SDA | kyupinの日記 気が向けば更新

SDA

脳内には4つのドーパミン経路がある。そのうち黒質線条体ドーパミン経路は黒質から基底核に投射して、運動をコントロールしていると言われる。定型抗精神病薬などの投与により、ドーパミン受容体が黒質線条体経路のシナプス後部で遮断されると、パーキンソン病に似た運動障害が引き起こされる。このような定型抗精神病薬による、パーキンソン症状を薬剤性パーキンソン症候群などと呼ぶ。また、この時に出現する振戦、筋強剛、流涎などの症状は錐体外路症状(EPS)と呼ばれる。


SDA(セロトニン-ドーパミンアンタゴニスト)では、すべて、5HT2A、D2の拮抗作用を有している。定型抗精神病薬との違いは、5HT2Aの拮抗作用を持っているかどうかなのである。黒質線条体ドーパミン経路では、セロトニンニューロンは、ドーパミン放出に関しては抑制的に働く。だから、SDAのようにセロトニンニューロンを抑制する薬剤では、黒質線条体経路で相対的にドーパミンを増やす結果になるのである。錐体外路症状は、そもそも黒質線条体ドーパミン経路でドーパミンが抑制されることで生じるため、SDAが投与された場合、上記のメカニズムでドーパミンの枯渇が緩和する。だからこそ運動面の副作用が減少するのである。


この機序は、SSRI(パキシルデプロメールジェイゾロフト など)が投与された際にも同様なことが起こる。SSRIはセロトニンを増やすため、結果的には黒質線条体ドーパミン経路でドーパミンを減少させるように働く。稀にSSRIの副作用でパーキンソン症状が出現するのはそのためである。


近年、アメリカでは、双極性障害(躁うつ病)に対し、SDAも適応が認められるようになってきている。たいていの場合、躁状態に対しての適応であるが、ごく最近に限れば、うつ状態にも適応が通るかもしれないような感じになってきているらしい。セロクエル は、臨床上、一部の患者さんのうつ状態を改善しているように見えることがある。これは結局、上記のメカニズムでセロトニン拮抗作用を通じて、間接的にドーパミンを増加させるからである。アメリカでは、近くセロクエルのうつ状態への適応が認められると思われる。


(補足;現在日本で発売されているSDAは、リスパダールルーランジプレキサ 、セロクエルである。他、旧来の薬物でもロドピン 、プロピタンなどもSDA的薬物といわれている。なおエビリファイ は新しい非定型抗精神病薬で錐体外路症状が少ないがSDA的ではない)