Christian Dior 2013 SS !!! | ダイコ★ブログ

Christian Dior 2013 SS !!!



 続いてはChristian Dior(クリスチャン ディオール)のコレクションに御邪魔して参りましたよ。



 会場は久しぶりのMusee Rodin(ロダン美術館)。ラフ・シモンズがアーティスティック ディレクターに就任してから、アンバリッドの前に巨大なテントを設営してのコレクションが多く、ここに来たのは久しぶりでしたね。私が最初にここでクリスチャン ディオールのショーを見たのは、まだジョン・ガリアーノがアーティスティック ディレクターの頃のHaute Coutureで、幾度か見せてもらったコレクションは、いつも実に美しい作品ばかりでいろいろ思い出がありますね。


 今回、こちらにお庭のグリーンとリンクするかのような、木々で覆われた巨大な会場を設営してのコレクションとなりました。外側からはうっそうと茂るグリーンに所々垂れる花々が鮮やかで、そこにミラーワークの巨大な"Dior"の文字が!!!!いやぁ、やはりテンション上げてくれる、さすがはクリスチャン ディオールですね。。。


 この日は個人的に勝手にバースーツのつもりでグレーのセットアップを着て行きました。ここまでシックなスタイルはパリではあまりしないのですが、比較的のんびり目のスケジュールのこの日、リラックスした気分で過ごそうと思い、パリ・シックな感じにしてみましたよ。


 スーツ、サングラス/BOTTEGA VENETA、インナーのTシャツ/YSL、バッグ/3.1 Phillip Lim、シューズ/VANS。


 外観もさることながら中に入ってさらにビックリです!!!天井から所狭しと吊るされたカスケードする花々は藤や蘭、はたまたドライフラワーにペイントした物や造花等様々です。有機的な植物は鉄製のイントレに無造作に吊り下げられ、銅線を伝って流れ落ちます。うっそうとした植物達が描き出す自然の絵巻はロマッティックでありつつも、何となく退廃的な要素も感じさせ、今迄余り見た事のないアバンギャルドな空間にコレクションへの期待も高まりますね。



 2014 SSで、アーティスティック ディレクターのラフ・シモンズは今迄とは少し違う観念的な視点からコレクションをクリエイトをしました。テーマは何処から来て何処に向かって行くのかわからない、新しい世界に住む『フラワーウーマン』です。クリスチャン ディオールというコードやラフ・シモンズが行って来たクリエイションは根底から覆され、このメゾンと実に縁の深い花々や植物に新たな解釈が施されます。


 「今回のコレクションのアイディアは、抒情的なロマンティズムを危険に置き換えたり、美しいローズガーデンを毒に満ちた場所に変えたりと、ディオールをさまざまな角度から大胆に変化させることです」とラフ・シモンズはプレスリリースで説明します。「ディオールは自然をテーマにしたものが非常に多く、自然は変えられないという考えが存在します。しかし、わたしは物事を本質から覆したい、ファッションを可能性、リスク、変化に満ちた領域として存在させたい、そう思いました。」


 パリコレの中で最も未来に近いコレクションを見せてくれるメゾンの一つの、クリスチャン ディオールの舵取り、ラフ・シモンズはさらに遠い未だかつて誰も見た事の無いスタイルを『トランス ディオール』という言葉で表現します。Travel(旅)、Transformer(変化、変質)、Transporter(運送者、運送機器)の3つのワードから綴られるこの物語は、新たなスタイルを生み出し、移ろい行く様々な魅力を放つ、とらえどころのない女性像を作り上げます。


 ブラックやホワイトにフレーミングされた様々な艶やかなカラーやフラワープリントは、まるで地球上の全て
花々の色を揃えたような、今回の庭園の会場からピックアップしたようですが、それは花々が持つ要素の一つ、ピースフルというだけではありません。棘や毒はその花が美しければ美しい程、香りが麗しければ麗しい程、強い個性となって重要な要素となります。


 では、甘美な裏切りとあらゆる想定外な要素が鏤められた今回のクリスチャンディオールの魔法を紐解いて行きましょうね。ファーストルックに登場するのは、ブラックのバージャケットと鮮やかなフラワープリントの上品なルックのように見えますね。。。。が、、、、、まずここから意外性を見せる物語がスタートします。ウールとシルクのジャケットはウエストのサイドの部分にスラッシュを開け、肌を見せるディテールとクロスした前立てに、緻密なドレープが寄せられ新たな進化を遂げます。


 切り取られたペプラムはボトムスに、しかもショートパンツへと姿を変え、まるでジャケットのヘムから覗くスカートのように鮮やかなフラワーモチーフのシルクのプリーツスカートへ繋がります。エターナルなコードを使いながらも、それらは一つとして私たちが知っている物ではないという、これから始まるコレクションのキーになるような興味深いルックですね。




 ヘムをクロスするディテールは様々なバリエーションで登場し、折り紙のような複雑なデザインとなって、こちらのようなトップスにも変容します。パステルピンクのコットンで仕立てられたトップスには、今回の会場のカスケードするような花のディテールがビジューのグラデーションのエンブロイダリーで施されています。


 胸元の小さなエンブレムは『トラベラー』を象徴するモチーフで、トランクに貼った様々なワッペンやステッカーからインスパイヤされているそうです。何種類か登場するエンブレムのモチーフの中にはディオールのオートクチュール部門で制作された、見事なエンブロイダリーの物等もあり必見ですね。


 斜めにデザインされたシルクのプリーツスカートは、放射状のラインがトップスのヘムのクロスする斜めのディテールとリンクし、少し覗く骨盤の部分の肌がセクシーですね。



 沢山のシグネチャーとも呼べるアイコンバッグがコレクションに合わせてそのヴァリエーションを見せるのも、ディオールの楽しい所ですが、今回は様々な要素を見せるミューズ達をイメージするかのようなアバンギャルドなデザインが注目です。


 こちらのディオリッシモはなんとカラーリングしたパイソンを、絡み合ういばらのようにカットワークで表現した斬新なデザインで、ラタンで編み上げたバッグのような軽さがありますね。今回エキゾティックスキンを使ったアイテムが豊富で、さらにカラフルなカラーに染め、地球上に存在しないような、もしくは猛毒を持ったは虫類のような、個性的なデザインが新鮮でした。



 一見レザーに見えるこちらのジャケットはなんとシルクにエンボス加工で、絡み合う草花を立体的なテクスチャーで表現したマテリアルを用いた、実に手が込んだアイテムです。ゆったりしたオーバーシルエットで仕立てられ、程よいリラックスムードが素敵ですね。


 インナーにブラトップを着ているようにみる部分には、ブラックとミッドナイトブルーのビジューで繊細な刺繍が施され、カッティングにはスポーツウエアのようなハイブリッドなムードも漂います。シルクのプリーツのヘムのショーツをコーディネイトして、やはり想定外の斬新なルックですね。



 今回注目のアイテムにコットンを使ったシャツドレスが登場していました。ほっそりとしたシルエットで実に爽やかで、あまりこのメゾンで見かけないアイテムだったので新鮮でしたね。もちろんディティールに拘ったデザインはディオールならではです。


 こちらのルックは前から見ると尖った大きめの襟にボディをスパイラルするように開きが作られたメンズライクなデザインですが、バックスタイルはこんなに華やかです。襟の後ろの部分にはネックレスを着けたかのような、ペールブルーのエンブロイダリーを繊細に施し、大きく腰迄開いた背中のVの部分は、ウエストで捻るテクニックで仕立てられ、放射状のドレープが見事ですね。


 メンズライクなシャツをテーマにエンブロイダリーやドレープのデザインをプラスし、しかも今回の移ろい行くフラワーウーマンを象徴するかのように、フロントとバックスタイルのアティチュードをガラリと変えて見せてくれるなんて、、、、実に粋な演出ですね。


 
 シューズも実にオリジナリティに溢れていて素敵でしたね。ラフ・シモンズがデザインを手がけるようになって、ディオールではポインティッドのシューズに沢山の名作を残して来ましたね。


 今回登場したのは先に登場したバッグのイメージとリンクする、いばらのように足に絡み付くデザインが印象的です。複雑なストラップのデザインは実に効果的に足を美しく見せ、何種類か使われるマテリアルのカラーリングのセレクトも見事ですね。ディテールにスニーカーを彷彿させるアイレットと紐のデザインを取入れたり、履き心地の良いソールを取入れたりとハイブリッドな要素もプラスし、さらにこちらは小さなバラのコサージュを飾った魅力的なシューズですね。


 いやぁ~。こちら完売続出の香りプンプンですね。。。。気になる方は早めのチェックをおすすめしますよ!



 こんなアグレッシブなドレスも登場しましたよ。カスケードするフラワーモチーフのプリントのシルクは複雑にプリーツがたたまれ、その上から様々なワードをプリントしたテープが施され、さらにエンブロイダリーが施されます。


 こちらのドレスは今回のテーマ『トランス ディオール』の最も超越的なテーマ、『トランスポーター』の概念が表現されたアイテムで、施されたテキストはこのメゾンのアーカイブスを遡る重要なワードが並べられます。ディオールの歴史を自らの物語で語る程の強さを放つこのドレスは、モダンアートのようで実に美しかったですね。


 こちらのドレスは他にも数点登場していましたが、華やかなフラワープリントにプリーツをかけ、テキストのテープを飾り、ブラックのパーツや太いベルトで大胆に絞めたデザイン等、かなりアバンギャルドで素敵でしたよ。




 ニットも実にハイブリッドで面白いアイテムが豊富でしたね。羽のように軽く透け感を強調したアイテムが多く、軽さの中にディオールの重要なシグネチャー的シルエット『8』ラインの、身体を美しく包み込むシルエットが印象的でした。


 また、ゆったりとしたスウェットシャツをイメージさせるスポーツテイストのアイテムも登場しましたが、その複雑なパターン出しやリラックスしたシルエットは実にエレガントでしたね。


 他にホリエステルの極薄の繭のようなニットは、縦にはぎ合わせる事でプリーツのような効果を生み出し、エアリアルなボトムスとして、張りのあるサテンで仕立てられたオーバーサイズのタキシードジレ等とコーディネイトされ、印象的でしたね。




 とにかく美しいカラーやコンテンポラリーなアイテム豊富だったが今回、こちらのような一見プレーンなルックにもクチュールメゾンならではのテクニックの高さを伺うことができます。トップスはオレンジのシルクで仕立てられていますが、フラットなフロントに対してバックはまるでタンクトップをレイヤーして着たかのようなアシンメトリーで流線型のラインを描き、片方だけ肩甲骨を覗かせたりと緻密なカッティングが見事です。


 ライラックのランタンスカートは幾つか横に切り替える事で緻密に分量を計算し、ヒップ部分はゆったりとタックを取り、ほっそりとフルレングスに繋がる、実にエレガントなシルエットです。


 このルックの中に『トランス ディオール』のテーマの一つ、『トランスフォーマー』のアイデンティティーを感じる事が出来ます。変革、革新を続けて来たディオールの軌跡を辿るスタイルで表現されたこのルックは、アーカーブスの中からインスピレーションを得て、再解釈されたランタンタイプのドレスですね。他に沢山登場しているループ状やプリーツのディテール等もこのテーマに由来していましたね。




 コレクションも後半になって来ると、メゾンのプライドを感じさせる複雑なテクニックがラフ・シモンズが生み出す新しいシルエットと融合し、移ろい行くミステリアスなフラワーウーマンのパレードへゲスト達を誘います。


 こちらのブラックやネイビーのシルクのドレスは、まるで籠を編むように幾つものループ状のパーツで構成されています。バルーン状のシルエットの裾から胸元へ続く、複雑なループは歩くと風に揺れ美しい動きを見せてくれます。


 実はこのドレス、バックスタイルは全く違う表情をしています。肩の部分にチラリと見えるストラップはバックでタンクトップのようなカッティングが施され、そこにパールピンクやクリスタルのエンブロイダリーが施されます。前から全く見えないように計算され、ローズモチーフの鮮やかなプリントをループ状にして、美しい籠のバックスタイルを作り上げます。


 いやぁ、想定外の美しさ。。。。。実に感動的なドレスでしたね。


 
 エンブロイダリーのテクニックはさらにエスカレートし、ミステリアスな庭園で美しい花を咲かせ、コレクションを盛り上げて行きます。今回重要な要素の一つであるプリーツは大胆に斜めにドレスにはめ込まれ、小さなアシンメトリーのスリーブへと変容します。それ以外の部分には小さなビジューを丁寧にエンブロイダリーした、カスケードする花々がギッシリと施され、スカートのヘムに揺れる動きをプラスします。


 ブラックのショルダーベルトで、淡いピンクのドレスをビシッと絞め、シューズの中にブラックを一滴垂らし、見事なカラーリングのコントラストを作り上げます。こちらのルックは他にアイスブルーのアイテムもあり、涼しげで実に美しかったですね。



 こちらのビスチェドレスもプリーツとエンブロイダリーによるテクニックが使われ、Haute Coutureのラグジュアリーさをよりリアルに解釈したドレスとなっていましたね。


 折り重なって行く全体のデザインの中に光沢のあるグレーのプリーツをジオメトリックにはめ込み、それ以外の部分は細かいエンブロイダリーが施されます。小さな竹ビーズでハニカムのパターンを刺繍した後、ブルーやグリーンのビジューでカスケードするようにフラワーモチーフが施されます。まるで今回のセットの銅線やスチールのネットに無造作に飾られた沢山の花々の感じをそのまま表現したような、見事なリンクが実に素晴らしかったですね。



 

 意外性を持つ捉えどころのない女性像の表現はラストまで続きます。こちらはブラックのウールXシルクのマテリアルで仕立てられたスーツですが、前から見たら実に端正なラフ・シモンズらしいウエスト位置の上がったバースーツです。が、振り向くとそこにはディオールを象徴するかのようなブルーローズのプリントのマテリアルが見事に差し込まれ、美しいドレスのようなシルエットを作り出します。


 これがフロントから見ていると全くバックをイメージさせない程緻密な仕立てになっていて、差し込んだ先端の矢羽根のカッティング等、もううっとりする程に完璧なテクニックですね。


 こちらのアイディアのルックは他にストレートのチェスターコート風のフロントに、やはり、細かくフラワープリントを差し込んだカクテルもあり、次シーズンはバックの景色にも気を使った着こなしを楽しんでみてはいかがですか?



 さて、今回、コレクションのフィナーレは実に感動的でした。早替えをしたモデル達が纏うのはシルバーのジャカードの一連のルックで、ラフ・シモンズがこれまでディオールで作り上げて来た幾つかのフォルムを集大成にしたコレクションで、過去、現在、未来を融合させたコレクションの最後に実に美しい作品を見せてくれました。Haute Coutureは民主的な物へと形を変え、ムッシュ・ディオールが作り上げた永遠のビュティーは現代へ姿を現し、やがて未来へとビジョンを見せる新しい『フラワーウーマン』達のパレードは圧巻でしたね。




 ワールドワイドに驚くべきスピードで拡大を続けるファッションの世界において、今や貴族的な非現実的なスタイルで、独りよがりで作品をクリエイトする事は最もタブーな事で、名だたる世界のビッグメゾンであっても、着る人のライフスタイルや価値観にコンシャスした、愛されるコレクションを発表する重要性は以前にも増して大きくなっているような気がします。


 クレイジーでエキセントリックな『神』と呼ばれるデザイナーがとんちんかんなデザインのドレスを発表する時代は過ぎ去り、メゾンやデザイナー達が顧客と一緒に次の価値観をクリエイトして行くスタイルが現在は主流のようです。でもそこには伝統あるメゾンならではのオリジナリティ溢れる新しいスタイルが必ず必要で、バランスの良いコレクションを発表し続けているラフ・シモンズの実に巧みな匙加減にいつも感度させられますね。


 何を着れば良いか迷ってる顧客のニーズが多い中、次にやって来る、誰も見たい事のない未来に向けて発表された新しい価値観は、同時に様々な要素を持つ現代女性のニーズにマッチし、ラグジュアリーなのにオリジナリティー溢れる斬新なルックの数々を見せてくれました。もちろん、このメゾンの一番のアイコン、フェミニンなエレガントさはきちんと感じられ、実に素晴らしかったですね。


 次シーズン、ファッションを楽しむ私たちもアグレッシブに何か変化を遂げなければならないのかもしれません。自分の置かれている様々な立場を認識、肯定し、クリスチャン・ディオールの新作で、より自由にファッションを楽しんで、素敵なシーズンを過ごしてみではいかがですか?





 

はい、久しぶりに発見!ニューヨークタイムズの名物カメラマン、Bill Cunningham氏です。会場で元気に写真を撮っている彼を見ると、なんだかいつもホッとしますね。



 このコレクションの当日のセレブレティのインタビューのムービーをこちらのYou tubeからご覧になる事が出来ますよ。是非会場の臨場感を味わってみて下さいね。


 東京で開催された2013-14 CRUISE COLLECTIONのリポートはこちらからどうぞ
 

 2013-14 FW Christian Dior PARIS Prêt-à-Porter COLLECTIONはこちらからどうぞ。
 2013-14 FW Christian Dior 東京でのプレゼンテーションのリポートはこちらからどうぞ。

 2013-14 FW Christian Dior PARIS Haute Couture COLECTIONのリポートはこちらからどうぞ。

 2013-14 FW Dior FINE JEWELRY @PARIS Haute Couture COLECTIONのリポートはこちらからどうぞ。
 
 2013-14 FW DIOR HOMME PARIS MEN'S COLLECTIONはこちらからどうぞ。
 2014 SS DIOR HOMME PARIS MEN'S COLLECTIONはこちらからどうぞ


 展覧会「IMPRESSION DIOR」のリポートVol,1はこちらからどうぞ。
 展覧会「IMPRESSION DIOR」のリポートVol,2はこちらからどうぞ。


 Christian Diorのサイトはこちらからどうぞ。


 
 今回のリポートしたChristian Diorの素敵なお話も掲載されている私の初の著書、『ブランドパスポート』は、現在絶賛発売中です。シグネチャーのバッグのMISS DIOR、バージャケットのお話等も楽しめます。


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