新しい年を迎えたばかりなのに、もう1月も下旬となりました。
昨日は大寒で、1年のなかで最も寒い時期に入りました。
この時期が過ぎると少しずつ春が近づいてきます。春が待ち遠しいですね。
久しぶりの更新になりますが、またまた日常離れした話題になります。
韓国のソウル市には、漢江という長さ514kmの大きな川があります。
ちなみに日本で一番長い川が信濃川の367kmですから、その1.4倍の長さになります。
この漢江の上流の北朝鮮から流れてくる水は、ソウル市の中心を通って西海(黄海)へと流れ込みます。
北朝鮮は1986年、この漢江上流に金剛山発電所のダムを着工しました。
この金剛山ダムは、南北軍事境界線の10kmほど北に位置するところにあります。
全長1100m、高さ200m、総貯水量200億トンという巨大ダムで、年間80万KWの電力を作ろうというものでした。
ここで問題となったのは、北朝鮮がこのダムを故意に決壊させた場合、その下流にある韓国側のダムも次々と決壊し、大量の噴流がソウルに押し寄せて水没してしまうのではないかというものでした。
「水を堰き止めて水攻めをしてやろう」という目的でつくられたダムが、北朝鮮側の「金剛山ダム」です。
一方、1988年開催予定のソウルオリンピックを妨害しようとしていた北朝鮮の軍事テロに、韓国側も即座に対応し、軍事境界線の南側にダムを建設し始めました。
これが「平和のダム」というものです。全長1200m、高さ220mと北のダムより一回り大きいダムを下流に造り、水には水で対抗しようとしました。
下の地図でダムの位置を簡単に説明すると、韓国と北朝鮮の国境の軍事境界線のすぐ北の日本海に近いところに日本でも話題となっていた観光地・金剛山があります。
そのすぐ近くに金剛山ダムがあり、軍事境界線の韓国側に「平和のダム」があります。
その後、金剛山ダムの貯水容量が、当初考えられていた200億トンに対し、その“8分の1”の26億トンにすぎないということがわかりました。
また、北朝鮮は資金難となってダム建設工事を中断していたため、「平和のダム」の方も全長410m、高さ80m、総貯水量5億9000万トンの第1段階の工事でダム工事は中断されていました。
しかし、その後また、韓国からの金剛山観光で得たお金で息を吹き返し、北朝鮮は1999年から再び金剛山ダムの建設を開始しました。
こうして北朝鮮は、1986年に着工した金剛山ダムが2003年末に最終竣工し、全長710m、高さ121.5m、全貯水容量26億2000万トンのダムが完成しました。
この金剛山ダムは土砂ダム(ロックフィルダム)で造られているため、2002年1月の大雨でダムの頂上部に幅20m、深さ15mの亀裂が見つかり、北朝鮮側はこの補修工事を経てダムを完工させた経緯があります。
この規模のダムを建設するには、通常早くても約2年半かかるところが、金剛山ダムの場合には1年4ヶ月で急造されたばかりか、ダムが完成する前から水を貯め始めたことで、ダムの安全性に問題がありました。
そのため、韓国側も金剛山ダムの異常な徴候を把握した後、水攻めでなくてもダムが崩れる非常事態に備えるため、2002年に「平和のダム」の第2段階の嵩上げ工事を再開し、2005年10月に完成しました。
第2段階の工事で、「平和のダム」は高さが80mから125mへと45m高くなり、貯水容量も26億3000万トンへと大幅に増大しました。
つまり、「平和のダム」の貯水量もまた、金剛山ダムとほとんど同じ容量となり、北朝鮮側からの洪水に対しては対処できるようになりました。
しかし、金剛山ダムの完成がもたらす影響は洪水だけではありません。
金剛山ダムの完成で、北朝鮮側から漢江に流れ込んでいた年間17億トンの水の流入が遮断されると、今度は韓国内の水不足や生態系の変化を招く恐れが出てきました。
通常、流域内に降った水は、同じ流域内に戻すのが原則です。
金剛山ダムは、水を下流に放出しながら発電する一般的なダムとは異なり、トンネルを通じて水を流すことで発電する方式を採用し、東海岸(日本海)に水を流しています。
国際法では、2国以上に渡って流れる川にダムを造る場合には、その関係国間での協議が必要です。
北朝鮮はその協議も行わずにダム工事を強行して完成させました。
決壊しても被害に合うのは韓国側であり、もともと韓国側を人為的に洪水に陥れる目的で建設したダムだったからです。
なんとも北朝鮮のやることは常識外れですね。
朝鮮半島でのオリンピックは南北で共同開催と最後まで叫んでいた裏では、このような水攻めのためのダムも造っていたわけです。
金正日は1987年にはソウルオリンピックの韓国単独開催を中止させるため、大韓航空機爆破事件を起こしています。
また、1989年にはソウルオリンピックに対抗し、世界青年学生祭典を平壌で開催しました。
この祭典の開催に伴って多くの宿泊施設や記念建造物、インフラ整備が急きょ行われたため、多額の債務が北朝鮮にのしかかり、北朝鮮経済が疲弊した要因にもなっています。
北朝鮮のダムに関しては、戦前日本が朝鮮半島に造った当時世界最大級の“水豊ダム”について “北朝鮮に残してきた「帝国の遺産」と 日本の支援 ” で書いています。
こちらもあわせて読んでいただければと思います。
今日も長くなってしまいました。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
参考過去ブログ : 北朝鮮に残してきた「帝国の遺産」と日本の支援