「意識とは何だろうか」書評レビュー
著者:下條信輔
出版:講談社現代新書
おすすめ度:★★★★★


【概要・書評】
今週読んだ本でシンクロしている内容が沢山ありました。


・切り離して考える「分析的」な方法論では関係性は分からない。
 →「日本人とグローバリゼーション」欧米の分析
・脳は来歴に大きく影響される
 →「ベストパートナーになるために」90対10の法則
・人は関係の中で生きていく
 →「日本人とグローバリゼーション」説明して分からせろ!


この「意識とは何か」というのは、
人間の根本的な成り立ちの話についてのもので、
「ベストパートナーになるために」は、
狩猟民族となったところから始まる男女の分岐。


「日本人とグローバリゼーション」は、
更に地域文化の中で、分化していった日本人の生い立ちの話と、
時系列的に、人を分析しているものと並べられます。


ということで、無茶なオススメの仕方なのですが、
3つを合わせて読むことをオススメします。


そこで、この意識とは何かということについて、
本書では、「錯誤」と「来歴」というキーワードから、
脳と周りの関係性についての話が展開します。


脳科学の第一線をいく研究者の方の本で、本書出版は、
1999年と新しいものではないのですが、「錯誤」と「来歴」
による脳と外側の世界との関係性という部分の話に、
ぴんと来る方にも、来ない方にもおすすめです。


【内容メモ・学んだこと】

■錯誤
・現実世界の「常識的な判断」を利用し錯誤を誘発する問題を作る。
 →どっちが正常?


■脳の来歴
・記憶は、思い出す都度再構成されるもの。「来歴」
 退行催眠は、記憶ー想起を繰り返す中で確信度を高める。
 記憶は、「来歴」(経歴環境体験等)にもたれかかるもの。
 「来歴」の中で、事物は解釈されている。=フレームワーク
 脳は遺伝的部分と経験学習により環境世界を支配する法則を決める


・人間は過去を引きずる。
 逆さ眼鏡をかけても適応する。本来人間の眼は逆さに見えている。
 過去に適応するから錯誤が起きる。


・遺伝的に決まっている脳の本質的機能
 学習し、記憶し、それを適応に役立てること
 遺伝的に決められているものを補うもの。
 DNAの突然変異がなくても、変化・適応を行える機能
 過去を現在に繁栄させる機能


・取り込みとチューニング 
 7,8歳までの言語環境で母国語は決まる。
 縦縞環境、横縞環境で育てたネコに見える現実世界は同じ?
 脳の記憶は環境に依存するが、環境の見え方は脳の状況次第で変わる
 →脳と環境は、区別することができず、相互依存している。
 ヒトの記憶「来歴」を持ったままコウモリの生活を経験するのは無理


■心と身体と他者
・「桶の中の脳」は脳の「来歴」を前提としなくてはなりたたない。
・動物の神経経路を入れ替えても、適応してしまう。
・脳の内部を分析すると「能動性」「自発性」「意図」「主体」が消える。
・他者がいるから意識が生まれる。
・没頭しているときは「意識」はない場合が多い。→時間が早い。
・多くの人の前にたって話す→自分・他人を非常に「意識」する。
 →言葉というのが、「雑談」の中で生まれてきたように、
  意識もまた、同じく「雑談」=他人との多様な関係性という
  ものが発生したから出てきたものなのではないかと思う。
  →そうすると多くの人が、「愛」が究極の関係性だという
   ことの意味も理解できそうな気がします。


■意識の特性(byサール)
 1.様相性:感覚や感情などの限られた特定の様相で現れます。
 2.統一性:多くの言葉・環境が同時処理されてできるもの。
 3.志向性:目的目標などの主観的方向性を持っている。
 4.共感性:意識のあると思われるものに主観的に共感できる。
 5.図と地の構造:必ず意識されない地があって図がある構造。
 6.中心と周辺の区別:哲学のことを中心に考えながらの運転。
 7.内容の「オーバーフロー」:様々な内容と結びついていく。
 8.親近性(再認・見覚え):慣れ親しんだ「来歴」が影響。
 9.境界条件:状況の中にリンクして入っている。
 10.ムード:漠然とした気分。が蔓延している。
 11.快不快の次元:AIなどを意識して差別化したもの言い。


【アクションプラン】
・良い来歴を積み重ねていくようにする。
 良い人に会う。自分の中でよいことをする。
 良い働きかけを心がける。愛情100%作戦の遂行。




「意識」とは何だろうか―脳の来歴、知覚の錯誤
下條 信輔
講談社
売り上げランキング: 8969
おすすめ度の平均: 4.5
4 認知神経科学のよい入門書。
3 知覚の錯誤の分析を入口として、「心を知る」可能性を論じた本
5 明晰だが難解
5 倫理的に
5 心が広がる!