昇は、通学路に貼ってあるポスターのイラストに魅入られて、学校の帰りに、毎日飽きもせず長時間眺めていた。

 それは、横断舗装を親子三人仲良く手を繋いで渡っている、ほのぼのとした絵だ。

 昇の両親は、昇が小学校に入学したときに離婚した。二年前のことだ。

 昇は母親に引き取られ、それ以降、一度も父親の顔を見ていない。

 母親は、昇を育てるためにパートを掛け持ちし、毎日帰りが遅い。

 兄弟のいない昇は、母親が出掛けに作っておいてくれた夕食を摂るか、ご飯を作っていない日は、食卓の上に置いてあるお金を握り締めてコンビニに行く。

 いずれにせよ、一人ぽっちの夕飯だ。

 離婚する前から両親は不仲だったので、昇には、家族三人でどこかへ出かけたなんていう楽しい思い出はない。

 だから、ポスターの親子が羨ましくて仕方がないのだ。

 ある日、昇の姿が消えた。母親が半狂乱で探し回ったが、どこにも昇は見つからず、警察に捜索願いを出して動いてもらっても同じだった。

 そのまま、昇の姿は消えてしまった。

「おや、このポスターの子供の顔、変わったんじゃないか」

 ある日、ふと気付いた子供が、ポスターを指さして友達に言った。

「そうかな、あまり見たことないから、わからないや」

 友達が、興味なさそうに答える。

 両親に両手を繋がれた子供の顔は、どことなく昇の面影があった。

 

 

 

 

 

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