Christian Dior 2013 S+S Haute couture !!!
雪が残る中開催された今回のPARIS Houte Coutue Collectionですが、いち早く春の息吹を感じさせてくれたのはChristian Dior(クリスチャン ディオール)のコレクションでした。
会場はチュールリー公園の庭園の中。外壁に鏡を配し、庭園の木々の中に紛れたような巨大な会場を作り、ランウェイに登場したのはモダンなテイストのフランス庭園。美しく刈り込まれたグリーンに柘植の木々が春の到来を待ちます。今回のコレクションの為にうっとりするようなドラマティックでゴージャスな景色が用意されました。
様々な季節の到来や移ろいは庭園の中で映し出され、美しい自然のサイクルを観察が出来ます。アーティスティック ディレクターのラフ シモンズは、今回、庭に溢れる自然がもたらす様々な変化と、それを手なずける為に人間が駆使して来た様々なテクニックにインスパイヤされました。
『僕は今回、解説が不要なくらいテーマがクリアなコレクションを創りたい、と考えました。”シーズンを反映”し、春そのものを語るコレクションにしたかったのです。』とラフ シモンズは語ります。
コンセプトをよりクリアにする事で、見えてきた様々な部分は顕著に作品に美しく表現され、様々なテクニックを駆使したアトリエの仕事は、まるで咲き誇る花のようにディオールの庭園で花開きます。庭園に美しい花々。。。オートクチュール、そしてディオールを語る上で最高のテーマですね。
では、作品を見て行きましょう。ファーストルックは美しいディオールらしい8ラインのドレスです。爽やかなアイスブルーマテリアルが、ふんわりと軟らかくドレスを包みます。まるで生地が自分の意志で動いてるかのように、ボディの上を流れ独特の美しいドレープを描きます。
ナチュラルなのにこのボリューム感、、、、一体どんなテクニックなのか気になって仕方ありません。
ムッシュ・ディオールがかつて作り出したような構築的なドレスも登場します。複雑にカッティングされたビスチェ部分はアシンメトリーな胸元を作り、ボウのように華やかなボリュームのフレアー部分がタイトスカートと重なります。でもあくまでも軽く、新しい構築感です。
チラ見えするインナーのブラックの胸元や、タイツがルックをきりりと締め、モダンで美しいスタイルに仕上げています。
ラフシモンズが得意とする、クラシカルとモダンを融合したバージャケットも登場します。ほっそりとしたジャケットは、ウエストラインを強調する50'sのジャケットのように女らしく、凛とした部分もあり素敵です。
一見、シンプルに見えますが、ボディーラインはアシンメトリーなカッティングが施され、胸のラインからウエスト、ヒップへ続くアワーグラスのラインを美しい表現します。丸めのピークドラペルもクラシカルで素敵です。
新しいバージャケットには、細く、ピッタリとしたパンツがコーディネイトされます。センタープリーツをきっちりかけ、ハンサムウーマンの出来上がりです。
ディオールのオートクチュールと言えば様々なゴージャスなエンブロイダリーが有名ですが、ラフ シモンズはこのテクニックにも新しい風を吹き込みました。様々な新しいビジューやパーツを使い、よりモダンなエンブロイダリーで素晴らしい作品を発表して来ました。
本来、オートクチュールのアトリエはスーツやコート等のハードな素材を扱う『アトリエ・タイユール』と、ドレスなどの軟らかい素材を得意とする『アトリエ・フルー』の2つに別れて作品を制作するのが伝統的なスタイルですが、今回、この二つのアトリエが共同で作品を創るという素晴らしい実験も行われました。軟らかいのにボリュームのあるドレスの構造を開発したり。コートやパンツスタイルに美しいエンブロイダリーが施されたり、まるで挿し木や接ぎ木のように二つのアトリエが混ざり合い、新しい花を咲かせました。
こちらのルック、インナーのビスチェ、ロングジャケットのラペルと、それに繋がる裏地にまでビッシリと刺繍が施されていますが、シックなスーツスタイルとして発表されました。構築的なシルエットの上に咲き誇る繊細な花々のエンブロイダリーが美しい印象的なルックです。
シューズも秀作揃いです。オートクチュールのドレスやスーツを盛り上げる為に、繊細なシンデレラの靴が数多く登場しました。ポインティッドで、肌を覆う部分は限りなく少なくヌーディー。細いアンクルストラップやヒールの部分も繊細で、他にグロッシーなバージョンも登場していました。あえてドレスと違うカラーを合わせ、スタイリングを楽しんでいるのも素敵です。
今回注目なのが、タイツとシューズが一緒になったようなアイテム。タイツの上にポインティッドの先の部分とヒールが付いてるだけの、モダンなシューズも登場しました。そちらはエキゾティックスキン等も使われゴージャスでした。
満開の花が咲き誇るディオールの庭園には、こんな素敵なビスチェも登場します。ブラックで縁取りされた、オレンジの華やかな花びらは風に舞ったかのように、ヌーディーなビスチェを飾ります。
こちら、細いシガレットパンツがコーディネイトされていますが、マスキュリンでシンプルなコーディネイトに一部分だけエンブロイダリーを飾るというルックも幾つか登場して新鮮でした。リアルでモダンな新しい時代のオートクチュールのスタイルを予感させます。
水仙やクロッカスの花を思わせる爽やかなイエローのドレスも素敵でした。胸元からアシンメトリーでカッティングを施し、ヒップ部分にふんわりとしたボリュームをつくります。太ももをチラ見せして、そこから斜めの切り替えでストレートラインのスカートが繋がります。
いやぁ、、、凄いですよ!このドレス!!!なんてハイブリッドなテクニックと最高のラグジュアリーなマテリアル。なのに可憐でサラッとしてて、ポケットまで付いててモダン!!!ラフ シモンズの真骨頂ですねぇ~。。。
春の到来を予感させる様々な花のエンブロイダリーは、ドレスだけではなく、アクセサリーにも登場し素敵でしたね。構築的でかっちりしたビスチェやパンツのコーディネイトに優しさをプラスしていました。
こちらシースルーのチュールに施された花のモチーフのエンブロイダリーです。シルクの糸だけで伝統的なスタイルのフランス刺繍が施され、ビジューやモチーフ使いのエンブロイダーとは違う、趣のある繊細な仕事です。
オートムチューの醍醐味とも言える、華やかなフルーが登場し、会場は盛り上がります。淡いグレッシュピンクのスカートが印象的なこのドレスは、肩から力強いシャープなダーツを施した小さなブラックのトップスと、ピンクのタフタにブラックのチュールを重ね、花びらのような不思議な張りを出したマーメイドスカートのルックです。
スカートには生地で作られたスミレの花のようなモチーフを飾り、モダンでバランスの良いドレスです。
こちらは、ブラックのシフォンのドレスに、上に使われていた花のモチーフのエンブロイダリーのテクニックを駆使し、全身埋め尽くしたドレスです。
丸くカットしたオーガンジーに中心に向かって生地の端をかがるように糸で刺繍をし、ビーズでドレスに縫い止めていく作業です。一体何千個付いているのでしょう。。。何十時間かかる事やら。。。
ピンクの他にイエローも加わり、シースルーのグローブにはオレンジのモチーフも登場し、咲き誇る春の庭園を見事に表現しているルックです。
まるで春そのものを纏ったかのような、美しいピンクのカクテルドレスです。複雑なカッティングで作り出したバルーンシルエットのドレスには、小さなフラワーパーツやペップ等の刺繍が施され繊細な印象に仕上げられます。本来クチュールのソワレには大きなビジューや重いスワロフスキーでこりこりのエンブロイダリーが施されるのが伝統的ですが、刺繍にも新しいテクニックを求めるラフシモンズらしい、軽さのあるのにゴージャスな、新しいテクニックです。
モチーフに使われた鮮やかなグリーンと、グロッシーなシューズのグリーンがリンクして、可憐で可愛いですね。
テクニックを駆使して作り上げた見事なボリュームのバルーンドレスも素敵でした。これだけの繊細な素材をふんわり有機的なボリュームに作り上げるには、内部の構造に沢山の新しいテクニックが詰まっているからで、アトリエの努力と魂を感じる力作です。
インナーのベージュのチュールでフォルムを作り出し、一枚かさねたブラックのオーガンジーには、裾にポピーや様々なグリーンの刺繍を施します。さらにその上にスパンコールで描いた小さな小花が、舞散るように刺繍されています。
胸元や背中に下の素材に施されたシルバーのカットワークが美しく透け、モダンなドレスに仕上がっています。
やっぱり、クチュールはこうでなきゃ!!!ボリューミーなマリエのようなドレスも登場して会場を盛り上げます。美しい花びらのパターンの織りが施されたシルク生地で、ビッグシルエットの華やかなマーメイドドレスですね。釣鐘草の花のようにふんわり広がったスカート部分は、中の構造をまったく意識させない、無重力?ってくらいの軽さです。
ヘットドレスのネットをかけたボンネットにも、小さな花のモチーフのエンブロイダリーが施されています。
ホワイトをベースにしたマリエテイストのドレスは続きます。こちらは全身フラワーモチーフのエンブロイダリーで飾られたドレスです。レースの土台にレースのフラワーモチーフを縫い止め、独特の深みのあるマチエールを作り出します。胸元のレースのモチーフは鮮やかなオレンジの糸でふちかがりをして、変化を持たせています。
注目したいのが、裾に一列だけ、やはりオレンジのふちかがりが施されている所!!!いやぁ~、マニアックですねぇ~。。。大好き!!!!花で飾られたブラックのボンネットもナイス・スタイリング!!!
ラストルックはやはりホワイトベースのロングドレスですが、長めの丈のジャケットがスタイリングされたモダンなルックでした。アンダーのビスチェドレスはマーメイドシルエットで、膝から下はふんわりと優しいフォルムで華やかです。全体に小花のモチーフが刺繍され、裾に行くにつれてオレンジのスパンコールへとグラデーションしていきます。
コーディネイトされたジャケットは、どう見ても最高級のシルクでふんわりと仕立てられたもので、ピークドラペルが格好良いです。マスキュリンとフェミニン、伝統的なテクニックとモダンなデザイン。まさにラフ シモンズらしいクリスチャン ディオールのオートクチュールコレクションのフィナーレでした。
オートクチュールのコレクションとしては2回目、プレタポルテでは3月発表されたので2回目、プレフォールや他のコレクションも手がけ、経験を重ねたラフ シモンズのクリエイションと、ディオールというメゾンはまた新たな美しい融合を見せてくれた今回、コレクションは軽やかに優しいスタイルとなり、カクテルやソワレにもポケットのデザインを取入れたり、シンプルなスタイルにもエンブロイダリーを施したり、コンテンポラリーな部分も素敵ですね。
もはや絶滅の感もあるパリのオートクチュール。フランス一番のブランドとして、伝統や文化を継承して行かなければならいという現実の昨今、ディオールとラフ シモンズのマリアッジは、それまで、複雑だったコンセプトや、重い刺繍で飾られた引きずるドレスを卒業し、軽くリラックスした新しい時代のオートクチュールの在り方を提案しました
ラフ シモンズはこうも語っています。『先シーズンに僕とスタッフがオートクチュールをスタートさせた地点から、コレクションは成長、進化しています。しかし、目指す方向は一貫してるし、着る女性にとってリアリティーのあるコレクションであるべきだ、との強い思いがあります。』
どんなにラグジュアリーでもやはり実際に着る顧客が一番。宮殿に住んで女中が沢山居るような顧客は絶滅し、ゴージャスなクチュールの顧客でも仕事を持った新しい人種も増えています。よりリアルに着易いクチュールへと方向転換しているこのメゾンに明日のファッションの在り方が見えて来る気がします。
個人的には弓形の太い眉と、真っ赤なルージュ。そこに鏤めた真っ赤なスワロフスキーというアバンギャルドなメイクアップの中に、ムッシュ ディオールの時代が色濃く現れてて、最高に大好物でした!!!
2013 S+S Christian Dior プレタポルテのコレクションのリポートはこちら からどうぞ。
2013 S+S DIOR HOMMEのコレクションのリポートはこちら からどうぞ。
2013-14 F+W DIOR HOMMEのコレクションのリポートはこちら からどうぞ。
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今回のリポートしたChristian Diorの素敵なお話も掲載されている私の初の著書、『ブランドパスポート』は、現在絶賛発売中です。シグネチャーのバッグのMISS DIOR、8ラインのドレスのお話等も楽しめます。
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