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その前の話 その1 その2 その3 その4 その5
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その12 その13 その14 その15 その16
その17
(何も言えない・・・しくしく)
『紫苑』
「マヤ・・・どこだ・・・」
真澄は、以前マヤに案内された洞窟へ向かった、だが、目印となる木が分からない・・・
あれからひと月も経っていないのに、植生の変化など考えられなかった。
真澄は、コテージに戻ると、手がかりを求め室内をくまなく捜索した。
老人の書斎にあった書類などは全て持ち出されていた、ブーツの足跡からどこかの軍隊のようだが、ふとバルコニーの桟を見ると、顔料の一部が、真澄は匂いを嗅いだ。
「A海軍?」
連中の狙いは、おそらく洞窟のあの物体だろう、だが、彼らもまた行きあぐねているはずだ、入り口はわからない。
その時鳥が鳴いた・・・
あれは、マヤの友達のルル?
真澄は、鳴き声に誘われるように外へ出た、一羽の鳥が真澄を誘う。
「ついて来いと言っているのか?」
真澄は、鳥を追いかけた、マヤへの道しるべだから・・・
追いかける先にマヤは、いる、真澄は確信した。
***
そこは、紫の楽園だった・・・紫の花が咲き乱れ、紫の鳥が集い・・・泉のほとりに、マヤは横たわっていた。
真澄は駆け寄り、抱き上げ、意識を確かめた。
「温かい・・眠っているだけ・・・マヤ、マヤ、起きて」
マヤのまつ毛が震え、ゆっくりと瞼が開く、その黒い瞳に真澄が映る。
「マ、マスミ・・・おじいが・・・」
少女の瞳から涙が止めどもなく流れる、真澄はその涙を己が唇で吸う、抱きしめる腕から震えがなくなるまでそうした。
「ゆっくり話して」
真澄が問うとマヤは、ゆっくりと自分の目で見た事実を伝えた。
ルルの力で島に降り立ち、おじいのコテージに向かうと、大きな男の人たちが十数人でコテージから荷物を運び出すところだった。
「おじい!」
少女が叫ぶと、おじいが叫んだ。
「逃げろ!」
マヤは、それでもおじいの元へ駆け寄ろうとしたとき、ルルが少女を連れ出したのだ。
「怖かったね、俺が源造さんを助ける、だから一緒に島をでよう」
「だめ・・島からでたら、だめなの」
「マヤ・・・」
少女とずっと一緒に・・・でも・・・少女はこの島を出ては生きてはいけないのだ・・・
真澄は抱きしめる腕の力を強めた、自分がどれほど想っているのか、少女に知ってもらいたくて・・・
つづく その19
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「マヤ・・・どこだ・・・」
真澄は、以前マヤに案内された洞窟へ向かった、だが、目印となる木が分からない・・・
あれからひと月も経っていないのに、植生の変化など考えられなかった。
真澄は、コテージに戻ると、手がかりを求め室内をくまなく捜索した。
老人の書斎にあった書類などは全て持ち出されていた、ブーツの足跡からどこかの軍隊のようだが、ふとバルコニーの桟を見ると、顔料の一部が、真澄は匂いを嗅いだ。
「A海軍?」
連中の狙いは、おそらく洞窟のあの物体だろう、だが、彼らもまた行きあぐねているはずだ、入り口はわからない。
その時鳥が鳴いた・・・
あれは、マヤの友達のルル?
真澄は、鳴き声に誘われるように外へ出た、一羽の鳥が真澄を誘う。
「ついて来いと言っているのか?」
真澄は、鳥を追いかけた、マヤへの道しるべだから・・・
追いかける先にマヤは、いる、真澄は確信した。
***
そこは、紫の楽園だった・・・紫の花が咲き乱れ、紫の鳥が集い・・・泉のほとりに、マヤは横たわっていた。
真澄は駆け寄り、抱き上げ、意識を確かめた。
「温かい・・眠っているだけ・・・マヤ、マヤ、起きて」
マヤのまつ毛が震え、ゆっくりと瞼が開く、その黒い瞳に真澄が映る。
「マ、マスミ・・・おじいが・・・」
少女の瞳から涙が止めどもなく流れる、真澄はその涙を己が唇で吸う、抱きしめる腕から震えがなくなるまでそうした。
「ゆっくり話して」
真澄が問うとマヤは、ゆっくりと自分の目で見た事実を伝えた。
ルルの力で島に降り立ち、おじいのコテージに向かうと、大きな男の人たちが十数人でコテージから荷物を運び出すところだった。
「おじい!」
少女が叫ぶと、おじいが叫んだ。
「逃げろ!」
マヤは、それでもおじいの元へ駆け寄ろうとしたとき、ルルが少女を連れ出したのだ。
「怖かったね、俺が源造さんを助ける、だから一緒に島をでよう」
「だめ・・島からでたら、だめなの」
「マヤ・・・」
少女とずっと一緒に・・・でも・・・少女はこの島を出ては生きてはいけないのだ・・・
真澄は抱きしめる腕の力を強めた、自分がどれほど想っているのか、少女に知ってもらいたくて・・・
つづく その19