金田伊功「とっても!ラッキーマン」
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【このコンテンツは批評目的による八代亜紀氏、ガモウひろし氏、佐瀬寿一氏、矢野立美氏の音楽からの引用が含まれています。音楽の著作権は著作権者に帰するものです。また、個人的耳コピのため音楽的には間違った解釈である可能性もありますが、故意に著作権者の音楽の価値を低めようとするものではありません。著作権者主体者の権利、音楽の美学を侵害した場合このページに限り、いかなる修正・削除要請にも応じますので、ご教授ください】 久しぶりに。そして真打ち登場。 リズム感が卓越したアニメーション! ブログを始めてからずっとこれを採り上げたく、巷のビデオ屋を徘徊していた。リアルタイム放映時に何度かビデオに撮っていたが、なくなってしまい寂しい思いをしていた。 最近Cartoon Network にてまた再放送が再開したガモウひろし原作アニメ「とっても!ラッキーマン」。 中学一年生の長男が原作の大ファンで全話録画しているので、遅くなったがやっとのことで画像を取得。「リズム感が卓越したアニメーション」の最高傑作の一つであり、音楽と動画の幸せな融合を堪能できる、オープニング・アニメーションの金字塔だ。 古くからのアニメファンなら信じられないことだが、”あの”(キャラクターを我流以外には描けない)金田伊功先生がキャラクター・デザイン! そして、スタジオNo.1の盟友、鍋島修氏(参照 )が監督。そして歌うは、「ヘビメタさん」出演も感動的 だった、演歌の御大、八代亜紀。勿論、オープニング・アニメーションは金田伊功! もうこの共演だけでスゴイ。 では、できるだけ丹念にオープニングをみていこう。前振り部分は省略。八代亜紀の物悲しい声質全開で曲がスタート。 作詞:ガモウひろし 作曲:佐瀬寿一 編曲:矢野立美 うた:八代亜紀 アニメ:金田伊功
このカモメの動きが度肝を抜く。図1は、座っていたカモメが飛び上がる動き。台形になっている。図2は洋一からイモを奪い去る動き。三角形になっている。 金田氏は昔(70~80年代)から、一見複雑に見えるモノの動きを、三角形とか四角形とかに抽象化して見せるセンスが卓越していた。それが、「爆発の金田」と呼ばれたように、アニメの戦闘シーンなどでの炎、爆風、閃光の動きに象徴されていた。90年代になってそれは、人、動物の動きにまで見事に応用されたのだ。当時、「金田師匠はついにココまで来たか…」と心底ビックリしたものだ。
【I-2】
キーボードの旋律のイントロ。コード進行は Ⅰ-Ⅵm7-Ⅱm7-Ⅵm7-Ⅴ7 と循環コード(参照 )に、Ⅵm7を余計に入れたもの。アニメは図3で、タイトルがここで登場。ラッキーマンの嬉しそうな動きも、カラダ全体を使ってカクカクしてる。 【A】
ふかしイモを盗られて俯いて悲しそうな洋一が、歌詞につられてゆっくりと空を見上げる(図4)。やや右ななめに首を捻りながら見上げる動きで、それだからこその哀愁が表現される動きだ。この手法も金田氏が昔から得意としてきたものだ。そして、夫婦岩に上る太陽が、動き出し、タマゴとなって、洋一が変身したラッキーマン(実力はないが運だけがよい)が元気一杯に殻を破って登場(図5)。 曲はバース。コード進行は、1~7小節 Ⅰ-Ⅴ7-Ⅵm7-Ⅱm7-Ⅳ-Ⅴ7-Ⅰ で、これはパッヘルベルのカノン に同じ。7~8小節で、 Ⅰ-Ⅴ7-♭Ⅵ-♭Ⅶ7 とサブドミナントマイナー♭Ⅵ、♭Ⅶ7を挟む。サブドミナントマイナーは同主調転調から生み出されるものなので(参照 )、実はここで同主調Bマイナーに転調している。その流れで次の【B】にてBマイナーの平行調Dメジャーに転調する。 【B】
キーDメジャーで、1~4小節はⅠ-Ⅵm7-Ⅰ-Ⅴ7。ここでラッキーマンの仲間(?)、努力マン、スーパースターマンが登場。それぞれのキャラクターを象徴するようなポーズを取る。これも図形的だ。5~9小節、 Ⅳ-Ⅱ7-Ⅴ7 とドッペルドミナント(参照 )としてメジャー化されたⅡ7のとき、ベースがスケールの#4th(=G#)を取っていて、G→G#→Aと半音上昇するベースラインが綺麗。「あなたは今、幸せですか?」という一見脳天気な歌詞が、このベースライン+八代亜紀の声+入浴するヒロイン=綺麗田見代チャンとポコポコ波状的に現れるラッキーマンの顔(図7)の完璧な融合で、えもいわれぬペーソスを生み出している。ここ、芸術品だね。 金田氏はこの部分では円形を波状的に使い、カクカクした三角形や四角形とのコントラストを際立たせてもいる。音楽にぴったりとマッチさせながら。 10~12小節も同パターン繰り返しで、最後に経過コードとしてのディミニッシュコードを挟んでサビへ。 【C-1】
平行調Bマイナーに転調。運がよいラッキーマンは敵が攻撃してきても、運良くしゃがんていたり、敵が運悪く自滅してくれたりして(図8)絶対にダメージを受けない。ツいてツいてツキまくる。面白いアクションだ。八代亜紀のドスが効いた「それが私だ」部分は、♭Ⅵ-Ⅳm7と2種類のサブドミナントマイナーを使うことで、色彩感が際立っている。6小節、 ♭Ⅵ-♭Ⅶ7 のマイナー版逆循環(参照 )パターンで、サビを繰り返す。 【C-2】
このあとキーBメジャーに同主調転調して、【I-2】を繰り返し、最後Bにいって解決。この間、図7を発展させたようなタマゴ形(ラッキーマンの顔)がピョンピョンとボールのようにバウンドしながら、波状的に増殖していって、画面を埋め尽くして終了。 ラッキーマンのアニメ、スタジオNo.1系の鍋島修監督のほか、飯島正勝氏、Z5の亀垣一氏等が演出家として進むうえで重要な作品だったろうし、作画のほうには松原京子さん、本橋秀之氏も参加している。日曜日にでも長男が撮ってくれたビデオをゆっくり見てみよう。初回放送時、長男はオヤジと一緒に見ていたこと覚えてるのかな? まだ2歳くらいだったが、明日13歳の誕生日だ。おめでとう。こんなオヤジと付き合ってくれててありがとう。「あなたは今、幸せですか♪」
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