パキシルと妊娠 | kyupinの日記 気が向けば更新

パキシルと妊娠

今まで書いていることで、間違って書いているものはほとんどないと思っていたが、ジェイゾロフトの催奇形性ランキング(FDAによる)が間違っていることに気がついた。現在のジェイゾロフトのランキングは、「C」であり、デプロメールなどと同様になっている。(このブログではBと書いたが訂正している)僕の持っている以前の本では確かにBになっているのであるが、いつのまにかCに変わっていた。  

SSRIの催奇形性ランキングのポイントは、最近パキシルがDにランクダウンしたことであろう。以前は、パキシルもゾロフトもBであり、比較的安全性の高い抗うつ剤とされていた(画像参照。これは2000年頃のランキングである)。

パキシル

ゾロフト

こういう催奇形性ランキングは、何か悪いデータが見つかりランクダウンすることはあってもランクアップすることはない。いずれは下がっていく可能性が高いのである。

現在の本邦発売のSSRIの催奇形性ランキング
パキシル     D
デプロメール   C
(=ルボックス)
ジェイゾロフト  C
プロザック    C(本邦未発売)


【B】
動物生殖試験では胎仔への危険性は否定されているが、人、妊婦での対照試験は実施されていないもの。あるいは、動物生殖試験で有害な作用(または出生数の低下)が証明されているが、ヒトでの妊娠期3ヵ月の対照試験では実証されていない、またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠はないもの。


【C】
動物生殖試験では胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいは、ヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。注意が必要であるが投薬のベネフィットがリスクを上回る可能性はある(ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること)。


【D】
人の胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認されるもの(例えば、生命が危険にさらされているとき、または重篤な疾病で安全な薬剤が使用できないとき、あるいは効果がないとき、その薬剤をどうしても使用する必要がある場合)。


プロザックも、このブログ内ではBと書いていて、実は変更されていた薬物の1つだ。向精神薬で、CとDでは大違いという僕の感覚。Cはそれほど安全とは書いてないけど、それでも、まだ比較的安全度が高いと思っている。Cなんて、向精神薬の中ではたくさんはないほうだから。

この4つの中ではパキシルのみDであるが、これは添付文書的には心臓の催奇形性から来る。ただ、これらは、将来的にはDに横並びになるかもしれない。

最近、僕の患者さんで妊娠した人がいる。婦人科のドクターに向精神薬の危険性について聞いたところ、本を取り出してきて「パキシルだけは比較的安全だからこれだけ服用して下さい」くらいに言ったらしい。

「うーん・・あんた、その本はもう古くなっとるよ。」

現実的には、婦人科でもこの程度しか周知されていないので、自分の身は自分で守るしかない。その女性の場合、思い切ってパキシルをジェイゾロフトに変更し、睡眠薬をマイスリーにした。他、止めるに止められそうにない薬物で、Cのものもいくつか処方している。どうでも眠れなかった場合、ヒベルナくらいを処方しようと思っている。

こういう薬物の場合、催奇形性がある程度あるとはいえ百発百中というわけではないし、子供も6人とか生むわけでもないし、その違いがあまり見えないというのはある。本質的に、SSRIの間に催奇形性の相違がないという可能性だってあるし。というわけで、過去ログも訂正したのでした。

参考
向精神薬と妊娠
新婚でうつ病の人