Christian Dior 2013 S+S !!! | ダイコ★ブログ

Christian Dior 2013 S+S !!!


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 続いては、この日のメインと言っても良い、Christian Dior(クリスチャン ディオール)です。ラフ・シモンズがクリエイティブ・ディレクターに就任して、前回のオートクチュールで初めてコレクションを行い、様々な意見が出ておりますが、コレクションとしては、早くも2回目、初のプレタポルテのコレクションです。

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 会場は、アンバリットの前の広場に作られた巨大な特設テント。白い大きな体育館のような会場に、Diorと大きく書かれた会場に入ると、いくつも開けられた窓。そしてそこにかかる、オーガンジーのカラフルなカーテン。そのカーテンは風に揺れてフワフワしています。これは、ラフ流のサロンのイメージでしょうか?そこはあくまでもモダンです。


 では、まず、今回クリエイティブ・ディレクターに就任した、ラフ・シモンズについて少しお話しましょう。

 1968年 ベルギーのニールベルト生まれ。現在44歳。ジェンクのデザイン学校で、写真や映像を学び、卒業後は2年間、家具のギャラリーで仕事します。その後独学で ファッションを学び、アントワープ王立芸術アカデミーのファション学科長リンダ・ロッパに見いだされ、1995年1月、ミラノの展示会でプレゼンテーショ ンを行います。

 その後、数年パリでプレゼンテーションを行い、パリコレ初参加は、1997年S+Sのメンズコレクション。ルッフォ・リサーチのデザインを恋人のヴェロニク・ブランキーノと手がけたりもしましたが、様々な憶測の中、2000-01年、FWのコレクションを最後に一時活動休止を発表。表向きは彼自身がクリエイションに飽きたという理由でしたが、真相は闇の中です。

 半年後、デザインチームを結成し、ブランドとしては再活動を始めます。2005年にはジル・サンダーのレディース、メンズ部門のクリエイティブ・ディレクターに就任、2008-09 F+W より、フレッド・ペリー、その後イーストパック等と精力的にコラボを展開します。

 2012年4月、クリスチャン・ディオールのクリエイティブ・ディクターに就任し、2012年6月、オートクチュールにて初めての作品発表をします。

  アントワープ王立芸術アカデミーのファション学科長リンダ・ロッパに見いだされ、アントワープ派と言われますが、実際にはアカデミーには入学していません。入学試験の時、彼の夢や理想のデザイナー像を語った所、試験官に、もはや入学する必要のあるアカデミーは、存在しないと言われたという逸話もありま す。

 ロックに傾倒しつつも、その内面は少年のようにナイーブ。この強さと儚さを兼ね備えた彼と彼のクリエイションには、カリスマ的なファンが世界中に沢山います。
 
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 さて、そんな彼が、今回初のプレタポルテに選んだテーマは『Liberation(解放)』です。メゾンの歴史、そして彼自身においても重要なこのテーマは、ムッシュ・ディオールが最初に発表したニュー・ルックに帰依します。

  1947年、ムッシュがメゾンを設立し、最初に発表されたニュールックは、社会的に強い影響を及ぼしました。ついこの間まで、重い配給のコートを着て、工場でお国の為に弾薬を詰めていた女性達に、戦争直後の物資の無い時代、創設者のムッシュ・ディオールは、わざわざプリーツをかけ、贅沢に生地を使ったスカートと、小さくてエレガントな白いジャケットを発表しました。このルックは、『女性は女性として美しく生きる事』を提案し、それまでの様々な社会環境から女性達を解放させたルックとなりました。

 この、哲学的とも言えるメゾン創立時のエピソードに深い感銘を受けた、ラフ・シモンズは、彼らしいモダンでミニマムなスタイルで、新しいニュールックを作り上げました。

  こちら、ファーストルックです。ブラックウールで仕立てられた、ダブルブレストのバージャケットのタキシードスーツです。新しいニュールックには、細いシガレットパンツがコーディネイトされます。実際にショップでは、ボトムスも様々なヴァリエーションを用意しているようで、それぞれの顧客に合わせ、楽しめ るようになっているそうですよ。

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 前半は、ラフお得意の、美しいジャケットやタキシードのイメージの作品が登場します。ムッシュ・ディオールが発表したシルエット、AラインとHラインをオマージュにした作品は、彼流のボリューム感とシルエットに解釈され、とても現代的でミニマムです。

 こちら、タキシードをイメージしたビスチェドレス。ブラックシルクで仕立てられています。とにかくシルエットが美しく、エレガントでしたね。

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 こちらはAラインをイメージさせる白のコートドレスです。素材はウールXシルクで、動くと流れるように美しい形を描きます。

  ジャケットスタイルのコレクションの中には、メゾンのシグネチャーでもあるプリーツも、様々な形で登場します。敢えて台形型に折られたものや、脇に細かく 施した物等、やはりクラシカルとモダンのバランスが絶妙な秀作ばかり。動いた時にいかに美しいかという事も、今回のコレクションに盛り込まれたテーマでも あります。

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 ペールグリーンのダッチェス・サテンに、ペールグリーンのメタリックオーガンジーを重ねて仕立てられた、バー・ドレス。ブラックウールのショートパンツ が合わせられ、新しいスタイルのカクテルの提案ですね。アトリエのテクニックを凝縮したドレスには、ドレープやタックが駆使され、コンテンポラリーアート のようなフォルムを作り出します。他に、ペールピンク、ペールオレンジ、ペールブルー等もありました。

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 まさにバージャケットと言うにふさわしい、砂時計のようなシルエットが美しいジャケット。メンズライクなグレーのウールで仕立てられ、こういうメンズ風のマテリアルをレディースファッションに持ち込んだのも、ムッシュ・ディオールが最初でした。

 脇のダーツに90℃に折り曲げたスパンコールが、一列に刺繍されている辺りが、ラフのモダンさが見えますね。コレクションでは、ジャケットとほぼ同じ丈のプリーツスカートをインナーに合わせ、動くとチラ見せするスタイリングでした。

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 こちらはAラインのミニドレス。チュールにギュピールレースを刺繍し、ボーダー状に切り替え、モダンさを出しています。ほんと、コンテンポラリーアートのような作品ですね。

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 ペールピンクとブラックのボーダーのサテンを使ったAラインのドレスです。斜めにタックを取っているのに、ボーダーの柄は合っているという、シンプルに見えて、凄いテクニックの詰まったドレスです。

 ヘムラインをイレギュラーにして、動くと風を孕み、ユニークな動きをします。

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 カクテルやソワレを飾る、スパンコールやビジューの刺繍についても、ラフ・シモンズには何か新しいアイディアがあるようです。今迄の花や鳥の具体的なモチーフではなく、よりジオメトリックでモダンな、新しいラフ・シモンズ流の刺繍を現在開発中のようです。

 こちら、Aラインのヌードベージュのチュールのドレスに、蜘蛛の巣を張り巡らしたような、何かの亀裂のような抽象的なモチーフのエンブライダリーのドレスです。大小様々なピンクとブルーのフラットスパンコールで、この独創的な刺繍の線を描きます。

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 刺繍=女らしいもの、繊細な物という概念ではなく、新しいディオールのエンブロイダリーのテクニックは、何か強さのような物を感じずにはいられません。

 まるで、電気の基盤か、何かのコンピューターのシステムのような、グラフィカルなビジュー刺繍はとてもモダンで、今迄のディオールのビジュー刺繍の概念を新しくしていました。大きめのクリスタルやシルバーの竹ビーズを使い、立体的に施されています。

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 蝶はラフ・シモンズが大好きなモチーフで、何かフェティシズムすら感じるそうです。蝶の羽根の模様をグラフィカルに解釈し、Aラインのオレンジのオーガンジーのミニドレスに、光沢のある物や、マットな仕上げのスパンコールを刺繍し表現されたドレスです。

   ファッションがミニマムで、シンプルになった分、アクセサリーは華やかな物が目立ちましたね。もちろん、ラフ流のミニマムでポップな物です。クリアーと メタルのパーツに、スワロフスキーのエンブロイダリーが素敵なネックレスや、ポインテッドのヒールは、細いベルトと、メタリックなカラー、ヒールの形迄、 斬新で素敵でした。ラフのDiorを最初に体験するなら、まず、アクセサリーからってもの、ありですね。

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 ペールピンクのナチュラル風の素材に、華やかなイエローをボンディグしてダブルフェイスのマテリアルを作り、それで仕立てたドレスです。ダイヤ型の規則的なホールをヒートカットで施し、少しボリュームが多めの後ろの部分が動きの美しさを表現していました。

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 後半にはバージャケットにエンブラロイダリーを施した物も登場します。ネイビーブルーのウールXシルクのジャケットにラフの提案する、モダンでミニマムな刺繍が施してあります。

  さて、今回提案されたラフ・シモンズによる新しいバージャケットは、ウエスト位置を実際より8cm上に上げ、さらに前立ての合わせの部分を真っすぐ深く取 る事で、ウエストより上の部分をより小さく見せ、ほっそりとしたムードにしているそうです。ウエストから下の部分は、固い芯でその形を作り出し、チュール等は入ってないそうです。

 上半身が小さいのって、やっぱり、とってもモードなんですね。。。。

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 最後は、白地にピンクのフラワープリントのダッチェスサテンに、ブルーのメタリックオーガンジーを一枚重ねたスカートと、カシミアXシルクのニットのトップスのコーディネイトです。実はこれ、セパレーツ。楽ですよね?女性に取っては。

  うちも、ウエディングドレスのオーダーが来ると、良くセパレーツで仕立てたりします。総重量を一度ウエストで分散出来るのも、着る側に楽ですし、途中でどちらかだけ脱ぐのも可能です。ドレスなら本来コーディネイトが出来ないものなのに、いろいろと楽しめるのも、利点ですね。

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 同じテーマのソワレスタイルです。ピンクとイエローフラワープリントが施されたダッチェスサテンに、虹色のメタリックサンを重ねたスカートに、こちらは、カシミアxシルクのノースリーブのトップスを合わせています。

 今回のコレクション、帽子やヘッドドレスは姿を消し、小さな顔を覆うチュールや、そしてこのまるでボウを結んだようなスカーフのアクセサリーが登場します。ピンクやレッド等、カラーも様々で新しいバージャケットにクラシック且つモダンな印象をプラスしていました。

 実はこちら、私も大好きな、イギリス天才帽子デザイナー、フィリップ・トレーシーの作品。



 さて、私は、前回のオートクチュールが見れませんでしたので、今回のこのプレタを見る迄は、 あーだこーだ言わないつもりでいました。ある有名ジャーナリストさんに言わせると、『ムッシュ・ディオールが最初にニュールックを出した時の驚きと感動は、こんな感じだったんじゃないか?』とか、また別のジャーナリストに言わせると『ディオールらしい香り立つような女らしさは、何処へ?』等、全くの賛否 両論でした。

 私は、もちろん、ムシュ・ディオールの時代から、ジャン・フランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノと、常にこのメゾンのクリエイションに心奪われて来ましたが、元々ラフ・シモンズがクリエイトする、ミニマムやモダンなスタイルにあまり興味がなかったので、どうかなと思っていましたが、作品の素晴らしさに心奪われました。もちろん、ディオール社のアトリエスタッフの卓越したテクニックならではというのもあるでしょうが、なんか、お互いに歩み寄っているアトリエの景色が見えて来るようで、とても好感が見えました。

 私的に、気になるのは、美しい秀作揃いのバージャケッ トや、パンツスーツに対して、カクテルやソワレがちょっと物足りないかなって感じはしましたね。ディオールのソワレには、今迄沢山の女優達やセレブ達を 飾って来た歴史を考えると、香り立つような女らしさや物語は存在しませんでしたね。ディオールのドレスを纏う事に寄って、より女を意識し、女らしく振る舞えて、社交界の華になるドレスでした。それには、まだ、少し役不足のように思われます。

 いつの時代も女性は女性。鏡の前でうっとりしたり、綺麗なドレスで性格迄変わったり。そんなマジックを求めてディオールに足を運んでいた顧客達が、一体 どういう反応なのかとても気になります。世界中の全ての女性が、合理的でシンプルで便利な物を求める訳でもないと、私は思いますが。。。。。


 只、一番素晴らしい部分は、感動的な作品を作ろうとする、ラフ・シモンズと、アトリエのパワーがもの凄く感じられる所です。こんな短期間で、これだけ素晴らしい作品を発表している彼らですから、きっと、もの凄い犠牲を払っている事でしょうね。。。。ほんと、お疲れさまです。。。。。

 今、まさに一番ドキドキさせてくれる、フランスが誇る最高のメゾン、クリスチャン・ディオールと、新しいクリエイティブ・ディレクター、ラフ・シモンズの今後の動きに、益々目が離せませんね。
 


 DIOR HOMMEの2012-13 F+W メンズコレションのパリでのショーの模様はこちら からどうぞ。
 DIOR HOMMEの2013 S+S メンズコレションのパリでのショーの模様はこちら からどうぞ。
 
 Diorの2012-13 F+W レディースプレタポルテコレションのパリでのショーの模様はこちら からどうぞ。
 
 今回のリポートにも登場した、バージャケットや、ニュールックについてのDiorの素敵なお話も掲載されている私の初の著書、『ブランドパスポート』は、現在絶賛発売中です。

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