アクチニウムから、イソギンチャクへ | 特許翻訳 A to Z

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1992年5月から、フリーランスで特許翻訳者をしています。

アクチニウムを取り上げた「化合物名の対訳探しとデータベース」からの派生です。

英語のactiniumは、ray、beamを意味するギリシャ語の「ἀκτίς(actino-, actin-)」に、-iumがついて生まれた語だとされています。

actinodermatitis(放射線皮膚炎)、actinography(光量測定)、actinometer(日射計)など、actino-で始まる英単語に光や放射線に関連する語が多いのも、このためでしょう。

あるとき、ウメボシイソギンチャク(actinia)も、実は同源だということに気づきました。

研究社の『新英和大辞典』で、actiniaの項に

  イソギンチャク; (特に)ウメボシイソギンチャク (Actinia equina).
  #《1748》 ← NL ~ ← Gk akt
ίs ray
と、書かれていたからです。
光というよりむしろ、
放射状の「ひろがり」の印象ですね。

mediumの複数形がmediadatumの複数形がdataなら、actiniumの複数形でactiniaと言いたくなるようなスペルですが、アクチニウムではなく、イソギンチャク(複数形はactiniae)。


 

そこで、「実験」をしてみました。
まず、Google Translateに「ἀκτίς」と入力してGreek→English翻訳すると、「ray」が出力されます。

次に、「ray」を入力してEnglish→Greek翻訳したところ・・・

 

名詞

ακτίνα  radius, ray, beam, spoke

σαλάχι  ray

ακτίς    ray

αχτίνα  ray, range, spoke


動詞

ακτινοβολώ   radiate, glitter, irradiate, shine, ray, glisten

 

ακτίνα」に、spokeが入ってきました。
スポークは車輪の輻を指しますので、まさに放射状です。

そうすると、actinomycete(放線菌)も同じかもしれないと思って調べたら、Wikipediaの「放線菌」の項に、「ακτίςに、菌類を意味する接尾語-mycetes(ミュケーテース、語源はギリシア語で菌を意味するμύκες(ミュケース))を合わせたものである」と書かれています。

そこで今度は、「放射状の広がり」「輻射状」を意味するradialを、ギリシャ語にしてみます。
 

形容詞

ακτινικός  radial, actinic

ακτινωτός  radial

 

actinic(化学線(の))が入ってきました。
結局、放射線状に広がっていく概念のあるものが、同じギリシャ語から派生しているようです。

アクチニウムの複数形のような、ウメボシイソギンチャク。
はじめて気づいたときは、印象的でした。

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