「被害最大は夕方6時の東京湾北部地震」


M7.3風連15m/s


一首都直下地震対策専門調査会の地震ワーキンググループは、首都を襲う「地震動」として、1 8のタイプを想定している。


それぞれに震央(震源の真上にある地表の点)付近の地名がその名称に入り、想定震度は以下のようになっているo


東京湾北部地震(M7.3)、

都心東部直下地震(M6.9)、

都心西部直下地震(M6.9)、

さいたま市直下地震(M6.9)、

千葉市直下地震(M6.9)、

川崎市直下地震(M6.9)、

横浜市直下地震(M6.9)


立川市直下地震(M6.9)、

羽田直下地震(M6.9)


市原市直下地震(M6.9)、

成田直下地震(M6.9)、

関東平野北西緑断層帯地震(M7.2)、

立川断層帯地震(M7.3)、

伊勢原断層帯地震(M7.0)、

神縄・国府津-栓田断層帯地震(M7.5)、

三浦断層群地震(M7.2)、

プレー-境界茨城県南部地震(M7.3)、

プレート境界多摩地震(M7.3)


ただし、これら18タイプを選定する際には、よく知られている大正の関東大地震(大震災、1923年)のようなM8クラスの巨大地震は除外している。


地震の発生間隔が約>200-300年とされるタイプで、関東大地震の前に起きた同クラスの巨大地震は-NOM年に発生した元禄地震だった。


つまり、今後100年以内に発生する可能性はほとんどないため、このタイプをも防災的観点から対象にするのほ現実的ではないと判断したためだ。


そのうえで'歴史的にみて、地震規模がM6以上で'南関東において西暦1600年以降に発生した地震

を参考にしている。

そして震源が、「地殻内の浅い地震」、次いで浅い震源の「フィ-ピソ海プレ1-と北米プレートとの境界」、震源の深さとしてはもっとも深い 「フィ-ピソ海プレート内の地震」というパターンのものを抽出した結果、地震発生の蓋然性が比較的高い、つまり、「ある程度の切迫性が高いと考えられる」とか「近い将来発生の可能性が否定できない」とい-意味で、都心部または都心部周辺で発生しうる1 8タイプの地震動を「想定地震」として選定している。
 
もちろんこれは18タイプの地震が連続的に発生するという意味ではないし、発生確率爪盲同いものばかりを選定したわけでもない0

あくまでも、この場所で揺れが発生すれば'これぐらいは揺れるだろうという地震動の面からの地震選定だ。

ところで、この 「地震動」とは、地表の揺れの強さを意味する言葉だが、これは地震規模の大きさと震源までの距離で左右される。

マグニチュード的には大きくても震源がはるかに深ければ揺れによる地表での影響は少な-てすむ。

しかし、地震のエネルギーは小さくてもう震源が浅ければ、地表には深刻な被害をもたらしかねない。
だから、首都圏から離れた周辺地域での地震なら、首都放能に直接的なダメージを与える度合いは少ないものの、首都周辺地域の中核都市にダメ-シを与え、首都機能を支える交通網やライフライソ'石油コンビナ-トなどに多大な被害を与える。

もちろん、都心部直下での地震では、首都機能そのものに直接的なダメージを与えるということになる。

そのため防災的観点から'18タイプすべての地震の震度分布(M7以上の活断層、プレート境界の地震、M6.9の直下地震の震度分布) を関東地方の地図上に重ね合わせ、各地点の最大の震度を採るという手法が取られた。

こうして作成されたのが、予防対策用震度分布図である。

都心部などは特に細かな訓mメッシュで作られ、予防対策上として、1 8の-ちのどのタイプの地震が発生しても包含された防災計画が立てられるようにしたわけである。

地震ワーキンググループが、2004年11月に公表した報告内容は衝撃的なものだった。


18タイプのうちで'フィ-ピン海プレ-トと北米プレ-トとの境界で発生する「東京湾北部地震(M7.3)」を'地震発生の蓋然性としてほ最警戒ランクを意味する「ある程度の切迫性が高いと考えられる」地震と位置づけ、なおかつ首都機能が集積された場所に与える影響度合いとしても、最警戒ランクの地震としていたからである。


ちなみに、東京湾北部地震とほぼ同格の警戒度合いに扱っているのは'フィリピン海プレートと北米プレートとの境界で起きる「プレート境界茨城県南部地震」と「プレ-ト境界多摩地震」だ。


首都直下地震対策専門調査会(座長/伊藤滋氏・㈲都市防災研究所会長) では'こうした分析データに基づいて順次、「人命・生活」「経済・産業」「政治・行政」という三つのカテゴリーごとに、あらゆる分野も観点から被害想定の検討作業をした。


そして、人の生死や資産喪失の有無に関わる直接的な被害(物的被害・人的被害)を定量的に推計した「直接的被害想定結果」が2004年1 2月1 5日に、そして2005年2月2 5日には、人流・物流寸断の影響額なども推計対象にした「経済被害」まで含めての'結論的な「被害想定結果」が報告された。


被害想定の上で対象とされた項目は、実に多様多岐にわたる。


このこと自体からも、地震災害は、一般的な風水害などとは比べようもな-広範囲に及ぶことが理解できよう。


以下が、そのすべての項目である。


■物的被害の部


①建物被害では'揺れによる被害、液状化による被害、急傾斜地崩壊による被害

②地震火災出火・延焼
③ブロック塀・自動販売機等の転倒、屋外落下物の発生
④震災廃棄物の発生
⑤交通施設被害
⑥ライフライン施設被害による供給支障では、電力設備被害、通信設備被害、ガス設備被害、上水道設備被害も 下水道設備被害


■人的被害の部


⑦死傷者の発生では、建物倒壊、屋内収容物移動・転倒、急傾斜地崩壊、火災被害、ブロック塀等の転倒・屋外落下物、交通被害、その他

⑧災害時要援護者の被災
⑨自力脱出困難者の発生
⑲帰宅困難者の発生
⑭避難者の発生


■その他


⑲その他の被災シナリオでは、中高層ビル街被災、石油コンビナ-ト地区被災、大規模集客施設等の被災へ地下街の被災、ターミナル駅・地下鉄駅の被災、その他鵜経済被害の部


⑲施設・資産の損傷額では'住宅・オフィス・家財・償却資産・在庫資産、ライフライン施設、交通基盤施設

⑲大洗・物流寸断の影響額

⑮経済被害の波及 


また、被害想定を推計するのに不可欠の地震発生の想定シーンは4設定を選んだ。


シーン①は阪神大震災と同じ「冬の午前5時」、

シーン②ほ通勤・通学ラッシュ時で移動中の被災者がもっとも多-なる時間帯と予想される「秋の午前8時」も 

シーン③が関東大震災と同じ発生時間帯の 「夏の昼1 2時」、

シーン④は住宅も飲食店などで火気器具利用のもっとも多い時間帯で、これらを原因とする出火数が多くなる「冬の午後時」 である。


さらに、火災延焼状況が大き-左右される。


地震発生時の風速についても2種類のシーンを加えた0


比較的風が弱かったとされる阪神大震災並みの風速3m/sと、風が強かった関東大震災並みの風速15m/sである。


基本シーン4設定に加え、2種類の風速を阻み合わせた全8パターンについてへ 先の各項目ごとに想定し、すべての推計作業を行ったわけである。


こうすることで、1 8タイプそれぞれの地震では被害想定上'最大と最小の値が得られることとなり、1 8タイプすべての値を比較することによって、全体での最大と最小が判明することとなる。


その結果、すべての地震動においても被害が最大となったのほ、「冬の夕方6時の時間帯で、風速が15m/S」 での想定であった。


次ページの表は、各地震動での 「建物被害(全倒壊および焼失する棟数)」と「死者数」 の一覧である。



 


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  3. 巨大地震と地震雲-4
  4. 巨大地震と地震雲-5
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