リエゾンの診療報酬と医療崩壊
このブログでは、時々リエゾンの記事をアップしている。
読者の方は精神病院ないしクリニックから、他の病院ないし施設まで往診し診察しているので、さぞかし診療代が高いと思うであろう。
しかし、その診療報酬は驚愕するほど安いのである。
普通、一般の総合病院などに精神科医が往診し診察したとしても、毎週同じ曜日に診察に行く場合、「往診」にならず「対診」とみなされる。往診の診察とは全く違う診療報酬によるのである。
またうつ病や神経症の人の診察を行った場合でも「通院精神療法」がとれない。まあ、通院はしていないですし・・(そういう見解)
このようなことは実際に社会保険事務所に問い合わせて確かめたので正確なものである(多少ローカルな見解の相違があるかもしれない)
対診の診療報酬
再診 69点
外来管理加算 52点
1回の診察で121点、つまり1210円しか診療報酬が得られないのである。患者さんは3割負担でも360円ほどである。
これって、何か間違ってないか?
ある月、毎週1回、1ヶ月に4回ほど車で(ガソリン代も使い)診察に行った患者さん1名の診療報酬を計算したら、1月トータルでたった4840円だった。これは薬をその病院で処方しているのもあるが、薬は普通に儲からないので(元がかかるため)、同じようなものである。また対診の場合、1名だけ診るというのは稀なので例えば10名診ていたとしても、1ヶ月に4回、診察に出向いて、やっと48400円。普通にありえない安さである。(のべ40回診察機会があって48400円はない、と言う意味。)
あれだけ専門性の高い医療(アドバイス)?を行ってこれだと、自分の病院で外来を診るとか、最近入院した人の診察をして、360点(3600円)貰った方がよほどマシである(入院してまもないと、1回の入院精神療法は3600円である。しかも1ヶ月に12回くらいまで取れる。ただし入院期間が長くなると、800円まで下がり回数も制限される)。
リエゾンの報酬は元がかかっていないので、純粋に精神科医の技術料である。それがこの報酬では、やらない方がむしろ良いくらいである。(報酬のバランスが悪すぎ。誰が考えたのかわからないが)
つまり、リエゾンという精神医療はは半分くらいはボランティアと言える。
だいたい、日本の精神医療にかけるGDP比の額は先進国中でもかなり低い。あれだけベッド数があってこの低さは、いかに入院費が安いかがわかる。
以下はOECD加盟国の医療費の状況である(2008年)。これは医療費全体の順位で精神医療費がいかなる順位なのか不明だが、日本では精神医療にお金をかけているとは言えないのでその寒さが予測できる。
OECD加盟国の医療費の状況(2008年)
1、アメリカ 16.0%(GDP比)7538ドル(1人当たり医療費)
2、フランス 11.2% 3696ドル
3、スイス 10.7% 4627ドル
4、ドイツ 10.5% 3737ドル
5、オーストリア 10.5% 3970ドル
6、カナダ 10.4% 4079ドル
7、ベルギー 10.2% 3477ドル
8、ポルトガル 9.9% 2151ドル
9、オランダ 9.9% 4063ドル
10、ニュージーランド 9.8% 2683ドル
(以下略)
22、日本 8.1% 2729ドル
これを見ると、日本はOECD加盟国中22位であることがわかる。なお、1人当たり医療費のドルベースでは20位である。
日本では精神科での入院費は結核病棟より低い。これはあまりにも安いと言うほかはない(普通、結核病棟より安いのは医療的にありえない事件。どのような人が入院しているかを考えると容易にわかる)。
これでは、リエゾンという精神医療が発展していきそうにない。
現在、総合病院の外来精神科や精神科病棟が次々に廃止されているのは、同じベッド数を持つなら、他の最先端の内科、外科系に変更した方が病院全体の売り上げが上がるからである。これは国立病院でも収益性が非常に重視されていることにもよる。
また、近年の診療報酬改定で最先端医療により医療費を振り向けているのが、それに拍車をかけている。
医療崩壊を来たした1面は、地方の過疎地域に医師が集まり難くなり、出産や一般の手術ですら、満足に産婦人科医や麻酔科医が集まらないことがある。
高度医療をしている病院は経費もかかるが、診療報酬も大きいため、多くの医師や看護師を確保できる。その反動が地方に及んでいるのである。(重要)。
地方に医師が行かなくなったのは、今の研修医制度(スーパーローテイト)を契機に、地方の医学部出身でも都会で研修を希望する人が多くなったことも大きい。便利な都会で生活し始めると、田舎に行くのが辛くなるものだ。
近年の診療報酬改定は、少なくとも医療崩壊を防ぐ方法にはなっていない。
厚生労働省の人々は頭の良い人が集まっていると思うので、少しは考えてほしい。
(このブログの読者の方にはレセプトに関わっている人もいると思うので、対診の診療報酬の意見を歓迎します。これを請求し忘れているとか・・未だに信じられないためです。)
参考
リエゾンをする精神科医の経験年数
成年後見制度の鑑定書
読者の方は精神病院ないしクリニックから、他の病院ないし施設まで往診し診察しているので、さぞかし診療代が高いと思うであろう。
しかし、その診療報酬は驚愕するほど安いのである。
普通、一般の総合病院などに精神科医が往診し診察したとしても、毎週同じ曜日に診察に行く場合、「往診」にならず「対診」とみなされる。往診の診察とは全く違う診療報酬によるのである。
またうつ病や神経症の人の診察を行った場合でも「通院精神療法」がとれない。まあ、通院はしていないですし・・(そういう見解)
このようなことは実際に社会保険事務所に問い合わせて確かめたので正確なものである(多少ローカルな見解の相違があるかもしれない)
対診の診療報酬
再診 69点
外来管理加算 52点
1回の診察で121点、つまり1210円しか診療報酬が得られないのである。患者さんは3割負担でも360円ほどである。
これって、何か間違ってないか?
ある月、毎週1回、1ヶ月に4回ほど車で(ガソリン代も使い)診察に行った患者さん1名の診療報酬を計算したら、1月トータルでたった4840円だった。これは薬をその病院で処方しているのもあるが、薬は普通に儲からないので(元がかかるため)、同じようなものである。また対診の場合、1名だけ診るというのは稀なので例えば10名診ていたとしても、1ヶ月に4回、診察に出向いて、やっと48400円。普通にありえない安さである。(のべ40回診察機会があって48400円はない、と言う意味。)
あれだけ専門性の高い医療(アドバイス)?を行ってこれだと、自分の病院で外来を診るとか、最近入院した人の診察をして、360点(3600円)貰った方がよほどマシである(入院してまもないと、1回の入院精神療法は3600円である。しかも1ヶ月に12回くらいまで取れる。ただし入院期間が長くなると、800円まで下がり回数も制限される)。
リエゾンの報酬は元がかかっていないので、純粋に精神科医の技術料である。それがこの報酬では、やらない方がむしろ良いくらいである。(報酬のバランスが悪すぎ。誰が考えたのかわからないが)
つまり、リエゾンという精神医療はは半分くらいはボランティアと言える。
だいたい、日本の精神医療にかけるGDP比の額は先進国中でもかなり低い。あれだけベッド数があってこの低さは、いかに入院費が安いかがわかる。
以下はOECD加盟国の医療費の状況である(2008年)。これは医療費全体の順位で精神医療費がいかなる順位なのか不明だが、日本では精神医療にお金をかけているとは言えないのでその寒さが予測できる。
OECD加盟国の医療費の状況(2008年)
1、アメリカ 16.0%(GDP比)7538ドル(1人当たり医療費)
2、フランス 11.2% 3696ドル
3、スイス 10.7% 4627ドル
4、ドイツ 10.5% 3737ドル
5、オーストリア 10.5% 3970ドル
6、カナダ 10.4% 4079ドル
7、ベルギー 10.2% 3477ドル
8、ポルトガル 9.9% 2151ドル
9、オランダ 9.9% 4063ドル
10、ニュージーランド 9.8% 2683ドル
(以下略)
22、日本 8.1% 2729ドル
これを見ると、日本はOECD加盟国中22位であることがわかる。なお、1人当たり医療費のドルベースでは20位である。
日本では精神科での入院費は結核病棟より低い。これはあまりにも安いと言うほかはない(普通、結核病棟より安いのは医療的にありえない事件。どのような人が入院しているかを考えると容易にわかる)。
これでは、リエゾンという精神医療が発展していきそうにない。
現在、総合病院の外来精神科や精神科病棟が次々に廃止されているのは、同じベッド数を持つなら、他の最先端の内科、外科系に変更した方が病院全体の売り上げが上がるからである。これは国立病院でも収益性が非常に重視されていることにもよる。
また、近年の診療報酬改定で最先端医療により医療費を振り向けているのが、それに拍車をかけている。
医療崩壊を来たした1面は、地方の過疎地域に医師が集まり難くなり、出産や一般の手術ですら、満足に産婦人科医や麻酔科医が集まらないことがある。
高度医療をしている病院は経費もかかるが、診療報酬も大きいため、多くの医師や看護師を確保できる。その反動が地方に及んでいるのである。(重要)。
地方に医師が行かなくなったのは、今の研修医制度(スーパーローテイト)を契機に、地方の医学部出身でも都会で研修を希望する人が多くなったことも大きい。便利な都会で生活し始めると、田舎に行くのが辛くなるものだ。
近年の診療報酬改定は、少なくとも医療崩壊を防ぐ方法にはなっていない。
厚生労働省の人々は頭の良い人が集まっていると思うので、少しは考えてほしい。
(このブログの読者の方にはレセプトに関わっている人もいると思うので、対診の診療報酬の意見を歓迎します。これを請求し忘れているとか・・未だに信じられないためです。)
参考
リエゾンをする精神科医の経験年数
成年後見制度の鑑定書