風月さんの7話からすごく間が空いてしまいました…すみませんorz
メロキュン研究所より出発したパラレルトリオリレー『CROSSING』第8話でございます。
こちらは蓮×キョーコ・社×モー子と言うWカップリングのお話しです。
そしてパラレルです。
苦手な方はご注意くださいませ。
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緩やかに冬へと向かう空の青は高く、雲一つない。
「デート」をするには絶好の日より。
慌てて駅へと向かうキョーコは、商店街の中まだ開いていないショップのショーウィンドウにちらりと映った自分の姿に目を留め、ふと覗き込み服装を確認した。
ベージュのデザインニットに、チェックのプリーツスカートは中身がキュロット。
遊園地ではいっぱい歩くだろうから、足元はニーハイソックスにキャンパスシューズ。
流行を取り入れつつ、しかし力が入り過ぎていないように十分注意したつもりだ。
(へ、変なところないかしら…気合入り過ぎてないかしら…)
ショーウィンドウの前で一周すると、キョーコのスカートがひらりと翻る。
スカートが少し短すぎる…?と不安になるものの、でも中身はキュロットだし、制服のスカートだってこんなものよね!と納得して鏡の中の自分に話しかける。
「うん、大丈夫!きっといつもの私よりは可愛いはず!…ああー!でも襟ぐり開き過ぎかしら…」
胸なんてないからセクシー路線は無理!と騒いだものの、「デートならこれ位の露出は可愛いものですよ!」と店員に猛プッシュされて購入したデザインニットは襟ぐりの大きく開いたもの。
華奢なキョーコの鎖骨が強調されて、高校生らしい爽やかな色気が溢れているのだが…
残念かな、胸がない事をひたすらコンプレックスに感じているキョーコにとって、それを感じ取る事が出来ない。
(どうしよう、蓮さんに「君は自分の身の程をわきまえた方がいい」とか言われたら…あああー!!)
「…キョーコ?何こんな所で百面相してるの?」
「え?…あ、ゆきちゃん…」
店の前で頬に手を添え、顔を赤らめたり青ざめさせたりしながら妄想の世界にどっぷりと浸かっていたキョーコに声をかけたのは倖一だった。
実は本日の「デート」、二人だけでのものではない。
蓮と奏江、倖一と4人で行く、所謂「Wデート」と言うものなのだ。
集合場所は、遊園地入口にある大きな噴水前。
時間は開園時間。
倖一は「園まで一緒に行こう」と声をかけ、キョーコと地元の駅で待ち合わせをしていたのだが…
キョーコの事だからきっと途中で妄想の世界に走るかもしれない。
そう考えて、キョーコの家の方向へと少しだけ遠回りをして来ていたのだ。
(まあ、キョーコの事だからこうなってると思ってたんだけどね…)
ショーウィンドウの前で変な顔をしたまま固まったキョーコを見て、倖一はふうと溜息を吐いた。
「ほら、こんな所で立ち止まってたら電車に乗り遅れるよ?」
「ねえねえ、ゆきちゃん。私今日変じゃない?」
「キョーコはいつも通り可愛いよ?」
「もうっ!ゆきちゃんってばいつもそう言う!」
「だって本当の事じゃないか。」
「例えばね?ここら辺が寂しいとか、足出しすぎとか…とにかくおかしな所あったら言ってほしいのー!」
必死に胸の辺りを気にするキョーコを見て、倖一は「ああ、なるほど」と思い当るところがあった。
***
そもそも、今回のWデートは倖一が後輩から遊園地のチケットを譲ってもらった事から始まった。
「なあ、蓮。お前、ミスコンの優勝賞品のチケットまだ持ってるか?」
「え?持ってますよ。どうしてですか?」
「一緒に行かないか?」
―――ガチャン!!
一緒に食卓を囲んでいた蓮とキョーコは、全く同じタイミングで茶碗を落とした。
もう毎度おなじみの光景となってしまった、倖一のアパートでの夕食風景。
キョーコがご飯を作りに来てくれる日は、必ずと言っていいほど蓮がお邪魔するようになっている。
二人とも目を見開き、眉を顰め、ものすごい形相で倖一を見た。
「俺…男とデートする趣味はないですけど…」
「ゆ、ゆきちゃん…!?実は蓮さんの事…っ!」
「だー!どうしてそうなるかなあ!!」
二人揃ってあらぬ方向に妄想を始めてしまった事に気が付き声を荒げた倖一は、傍に置いてあった自分のデイバッグから定期券サイズのチケットを2枚取り出し、ピラピラと二人の前で振った。
「ゆいちゃんからもらったんだよ!」
「ああ、柏木さんですか。彼女、そう言えばミスでしたからね…」
「かしわぎ?…あ。」
二人の会話の中であまり出る事のない女の子の名前が出た事で、誰?と思ったキョーコだったが、2週間前の土曜に行った学祭を思い出していた。
*
その日、倖一と蓮の所属する演劇サークルが公演を行うと言うので、キョーコと奏江は誘い合って大学へ行っていた。
サークルのボックス…部室へ寄った時、蓮が今年のミスコン…『ミスターコンテスト』で優勝したから表彰式に絶対に出席してくれと、実行委員が頭を下げに来ていた場面を見ていたのだ。
「ミスコン…別に自分でエントリーしたわけじゃないんだけど…」
「でも敦賀くん、このサークルから二人もミスコン優勝者が出るって初めてだから、一緒に壇上に上がりましょうよ。」
元々、キョーコ達が学祭に遊びに来る予定がなければ今年も参加するつもりのなかった蓮。
しかし、そんな彼が珍しくキャンパス行事に出席しているのだから、ここはぜひ一緒に行動を!と目論む女子が多く、サークルのボックス入口には人だかりができていた。
そこで出会った、今年の『ミスコンテスト』優勝者の柏木。
彼女もまた蓮と一緒に行動したがる女子の一人だった。
可愛らしい幼顔に似合わぬ豊満な体つきは、並のアイドルに劣らぬ容姿。
演劇をやっているだけあって澄んで良く通る声に、キョーコは純粋に羨ましさを感じた。
―――ああ言う素敵な人が、蓮さんと同じ壇上に立てる人なんだ…
結局蓮は授賞式をバッくれて、倖一と共にキョーコや奏江とキャンパス内を回っていたのだが。
しかし、蓮と同じミス優勝者である柏木の存在は、キョーコにとって大きなものだった。
*
「彼女、ミスに選ばれてマスコミの仕事も入ったらしくてね。もともとこっちの副賞には興味なかったらしくて『良かったら使ってください』ってくれたんだよ。」
まだ人差し指と中指で挟んでピラピラとさせていたチケットを、倖一はたしっとテーブルに置いた。
「でも、それがどうして俺と?」
「お前、授賞式はバッくれた癖にちゃっかり副賞だけは貰ってたろう?だから、奏江ちゃんも誘って、ここの兄妹で一緒に出掛けるのはどうかって言う話だよ。」
「「ああ、なるほど…」」
まさかの「男同士のデート」と言う恐ろしい画面が思い過ごしと分かり、蓮とキョーコはホッと胸を撫で下ろす。
そして、ふと顔を見合わせてポッと頬を赤らめた。
―――それって、Wデート…!?
「社さん、確かに貰ってますけどでも…」
「別に俺は奏江ちゃんと二人で行ってもいいんだけど」
「それは駄目です。」
「シスコン…」
「それは社さんだって…っそうじゃないですか。」
倖一と言い合う蓮にちらりと見られ、キョーコははて?と首をかしげる。
(ゆきちゃんがシスコン?うーん…仲は良いけど、シスコンって言われるほど何かされた事はないよねえ。)
倖一が蓮とキョーコの両片想いな事に気が付いていて、さりげなく妨害している事なんてこれっぽっちも気が付いていないキョーコは「シスコン」と言われる意味が解らない。
きょとんとしているキョーコを尻目に、倖一は蓮の肩をがしっと掴み、ひそひそと耳打ちした。
「俺はキョーコを連れて行くんだから、お前にもメリットはあるだろう?」
「それはっ…まあ、そうですけど。」
「俺は別にいいんだぞ?自分の力で奏江ちゃん誘うから。お前がキョーコ誘うのは全力で邪魔するけどな?」
「…卑怯ですよね社さん…」
「可愛い妹はタダではやらん。」
蓮より年上で優しく知的な雰囲気を持った倖一を、奏江が気に入っているのは知っている。
きっと蓮が妨害をしたところで、普段から「モーッ!うるさいわねバカ兄貴ー!」と反抗的な奏江は倖一のデートの誘いを二つ返事で了承するだろう。
だが、自分がキョーコを誘うとなると…倖一の妨害が半端ない事は容易に想像できた。
頭上にクエスチョンマークをいっぱい付けて男達の内緒話を見守るキョーコをちらりと見ると、よくわからないまま小首をかしげてにこりと微笑む。
その可愛い様子を見た蓮は、ふうとため息を一つ吐くと「いいですよ」と一言だけ返事をした。
***
(あの後、ミスコンについて色々聞いてきてたんだよな…)
蓮を丸め込んだ後、例年のミスコンがどんな人なのか、特にスタイルがいい人が多いのかを聞いてきていたキョーコ。
あの日会った柏木がグラマラスな容姿を強調する服装だった事を考えると、キョーコが気にしているのは胸なのだろう。
ぎゅっと手を胸元に握りしめ必死な様子で自分を見つめる可愛い妹に、倖一は苦笑を洩らしながらポンポンと頭を撫でた。
「キョーコはいつだって可愛いよ?今日の服も良く似合ってる。」
「ホント?大丈夫かなぁ…」
「大丈夫大丈夫。…だからね、そろそろ駅に行こう?蓮達との待ち合わせに遅れるよ?」
「…そうよね。ゆきちゃんが言ってくれるなら大丈夫だよね!よし、駅まで走ろっ!」
やっと挙動不審な動きをやめ笑顔になったキョーコを見て、倖一はホッと一つ息を吐いた。
そして先に走り出してしまったキョーコに声をかけながら追いかけた。
**後編へ続く。**
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前編蓮キョの絡みが少なくてすみませんーorz
スキビ☆ランキング ←いつもありがとうございます。