お礼シリーズ最終話、お届けです。一葉です(≡^∇^≡)
本当はもう少しだけ引っ張ろうか、とも思ったのですが、捧げあい内の別シリーズ二つがどうにも長くなりそうなので、こちらはキリを付けてしまうことにしました。
まあ、『 約束のお礼 』を書いた時点でちょっとそうしようか…とも思っていたので。
このお話でラストとさせていただきます。
いつものように長いですよー。覚悟して下さいね(笑)
こちら↓は前のお話。お礼シリーズです
諦めきれないお礼 (セ作)
悪戯なお礼 (リ作)
ときめきのお礼・前編 ・後編 (ユ作)
失策なお礼 (リ作)
蓮キョ愛・お礼シリーズ最終話
■ 告白のお礼 ■
最上さんとベッドを共にしてから一週間余りが過ぎた。 ←ベッドを共って(笑)
あれから彼女の体調不良は順調に回復し、またいつもの元気なあの子に戻った事は本当に良かったと思う。
どちらかと言えば
あれから思考を塞ぎがちにしているのは俺の方で…
――――― あなたが、好きです…
気のせいなんかじゃない、という確信は今もある。
そのセリフが聞こえた時は本当に驚いて
このまま心臓が止まるんじゃないか、と疑えるほど鼓動が何段も跳ね上がった。
大急ぎで彼女を覗き込むと、既に眠りに落ちているのが分かったから
……さすがに、起こせないよな
そのとき自分が出来たのは、彼女の寝顔を見守ることだけだった。
だけど、本当に倖せで
凄く、凄く嬉しくて
ただ物凄く嬉しくて
こんな倖せを感じた事なんて、たぶん今まで一度もなかった。
約束通り、朝の目覚めを迎えたとき
腕に変わらぬ重みがあったことも本当に嬉しくて
「 おはよう 」
「 お…はよう…ございます 」
だから俺は、夢見心地を早く現実にしたかったんだ。
「 最上さん、昨夜の事だけど… 」
朝食を用意してくれていた背中に声をかけると、クルリと振り返った最上さんが勢いよく頭を落とす。
彼女から投げられた回答は、俺の思考を簡単に停止させた。
「 はい!ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。でももう、すっかり平気みたいです。本当にありがとうございました!あとは敦賀さんに風邪が感染っていないことを祈るばかりです 」
いつもと全く変わらない態度。
まるで昨夜の告白は幻だったと俺に教えているみたいだった。
いや、もしかしたら幻じゃなくて
ただ単に俺が夢を見ただけだったのかもしれない。
そうだ。
何度もそう思っていたじゃないか。
お風呂上がりだというのに
男と二人っきりだというのに
あんなにも肌を露出させた格好だったのに
最上さんはまるで警戒心を持たなかった。
このまえ押し倒した時はさすがに涙目を見せていたけど
あのあとだって何も無かったように平然としていた。
たとえばあの呟きが、現実のものだったとしても
特別な意味を持たないセリフだったに違いない。
薬を飲ませるのを口実に、あの子にキスをしたことも
風邪が悪化したら困るから、と毛布にくるんで守ったことも
たぶんあの子は、それをどうとも思わなかった。
――――――― 思わなかったに、違いないんだ…。
「 蓮!! 」
「 え?……あ、すみません、社さん 」
「 お前な…。キョーコちゃんが元気になったのにお前が不元気になってどうするんだよ 」
「 いえ、俺は元気ですよ? 」
「 嘘つけ!何を考えているのか知らないけど、俺にはバレバレだぞ 」
「 ……すみません。ご心配おかけして… 」
「 全くだ!罰としてキョーコちゃんを迎えに行って来い! 」
「 ……え? 」
「 いまこの撮影所に向かってるってさ!差し入れを持ってここに来るって連絡があった。もうそろそろ着くはずだから、お前迎えに行って来い! 」
「 …はい…行ってきます 」
あれから一週間以上が過ぎ、その間に最上さんとも幾度か顔を合わせた。
俺があの朝、感じた通り、彼女の態度は以前と全く変わらない。
たとえば嘘を隠し通すのが苦手なあの子が俺に告白をしたのだとしたら、何事も無かったように振る舞うその態度は逆に不自然過ぎるんだ。
つまりあれは寝言だった。
夢幻ではなかったのなら、あれはただの寝言だった。
そう、何度自分に言い聞かせただろう。
どうしても、どうしても納得したくないのは
あの夜感じた幸福感を手放したくないからなんだ。
撮影所の通路を通り抜けて、もう二つ角を曲がると入口にたどり着く。
太陽の光がアスファルトを容赦なく照らしていて、足元を見ながら歩みを進めていた自分の視界の端に人影が通り過ぎ、俺は何の意図も無く顔を上げた。
目に飛び込んできたのは制服を着たあの子の後ろ姿。そして…
――――― あれ、は…BOOSTの記者…?
そのとき、何故自分が身をひそめたのか
後から考えても理由は全く判らなかった。
二人の近くまで忍び寄って、会話が届く所で立ち止まる。
「 すみません。京子さんですよね? 」
「 はい、そうですけど 」
ちょっと確認させていただきたくて。
そう言ったBOOSTの記者に、何でしょうか?…と最上さんは丁寧に言葉を返した。記者であることは首から下げられた通行証のそれで判る。
「 実は先日、不破尚さんからある情報を頂きましてね。それは敦賀さん… 」
「 なっ!!!またアイツ!!敦賀さんを目の敵にして有ること無いこと吹き込んだのね!? 」
「 まあ、まあ、話しを聞いてください。不破さんの話によると、敦賀さんと京子さんが一晩を一緒に過ごしたらしい…と言うんですよ。それに関しましては先日、敦賀さんにも確認を取らせて頂いたのですけど… 」
記者が澱みなくそう告げると、最上さんは少しだけ驚いた声を発した。
「 へ?敦賀さん…に聞いたんですか? 」
「 はい。事実だ…とおっしゃっていたんですけど、本当ですか? 」
少しの間逡巡して、それから最上さんはさも何でもない、とでもいうように、あっけらかんと事実です、とそう答えた。
事実も事実。
確かにそれは嘘をつく必要はないかもしれない。
けれど、それは君にとってそんなに簡単な事だった?
後先を考えずその記者の質問に、そう答えた俺がこんな事を言うのはおかしい…と思うだろうけど
そもそも男と一緒に一晩を過ごしたっていうそれだけで、充分大ごとだと君は思ったりしない訳?
それを君が認める事でどれだけのデメリットが生じるのか、気付かない君じゃないだろう?
俺の事を、何とも思っていないならなおさら…。
声をかけようか、どうしようか。
一瞬の躊躇いが心に浮かんだ。
俺の存在に気付いていないだろう二人はそのまま会話を続けていく。
「 …あの、京子さん? 」
「 はい 」
「 聞いておいてからこれを確認するのも何ですけど、京子さんは身の危険とか感じなかったんですか? 」
「 は?身の危険?何にですか? 」
「 だって…敦賀さん、男性ですよ?なのに二人っきりで一晩…なんて。そりゃ、堂々とそう答えるぐらいですからまあ、何も無かったんだろうって思いますけど… 」
そう言われて最上さんが声を荒げた。
きっぱりと言い放ったそのセリフ自体はとてもありがたいと思ったけれど
同時に、とても寂しくなった。
「 何を確認しているんですか!?敦賀さんは紳士ですよ。身の危険を感じるなんて絶対にありません! 」
……つまり、それは
俺を男として見てないってことだよね?
先輩としての俺に莫大な信頼を寄せているってことだよね?
それは、喜ぶべきことなのかも知れないけれど
君との絶対的な距離を感じた。
あの夜の君の息遣いさえ俺は思い出せるのに、あんなにも近かった君がいまはこんなに遠く感じる。
どうしたら、この距離を覆すことが出来るんだろう。
知らず、右手を握りしめた。
顔を背けて瞼を閉じる。
いま彼女がどんな表情をしているのか、後姿しか見えない俺には想像するしかないけれど、真正面から最上さんを見ているBOOSTの記者がそれを俺に教えてくれた。
「 京子さん…驚くほど顔が真っ赤ですけど…大丈夫ですか? 」
「 …別に…感じる必要ないんですよ… 」
「 え?なんですか?良く聞こえませんけど…? 」
「 何でもありませんっ!! 」
彼女の大きな声が凛、と響いた。
数十秒、無言の時間が過ぎたあと、最上さんが小さく記者に約束を求める。
「 何でもないですけど…あの、これは内緒にして下さいね? 」
「 え?はい、もちろんですよ。なんですか? 」
それから数秒、また最上さんが口を閉じて
一度顔を背けてから周囲を見回し、また記者に視線を戻した。
「 敦賀さんと二人きりの時に身の危険を感じた事は一度もありません。人によって違うと思いますけど…。あの…少なくとも私は、何されてもいいって思える男性とじゃなきゃ、二人きりで一晩を過ごすなんて絶対に出来ないです。だから別に…身の危険、なんて… 」
耳に届いたそのセリフに思わず目を見開いた。
同じように驚いたんだろう記者が戸惑いの声を上げる。
「 え…??…っと、それって…? 」
「 内緒!!内緒ですっ!!絶対、誰にも内緒にして下さいね! 」
そう言って、何度も内緒を求める最上さんの声が俺の耳にも届いて
いま彼女はどんな顔をしているんだろうって知りたくなって、物陰からそっと目を凝らして二人の姿を覗き見た。
変わらず後ろ姿しか見えなかったけれど
ここからでもハッキリ判るほど最上さんの耳が赤い。
その様子に自然と自分の頬が弛んで、小さく彼女の名を呟いた。
「 ちょっと…最上さん…本当に…? 」
信じられないほど嬉しくて、心臓を掴まれてるみたいだった。
だけど、なんでそんな大事なこと
俺じゃなくて記者なんかに言っちゃうのかなって
これ以上ないぐらい頬の筋肉をゆるめながら
右手で自分の口元を覆い隠して
そして静かに物陰から歩みを進めた。
―――――― これは俺、相当やばい…
どうやらかなり、嬉しかったらしい
諦めきれなかった分、その反動で喜びが何倍にも膨れている気がする
「 ……!!? 」
職業的なものなのか、俺の気配を察知して反射的に顔を上げたBOOSTの記者が、俺の顔を見てすぐ事情を察した。
目配せをすると小さく頷くのが見えた。
「 京子さん、了解です。今のは内緒…ですね 」
「 そう!!絶対、絶対、内緒ですっ!! 」
「 はい、解りました 」
それじゃあ、と言って頭を下げて、そそくさと去っていく記者の後姿を見送った最上さんは、腕時計を確認して驚いた悲鳴を上げる。
「 やだ、嘘でしょ?なんでこんな時間にっ!もしかしたら心配しているかもだわ 」
……そう言えば、社さんに現場を追い出されてからどれだけ時間が過ぎただろう?
最上さんの言う通り、戻ってこない事を心配しているかもしれない。
けれど、だからってすぐ戻る気にはなれなかった。
すみません、社さん。
俺、もうこれ以上、タイミングを外す気は無いんです。
走り出した彼女を追いかけ、俺もまた走り出した。
どれだけ緩んだ顔になっていようともう、構う必要なんてどこにもない。
「 最上さん、こっちだよ 」
「 え?あっ!!敦賀さん 」
彼女に追いつく直前に、俺にだけ聞こえる様にBOOSTの記者が言葉を投げた。
そのセリフに口元を緩め、彼女の方から視線を外し、一度だけ目配せを返す。
―――――― 敦賀さん、特ダネ許可、待っていますね
そりゃあ、もちろん。
色々とお世話になっちゃったし?
だけどその時は一切の捏造は避けてもらおう。
「 すみません…。もしかしたらわざわざ迎えに来て下さったんですか? 」
「 そう。社さんに言われてね 」
「 本当にすみません~!! 」
「 いいよ、会えたんだから。ところで最上さん…? 」
「 はい? 」
俺の呼びかけに反応して、俺を見上げてピンク色に染まる頬。
君がそんな風に思ってくれていただなんて、まさか想像もしなかった。
「 俺、いま君に教えて欲しい事があるんだけど 」
――――――― ねぇ?
君がいま、誰にも内緒と言って口にしたその告白
今度は俺の前でだけ聞かせてくれる?
そうしたら
その告白のお礼に今度は俺が告白するから
ずっと、諌めて来た自分の気持ちを
ずっと抑え込んできた本当の想いを
「 はい。何ですか? 」
そして、君へと向かうこの気持ちの深さを
何度も湧き上がった衝動を
数えきれないほど押し殺してきたことも
それは君に嫌われたくなかったからだって、全部、君に白状するから
「 いまの内緒話、俺にも教えて? 」
「 !?……っ!!!! 」
「 こら、逃げない! 」
正直に、告白するよ。
本当はもう、ずっと
君をどうにかしたくてたまらなかった…って事も
E N D
無事、完結です♡いやー、長かったわ(笑)
ちなみに前回、唯一、尚sideが出てきましたが、最終話を読んでその理由を察した方は多い…と想像いたします。つまり、このBOOSTの記者を違和感なく登場させたかっただけなのです。
他にもっといい記者さんが居れば良かったんですけどねー。セリフ回しにギャップ…というか不自然さを感じるかも知れませんが、もうそれは流して下さいマセ(。-人-。)
原作に登場した記者さんっってこの方ぐらいですよねー?仕方ない、仕方ない( ̄▽ ̄)そして蓮サマ、オメデトー♪
最後までお付き合い頂きまして有難うございました!この場を借りて厚くお礼申し上げます。
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