2015年11月21日16:00
我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案
第189国会 内閣提出法案第七十二号
平和安保法制その9
米軍行動関連措置法の改正
海上輸送規制法の改正
捕虜取扱い法の改正
国民保護法
特定公共施設利用法の改正
国家安全保障会議設置法(NSC設置法)の改正
1. 米軍行動関連措置法の改正
この法律は、武力攻撃事態等において、日米安保条約に従って我が国に対する武力攻撃を排除するために必要な米軍の行動を自衛隊が支援するための措置について規定している。
改正ポイントは、武力攻撃事態等における米軍以外の外国軍隊に対する支援もよしとすること。存立危機事態における外国軍隊に対する支援に関する規定を追加することである。
武力攻撃事態とは、武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態である。
存立危機事態とは、我が国と密接な関係がある国が攻撃され、そのまま放置すれば、日本が直接攻撃された場合と同様の、日本の存立や国民の生命等守れない死活的かつ深刻な事態であり、法案では、他に手段がないばあい、必要最小限の武力行使(限定的な集団的自衛権)が可能としている。
山本太郎参議院議員が、日本はいまだにアメリカの属国なんですかと質問した。政府は答えられないが、まさにその通りである。その通りであるから敗戦国たる日本は、それに従わざるを得ないのであり、アメリカの要求通りに、あるいはアメリカを利する法律がこのようにしてできるのである。そこには何ら筋違いなことはないのであって、ただそれを正直に政府は言えないだけなのである。
日本は建国以来、二度の世界大戦時代も含めて一度たりとも植民地となった経験がないと言われるが、1945年以降はそうではないということだ。この法案に賛成するものが、結局は自国の独立を否定し、法案に反対するものが自国の独立を肯定していることに結果的になっているのである。そして自国の独立を否定することがアメリカに守られた平和を意味し、独立を肯定することはアメリカに守られずに戦火の中に入りやすいことを示している。したがってどちらが本当に平和を実現できるのかという争いでもある。だから永遠にこの議論は平行線をたどるのだ。
2. 海上輸送規制法の改正
この法律は、武力攻撃事態に際して、我が国に対して武力攻撃を行っている外国の軍隊等へ向けた武器、弾薬、兵員等(外国軍用品等)の海上輸送を規制するため、海上自衛隊が実施する停船検査、回航措置の手続等を規定している。
改正のポイントは、存立危機事態においても適用するための規定を追加し、 実施海域を、我が国領海、外国の領海(同意がある場合に限る)又は公海とする。これにより周辺事態から重要影響事態にも対応できるようにするものである。
3. 捕虜取扱い法の改正
この法律は、武力攻撃事態における捕虜等の拘束、抑留その他の取扱いに必要な事項を定め、捕虜等の取扱いに係る国際人道法の的確な実施を確保するものであり、存立危機事態においても適用するための規定を追加するものである。
4. 国民保護法
この法律は、我が国に対する武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護するための態勢を整備し、国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するためのものであり、我が国への直接攻撃や物理的な被害から国民を守るという観点からは必要な体制を整備されているとして改正はない。
5. 特定公共施設利用法の改正
この法律は、武力攻撃事態等における地方自治体等の国民保護措置と自衛隊・米軍の侵害排除のための特定公共施設等の利用を調整するものであり、地方自治体等が管理する港湾、飛行場などを自衛隊が利用可能とする。改正で、武力攻撃事態等における米軍以外の外国軍隊の行動を利用調整の対象に追加するものである。
自衛隊は軍隊ではないとの流れから、日本には捕虜取扱い法がなかった。これが作られたのは平成16年であった。この法律がないと自衛隊員は軍人ではないということであるから、捕虜にされて殺されても国際人道法に違反しない。だが捕虜の規定を国内に設けたことにより自衛隊員が捕虜になった際の取り扱いは保障されたものとなった。今回の改正では、存立危機事態においても適用するための規定を追加する念のためであるが、それならば先の自衛隊法第三条でわざわざ、直接侵略と間接侵略を削る意味がわからない。念のためにこのような捕虜取扱い法改正をするのであれば自衛隊法第三条の改正はいらないはずである。
6. 国家安全保障会議設置法(NSC設置法)の改正
審議事項として、新たに以下のものを定める。
●存立危機事態への対処
●重要影響事態への対処
●国際平和共同対処事態への対処
以下に関するものは、必ず審議しなければならない事項とする。
●国際平和協力業務であっていわゆる安全確保業務の実施に係る実施計画の決定及び変更
●国際平和協力業務であっていわゆる駆け付け警護の実施に係る実施計画の決定及び変更
●国際連合平和維持活動に参加する各国の部隊により実施される業務の統括業務に従事するための自衛官(司令官等)の国際連合への派遣
●在外邦人の警護・救出等の保護措置の実施
(※)いずれも領域国等の受入れ同意の安定的維持等に係るもの
附則により技術的な改正を行う法律の一覧
① 道路交通法
② 国際機関等に派遣される防衛省の職員の処遇等に関する法律
③ 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律
④ 武力紛争の際の文化財の保護に関する法律
⑤ 原子力規制委員会設置法
⑥ 行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
⑦ サイバーセキュリティ基本法
⑧ 防衛省設置法
⑨ 内閣府設置法
⑩ 復興庁設置法
国家安全保障会議で審議される内容は、国防にとって重要なものであるから賛成する。
これにて、「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」の全てを紹介終了。以下総括。
法案審議の運営、自信のない答弁、質問には答えず別の話をする大臣の数々、不合理な理屈ばかり並べる政府においては、国民のほとんどが不信となるのは当然である。これでは集団的自衛権を認める人々ですら反対せざるを得なくなり、そして出来上がった法律は不備だらけで、この法律により出動する自衛官はたまったものではない。したがってこの全体法について反対する。
次は最終回であり、別個の法案となっている新法の国際平和支援法案である。
目次
平和安保法制その8/189-閣72 事態対処法改正による自…