ちゃいちー頃。

ボクの家での一番のご馳走は天ぷらだった。

天ぷらはちゃぶ台の上に用意された「ナショナル全手動型天ぷら作成機」によって揚げられ、その場で食された。

ボクは、天ぷらが大好きだった。

毎日天ぷらだったらいいのになぁって思ってた。

天ぷらと共に過ごし、天ぷらの服を着て、天ぷらの家に住みたいとすら思っていた。



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中でも、ウインナーの天ぷらは、ボクのハートを釘付けにした。

だから母親はボク専用に、ウインナー天ぷらを山のように作ってくれた。

それ以外に。

エビの天ぷらや、アジの天ぷらや、椎茸の天ぷらが揚げられたけど、ボクはそんな天ぷらたちには目もくれず、ひたすらウインナー天ぷらを食べ続けた。

時が経ち。

ボクは、馴染みの天ぷら屋さんを一軒持っている。

天ぷら屋さんで、天ぷらを揚げてもらい、それを食べながらビールを飲む。

揚げたての、アツアツの天ぷら。それを食べながら飲むビールのうんみゃいこと。

でも、その天ぷら屋さん。ちょっと本格的だから。

ウインナーの天ぷらが用意されていない。

それが残念でならない。

今度、スーパーでウインナーをたくさん買って行って、オヤジに揚げてもらおうかな。

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昔のテレビは、ヒューンと消えた。
今のテレビとは、そこが違う。
今のテレビは、シュッと消える。でもでも。
昔のテレビは、暗くなるけど光が真ん中に残り、10秒くらいたってから完全に消えるのである。
覚えている人は、かなりのお方。
きっと、あなたは覚えています。

 
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ところで、それが困った。いつ困ったかと言うと、修学旅行の夜に困ったのだ。
就寝時刻は夜の9時。これが、一般的な修学旅行の寝る時間。
若者のライフスタイルからは、かなりかけ離れた計画だ。
何しろ、若者は元気がいい。9時に寝ろと言われて、寝るわけがない。
で。
テレビを見る。隠れて、音を小さくして、みんなでテレビを鑑賞する。
普段見られない、深夜番組だってこの日は見れちゃう。だからウレシイ。
ウレシクて、切なくて、涙そうそうになってしまう。
ところがである。
若者たちが、そうした幸せの絶頂期に達した頃になると必ず、先生たちが部屋の見回りにやってくるのだ。


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「おい、お前ら全員もう寝ているだろうな」。
誰かがあわてて、テレビのスイッチを切る。そして、みんな一斉に布団に滑り込み、スヤスヤって寝たふりをする。でもだめだ。でも、だめなんだ。
だって、テレビの中心が「ヒューン」って光ってる。
これで、全てがばれてしまうのである。
「誰だ、テレビを見ていた奴は!」。
こうした不測の事態が起こった場合、だいたい槍玉に上がるのが、顔が水道管に似ていたMクンだった。彼の家は、水道工事をしていた。野球部に所属し、元気のいい彼は、いつでもイタズラ小僧の中心的な存在だった。
「こら、M。お前だな」。
先生が、そう断定的に怒鳴り始めると、ボクらは一斉に声をあげた。
「先生、助けてください。Mクンがテレビを見ていて、うるさくて眠れません」。
Mクンは、野球はうまいけど、言い訳が下手な少年だったから「アワワワワ」と訳のわからない声を発し、その後。廊下に連行される。
ボクらは、廊下でどのような恐ろしいことが起こっているかは気にしないで、布団の中でトランプをして遊ぶことにした。
それが青春なのだ。
 
Mクンは今。
家の後を継いで、水道工事屋さんを元気に営んでいる。
だから、過ぎ去ったことは水に流し(ウマイっ)、あの時のことは許していただきたいとボクらはみんな思っている。
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若い頃。
ボクの職場の所属長は、お酒を飲むと必ずこの曲を歌ってくれた。
「骨まで愛して」。
名曲だ。
と言っても、若い方は知らないだろうなぁ。
 
 
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「骨まで愛して」。
見事だね。それ以上の愛し方、思いつかないもん。
だって、骨まで愛するんだよ。骨まで。
あなたは今、隣にいる人の骨まで愛していますか。
 
ところでこの所属長。
くだけた宴会の時も、お堅い宴会の時も。必ず、酔っぱらうとこの曲を歌い始めた。
厳粛で、グラスの音が「カチカチ」って響き、それ以外話し声もまばらな宴会。
辺りを、緊張という空気が舞い、畏敬という塵(ちり)が漂う空間。
ナイフで、ビシッと切れそうな。そんな雰囲気の中で、いきなり。
彼の声が響き渡る。
「骨まで骨まで骨まで愛して欲しいぃぃぃのぉぉぉよぉぉぉ♪」、
ボクは、宴会場の中で歌声がこだまするのを初めて経験した。
そしてそのこだまが響き渡ると、皆が笑顔になった。
重い空気は一気に取り払われ、皆が優しい気持ちに戻ることができた。
そう。
彼は、本当に誰からも愛される人物だったのだ。
学もあった。俳句の世界では、名の知れた人物だった。
ボクにとって、まさに尊敬できる上司だった。
元気かな。って、思っていたら最近、自転車をこいでいる彼を発見。
その自転車をこぐ速度たるやすさまじく速い。
結果、声をかけられずに、見失ってしまった我が元上司。
でも、元気でよかった。
骨になってなくてよかった。
今でも、あなたのことをボクは骨まで愛していますと伝えたかった。
最後に一句。
 
骨にまで こげる自転車 恋こがれ
GIN作 お見事!!
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