パキシル | kyupinの日記 気が向けば更新

パキシル

一般名;パロキセチン
2000年に本邦で2番目に発売されたSSRI。セロトニン受容体の選択性が極めて高く、再取り込み阻害作用も強い。一応、トフラニールとほぼ同等の抗うつ効果を持つといわれている。剤型は10mgと20mgがあり、ともに白の円形の錠剤である。錠剤の表面にはGSの刻印があるが、これは発売元のグラクソ・スミスクラインをあらわしている。海外では液剤もあるらしい。

効能・効果は、うつ病、うつ状態、パニック障害、強迫性障害となっているが、デプロメール(フルボキサミン)で認められている社会不安障害の適応はない。社会不安障害に対してももちろん効果があるが正式な適応がないということである。ひょっとしたら、現在の売り上げを見ると、社会不安障害に対しても、むしろパキシルの方が多く処方されているのかもしれない。パキシルは海外では社会不安障害の適応が認められている国もある(多いかどうかまでは詳しくない)(2009年10月16日、パキシルは社会不安障害の適応を取得している)

パキシルは適応により、処方量の上限が決められており、うつ病・うつ状態では40mg、パニック障害では30mg、強迫性障害では50mgまでとされている。強迫性障害は、デプロメール(フルボキサミン)にも適応が認められているが、デプロメールは日本で初めて強迫性障害の適応が認められた薬物である。普通、デプロメールでもそうであるが、強迫性障害の治療では多い量で効果がより大きい傾向がある。パキシルで50mgまでの投与が認められているのはそういう理由であろう。

パキシルは18歳未満の患者で禁忌になっていた時期があった。これは自殺のリスクが増加するという報告があったためだ。パキシルの発売当初はこのような制約がなかったので、この禁忌の情報が出た時には既にかなりの数の処方が18歳未満でされていたと思われる。おそらく、たくさんの苦情が出たのであろう。その後、禁忌から警告に変更になった。現在は18歳未満には処方できないわけではない。

SSRIでは、もともとパキシルに限らず、自殺のリスクが増すような傾向はある。なぜなら、SSRIは日々の生活への執着を減少させ、ある意味吹っ切れるというか、自殺に対しての決断力を増すからだ。(デプロメール、アンヘドニア参照) パキシルは現在日本で発売されているSSRIの中では最高の抗うつ効果を持つが、ジェイゾロフトがこれに肉薄すると思われる。

現在、日本でパキシルはかなりの売り上げを示しており、抗うつ剤全体でも金額的にはトップである。最高の効果とはいえ、臨床的では3環系抗うつ剤よりは劣る。(アモキサンルジオミール参照) パキシルは、一般の3環系抗うつ剤に比べ副作用も少ない。わりと見られるのは眠さ、胃腸症状(嘔気、食思不振)であるが、これも嘔気に関してはデプロメールよりもかなり少ないし、下痢などの胃腸症状もジェイゾロフトよりはかなり少ない。

パキシルの半減期は15時間とされており、1日1回服用でよい。眠さが出るため夕方に処方されることが多くなっている。もちろん、眠さがない人なら1日2回処方も可能である。パキシルの食思不振であるが、このようなセロトニンを増やす系の薬物は食欲を減少させ体重を減らすような傾向がある。プロザックはイギリスでは実際に過食症に適応が認められている。だからアメリカやその他外国製の痩せ薬にはこっそりSSRI系の薬物が入れてあることもあるらしい。

ただ面白い傾向があって、プロザックやパキシルで過食症を治療した場合、ある程度の効果があるが、ある日、反動でどっと超絶な過食発作が出ることがある。こういうことは極めてSSRI的だと僕は思う。パキシルは急に中止すると反動で具合が悪くなることがある。中止の際は徐々に減量するほうが良い。このような反動を離脱症状と言う。なぜ離脱症状が出るのかだが、半減期が比較的短いからというのがあるが、ちょっとこれは理由になっていない感じもする。離脱症状の理由はパキシル固有の問題があるのかもしれない(詳細)。

パキシルの代謝に関してはCYP2D6が関与し、活性代謝物はないとされている。パキシルやデプロメールは、アモキサンやトレドミン比べ効果の発現がやや遅い。2週間くらいが目安だが1ヶ月くらいかかることもあり、これはわりと大きい欠点だと思う。あと薬価だが20mgで240円もする。パキシルは日本では最も高価な抗うつ剤なのである。

参考
パキシルの離脱症状
パキシルの漸減
光がまぶしい?
ラインを高く
パキシルで金属音がするという話
SSRIの等価換算
エビリファイと妊娠
パキシルと妊娠