2009-06-18 00:44:57

躁うつ病は減っているのか?

テーマ:内因性の正体
これはパラドックス的であり、バカみたいなタイトルだが、あえてこれを選んだ。

過去ログで生来性にファジーな器質性障害を帯びた人たちが増えているので、統合失調症は発症しにくくなっているのではないか?と書いている(参考)。統合失調症は、もう軽症化の話が言われ始めて長いが、軽症化どころか統合失調症そのものが減っていると思う。

もしそうなら、同じ内因性疾患、躁うつ病はどうなのか?と言う問題である。

最近の論文的には双極性障害は「かなり増えている」ことになっている。これは双極2型が意識され始めたことと、未成年の人の双極性障害も診断され始めたことも無関係ではない。

僕は内因性と呼べる躁うつ病は減っていると思う。その理由は統合失調症と同じだ。

躁うつ病は本来、珍しい精神疾患なのである。少なくともずっと以前はそうであった。一般に躁うつ病は統合失調症よりも発症年齢は遅く、もし16歳くらいで双極性と言える病状が見られる場合、果たして躁うつ病と診断して良いのか?などと長時間議論されるほどであった。(どこで議論されるかと言えば、症例検討会)

こういう場合、結局、躁うつ病と診断されることはほぼなかった。この年齢で躁うつ病になることは難しいのである。

しかし最近は何も考えず操作的に診断すると、双極性障害が増加しているようには見える。これは表現形としての双極性障害を呈する患者さんが増えていることに他ならない。状態像としての「双極性障害」が増えているため、正体が見えないのが現実である。躁うつ病は内因性疾患なので、ここ数十年で急に増加したり、発症年齢帯が変化するのはちょっと変だとは言える。

過去ログで書いたように、何らかの原因による器質性疾患の人たちが「双極性障害」の病態を呈することが診断的に紛れをもたらしていることが想像できる。

この器質性の人たちだが、希死念慮を伴ううつ状態だったり(参考)、双極2型の双極性障害に見えることもある。また幻覚妄想状態を呈し、統合失調症と見間違うような場合もある。

この双極2型も、単に「古典的双極1型の軽度のもの」つまり量的な差だけに留まらないことが多い。つまり躁状態の出現パターンの特殊性、例えばラピッドサイクラーなどである。

ラピッドサイクラーは定義的には「年間に4回以上」などと言っているので、今風に言えば、ずいぶんゆったりしている。

最近の2型双極性障害でラピッドサイクラー?の人は、「躁うつ」を数えていくと、「年間、何回プチ躁転したのか数え切れない」などと笑うに笑えないことも見られる。また奇妙なことに、躁状態がたった1日半だけ続いてうつ転する人がいる。このような人は、きっとラピッドサイクラーではないんだと思う。もちろん双極性障害でもない。

双極性障害と呼べるある種の秩序がないからである。これはたぶん内因性とはほとんど関係がなく、器質性疾患の双極性障害の擬態みたいなものだ。

このような人はたいていの場合、双極性障害らしい病前性格も持たない。また、デパケンRの有効率が高く、本来、器質性疾患に相性が悪いリーマスは合わない確率が高い(参考)。また発達障害の人たちと同様、かなり薬にも弱く、抗精神病薬などを投与するとEPSやジストニアなどの副作用が出やすい。デパケンRですら副作用で飲めないということもある。

このようなリズム感のない双極性障害モドキの人たちは、なだらかに現代風うつ状態、つまり新型あるいは「非定型うつ病」などに繋がっている。

この辺りはきっと器質性に由来するある種のスペクトラムになっているんだと思う。つまり、ストレス下ではうつ状態を呈しているのに、状況が一変し過ごしやすい環境に置かれると、はしゃげる人たちである。

彼らは本来、器質性なので双極性障害の病態である必然性がない。

だから、治療がうまくいけば完治する可能性を秘めていると言える。(服薬すら必要でなくなると言う意味)

この擬態の双極性障害と真の双極性障害は区別すべきなのであろうか?

それが容易なら良いけど、少なくとも統合失調症のように簡単には区別できない。病前性格の差を持って診断を分けるのもなんだかな~と思うからだ。

元々、現代社会では状態像をもって診断するようになっているので、個人的には擬態の双極性障害も双極性障害としても仕方がないと思う。僕が1人でキャンキャン吼えていても仕方がないとは言える。(しかし、統合失調症はそうは思わない。双極性障害は譲れるが、統合失調症は譲れない。僕の心の中では器質性疾患なのである。)

上にも書いているが、このような精神疾患の見方は非常に治療に応用が効くし、プラクティカルではあると言える。

ここで、問題。

ウェールズの人たちはどのように考えたら良いのだろう。ウェールズの性格の人たちは健康な人ももちろん多いと思うが、もし精神疾患になったら、双極性障害、統合失調症、べったりとした浮上が難しいうつ状態などになりうる。

ウェールズの人たちは今までに書いてきたような生来性にダメージを脳に受けているような器質性疾患と言い難い性格である。つまり社会へのかかわり方が根本的に異なっているし、むしろ躁うつ病的な性格の1面を持ち合わせており、その点で「内因性」的だ。

たぶん、ウェールズの性格の人は紀元前からいたはずで、最近急激に増えたかと言うと、いくらか増えてはいるとは思うが、急激とは言い難い。ウェールズの人たちは、器質性の内容の点で新しいタイプの人たちとは異なるのである。

つまり、脳への直接の器質性要因ではなく、むしろ身体的なものから来る器質性が多いようには見える。リウマチ、バセドー病の家系など免疫疾患を背景としていることも多い。その点では近年はアトピーなどが増えているので、身体的にも環境ホルモンなど謎の有害物質が絡んでいる可能性も否定できない。だから、50年前よりは増えているかもしれないと思う。

器質性という点だけ見れば、いわゆる広汎性発達障害および漠然とした器質性疾患の人とウェールズの人は、作用点が異なっており、ねじれの位置にあると言える。同じとはいえないし、今後もたぶん同じにはならない。

薬物の点で言えば、平均するとウェールズの人は薬に繊細な人が多い。しかし極端に悪くなり保護室に入るくらいになると結構忍容性が高くなる人も稀ではない。ここが広汎性発達障害や器質性疾患系の人と異なっており、内因性的だ。

しかし、やがて改善すると急速に副作用が出てくるのである。悪い時はリーマスで良かったのに、維持療法はリーマスでは副作用が多すぎて他の薬の方が良いと言う場合もある。

ウェールズの人たちは、ずっと苦しんでいたのに急激に落ち着き、薬も必要でなくなり完治に至る人たちがいる。

これは内因に身体因(器質因)が加わりうつ状態なり、重い精神病なり呈していても、身体的なものが改善すればすべてが解決するのかもしれない。あるいは、身体因と脳のかかわり方が変化すると完治する可能性があると言える(参考)。その点で、古典的躁うつ病や統合失調症とは異なっている。

タイトルの結論を言えば、躁うつ病は実は減っているのだが、状態像的には増えているのである。やはり増えているで仕方がない。

参考
統合失調症は減少しているのか?
徒然なるままに浪費癖とギャンブル癖を考える
自閉症スペクトラムは実は3次元になっている?
急速交代型
ウェールズ生まれの
ウェールズタイプの統合失調症の寛解
デパケンR
人間の秘めたるエネルギーと治癒の謎
徒然なるままに浪費癖とギャンブル癖を考える

コメント

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1 ■無題

増えているんですね・・・
ウェールズの人間性って英国内で『変わり者』または『宗教団体』と一般的に言われており、嫌われ者役。
たしか、歴史をたどっていくと、なんか奇妙な事件や関わり事があったような・・・
勉強不足ですみません。
いつもタメになるお話ありがとうございます。

2 ■あなたは?

心の病の経験はありますか?人間の精神を、データーのみで判断するのは、コンピュウターに、支配されていますよ!全ての、心の病は、少なくとも、私の周りで増えています!自殺者も出ました。安易な見解だと、思いますが、いかが?

3 ■これって…。

>つまり、ストレス下ではうつ状態を呈しているのに、状況が一変し過ごしやすい環境に置かれると、はしゃげる人たちである。


…私のことです。(←だから表向き、誰からも『うつ病には見えないねー。だってそんなに明るいじゃん?』と言われるし思われる)

損なんだか得なんだか…。
毎日、本気で心の底からうんざりしています。
あからさまに『うつ病です』という雰囲気が醸し出せたら逆に楽になれると思うのに、下手に愛想笑い(←社交辞令的営業スマイル)が上手かったり、環境・状況が一瞬だけ変わると、その瞬間だけはそれこそ『はしゃげる』から、後からグッタリ。
それを周りから『甘え』だの『怠け』だの言われるからたまったものじゃないです。

4 ■無題

内因性の正体のテーマでいつも思う事なのですが、やはり診断がとても大切の様ですね。

精神科治療ではやる事は一緒みたいな事が良く言われますが、急性期はそうであってもその後はかなり違う物になると思っています。

微妙にずれた診断をされると後々に響きますね。

今後の内因性の正体も勉強させていただきます。

5 ■Re:あなたは?

>s-kodairaさん

他人である自分が口出すことではありませんが心の病と一口に言っても病名や状態像は多種多様ですよ。一括りには出来ないものがあるのです。

患者で素人である自分が言うのもなんですが、例えば、抑うつ症と統合失調症や知的障害などは明らかに異なります。

医者がデータで診るのは当たり前です。
患者が感傷的になり治療者に当たり散らすのはありですが、治療者が感傷的になっては、患者が逆に戸惑うのです。
あくまでも治療者には冷静さと時には患者を突き放す程の目線が必要なのです。

心の病と一口に仰っしゃいますが、s-kodairaさんは、精神的な病の何を何処まで知っていらっしゃいますか?

自分は20年、精神科に通院していますが、長年の患者経験から治療者に“人間性”を求め過ぎると、治療者によっては「転移感情あり」と見做し担当医を変えられる場合すらあります。それは患者側にしてみたら大変な精神的苦痛を伴います。
「自分を見捨てた」と勘違いし思い込む可能性が大だからです。

だからあくまでも治療者は冷静な視線と視点が必要になってくると思います。
自分は患者でもありますが、医療関係の仕事をしていたので、どちらの立場も知っているから言えるのですけどね。

あなたの周りで自ら命を絶たれた方がいるのは、お気の毒のことと思います。助けられなかったs-kodairaさんもご自身の無力さをお責めになることもお有りでしょう。

だからこそ、心の病と一括りに考えるのではなく、s-kodairaさんの周りにいらっしゃる心を病んでいる方たちの心の病の種類は何なのか?をまず見極めてあげる必要があると思います。
あなたのご友人なのかお身内なのかは分かりませんが、周りの心の病の方の病名や状態像を冷静に把握して、その症状にあった接し方をしてあげたら、あなたの周りの方も精神的な負担が少しは軽くなるのでは?

治療者が行えるのは、診断を下して、その時々の症状に併せて薬を処方すること、必要に応じて入院させることしか出来ないのです。あくまでも治すのは治療者ではなく、患者本人で有ること。サポートするのは治療者のみではなく、家族や友人も一緒に付き合う必要があるのです。

あまり精神科医に過剰な期待は抱かない方が良いですよ。

6 ■感情の変動

こんばんわ。kyupin先生は生来性にファジーとか、ぼのさんは発達障害のグレーゾーンとか便利な言葉を使われていて、私もおそらく曖昧な領域だと思いますが、視覚・聴覚過敏はあっても感情の変動は激しくありません。良くも悪くも平淡というか。。なので、対極に位置する躁うつ病、うつ病、ウェールズタイプの人に妙に関心を抱いてしまいます。身近によく怒ったり、ひたすら喋り続けてストレス解消してる方がいるんですが、私は喋りすぎると疲れて後悔するので不思議です。落ちこむことも、かなりエネルギーを消耗するので、私なら耐えられず1日2日もすれば自然と平常思考に戻るのですが、長期間持続するというのはすごく疲れるでしょうね。。内因性の病の特徴なのでしょうか。

7 ■Re:感情の変動

>マゼンタさん
グレーゾーンはどこかのブログの表現で覚えました。どこか忘れちゃいました。(・∀・)b
(ブログはあや*さんとPrudenceさんの所が勉強になります-ROMさせていただいてます-)

マゼンダさんはオリバー・サックスが好きかも~です。*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

8 ■無題

またキャンキャン!

9 ■鬱が来た

気持ちに反して、奴が来た。
何とか睡眠も気分も生活も安定していたのに、突然、奴が来た。
私は躁鬱病(自分にとっては何型とかは関係ない)です。鬱になると固形物が全く食べられなくなる。固形物を食べると全て嘔吐。理由はわからない。食欲はなくなる、口の中は鉄ぽっく味覚がなくなる。下痢にもなるので吐いて下痢してを繰返す。また、奴と戦わなければいけないのかと考えると、生きているのが嫌になってくる。どうして、私がこんな病気にならなくちゃいけないんだ。どうして
悲しくなってきた。涙がとまらない。
この躁鬱病から開放されたい。どうしたら
いいのか。自分の寿命まで奴を抱えて生きて行けない。私は、もう嫌だ。死を選ぶ

10 ■双極性3型

あまりにkyupin先生の日記がタイムリーだったので、思わず書き込ませていただきました。

うつ歴20年、治ってはぶり返しを何度か繰り返しています。
ずっと、抗不安薬(その都度変わる)とアモキサンでした。
アモキサンは全く効かず副作用のみで(苦笑)
それを訴えても処方はかわらず、
辛かったのでほとんど抗不安剤のみでやりすごしていました。

2年前にダウンしたときに、初めてSSRIが処方されました。
デプロ→ジェイゾロフトとかわり、
ゾロフトに今まで感じた事がないほど、「症状にマッチしている!」「起き上がれる!」というい感覚を覚えました。
そのおかげで、ゾロフト25~50mgと頓服でメイラックスという処方で、1ヶ月半で職場復帰♪
(今思えば、軽く躁転していました(汗))


昨年秋から、どうも
「辛いときにゾロフトを飲んでも、気分は持ち上がるが、非常にイライラする」
状況になりました。

今までの病院は遠かったので、通いやすい場所にある新たなクリニックを訪ねてみました。

「波が激しいですね。双極性3型と思われます」という診断結果で、
ゾロフト50mgにデパケンR100mgが追加されました。

kyupin先生のおっしゃるとおり、薬に弱いです。
特に初めての薬に弱く、ゾロフトは25mg半分から始め、デパケンR初日はふらふらで起き上がれなくなりました。

たしかに、こういう私のような症状も双極性にはいっちゃうとすると……躁鬱病人口は増えていそうです(苦笑)

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