あまりにも4話との間が空きすぎて、お話し分からなくなってる方もいらっしゃるかと…(ごめんなさい~!)


風月所長・月華さんとのトリオリレーです。

1話 (風月さん宅)  2話 (マック宅) 3話 (月華さん宅・FC2ブログなのでTOPへ飛びます) 4話 前編 後編 (風月さん宅)

蓮とモー子さん・やっしーとキョーコが兄妹と言う、パラレルリレーです。

パラレルが苦手な方はご注意くださいませ☆



゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆ CROSSING 5話 前編 ゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆



酷暑の時期も終わり、鱗雲が高く澄んだ空が秋の到来を告げる季節。

学校は文化祭シーズンを迎えていて、それはキョーコと奏江の通う高校も例外ではない。

学生達が自作した文化祭のモニュメントがお出迎えする賑やかな校門の前で、些か仏頂面な美男子が二人、行き交う人々の注目を集めていた。

蓮と倖一だ。

「全くさぁ…こういう文化祭って、普通は可愛い女の子と来るものだろう?何でお前と一緒なわけ?」
「いいじゃないですか。奏江とキョーコちゃんは同じクラスなんですよ?どちらにしても会いに行けば、必ず合流することになるんですから。」
「じゃあ、別に二人のクラス集合で良かったんじゃないか?」
「……奏江に絶対追い返されますから、一緒に行ってください。」
「ホントにさぁ…『猫耳が似合う制服』って、俺はアレしか思い付かないんだけど。」
「偶然ですね…俺もそう思ってたんですよ。」

「「とりあえず、トラブルに巻き込まれてないか心配だな(ですね)」」

妙にトラブルを引き寄せてしまう、可愛らしい悩みの種…キョーコに、二人は頭を抱えそうな思いでため息を吐く。

何故、彼らが一緒に高校の文化祭に来ることになったのか。

原因は先週、倖一の部屋でキョーコが言った何気ない一言がキッカケだった。





「そうだ、ゆきちゃん!来週の文化祭来てくれる?」
「お、来週なんだ。早いなぁ…勿論いいよ!」
「やったぁ♪」

イベント好きな妹がいる兄妹としては、いたって普通の会話。
しかし、お相伴に与るためにちゃっかり倖一の家にお邪魔する日が続いていた蓮にとっては、文化祭は初耳だった。

「えっ…文化祭?」
「はい!そうなんですよ~♪モー…奏江ちゃんは言ってなかったですか?」
「いや、何も……」

こちらの兄妹の仲も、決して悪いわけではない。
しかし………残念ながら、妹は俗に言うツンデレ属性。
兄が可愛がれば可愛がる程、態度は真逆になっていく。

そんな妹が、兄が知ってしまえば確実に様子を伺いに来るような一大イベントをそう簡単に教えるはずがないのだ。

「あ、そうだ。前うちに来てた時、奏江のことあだ名で呼んでたよね?俺の前でも言い直さなくていいんだよ?」

文化祭を妹の口から聞けなかったことは軽くショックだった蓮だが、今は目の前の少女があだ名を必死で言い直そうとしている方が、距離を置かれるように感じられて寂しさを覚えた。
さりげなさを装い、『普段のキョーコ』を引き出させようとする。

「え?いいんですか?モー子さん、あんまりこのあだ名気に入ってなくて…」
「もちろんいいよ?仲良くしてくれてるんだろう?だから、普段呼んでるようにして?」
「っ、はい!ありがとうございます。」

にっこり笑ってくれる顔が嬉しくて、蓮も普通の子ならとろけてしまいそうな笑みを返す。

「モー子さん、制服嫌がってたんですよ。だから言わなかったのかも…」
「え?制服??」

むしろ彼女たちの通う高校は、制服の可愛さが売りになっていたのでは?


『アニキが卒業する学校?そんな面倒そうな学校には行かないわよ!』と言い、『制服が気に入ったから』と言う理由で今の学校への入学を決めた奏江。

それを知っている蓮は、不思議に思い聞き直す。

「あ、うちのクラスは喫茶店をやるんですよ。だから制服と言うか、衣装を用意したんですけど…あんまりモー子さんの好みじゃなかったみたいで。」
「ふうん、そうなんだねー。キョーコは気に入ってるの?」

今日は蓮ではなく、倖一がキョーコの料理を手伝っていた。

テーブルに料理を全て運び終わった倖一も話に加わる。

「うんっ!とっても可愛いのよ!フリルのエプロンがお気に入りでねっ、猫耳とか着けたらもっと可愛いと思ったんだけど却下されちゃったの。」
「「はっ!?猫耳……!?」」

キョーコの可愛い物好きはもちろんわかっている男二人だが…
突然出てきた制服に関係ない『猫耳』と言うキーワードに食いついた。

「あっ、いけない!当日まで内緒ってクラスのみんなとの約束なの!ごめんなさい、今の忘れてっ!」

一気に怪訝そうな顔をする男二人を前に、キョーコは上目遣いで涙目になりながらお願いをする。

「お願い………ね?」

胸の前に手を組み、潤む瞳で自分達を見上げる可愛らしい少女。

片方は、彼女を溺愛する兄。
もう片方は、彼女に一目惚れし盲目状態の恋する男。

思わず「「うん……」」と答えてしまったのは、仕方のない事と言えよう。

「良かったぁ~!さっ、温かいうちにご飯食べちゃって?今夜は煮込みハンバーグにしてみましたぁ~♪」

それ以上の追求が出来るような空気は、全てキョーコに無自覚に断ち切られ、二人の男はモヤモヤしながらハンバーグに口をつけたのだった。





「なぁ、蓮。見間違いでなければ、この行列はあのクラスから伸びてるよな?」
「社さんもですか?俺もそう見えます。」

キョーコから聞いていた教室に近づくと、一本の行列が二人を待っていた。
どちらかと言えば男が多く並ぶその行列。

教室まであと数メートルという所で、やっと行列の先頭と、入り口で案内をする女の子の姿が見えた。
案内をしていたのは、メイド姿のキョーコだった。

「あっ、ゆきちゃん蓮さん…っ!」

自分達を見つけた途端、ぱあっと華が綻ぶように笑顔がますます輝くのを見ると、蓮は思わず無表情になって立ち止まってしまった。

でもそれも仕方のないこと。

今のキョーコの衣装はとても可愛くて、恋する男にとって彼女自体が蓮の心臓を爆発させるスイッチそのものに変身していたのだから。

淡いピンクのメイド服は、肌の白い彼女をより可愛く演出していた。
中にパニエでも履いているのか、スカートは膝上でふんわりと広がる。
真っ白なエプロンはフリルがふんだんにあしらわれており、同じようにフリルが盛られたカチューシャを栗色の頭に着けていた。

(似合いすぎだよ、キョーコちゃん……)

しっかり長い間見惚れて固まってしまった自分が気恥ずかしくて、口元に手を当て「ごほり」と咳で誤魔化してみる。

「おい、蓮~!何そんなところで突っ立ってるんだよ。」
「あ、あの…どこかおかしかったでしょうか?」

止まってしまった蓮に、先にキョーコの元へと着いていた倖一は『さては見とれてたな…』と少し複雑な思いを向け、キョーコは『私、何かおかしかったかしら!?』と不安になる。

「あ、いえすみません。……キョーコちゃん、似合ってるよ。とっても…」

慌てて二人の元へと歩み寄り、キョーコに『とても可愛いよ』と賛辞の言葉をかけようとした瞬間。
キョーコの真後ろの引き戸がガラガラッと勢いよく開けられ、中から腰に手を当てた奏江が飛び出してきた。

「ちょっとキョーコ!!店の方も手伝いなさいよ!客パンク状態なのよ…って。」
「「「あ。」」」

怒りながら早口でキョーコに詰め寄るが、ふと側にいる長身の男が自分の兄であることに気づいた奏江は、盛大に顔をひきつらせてしまった。

「バカ兄貴!!何で来てるのよーーーっ!!
…はっ!さてはキョーコ!あんたがうちのバカ兄貴に教えたわけ!?私がどれだけこの衣装嫌がってたか知ってて教えたわけ!?」
「ごっ、ごめんなさいモー子さん…っ!だって話の流れ上どうしても…」

奏江だって、ピンクのそれが決して似合っていない訳でもないのだが…

だが、よほど本人は『似合っていない』と思い込んでいるのか。
鬼のような形相でキョーコに詰め寄り、キョーコは冷や汗をかきながら奏江にしどろもどろ言い訳をする。

「あっ、あの…奏江ちゃん!」

そんな二人のじゃれ合いをストップさせたのは、少しだけ上ずった倖一の一言だった。

「可愛いよとっても!ピンク色も似合うんだね…」

キョーコの肩を掴んで揺さぶらんばかりの勢いだった奏江は、少し頬を染めながらも自分を褒めてくれる倖一を見ると、途端に顔を真っ赤にさせてキョーコからパッと手を離した。

「あ、ありがとうございます。社さん……」

胸の前で両手の指をつんつんと遊ばせながら、目線は倖一に合わせない…

(あら?モー子さん好きな人いるって言ってたけど…ゆきちゃんのことだったの!?)

倖一と奏江が会う所に遭遇するのが初めてなキョーコは、いつにない奏江の態度にびっくりする。

いつもはクールな奏江が、ここまで顔を赤らめることはとても珍しいのだ。

(もう…顔真っ赤にしちゃって……本当にモー子さんったら)

「「可愛いくらいツンデレなんだから……」」

ポツリと呟いたはずの言葉が後ろにいた蓮と重なり、思わずキョーコは振り返り、後ろを見上げた。

「えっ…?」
「あぁー…まぁ、奏江はああいう性格だから……」

たまたま呟いた言葉がキョーコと全く同じタイミングで被ったことに、少しだけ嬉しい蓮はぽりぽりと頬をかく。

「キョーコちゃんが奏江の親友で本当に良かったよ。これからもよろしくね?」
「もちろんですよ!こちらこそよろしくお願いしますね♪」

『モー子さんのお兄さんに親友として認めてもらえた!』
奏江の身内から聞くその『親友』という響きが嬉しくて、キューティーハニースマイル全開にペコんっと勢いよくお辞儀をするキョーコ。

そんなキョーコをまともに見てしまった蓮は、再び無表情でその場に固まってしまった。

(ほ、本当に可愛すぎるって………)



**後編へ続きます。**



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おおう、長くってまさかの前後編!
失礼してまーっす!

(本当に携帯で書ける限界ギリギリの長さなんですよ…)