お時間経っておりますが、メロキュン研究所より発信のトリオリレーです。


こちらは、蓮×キョーコ・社×奏江と言うWカップリングによるパラレルです。

「パラレル?苦手だわー」と仰る方はご注意くださいませ。



8話は前後編でお送りしております(前回担当の5話も前後編に分けちゃったので、「今回も」が正解ですがorz)

前編は こちら よりどうぞです。



*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆



所変わって、遊園地の入場口手前。まだ水を上げる前の、静かな噴水の前。

待ち合わせる人がまばらに立つその中で、一際美人のカップルが人々の注目を集めていた。


蓮と奏江だ。


二人ともすらりとした身を引き立たせる縦のラインを強調したパンツスタイルなだけに、周りの人間は「あれはモデルのカップル!?」などとキャーキャー言いながら入場ゲート前にできた列へと向かって行くのだが…

兄と恋人などと思われる事は心外な奏江の機嫌は急下降中だ。



「モーッ!!!キョーコはいったい何をしてるのよー!!」

「そこ、社さんだとは思わないんだ。」

「当たり前でしょう!?倖一さんが時間厳守な人なの、教えてくれたのは兄貴じゃないの。」

「そうだっけ?」

「そうよ。だから、これはきっとキョーコが『ああー!こんな服装で出てきちゃったけど似合ってるかしら?大丈夫かしら?』って無駄に妄想の世界へトリップしてるに違いないわ!」

「無駄にって…」



キョーコの口癖まで丁寧に真似て口を尖らせる奏江に、蓮は苦笑する。

きっと奏江の言うとおり、向こうの二人が遅れているのはキョーコに原因があるような気がしたからだ。



倖一から今日の誘いを受けた時、頬をポッと赤く染めたキョーコの姿に蓮は、「これをWデートと思ってくれたのだろうか」と自分への好意をひそかに期待した。


自分は絶対に嫌われてはいない…と思う。

だけど、それが恋愛に発展する好意かどうかはわからない。

今まで付き合ってきた女の子達とまるで違うキョーコ、そして彼女達へとはまるで違うキョーコへの気持ちに、蓮は戸惑っていた。



さりげなく恋愛についての話題を振っては、フルスイングでストライク。

遠回しに聞いてみるもぼてぼてのゴロ。


ならばと直球を仕掛けようとすると倖一の妨害に遭う。


恋愛に関するチャンネルは、どうも蓮とキョーコはずれているようだ。

だから今日のWデートも、単独で誘う様な事はせずに社の案に乗っかったのだが。



それに対し、奏江へのキョーコの愛情は「ど」が付くほどストレートだ。

今回のWデートも、「蓮と一緒」と言う事よりも、「モー子さんが一緒~!!!」と飛び跳ねて喜んでいた事を思い出すと、妹が羨ましくなった。



「奏江は本当にキョーコちゃんと仲いいよね。」

「は?何でこの流れでそうなる…って。兄貴、私にまで嫉妬するのやめてくれない…?」

「何?嫉妬って。」

「その無駄な笑顔はいらないって言ってるのよ。」

「無駄…?失礼だなあ。俺は普通に笑ってるだけじゃないか。」



思わず「嘘!」と叫びたくなる奏江を尻目に、キュラキュラと無駄に爽やかな笑顔を振りまく蓮。

チクチクとその輝きの棘が刺さる奏江は溜息を吐いた。



キョーコに恋をした時から、蓮は色んな姿を奏江にも見せるようになっていた。


普段は何でもそつなくこなし、対人関係も恐ろしいほどにドライな蓮だが、キョーコが絡むと途端にその完璧すぎる姿を崩す。


誰にでも分け隔てなく優しい蓮が、天然乙女なキョーコにだけ意地悪を仕掛ける。

かと思えば、突然周囲が赤面するほどの甘い笑みをキョーコに向ける。

そして思いもよらない反撃に遭い、一人ノックアウトされている…


歴代の彼女達がたまに家に遊びに来ることもあったのだが、いつも受け身な姿しか見てこなかった奏江は、兄は恋愛に対して淡泊なのだとずっと思い込んでいた。


だから、兄が女の子に対し無邪気に接する姿など、奏江は初めて見た時から戸惑いのものだった。

それが自分の親友相手であるから猶更…



「それにしても遅いね。もうすぐ開園だ…駅まで迎えに行ってみる?」



腕にした時計を気にしながら、蓮はまだ眉をひそめる奏江に声をかけた。



「いえ…あの子だって時間にはまじめな子よ。集合時間にはちゃんと間に合うように出て来てるはずよ。」

「そうだね…社さんも一緒だしね。」



そう言ってふわりと微笑む兄の姿に、奏江は複雑な心境で微笑み返した。

すると、遠くの方から「モー子さあぁぁぁん!!」とキョーコの叫ぶ声がする。


二人が驚いて声の方を見ると、駅の方から走り寄ってくるキョーコと倖一の姿があった。



「モー子さあぁぁん!!!」



いつものように抱き付こうとするキョーコを、ひらりと躱す奏江。

背後にあった柱にキョーコがドンッ!とぶつかるのは、もうこの二人の間ではお約束の流れだった。



「ひどいわモー子さんったら!親友同士の挨拶じゃなーい!」

「朝から暑苦しいのよ!モーッ!!アンタが遅れてくるから私がバカ兄貴とカップルに間違われて大変だったのよ!」

「あ、ごめんね奏江ちゃん。俺も…」

「社さんは関係ありません!」

「奏江…」



蓮と恋人と思われた事が相当お気に召さなかったのか、蓮の言葉にも倖一の言葉にも奏江の怒りは収まらない。



「どーせ『今日の服似合うかなあ!』とか言って道の途中でいきなり立ち止まって、妄想世界へ飛んでってたんでしょう!?」

「えっ、どうしてそれを…もしかしてモー子さんってエスパー!?」

「アンタの考えそうな事くらいお見通しなのよーっ!!」

「こら奏江、よしなさい。」


一気にガッとまくし立てるように喋っていた奏江の口を塞いだのは蓮の手だった。

口を覆われた事でフガフガと何かを言っている奏江をどうどうと諌めると、蓮は改めてキョーコをじっと見た。


襟ぐりの開いたベージュのニットにタータンチェックのスカート。

その下からすらりと伸びるしなやかな脚は、黒のニーハイソックスに包まれて…


いつも可愛い系の服装のキョーコだが、本日は色味のせいか少し大人っぽく見えて、その爽やかな色気に蓮はどきりとした。



「奏江がごめんね。」

「いえ、実際にこんなギリギリの時間ですし…理由もモー子さんの言うとおりですし。」

「俺は似合ってると思うよ。」

「…え?」


キョーコは申し訳なさそうに俯いていたのだが、蓮の言葉にふいと顔を上げた。

すると、そこには整った顔立ちを更に美しく輝かせるかのような優しい笑顔があった。


ドキンとキョーコの胸も大きく跳ねる。



「良く似合ってるよ。」

「あ…アリガトウゴザイマス。」

「あ、でもそれスカートだよね。ジェットコースターとか乗る時困らないの?」

「これですか?」



あまりじろじろと見るわけにもいかないと思いつつ、蓮はひとつ気になっていることをキョーコに質問してみた。


速度の速い絶叫マシンに乗る時、スカートがめくれてしまっては大変だ。

キョーコがもし乗らないのであれば、自分も一緒に乗らずに倖一と奏江を待てばいいと、そうすればもっと二人でいられる時間が増えると、密かにそんな事を考えたのだ。


スカートの裾をちらりと持って聞きなおしたキョーコ。

しかし、次にキョーコが取った行動は、蓮の予想をはるかに超えていた。



「大丈夫なんですよ!これ実はキュロットなんです、ほらっ!」

「…っ!!!」



中身がキュロットだからと安心しきったのか。

それとも天然か。


キョーコはぺらんとスカートの中身をめくって見せた。

勿論、同じ生地のキュロット部分が出てくるだけなのだし、見せ方も色気も何もあったものではないのだが。

スカートだと思い込んでいた蓮の心臓は止まりそうになり、キョーコの生足をばっちり拝んだその顔は一気に無表情へと変化した。



「えへへ、だから乗り物もへっちゃらなんです!心配してくださってありがとうございます!

あ、開園のアナウンス!早く行きましょう~!!」



いいタイミングで流れた開園を告げるアナウンスに、キョーコは蓮の激しい動揺に気が付くことなくさっさとゲートへと向かってしまう。

動揺のおかげで蓮の手が緩み、そこから抜け出した奏江は固まった兄を見て呆れ返った。



「兄貴…いくらキョーコが天然だからって、公衆の面前でスカートを堂々とめくらないわよ。」
「うん、それは俺も同意見だね。キョーコの脚見て、まさかよからぬ想像はしてないだろうなあ…?」
「…いえ、別に……」


倖一と奏江の冷たい目線に、やましい蓮は思わず目線を外してごほりと咳き込む。

あっという間にゲート前まで進んでしまったキョーコが「おーい」と声をかけて来るのを聞き、二人は「ふうーん…」と鼻を鳴らすと、行きましょうかと声をかけあいキョーコの元へと歩いて行った。



並ぶ倖一と奏江の後ろ姿を見ながら蓮は、ぽつりと呟いた。



「俺…心臓いくつあったら足りるかな……」



蓮がそんな事を思っているとはつゆ知らず。

キョーコは自分の方へと向かってくる倖一と奏江の姿にドキドキしていた。



(やっぱりモー子さんは大人っぽくていいなあ…5歳離れてるゆきちゃんと並んでも、全然恋人同士っぽいわー…)



美人の親友が大好きな兄と並ぶ姿を見てほう…とため息を吐き、それに比べてと自分の胸をちらっと見下ろす。

やっぱり胸が気になるよね…と胸元を抓んでみると、先程の蓮の言葉が頭の中で再び流れた。



―――良く似合ってるよ。…良く………


ぽぽぽぽぽっ!!



途端に真っ赤に染まる頬。

耳元でドクンドクンと脈打つ音が聞こえてきそうな程、強く早くなる鼓動。



(お!落ち着きなさいキョーコ!ゆきちゃんにだって同じ言葉言われたじゃないのー!!)



慌ててその場で深呼吸を繰り返すと、まだ固まったままそっぽを向いている蓮の姿をちらりと見る。

口元に手を当てるその姿すら、蓮がするとモデルのポーズの様で…

またドキンと大きく跳ねる心臓に、キョーコは蓮の言葉の破壊力に、ただただ驚いていた。




―――あなたの言葉だけ。あなたの言葉だけに私の心は反応するの。

貴方は私のトクベツな人―――




集合時間、午前9時。

デートはまだ始まったばかり―――




**月華さんへ続く**


web拍手 by FC2 ←スカートだと信じ切ってた蓮さんの心臓は3個くらい停止かもです。


************


ええ、遊園地に入るまでが長くてホント申し訳ないですorz

が、今回の担当はここまでなんですよー!

と言うわけで、素敵Wデートの中身は続く月華さん・風月さんの所でお楽しみくださいねー♪


お付き合いありがとうございましたm(__)m



スキビ☆ランキング ←いつもありがとうございますー!