ども。
月華です。
元ネタ風月さん。
風月さん・マックちゃんさん・月華のリレー小説『CROSSING』やっと更新です。
すいません。
月華が鈍くさいばかりに。
風月さんとマックちゃんさんのファンの方には本当に申し訳ないです。
何よりも当事者たるお二人に申し訳ない。
さて、随分と期間があいてしまったんで、これまでのお話しをこの記事にリンクさせていただきます。
1 ―俺は君に恋をした― 風月さん
2 ―この気持ちの名前を教えて?― マックちゃんさん
4 前編 ―憧れ…?それともーー― 風月さん
4 後編 ―憧れ…?それともーー― 風月さん
5 前編 ―可愛すぎるのも罪なんだよ? ― マックちゃんさん
5 後編 ―可愛すぎるのも罪なんだよ?― マックちゃんさん
7 ―これが…私の恋…。―
風月さん
8 前編 ―貴方は私のトクベツな人―
マックちゃんさん
8 後編 ―貴方は私のトクベツな人―
マックちゃんさん
……ここまでが今までのお話しです。
その続きがこの記事です。
もしよろしければ、どうぞ。
お二人とも素敵なお話しを書かれる方なので、私なんかが混じってどえれー事になってますが、最後までお付き合いいただけるとうれしいな。
物語は蓮と奏江兄妹とヤシとキョコ兄妹のパラレルストーリー。
月華は……ほぼお笑い担当化してます。
(お二人ともごめんなさい。)
ではでは、どぞ。
CROSSING 9 前編
―もう一度…恋をする―
「蓮さーーん。早く!!」
一人出遅れた蓮をキョーコが満面の笑みで待っている。
その笑顔が眩しくて、蓮は無意識に口元に手をあてた。
-----今、自分の顔は情けない程に緩んでいるに違いない。
何事にも動じない。顔色一つ変えない。本心が見えない。
そんな風に言われる事は珍しくもない。
それは蓮自身も自覚していた事であり、そうやって自分をコントロールしてきたのだ。
だというのに今の蓮ときたら、自然に顔がほころぶ。
蓮自身も最近になって気づいた照れ隠しの行動だ。
『あれ?奏江と社さんは?』
キョーコの側に倖一と奏江の姿がない事に気が付いた。
『もう中に入ったのか?………いた。』
案の定、倖一と奏江はゲートの向こういた。
そんな二人の少し顔が赤いようにも見えるのは……気のせいではない。
『何があった?…まさか社さん、奏江に告白でもしたのか?いや、それはないな。ああ見えて意外にシャイな人だから。』
いずれにしろ、このまま二人きりにはできない。
するつもりもない。
蓮は長い足を最大限に活かし、キョーコの待つゲートへと向かった。
「お待たせ。」
「どっど…どうしたんですか?」
先程まで笑顔だったはずのキョーコの顔が、今は何故か引きつっている。
「?どうかした?キョーコちゃん?」
「えっと……、蓮さん。キラキラしてて……痛いです?」
「え?何が?」
「笑顔がキラキラしてて、破片が突き刺さるんです~。」
言われている意味はイマイチ掴めないが、何故だかキョーコに怯えられているのだけは蓮にも理解できた。
好きな子に怯えられている。
蓮にとっては予想外の事実と予期せぬ大きなダメージだ。
受けた衝撃を悟られないように隠しつつ、取り繕う。
「ごめん、ごめん。ちょっと社さんにヤキモチ妬いただけ。」
「え?ゆきちゃんに?」
「奏江、俺にはいつもツンツンしてるのに、社さんにはあの調子だよ?態度が違い過ぎるだろ?……ちょっとジェラシー感じた。もちろん兄としてね。昔は”お兄ちゃん、お兄ちゃん”ってすごくかわいかったのになぁ。」
そんな蓮の告白にキョーコは一瞬だけ目を丸くして、次の瞬間にはクスッと笑った。
『やっぱり…かわいい。』
彼女の笑顔に蓮の心は奪われる。
「モー子さん恥ずかしがり屋さんなんですよ。私の前でもそうですもん。そこがかわいいんです。」
「気合の入りっぷりもいつもの5倍増しだし。」
「はい!!モー子さんはいつもキレイですけど、今日は特にキレイですよね!」
「かなり早起きしてたみたいだよ。俺が起きた時には既に準備出来てて、別人みたいだった。俺を見た途端に眉間に皺寄せてたから、やっぱり奏江なんだなって思ったけどね。」
「ふふふ。モー子さんは照れ屋さんなんですよ。」
「不器用な照れ隠しだよね。……それより、俺たちも行こうか。…ほら、奏江が睨んでる。」
ゲートの向こうを伺えば冷めた瞳の奏江がじとーーっと見ていた。
蓮はそんな奏江にため息をつきつつ、キョーコを伴ってゲートへと足を向けた。
「ME LANDへようこそ!!チケットをお預かりします。・・・・・ペアチケットですね。」
スタッフの女性が蓮に見とれながらもチケットの半券をカットし、その半券と共に園内パンフレットを差し出した。
「本日はカップルデーとなっております。楽しいイベントをご用意しておりますので、是非ご参加下さい。」
手渡された園内パンフレットにはスタンプラリーの台紙らしきものまではさみこまれている。
「カップルデーだって。」
「あの…私たち…その…カップルに見えたんでしょうか?」
「見えたんじゃない?」
「そっ…そうですか。」
顔を赤らめるキョーコを蓮はたまらなくかわいいと思ったが、衝動的に抱きしめたくなる自分を腕を組むことで何とか抑えた。
「どうしたんですか?」
「ん?あっ、なんでもないよ。」
さっき社と奏江が顔を赤くしていたのも、この案内のせいなのだろう。
そこへ園内アナウンスが流れ出す。
”ようこそME LANDへ。本日はカップルデーとなっており、カップル専用スタンプラリーイベントを開催しております。指定のアトラクション、ミニゲーム、シークレットミッションなど、用意された条件をすべてクリアされたカップルには当園から素敵な記念品を差し上げます。尚、フードワゴン、フードコート、園内レストランではカップルにおすすめのメニューもございますのでお楽しみください。”
ゲートの前にはそれを主張するカウンターが存在し、何組かの男女が窓口にいた。
『これに便乗しない手はないよな。』
倖一もおそらくそれを望んでいるだろうし、奏江も嫌とは言わないだろう。
倖一と奏江がペアになるなら残るは・・・・・・。
「キョーコちゃん。今日は俺が君の彼氏って事でいいかな?」
「えっ!?」
「ほら、行こう!!」
蓮はここぞとばかりにキョーコの手を取り、少し離れたところで待つ倖一と奏江のところにむかった。
「蓮!」
「兄貴。」
「「その手は何だ(よ)?」」
倖一と奏江がじとりと睨むのを笑顔で受け流す。
「二人ともカップルイベント参加するんですよね。」
その一言で二人が動揺するのも蓮の中では計算のうち。
「おっ面白そうだったからよ!そっそれに……ストラップやキーホルダーが貰えるのよ。タダなら貰った方がいいじゃない!」
「せっかくだし……。いつもやってるわけじゃないんだし……。」
「そうですね。記念になりますし、普通にアトラクションを楽しむより面白そうですよね?奏江は俺と組むのは嫌だろ?そうすると……こうなるよね?キョーコちゃん、俺とペアでよろしくね。」
蓮の笑顔が煌き、キョーコの顔が真っ赤に染まり、倖一と奏江が酸欠の金魚のように口をパクパクさせていた。
◆◇◆◇◆
園内を一際目立つ4人組が手にしたパンフレットを覗き込みながら歩いていた。
「クリアする順番は自由みたいね。」
「モー子さん、どれがいい?」
「変な名前で呼ばないでよ。モーーーッ!」
「モー子。いつもの事だけど騒がしいなぁ。」
「自分の妹の名前も忘れたの?バカ兄貴!」
「眉間にシワが寄ってるぞ。社さんに嫌われても知らないからな。」
「なっ!!」
「いや、かわいいよ。そんなところも。」
「かっかわっかわ…かわ……。」
休日だけあって人も多めな園内。
そんな中、彼らが直進するのを妨げるものなどなく、誰もが進路を譲った。
「さて、何からやろうか?キョーコちゃんは何からやりたい?」
「″坊を探せ″は見つけ次第でいいですよね。コック姿にハスラー。モーニング服姿とかいろんな恰好してるんですね。見てみたーい。」
「″絶対手を離してはいけないお化け屋敷″は少し離れてるわね。」
「いきなり絶叫マシンは遠慮したいな。目が回りそうだ。」
パンフレットを覗き込むキョーコの目がある文字を見つけて輝いた。
希望するものがあったようだ。
「あっ…プリンセスカルーセル。私、これがいいです。」
「あんた、名前だけで選んだでしょ!」
「だってプリンセスよ。」
「カルーセルってメリーゴーランドだよな。なんでプリンセス?」
「まあ、これもクリア条件なんですし、行きましょう。ね、キョーコちゃん。」
大いに期待するキョーコと共に目的の場所に辿り着く。
そこで分かったのは、回転木馬ではなかったという事。
4人はスライドしていくパネルの前に登場人物になりきったカップルがいるのを目にした。
スライドパネルの背景の種類は様々にあるようだ。
本来このスライドパネルは雰囲気を楽しむ為だけのものらしい。
今回のカップルイベントではこのスライドパネルをバックに写真を撮るというのがミッションの一つになっていた。
園のスタッフがシャッターを押してくれる事らしい。
スタッフにも一応聞いたが、シーンを演じろという指定はなかった。
何組かやっていくうちにどこぞのカップルが背景にあったシーンを再現し始めたのがきっかけで、後に続く者が出てこの状況になっているらしい。
写真を撮るだけのミッションはちょっとした小劇場と化し、順番待ちの列まで出来ている始末だ。
カメラ担当のスタッフさえ驚いている。
「写真さえ撮ればいいんだよなぁ。」
「そのはずなんですけどね。」
「白雪姫の背景ですよね。」
「ちょっとキスなんて…園内には子供もいるのに何考えてんのよ、あの二人。」
「モー子さん、意外と古風よね。」
「あんた!普段は破廉恥だなんだって騒ぐくせに何言ってんのよ!」
そんな風に待っている時間もあっと言う間に過ぎ、蓮達の番になった。
「社さん、先に撮りましょ。兄貴の後なんて嫌よ。比べられちゃうわ。」
「そうだね。それは俺もやだな。」
そんな倖一の肩を引き留めるのは当然ながら蓮だ。
「……社さん。解っているでしょうが……破廉恥なマネは許しません。」
「そう思うなら、さっさとこの手を離せ、今なら破廉恥なマネしなくて済む背景だ。」
場面はシンデレラの舞踏会のシーン。
倖一と奏江が背景の前に立つ。
「一曲、踊って頂けますか?」
「喜んで。」
微笑み合う二人が、互いの手を取るとどこからともなく溜息が漏れた。
「モー子さん。やっぱりキレイ。」
「なんだ。出来るじゃないですか。自分には王子役は無理だとかいって、そういう役は俺に押し付けてくるくせに。」
「そうなんですか?」
「そうなんだよ。様になってるよね?王子役。」
「ゆきちゃん、きっとモー子さんの前だからがんばってるんですよ?」
ポーズを取った二人を前に、スタッフがシャッターを押す。
それだけでこのミッションは終わりだ。
「次、あんたの番よ。」
次もシンデレラの背景だ。
明らかにホッとした顔の倖一の脇をすり抜けて、蓮とキョーコが背景の前に立った。
背景は貴族のお屋敷の中。
驚く継母と義姉達の姿がある。
おそらくはシンデレラが無くした靴を履くシーンだ。
「君がシンデレラ。俺が君を迎えに来た従者だね。」
「……やるんですか?」
「もちろん。」
「でも…。」
「ほら、こっちを向いて。」
「えっ!?」
「足を貸して。」
蓮が片膝をつき、キョーコを見上げる。
低く差し出した手が求めるものは。
「れっ蓮さん。手が汚れちゃう。」
「大丈夫。」
「でっでもっ!」
「ほら、早く。背景がかわっちゃうよ。」
「~~っ!?」
今のキョーコの心境はと言えば崖っぷちまで追い詰められたような状態だった。
何故かと言えば、片足をついた状態で自分を見上げる蓮の視線は”上目遣い”と言われるものだったからだ。
かわいい女の子にのみ有効なおねだり手段だと思っていたキョーコは、その威力の直撃を正面からまともに受け堪らず自らの足を差し出した。
一歩間違えば”SMの女王様”的な足の乗っけ方だったが、蓮はそれを見事に受け止めた。
カシャッ!
かける声すら失い、無言でシャッターを押すしかないスタッフ。
「王子よりも王子らしい従者がどこにいんだよ。」
「先に撮って貰って良かったわ。」
この後…このミッションで、物語のシーンを再現しようというツワモノはしばらく現れなかったらしい。
「あっ。蓮さん。あそこに”坊”がいます!!」
「ああ。坊を探せ…だね。あれは、ハスラースタイルだね。どっちかというと…コメディーなギャング風だけど。……とりあえずスタンプ貰いに行こうか。」
「はい!!」
蓮とキョーコが楽しげに進む少し後を倖一と奏江が追う。
「しかし、なんであんなとこにビリヤード台が…。」
「キャスターがついてるわ。可動式なのね。」
「園内を常に移動してるみたいだから。」
「あれを押して移動ですか。…大変ですね。」
どこまでも現実的な二人だ。
この後、蓮と倖一がハスラー坊からビリヤード対決を挑まれて、見事勝利して園内レストランのお食事券を手に入れたのはおまけのお話し。
後編へ…