特急電車が凄いスピードで通過してゆく。

 ホームの椅子に座っていた二見は、次の特急が来たら飛び込もうと思っていた。 

 そう思いながら、もう何本目の特急通過を見守ったことか。

「もう俺は、天涯孤独の身なので、飛び込んでも迷惑をかける奴はいない」

 そこは気が楽なのだが、いざ死ぬとなると、なかなか勇気がでない。

 四十路を超えた二見は、、これまでなにをやってもうまくいった試がなかった。

 二度目の結婚と四度目の職場を一気に失ってからというもの、なにをする気力もなく両親の世話になっていたが、その親も、二見を見捨てるかのように、相次いで旅立ってしまった。

 両親が残してくれたわずかな蓄えでここ一年凌いできたが、それも底を突いた。

 今さら、働く清くを失ってしまった二見は、死に場所を求めてさ迷い歩いた。

 首を括る勇気も、高い場所から飛び降りる勇気も出なかった。

 電車に飛び込めば、あっという間に死ねるかも。

 そう思って、頻繁に特急が通過する駅を選んで来たのだが、やはり勇気が出ない。

 次の特急が通過するとのアナウンスが流れた。

 二見が席を立ち、ホームの端へと歩いていく。

 今度こそ、絶対に飛び込んでやる。そう思って歩を進めたのだが、特急の車両を見たとき、二見の腰が抜けた。そのまま、ホームにへたり込んだ。

 通過する特急を呆然と見送る二見の瞳には、死への恐怖が宿っていた。

 これからどうするかはわからないが、もう自分が死のうと思うことはないだろうと思いながら、二見は立ち上がった。

 

 

 

 

 

真実の恋?(現在連載中)

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恋と夜景とお芝居と

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絆・猫が変えてくれた人生

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小さな命が織りなす、男の成長と再生の物語。

 

プリティドール 

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