあり管理会社がマメに手入れをしているようで、アパート自体も築10年という古さを感じさせることもない、綺麗な内装の部屋だった。

その室内、ソファーに座る奏江に見上げられて、続きのキッチンからペットボトルとグラスを持ってきたキョーコはどきりとなる。

丁度、蓮のことを考えていたところだった。

今になって冷静さを取り戻し、『…そう言えば敦賀さん、何か私に御用だったのよね…?』と、先ほどの連絡について、漸く思い至るようになっていたのだ。

「えっ、う、噂のって?」

奏江の前に飲み物を注いだグラスを置きながら、暫く会っていない蓮の美貌を思い浮かべて、ちょっとどぎまぎしてしまう。

仕事で忙しい彼とはここ一週間、殆ど顔を合わせていなかった。
これほど会わない日々が続くのは、思えば知り合って以来、初めてのことかも知れない。

そんなキョーコの心の動きに気付かない様子で、

「噂の、でしょ。あんた、会えば毎回『敦賀さん』の話ばかりしてるじゃないの。毎度2人でどこか行ったってお土産持ってくるし」

ボディークリームを丁寧に足へと塗り込んでいる奏江は、少し呆れたようにこちらを見る。

そして、

「よかったの?週末だし、デートのお誘いだったんじゃないの。その『敦賀さん』とあんたって、付き合ってるんでしょう?」

当然のようにそう言うのに、目を瞠ったキョーコは頬を真っ赤にしてしまった。

「ななな、なんてこと言うのモー子さん!そんな、つ、付き合ってなんて、いないったら!!」
「え、違うの?」

けれど、奏江に不思議そうに返されて…

「…そ、それは、私は素敵だなって思っているけど…でも、それはその、私の勝手な片想いって言うか…」

もごもごと本音を口にしたキョーコは、ぺたんとローテーブルの傍の床に座ってますます頬を赤らめる。

相手が大好きな奏江とは言え、やっと形になり始めた、自分の心の内に秘めた想いを改めて口にするのは恥ずかしい。

1人で何かを決断することには慣れているけれど、個人の気持ちを誰かと共有するのは難しかった。
そう言うことに慣れていないからこそ、どうしていいのか分からなくなってしまうのだ。

(だいたい…こんな個人的な話をされても、モー子さんには迷惑な話じゃないかしら…)

…不安になってしまって、キョーコは落ち着かない思いで、ちらりと奏江を見たのだけれど…

「そうなの?でも、毎週会ってるって話じゃない。向こうは、その気なんじゃないかしら」

クリームを更に手にとる奏江から、あっさりとそんな意見が返って来た。
彼女特有のクールな様子の対応だったけれど、それを受けたキョーコは思わず瞳を瞬かせてしまう。

自分の部屋で、親友相手に好きな人の話をしている。

そんな今の状況に思い至って、

(こ、これって何だか、凄く女の子っぽい会話よね…?もしかして、これが女の子同士の恋バナってやつ?嘘、やだ、どうしよう!)

女の子同士のその手の遣り取りに強い憧れを持つキョーコは、一気にまた、舞い上がるような気持ちを抱えてしまう。

奏江の後押しも嬉しいし、この状況自体も凄く嬉しい。

ドキドキと高鳴る胸を押さえたキョーコは、妙にそわそわして来てしまって手近のクッションを抱え込み、目の前の奏江をぐっと見つめる。

「ほ、本当にそう思う?モー子さん」
「思うわよ。普通、何とも思ってない相手とそんな頻繁に会わないでしょ」

そ、そういうものなのかしら?

初めての自分の気持ちに手一杯のキョーコは、蓮の思惑を推し量ることが出来ないままだ。

嫌われてはいないと思う。

それでも、それ以上を望むのはやっぱりキョーコには難しい。

蓮はあの美貌なのだ。今は彼女はいないと言っているけれど、その状況がいつまで続くかは分からない。
彼女と言う特別な存在が出来たら、今までのように会う機会も自然となくなってしまうだろう。

そう思うと切なくなる。

そして、自分の周囲で起こる出来事を思い返し、膝を抱えたキョーコはそっと吐息を零す。

「でも、でもね…私これまで、変な事件にばかり巻き込まれているでしょう?だから、会ってくれているのは同情なのかな、とか思っちゃうの」

やっかいな自分の体質が、面倒見のいい蓮を心配に駆り立てているのではないかと、キョーコは未だに気に掛けて来ていたのだ。

けれど、

「ああ…それは、聞いてるけど。でも、だからって同情で毎週会うかしらね?それは、さすがにないんじゃないの」

細い肩を竦め、グラスを傾けた奏江はそれをさらりと否定してくれる。
これまでの不安を綺麗に切られて、キョーコの心の中に、ほんのりとした期待が浮かび上がってきた。

「そ、そう、かな?」
「私はそう思うけど。そんな心配してないで、どうなのか本人に聞いてみたら?簡単な話じゃない」
「! そ、そんなの、簡単じゃないわ、絶対に無理よう…!!」

それがキョーコの勘違いだった場合、恥ずかしくて、もう二度と蓮には会えなくなってしまうだろう。
そんなのは嫌だ。それならば、あやふやだけど、幸せな今の関係のままでいいと思う。

それでも…

不安に思う気持ちを、誰かにそうじゃないと言われるのは心強い。
言葉だけとは言え、その相手が信頼する奏江なら、尚更だ。

ほんの少しでも、蓮がキョーコと同じ気持ちを持ってくれていたら、とても嬉しい。

…けれど…

もうひとつの不安点を思い出したキョーコは、思わず眉尻を下げてしまう。

「…あのね、モー子さん。もしモー子さんの好きになった人が、凄いお金持ちだったら…モー子さんは、どうする?」

最近知った最大の問題を、奏江に絡めて問い掛けてみた。

身を乗り出すキョーコの真剣な面持ちに、奏江は切れ長の瞳を瞬かせる。

「何、その『敦賀さん』、そんなにお金持ちなの?」
「…う、うん…」
「男の人の甲斐性は、ないよりはあったほうがいいんじゃないかと私は思うけど。お金持ちって、どれくらいなのよ」
「ええと」

高級マンションを個人で何個も持っているくらい。

…とは、さすがに奏江相手でも口に出来ず、困ったキョーコは口篭ってしまう。

蓮の金銭面での事情を知って以降も、キョーコはこれまでと変わらない態度を続けて来ていた。

規模があまりにも大き過ぎて全体像が掴めないこともあったし、何より、お金持ちと聞いて態度を変えるのはどうかと思ったのだ。
お金に目を晦ませることと同じく、お金持ちだからとこれまでと見る目を変えてしまうことも、同列によくないことだとキョーコは思う。

でも、それでいいのかしらと、不安にも思う日々だ。

蓮本人は、そんな自分の金銭面に対して特に気にした様子でもなく、これまでの態度と何一つ変わりがない。
だからキョーコも、その点を見ないこととして対応することが出来ているのだけれど。

(…私って…本当は、敦賀さんの傍にいていい人間では、ないんじゃないかしら…)

高級マンションを保有できる金額を何でもないことのように言う彼と、庶民な自分の立場の違いは明らかだ。

好きでい続けることも、本当はよくないことなのかも知れない。

そう思うと悲しい気持ちになってくる。

膝を抱えたキョーコは、1人深い溜息を零してしまったのだけど…

「…キョーコ」

不意に名を呼ばれ、我に返ったキョーコは小首を傾げる。

ソファーの上で続いてお肌の手入れを始めていた奏江が、急にこちらに手を伸ばしてきたのだ。
腕をぎゅっと握られ、不思議に思ったキョーコは、ソファーから腰を浮かした奏江の整った顔を覗き込む。

「なあに、モー子さん?」

どうしたのかしら、虫でもいた?

やや強張っているようにも見える奏江の表情を見つめて、キョーコはそんな風に思ってしまう。
奏江の眼差しが、窓側に寄せて置いているベッド付近の床に、真っ直ぐ向けられていたのだ。

管理会社が定期的にアパート全体の駆除をしていても、季節柄、何かの拍子で窓から入って来てしまうこともある。

もしかすると、長く垂らしたベッドカバーの下に逃げ込んで行ったのかも知れない。

それなら早速やっつけなくてはと、キョーコは殺虫剤を持って来ようと、立ち上がろうとしたのだけど。

「…だったら、これからその『敦賀さん』のところに行かない?」

いきなり奏江がそんな予想外のことを言い出して、キョーコは目を丸くする。

「え!な、何を言ってるの、モー子さんたら!」
「気持ちが知りたいんでしょう?私が上手く、聞き出してあげるわよ」
「え、え、ええええ!?」

言うが早いか、奏江はそのままキョーコの腕を引いて、キッチンの先にある玄関へと向かおうとして、キョーコはそんな奏江を慌てて引き止める。

(どうしちゃったの、モー子さん!脈絡がなさ過ぎるわ!)

「も、モー子さん、そんな、こんな夜遅くにいけないわ!き、きっと敦賀さん、もう寝てるし!」

いつになく強引で即決な奏江に、キョーコは顔色を青くさせてしまう。

いきなり押しかけて蓮に迷惑を掛けるのも嫌だし、そこできっぱりと気持ちに決着がついてしまうことも恐ろしい。
白黒はっきりつけたい奏江らしい考えかも知れないけれど、曖昧なままにしておくと言うのも日本人の持つ美徳だと思う。

蓮の気持ちなんて、正直まだ、知りたくはない。
不安はあっても、今は知らないまま、幸せな夢を見ていたいと思うのだ。

けれど、

「まだ9時前でしょ、こんな時間に寝る男なんていないわよ。ほら、いいから」
「モモモモ、モー子さん!!?」

意に留めない奏江は、思うよりずっと強い力でキョーコを引っ張り、あっという間に、2人して玄関の外にまで出て来てしまった。

玄関先の棚に置いていた鍵で、奏江がドアの鍵を音を立てて閉める。

そしてアパートの階段を下りる段になって、漸くそのことに気付いたキョーコは大きく慌ててしまう。

「モ、モー子さん、服!せ、せめて、行くならちゃんとした服に着替えて行きましょうよ!こんな格好じゃ、外も歩けないわ!」

お風呂上りだった奏江もキョーコも、キャミソールにショートパンツと言う軽装に着替えていたのだ。

まだまだ暑い夜、2人だけで部屋にいるには何の問題もない姿だけど、これで外を歩いて、ましてや蓮に会うだなんて、キョーコの中では有り得ないことだった。

それは奏江だって同じことだろう。

いつもきっちり綺麗めな服装をしている奏江のことだ、その点は聞き入れてくれるはず。

それなのに…

「バカ!そんなこと、今は気にしている場合じゃないわよ…!」

何故か逆に怒られてしまって、訳が分からないキョーコは呆気にとられてしまう。

いきなりのことで、お財布も携帯も部屋の中に置いたままだ。
こんな状態で蓮のところに行くだなんて、いくら奏江のすることとは言え、どうかしてしまったのかと思えてくる。

そして、何が何だか分からないままに、階段を降りきったところで…

「え、最上さん…!?」

背後から声を掛けられて、聞き覚えのありすぎるその声に驚いたキョーコは、飛び上がってしまった。

慌てて振り返った先には、何故か、唖然とした顔の蓮が立っていた。
その背後の道路には、待たせたタクシーが停まっている。

その長身と美貌を見つめて、一気にキョーコの顔から血の気が引いていく。

どうして彼がここにいるのか分からない。
会えたことは嬉しいけれど、今の状況でこれは、最悪の出来事だと思う。

「つ、敦賀さん、やだ、みみみ、見ないで下さい…!!!あ、ダメ、モー子さんたら!!」

自分の、決してグラマラスではない身体が蓮の目に晒されるのが耐えられなくてしゃがみこんだキョーコは、奏江がそのまま彼に歩み寄るのを見つけて、更に取り乱してしまう。

今、奏江の口から蓮に気持ちを問われてしまったら、きっと今の関係が崩れてしまう。
自分の気持ちが彼にとって迷惑なものだったらと思うと、考えただけで眩暈がしそうだった。

「嫌よ、モー子さん、お願い、何も言わないで…!!」

…だから、悲鳴のような声でそう叫んだのだけど…

「あなたが敦賀さん!?丁度いいわ、何でここにいるのか知らないけど、今すぐ警察を呼んで!!」

大きく響いた奏江の緊迫した声に、え、と思う。

見上げれば、蓮に詰め寄る奏江の顔は鬼気迫っていた。

警察?

敦賀さんに気持ちを聞くのに、警察まで呼ぶの??

「え、警察って…何故?」

蓮もその意味を把握出来ていないのだろう、しゃがみこんだキョーコと傍に立つ奏江を、驚いた顔で交互に見つめてきていた。

彼と目線が重なって、お互いがきょとんとした顔になってしまう。

「モー子さん…どうして…?」

呆気にとられて見上げるキョーコに、奏江は強張った表情で振り返って。

「…あんたの言う引き寄せ体質の意味が、やっと分かったわよ…」

溜息混じりに長い黒髪をかきあげた彼女は、自分を落ち着かせるように大きく息を吐くと…

「ベッドの下にいたのよ!何でか知らないけど、あんたのベッドの下に、包丁を持った男が隠れてたの!」



よく通る声で、そう、蓮とキョーコに告げたのだった。




≪SIDE.Rに続きます≫

皆様の大方の予想の通り、今回の敦賀さんはヒーローではありませんでした…
続きをUPするまでコメントのお返事が出来ずにすみません;後ほど、お返事をさせて頂きたいと思います^^