その日、王妃のサロンは、異様な熱気に満たされていた。

 占いによって選ばれた、コリドラス・エネウスの『足指の祈願式』当日である。多くの人が入れるように、と、調度のたぐいがすべて運び出された室内には、祈願式実行の刻限よりずっと早くに、すでに物見高い貴婦人たちが詰めかけている。

 室の真ん中には、エネウスが祈願を行うために、一段高く舞台のようにしつらえられている。見物人たちは、舞台のまわりを、囲むように並ばされている格好だ。これから始まる秘術について、貴婦人たちは好奇心いっぱいにおしゃべりをかわしている。

「今日はいったいなにがありますの?」

「あらいやだ、ご存知ないの?」

「なんでも、ロスマリン様がお教えになられたおまじないを。エネウス様がおやりになるんですって」

「おみ足のお指をお鼻の穴にお入れになるんですって」

「んまぁあ!」

 ……そもそも、エネウスから『足指の秘術』について相談を受けた王妃メルルーサが、できるかぎりたくさんの「応援」を集めてエネウスのまじないの効力を高めるために、今日の祈願式を催したのだが、目的を知らぬまま集った貴婦人もいるようである。

 かくしてにぎわうサロンの片隅に、濃緑色の天鵞絨で仕立てた飾り気のない宮廷服を身にまとった青年が、誰からも遠巻きにされて立っていた。

 体つきはやや小柄、茶色の瞳に茶色の髪。顔立ちは華やかではないが、ひとつひとつの部位が、それぞれ控えめに整っている。なかなか見目良い青年だ。

 しかし……せっかくの見目の良さを、表情が台無しにしている。

 焦点の定まらない双眸。色を失った唇。顔も青白く、目の下にはうっすら、紫色の隈がういている。

 思わず「どこか具合でも悪いの? しっかりして!」と、肩を揺さぶって言いたくなってしまうような、生気のないこの青年の、名を、シクラソマ・セヴェラムという。マエストロ・ポポンデッタの高弟にして、新進のヴァイオリニストである。よくよく見ると腕にヴァイオリンと弓とを抱いている。

 誰からも遠巻きにされているのは、虚ろな表情のせいもあったが、なにより彼の放つ異様な雰囲気のせいだった。地味に整った顔を引きつらせて、さっきからひとつ言葉ばかりをつぶやき続けているのだ。

「……なんとかしなきゃ……なんとかしなきゃ……」

 呪文のように、シクラソマ・セヴェラムは繰り返していた。

「なんとかしなきゃ……ああなんとか……なんとか、なんとか……なんとか……」

 セヴェラムは目をギュっと閉じた。





「ええええっ!? いまから大至急で新曲を作って、今日のお昼には演奏しろ!? いったいなんのご冗談ですか!?」

 驚きのあまり、椅子から転げ落ちそうになったセヴェラムを

「大声を出すな、騒々しい。近所迷惑だろう、非常識な」

 マエストロ・ポポンデッタが、常識人らしく一喝した。

 本日の朝まだき。日も明けきらない時分のことである。

 ニワトリも目覚めないような非常識な刻限に弟子の住居を急襲した師匠ポポンデッタは、ほのかに着崩れた夜会服姿。ゆうべを共に過ごしたどこやらのご婦人の名残だろう、きらめく髪粉を、上衣の衿につけている。寝ぼけ眼のセヴェラムがあわてて出した茶を一口飲んで

「まずい」

 顔をしかめた。

「湯が充分に沸き立つまえに茶葉を入れたのではないのかね、セヴェラム。味が薄いぞ」

「……マエストロ……」

「淹れなおしだ。偉大な芸術家となるには、万事におこたりなく気を配れねばならぬ。茶の淹れ方ひとつおろそかにしてはならないと……いつも言っているだろうに」

「マエストロ」

「つぎはミルクは入れてないで持ってきてくれたまえ。口をさっぱりとさせたいのだ」

「マエストロ!」

 セヴェラムは椅子を蹴って立ち上がった。

「……なんだね、シクラソマ・セヴェラム」

 マエストロ・ポポンデッタは、目だけで弟子を見あげた。

「……うっ……」

 師の眼光に気おされながら、セヴェラムは口を開いた。

「マエストロ、さ、さきほどおっしゃられたこと……ご冗談ですよね。今日の昼までに新曲を書き上げて、王妃様のサロンで演奏しろだなんて。王妃様から、そんな無茶苦茶なご下命を伝えるように頼まれていらしたなんて。僕をからかって、驚かせて、面白がっておられるだけですよね……?」

「そう思うなら、今日は王宮には伺候せぬがよかろう。私は一向にかまわんよ」

 ポポンデッタはすまして言った。セヴェラムの顔から一気に血の気が失せた。

「……冗談じゃ、ないんですね……」

 へなへなと椅子に倒れこむ。ポポンデッタは鼻を鳴らした。

「新曲に望まれる条件を教えておく。曲調は明るく勇壮に、かつ華やかであること。リズムはできるだけ単純で、力強いことが好ましい。聴衆のご婦人方が、手拍子で盛り上げられるようにな。おまえがよく曲に使う、飾り音や変拍子などは、今回は使わないほうがいいだろう。手拍子が乱れやすい」

「……手拍子?」

「序章から終章まで構築された本格的な楽曲は、今回は望まれていない。演奏時間がどれほどの長さになるかわからないからな。用意するべきなのは覚えやすくわかりやすい短いメロディがひとつだ。聴衆が飽きないように、演奏しながら、少しずつ味わいを変えていけばいい」

「ちょ、ちょっと待ってくださいマエストロ! 演奏時間が決まっていない? 手拍子? いったいなんの話です。村祭りで旅楽師がやっつけに奏でるような曲を、王妃様のサロンで演奏して来いとおっしゃるのですか!」

 セヴェラムは噛みつくように言った。ポポンデッタは、

「ほう」

 目を瞬いた。

「おまえにしてはなかなか、いいことを言うじゃないか、セヴェラム。旅楽師の村祭り。まさにそれこそが求められている音楽だ。私の助言はこれ以上いらないようだな。話が終わったところで、さあ、茶を淹れなおしてきたまえ」

「できませんっ」

「なんと。茶を淹れなおすのは嫌だというのかね」

「そちらではありません! 旅楽師のような工夫のないメロディを、適当に和弦と組み合わせて、曲想も練りあげず、即興で曲を作るなんていい加減な音楽は、僕にはできないと申し上げたんです……っ」

 セヴェラムは肩で息をした。こぶしを握り締めて言った。

「……日が昇ったら、すぐにも王宮に出かけて、王妃様にお願い申し上げます。新曲披露を、せめて明日に繰り延べていただけるように。やっつけで作ったような曲を僕が演奏したら、僕に目をかけてくださっている王妃様のお名前にまで傷がついてしまう。いい曲を産みだすためには充分に準備の日取りが必要なのです。王妃様は芸術にご理解のある方、心からお願いすれば、きっと……きっとわかってくださいます!」

「それはどうかな」

 ポポンデッタは悪戯っぽく笑った。

「芸術のありようについてご理解いただけるかどうかは知らんが、日延べについては確実にお聞き届けくださらんだろうと思うぞ。なぜって、私がメルルーサ様からおまえへの伝言を預けられたのは、十日ばかり前のことだからな」

「えええええええっ、と、と、とととととと、十日前えええええ!?」

 セヴェラムは目を剥いた。

 驚きのあまりつぎの言葉がうまく出てこない。

「な、ななな、なんで、と、十日もまえのご、ご下命を、ずっと、伝えずに、い、いまごろ……っ」

「決まっている。そのほうが面白そうだったからだ」

「お、おおおおおお、面白そうぅ!?」

 セヴェラムの声が裏返る。ポポンデッタは片頬で笑んだ。

「いい加減な即興演奏などできないとおまえは言うが、音楽の魂は瞬間にこそ宿るもの。準備した楽譜どおりに弾けるだけでは音楽家として大成できぬ。せっかくの機会だ、場の空気を読んで、あたう限りの興を尽くしていい加減に弾いてくるがいい。多少の失敗など気にすることはないさ。今日、メルルーサ様のサロンに、おまえの演奏を聴きに来る人間なぞひとりもいはしないから」

「……はああああああ!?」

 たったいま、昼には王妃のサロンで演奏して来いと言っておきながら、辻褄の合わないポポンデッタの言葉に、セヴェラムはまたしても、失神寸前になる。





 そしていま、師の言葉の正しさを、めまいがするほどかみ締めながら、シクラソマ・セヴェラムは人垣の前に立っている。

 たしかに、いま、このサロンに、セヴェラムの音楽を聴きにきている人はいない。誰ひとり。

 いよいよ祈願式が始まる。……昼だ。

 ずっと部屋の隅っこでひっそりしていたかったのだが、許されず、部屋の真ん中にしつらえられた壇上に、セヴェラムもまた引っ張り上げられていた。……とはいえ、壇上でも、結局は隅っこでひっそり立っていたのだが。

 祈願式に集う貴人たちの視線は、壇上中央に立っている本日の主役、近衛隊長コリドラス・エネウスに集中している。いよいよの本番に気合が入っているのだろう、わずかに頬を紅潮させ、唇を引き結んだ、真剣極まりない顔をしている。

 エネウスの傍らに寄り添うように、王妃メルルーサが立っていた。

「お友だちのみなさま、今日は集ってくれて、どうもありがとう」

 メルルーサは鷹揚に言った。

「これより、コリドラス公爵マイヤシー様に姫君誕生を祈って、コリドラス・エネウスが、願掛けの術を行います。エネウスが、無事に術に成功するよう、そして、エネウスの祈願が成就するよう、ぜひにも応援をよろしくお願いいたします。お声を出していただいたり、手拍子をしていただいたり、応援のお歌を歌っていただいてもよろしいわ。たくさんの方に応援していただければしていただくだけ、祈願成就は確かなものになるそうですの」

 メルルーサの口ぶりが重々しくなる。

「グレイル王統の一員たるコリドラス家に姫が恵まれれば、いま、いつわりの名宣りをあげている者も、追われることになるでしょう。グレイルの正しい未来のためにも重要な祈願式です。みなみなさま、真剣に応援に取り組んでください」

 言葉を切って、王妃はエネウスを振り向いた。

「エネウス、今日のあなたのまじないを上手くいくように、セヴェラムに曲を創らせました。演奏を聴きながら励むといいわ」

「おお! なんとお優しいお心遣い、ありがとうございますメルルーサ様! セヴェラム殿も!」

 エネウスは顔を輝かせて王妃を見、セヴェラムを見た。心からの感謝に満ちた目で見つめられて

「い、いえ……」

 セヴェラムは身を硬くする。

「それでは、エネウス、頑張るのですよ」

 エネウスの腕を軽く叩いて激励し、メルルーサは壇上から降りていった。コリドラス・エネウスは表情を一転、凛々しく引き締めると、一歩前に進み出た。

「それでは、早速、失礼つかまつります!」

 両足とも長靴を脱ぎ捨て、エネウスは壇上にあぐらをかいた。

「ふんぬーッ」

 裂帛の気合がサロンに響き渡る!!!

 エネウスは、片足を両手でつかみ、身を屈めて足先に顔を近づけた。観衆たちから、割れるような拍手が起こった。拍手は、まもなく一律の手拍子に変じる。

「がん・ばっ・て! がん・ばっ・て!」

 いつのまにか、手拍子に合わせて掛け声まではじまっていた。じつに……自然発生的に。





――まずい、出遅れた!

 セヴェラムは顔面蒼白にして立ちすくんでいた。

「ひとつの短い旋律を、繰り返し、雰囲気を変えて演奏すればなんとか場はしのげる」という師匠の忠告に、はじめは反発したものの、結局ほかに手だても考えられずに、とりあえずの旋律を用意してきたセヴェラムである。

 エネウスが術を始めようとしたのと同時に、いちどはヴァイオリンに弓をあてたのだが、まずはじめの気合の声に驚いて、うっかり弓を外してしまった。

 演奏を始めるきっかけをつかめないでいるうちに……手拍子がはじまってしまった。

 用意してきた旋律では、手拍子と譜割があわない。

――どうしよう……っ。

 気ばかりあせって身体は動かない。パニックで気が遠くなってきた、そのときだった。

「なにをしているのですか、セヴェラム。早く応援演奏を始めなさい」

 王妃メルルーサの、叱責の声が届いた。

「は、はいっ、申し訳ございませんっ」

 あわてふためいてヴァイオリンに弓を当てる。あわてたあまり、心積もりの旋律とはまったく違う、ものすごくものすごく高い音が出てしまった。セヴェラムの全身から汗が噴出す。手拍子は止まらない。考えているヒマはない。

――ままよ!

 セヴェラムは手拍子に合わせて、闇雲に弓を動かした。思いもつかない旋律が現れる。超高音から曲が始まってしまったためか、異様に曲調が軽い。セヴェラムはもう泣きそうだ。勇壮な曲調がいいと言われて、そのとおりの旋律を用意してきたのに、いま弾いている、このメロディはなんだ。せわしなく飛び回る蜂の羽ばたきのようだ。どうにか勇壮な方向に曲調を変えようと、セヴェラムは少しずつ旋律の音程を下げてみた。拍子も、はじめの高音部より緊迫感を持って刻んでみる。貴婦人たちの手拍子は、セヴェラムの導くままについてくる。

「エネウス、おしっかり!」

 メルルーサが声をかけた。

「あ、あびがとござびまふっ」

 顔を真っ赤にし、全身を震わせながらも、いつも礼儀正しいコリドラス・エネウスは、主君の激励に感謝の言葉を口にした。歯を食いしばっているために、発音が不明瞭なのが、残念である。

 さすが鍛え上げた武人の身体、試みを始めてまもなく、エネウスの足の親指は、すぐに鼻先に触れるようになっていた。しかし、この秘術では鼻の穴に足の指を入れるのが肝要なため、親指が鼻に届くだけではダメなのだ! 

 やってみるとわかるのだが、ふつう足の親指は太いので、鼻の穴に入れるのは困難である。個々人の鼻の穴の大きさと伸縮性にもよるかとは思われるが。さらに、やってみればわかるのだが、親指以外の指を鼻にくっつけるのも、これまた人体の構造上困難である。両方困難で選択肢はふたつ。プランA「鼻の穴に頑張ってもらって親指をねじ込む」プランB「股のあたりに頑張ってもらって、足の第二指から第五指までの、細めの指を鼻に入れる」。

 エネウスが選択したのは、プランBのようだ。

 股とか膝とか足の甲とか足首とか、ギリギリと軋む音すら聞こえそうに震わせながら、足の中指を、すっきりとした鼻梁に近づけていく。

 エネウスの体に力を送り込むよう、セヴェラムは、メロディの中に、つぎつぎと力強い、低音の和弦を組み込み始めた。セヴェラムの思いにこたえるように、貴婦人たちの手拍子も、どんどん力強く、厚みを増して行く。

「むむっ。ふんんんーッッ むーッ!」

 エネウスが気合たっぷりの声を発した。

――あとちょっと、頑張ってください、エネウス様っっ。

 自然に湧き出した気持ちのままに、セヴェラムは大きく弓を動かす。出たとこ勝負ではじめてしまった単純な旋律は、手拍子を道連れに、テーマを繰り返すたびにしだいにゴージャスに、情熱的にと、盛り上がっていく。自らの旋律が、渦巻く手拍子を率いているかのような感覚。セヴェラムの全身に、震えが走る。

「ふんぬうううううっっ」

 エネウスの足の、中指が、とうとう、鼻の穴に、届いた。

 そのまま、穴の中に、エネウスは中指を押し込んでいく!

「おおおッッ」

 ついにの偉業達成に、応援する人々から歓声があがる。

「エネウス、願いがしっかりと天に届くまで、しばらく姿勢をキープなさい! 頑張って!」

 すかさず、メルルーサから声が飛んだ。メルルーサは集った者たちを振り返った。

「感心している場合ではありませんわ! いまよっ! みんな心をひとつにしてエネウスの願掛け成就をお祈りして!」

「は、はいっ」

「ぐふぅんんんんんんんッ」

 応援の人々は、それぞれ、真剣な表情で念じ始めた。エネウスも決死の形相だ。鼻の穴に指を押し込むのもたいへんであるが、それをキープするのもまた苦行なのである。エネウスの祈りを、ぜひとも天に届けんと、セヴェラムもヴァイオリンを通して祈る。低音から高音まで、一気に思いを捧げあげるかのようなフレーズ。光の矢のように芸術的歓喜がセヴェラムの全身を貫く!

「エネウス、みなさま、そろそろもうよろしいわ」

 メルルーサの声を合図に、サロンに、ほっとしたような吐息が広がる。演奏を終えた瞬間、身体を支える力を一気に失い、セヴェラムは壇上に膝をついた。

 いままで経験したことのない恍惚とした感覚の、残滓に、まだ、手が震えている。

――音楽の魂は瞬間にこそ宿るものだよ。

 皮肉に微笑む面影とともに、師の言葉が、セヴェラムの脳裏に蘇えった。





 極度の緊張感からも解放され、そのまま壇上で気を失いそうになったセヴェラムだったが

「エネウス! エネウス! どうしたのですか!」

 メルルーサの金切り声で、ハッと正気に戻った。

「いかがなさいましたか、メルルーサ様。……うっ」

 立ち上がって振り向いて、言葉を失う。

 純白の近衛隊の礼服と、裏腹に、真っ赤な顔をして……

 祈願なったはずのコリドラス・エネウスが、まだ鼻の穴に中指を突っ込んだ体勢のまま、壇上に、唸りながら横たわっていた。

 急いで近寄る。

「エネウス様っ、エネウス様っ! 祈願は終わりました! もう、お鼻の穴からおみ足のお指を抜かれてもいいんですよ!」

 声をかけながら抱き起こそうとすると、

「ぐふわああああッ」

 エネウスが奇声を発した。

「も、申し訳ありませんっ」

 あわてて手を放すセヴェラム。荒い息の下から、エネウスは、途切れ途切れに言葉を発した。

「す……す、すみません……ま、股が外れて……ゆ、指が……指が……鼻から、抜けなくなったようです……」

「えええええええっ」

「ううっ、くっ、ど、どなたか、……大聖堂から……ヒーラーの……先生を……呼んで……うううううッ」

「ああ、エネウス様、しっかりしてっ」

 外れた股の痛みと、また、片方の鼻の穴がふさがっているがゆえの息苦しさのせいだろう、真っ赤だったエネウスの顔面は、しだいに紫色を帯びてきて、額にはじっとり脂汗が滲んでいる。変事を察し、駆けつけてきた眼鏡をかけた侍女に、セヴェラムは、ヴァイオリンと弓を押し付けた。

「大急ぎで大聖堂からセレベス先生を呼んできます! エネウス様はこのまま、動かさないで! 誰かに冷たい水ときれいな布を持ってこさせて、汗を拭いて、励まして差し上げてください!」

「は、はい……っ かしこまりました!」

 眼鏡の侍女がこくこくと頷く。セヴェラムは壇上から飛び降りた。

 血相変えたセヴェラムの勢いに、気おされて貴族たちは道をあける。

「エネウス様、待っていてください!」

 いままでの人生でいちばんの全力疾走で、セヴェラムは大聖堂を目指した。




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このつぎの《女神様にお願い》

 ……第5話・女神様にお願い


いままでの《女神様にお願い》

 ……前置き

 ……第0話・遠い時代、遠い場所で

 ……第1話・グラミー先生にお願い

 ……第2話・王妃様にお願い  
……第1.5話・レンカク男爵にお願い  
 ……第3話・聖獣様にお願い  
 ……第2.5話・ロスマリン先生にお願い  

 ……第3.5話・マエストロにお願い



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