信じられない試合。
昨年（２０１２年）、ホンジュラス代表は「絶体絶命」のピンチに陥っていました。
「２０１４年ブラジルW杯」、北中米カリブ海地区予選…。
１次、２次は免除で３次予選から登場したホンジュラスは、パナマ、カナダ、キューバと同組に入りました。４チーム中「２位以内」が最終予選に進めるのですが、想像を遥かに超える大苦戦を強いられます。
まずは、初戦。相手は苦手とする、パナマ。近年、なぜかパナマには勝てていません。…とは言え、この試合はホンジュラスのホーム。「２８年ぶりのW杯出場」を決めた南アフリカW杯予選では、ホームではあの強豪メキシコにも全勝！！予選全試合中、ホームで負けたのはアメリカ戦の僅か１試合のみと、「ホーム」で無類の強さを誇っていました。ところが…。何とこのパナマとの初戦に「０－２」で完敗…。予選が始まってしょっぱなの試合で、しかも得意とするホームで、いきなり出鼻をくじかれるという、正に悪夢のような「最悪のスタート」を切る事となってしまいました。
初戦をホームで落とした事でもはや１敗も許されない厳しい状況に陥ったホンジュラスは、続く２戦目で「２位以内」を争うライバル…難敵カナダとアウェーで対戦。この試合はどうにか「０－０」の引き分けに持ち込みますが、「２試合連続無得点で未勝利」に終わり、最終予選進出「圏外」の「３位」に沈んでしまいます。
続く３戦目、４戦目はキューバとの２連戦。もはや「２位以内」に入るためには引き分けさえ許されない状況に陥ったホンジュラスは、この２連戦にアウェーで「３－０」、ホームで「１－０」と勝利し、何とか瀬戸際で踏ん張ります。…が、キューバに連勝しても順位は上がらない…。依然として最終予選出場「圏外」の「３位」に沈んだままです。残りは、２試合…。
迎えた、４戦目。アウェーでパナマとの「リベンジマッチ」です。ホームで完敗を喫した屈辱の倍返しをしたいところでしたが、今回もパナマには勝てず「０－０」の引き分け…。負ければ「予選敗退」だった運命を分ける試合で勝ち点１を獲得して可能性を最終戦に残せたのは良かったですが、依然、順位は「３位」のまま…。次の最終戦のホームのカナダ戦は、負けはもちろん、引き分けでも「予選敗退」という、正に「絶体絶命」…崖っぷちの状況に追い込まれました。
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＜２０１４年ブラジルW杯 北中米カリブ海地区 ３次予選（最終戦を残しての順位）＞
１位：パナマ 「勝ち点１０」（３勝１敗１分）＜得失点差＋４＞
２位：カナダ 「勝ち点１０」（３勝１敗１分）＜得失点差＋３＞
３位：ホンジュラス 「勝ち点８」（２勝１敗２分）＜得失点差＋２＞
４位：キューバ 「勝ち点０」（５敗）＜得失点差－９＞
今回はさすがに、「終わりか…？」と覚悟を決めましたね。
ロンドン五輪ではホンジュラスらしい「上手さ、速さ、強さ」を兼ね揃えた攻撃とルイス・スアレス監督がもたらしたホンジュラスらしからぬ献身的かつ組織的な守備で「ベスト８」に進出し、世界に「ホンジュラスサッカー」の実力を存分に見せつけましたが、フル代表は試合内容も最悪…。僕は昨年ホンジュラスに居た際に前述の勝ったキューバとの２連戦をTVで見ましたが、この明らかに格下の相手にも大苦戦…。特に、かつてはホンジュラスの持ち味だった「攻撃」面の不振は深刻で、２人目３人目が絡む連動した攻撃はほぼ皆無で、ただ個人の力でゴリ押しするばかりの短調な攻めに終始…。しかも、歴戦の勇士であり、南アW杯出場に導いたFWカルロス・パボンやダビド・スアソ、MFアマド・ゲバラなどが抜けて「個」の力さえもスケールダウンしてしまった今のホンジュラスは、今予選ここまでパナマ戦２試合（「０－２」、「０－０」）とカナダ戦１試合（「０－０」）…実力が同等級のこの２チームに対しては、３試合を戦って何とただの１点も取れないという、散々たる有様でした。
絶望的なまでの「得点力不足」。そんな状況で、最終戦は「２位」カナダとの最終予選進出をかけた「直接対決」。カナダは引き分けでも最終予選進出が決定。対するホンジュラスは負けはおろか引き分けさえも許されないのに、「得点力不足」でカナダとパナマにはここまでゴールさえ奪えていない…。けど、得点できない事には「勝利」は無いし、「予選敗退」が決まってしまう…。
こんなところ（３次予選）で、ブラジルW杯出場の夢はついえてしまうのか…？
「ホンジュラス（勝利以外、敗退）VSカナダ（引き分けでOK)」
正に、「天王山」の直接対決。運命の３次予選、最終戦の結果は…。
何と、何と、何と！！！！！！！！
ホンジュラスが「８－１」という、信じられないようなスコアで歴史的大勝！！
ロンドン五輪にもオーバーエイジで出場してスペイン戦の決勝ゴール含む３得点と大活躍したFWジェリー・ベントソンと、南アW杯出場の立役者であるFWカルロ・コストリーの２選手が、「ハットトリック」！！！コストリーはこの試合直前まで９ヶ月間もチームが決まらず、無所属で「引退の危機」という苦しい時を過ごしていたので、ゴールの後には感極まって思わず涙を流していました。
そして…。この男の活躍も外せない…。ロンドン五輪の準々決勝・ブラジル戦でも芸術的なゴールを決めたホンジュラス「期待の新星」MFマリオ・マルティネス。「もう、ゲバラもパボンもいない。俺たちがやるしかないんだ」と言うこの天才肌のMFは、股抜きでDFを抜き去ってのゴールなど「ホンジュラスらしさ」満載のスーパーゴール２発を決めたのみならず、アシストやその他にもほとんどのゴールシーンに絡むなど出色の出来で、その能力の高さをこれでもかと言うほど見せ付けました。
この信じられないような「歴史的大勝」の結果、３次予選の全日程を終えての順位はこうなりました…。
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＜２０１４年ブラジルW杯 北中米カリブ海地区 ３次予選（最終順位）＞
１位：ホンジュラス「勝ち点１１」（３勝１敗２分）＜得失点差＋９＞
最終予選進出決定！２位：パナマ 「勝ち点１１」（３勝１敗２分）＜得失点差＋４＞
最終予選進出決定！３位：カナダ 「勝ち点１０」（３勝２敗１分）＜得失点差－４＞
予選敗退…。４位：キューバ 「勝ち点０」（５敗）＜得失点差－９＞
予選敗退…。ホンジュラス、絶体絶命の崖っぷちの状況から見事に生還し、大逆転で「首位通過」を決める！！
「引き分けでもOK」という有利な状況でホンジュラスに「１－８」の記録的大敗を喫して最終予選進出目前で敗退する悪夢を味わったカナダですが、決して弱い訳ではありません。その証拠にカナダの選手の多くはヨーロッパでプレーしていますし、最近、行われた親善試合では、強豪アメリカと引き分けています。日本も３月にカナダと親善試合を行いますので、そこでカナダの実力と、今回のホンジュラス戦の「１－８」というスコアがいかにありえないものかよく分かると思います。だからこそ今回のこの大勝には、僕はもちろん、当のホンジュラス人でさえ驚いていました。
さすが、「ありえない！がある！」ホンジュラス…。何が起こるか、本当に分からない。
土壇場に追い込まれないと「真の実力」を発揮しないなど、時にヒヤヒヤさせられますが、この奇想天外で予測不可能なサッカーは、ホンジュラスならでは。やはりとても魅力的です。
さて…。こうして「奇跡の大逆転、３次予選突破」を果たしたホンジュラスですが、何と日本時間で明日の早朝６時から、ついにブラジルW杯出場を懸けた「最終予選」が始まります！
今回、最終予選進出を決めたのは、ホンジュラス、メキシコ、アメリカ、コスタリカ、パナマ、ジャマイカ…の６ヶ国（この内、「上位３チーム」がブラジルW杯出場。「４位」はプレーオフに回ります）。
メキシコ、アメリカは言わずと知れた強豪中の強豪…。
コスタリカは前回の南アW杯こそホンジュラスの「奇跡の大どんでん返し」で出場を逃しましたが、日韓W杯、ドイツW杯に２大会連続で出場した強豪（９０年イタリアW杯ではベスト１６）。
ジャマイカはあのフランスW杯で日本を破ってますし、パナマはホンジュラスが今回の３次予選でも勝てなかった難敵…。
やはり今回の最終予選も、到底、一筋縄ではいきそうにありません。
そして明日の最終予選の初戦の相手は…
アメリカ。
正直、アメリカはメチャクチャ強いです（僕は「アメリカは近い将来、W杯で優勝する」とさえ思っている）。クリンスマン新監督が昨年に就任してからは、ロンドン五輪で金メダルを獲得して勢いに乗っていたメキシコを親善試合で破るなど、さすがの強さを発揮しています。ホンジュラスも前回の南アW杯予選で唯一のホーム黒星を喫するなど、一度も勝てなかった因縁の相手…。
しかし、あの「８－１」と大勝したカナダ戦のように、ホンジュラス国民が一体となってホームの雰囲気を作り出して国全体で一致団結して戦えば、必ず良い結果が出ると信じています。
さあ、明日、いよいよ「ブラジルW杯出場」に向けた本当の戦いが始まります！！
皆さんもホンジュラスの応援、何卒、よろしくお願いします！！！！！
連絡先メールアドレス→「cafehondurasyoji@hotmail.co.jp」