歴史的勝利!ホンジュラス、スペインを破る! | 元U-20ホンジュラス代表GKコーチ・山野陽嗣の「世界一危険な国での挑戦」

歴史的勝利!ホンジュラス、スペインを破る!


「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -スペインに勝利!2012年7月29日(日)①


「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -スペインに勝利!2012年7月29日(日)②


「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -スペインに勝利!2012年7月29日(日)③



 世界最大級の、治安の悪さ…。

 中南米で1、2を争う、貧困…。


 世界有数の恵まれた国である日本と違い、ホンジュラスには他国に誇れるものは無いと、国民の多くが思っています。自国に対する、絶望、諦め…。

 そんなホンジュラス国民にとって、この日の「勝利」がどれほどの「勇気」と「希望」と「力」を与えた事か…。しかも相手は、かつてホンジュラスを支配した、スペイン。現在、「世界王者」のスペインです!!


 ホンジュラス、「1-0」でスペインを破る!!!!!


 正直、何を書いて良いのか、分かりません。この「歴史的勝利」に見合う言葉が思い付かないのです。

 日本との初戦を落としたスペイン は、この試合に負けると敗退が確定。当然ながら、本気の本気でホンジュラス戦に勝ちにきました。これはホンジュラスにとっては望ましい展開ではなかったのですが、それでもホンジュラスは、そんな本気のスペインに対して臆する事なく、堂々と渡り合いました。

 前半7分に素晴らしい形からオーバーエイジのFWベントソンが2試合連続となるゴールを決めて先制!!招集に疑問も持たれていたベントソンですが、2試合で3ゴールとチームの救世主となる活躍!!オーバーエイジは他にもMFロヘル・エスピノサが高い技術とピッチを縦横無尽に走り回る献身的な動きで好守に大活躍すれば、DFマイノル・フィゲロア もさすが英プレミアリーグでレギュラーを張ってるだけあり、冷静沈着な守備と1対1の強さで、何度となくピンチを防ぎます。オーバーエイジの3人が正に獅子奮迅の活躍でチームに貢献。この3人を招集した知将ルイス・スアレス監督…もう、見事と言う他ありません。

 後半途中までは、「世界王者」のスペインに対してホンジュラスもお株を奪うかのような高い個人技とパスワークで何度か好勢に転じます。MFマリオ・マルティネス の完璧なクロスからエスピノサのヘディングがスペインゴールのポストを直撃するシーンも…。「あわや、2-0」という好機も作りました。

 しかし後半も中盤に差し掛かったところから、いよいよスペインの攻撃にエンジンがかかり始め、スペインらしい速いパスワークに、ホンジュラスは防戦一方に追いやられます。

 いつ、やられてもおかしくない…。そんな状況の中、スペインの猛攻に立ち塞がったのが、ホンジュラスの守護神ホセ・メンドーサ!!アトランタ五輪の日本VSブラジルのGK川口能活選手を彷彿とさせるかのような神懸かり的スーパーセーブの連発で、失点を許しません!!何度、ピンチを救った事か…。「ホンジュラスのGKの実力 」を世界に証明しました!!

 後半残り20分間は…もう、生きた心地がしませんでした。時間が、なかなか進まない…。スペインの必死の猛攻、GKメンドーサのスーパーセーブ、そしてポスト直撃…。

 前半からとにかくホンジュラスの選手はよく走りました。スアレス監督が植え付けた組織的な守備を、忠実に実行。ここまで全員が懸命に、献身的に守備をするホンジュラスを、僕は初めて見ました。自由奔放なホンジュラス人サッカー選手に、規律と戦術を植え付けながら、ホンジュラス人サッカー選手の持ち味である高い個人能力を融合させ、素晴らしいチームを作り上げたスアレス監督の手腕には脱帽です。最後の方はもう体力も限界にきてて、見てて痛々しくなるくらい動きも鈍くなってましたが、それでも最後の最後まで…全員が正に「気力」と「魂」で戦い抜きました。

 そして、ついに、試合終了!!!!!!!

 我が愛するホンジュラスが、「世界王者」に完封勝利しました!!

 我が愛するホンジュラスが、「世界王者」をグループリーグ敗退に追いやりました!!

 U-17、U-20、U-23、フル代表…あらゆるカテゴリーにおいて、ホンジュラスはスペインに過去、勝利した事がなかったそうです。文字通り、「歴史的勝利」となりました。そんな愛するホンジュラスの「歴史的な日」にホンジュラスに居れた事…僕は心から幸せを感じています。

 現地TVによると試合直後から「殺人事件の発生率世界一」であるホンジュラス第2の都市サン・ペドロ・スーラ ではお祭り騒ぎが始まったようです。首都のテグシガルパや、他の都市でも続々…。この日ばかりは、強盗も、警察も、一般国民も…みんなが一緒になって喜びを分かち合いましょう!!


「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -スペインに勝利!2012年7月29日(日)④


「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -スペインに勝利!2012年7月29日(日)⑤


 
 さあ、次は、いよいよ「日本」との一戦です。

 日本はこの日もモロッコに勝利し、2連勝。すでに決勝トーナメント進出を決めました。

 対する我らがホンジュラスは、確かにこの日はスペインに「歴史的勝利」を挙げましたが、まだ決勝トーナメント進出が決まった訳ではありません。現在、ホンジュラスの勝ち点は「4」で2位。日本は「6」で1位(突破決定)。3位のモロッコは「1」ですが、最終戦で勝利すれば、逆転での突破の可能性が残っています。モロッコはスペインに勝てるだけの実力を持ってるので、決して安心はできません。


「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -スペインに勝利!2012年7月29日(日)⑦

 

 ホンジュラスと日本は最終戦で引き分ければ、お互い仲良く決勝トーナメントに進出できるのですが、そうは簡単にいきそうにありません。というのも、仮に「2位通過」となってしまった場合、決勝トーナメント初戦でブラジルと当たってしまう事が濃厚なため、日本も全力で「1位通過」を決めにくるはず。それはホンジュラスも同じで、そもそもホンジュラスは日本に負けると敗退の可能性もあるので、是が非でも勝ちたい。そして、「引き分けてブラジルと対戦」も、何とか避けたい…。

 「ホンジュラスVS日本」…「サッカー人としての故郷VS人間としての故郷」…ガチンコの戦いになりそうです。

 ホンジュラスにとって大きな痛手なのは、前述したオーバーエイジのMFエスピノサが、累積警告で日本戦に出場できない事。彼がいなければ結果はまるで変わっていた…ってくらいのチームの大黒柱で、代えが利かない選手なので、本当に痛いし、この素晴らしい選手を日本の皆様にお見せできないのが残念でなりません。

 
印象的だったのが、「歴史的勝利」の後チームが歓喜に湧く中、ルイス・スアレス監督だけはピクリとも笑わず、鋭い眼差しのままだった事。その視線はすでに、次戦の日本戦に向けられています。2006年ドイツW杯で、エクアドルを史上初の決勝トーナメント進出に導いた知将ルイス・スアレス監督が、ホンジュラスで新たな伝説をつくります!!

 体調不良でアルビレックス新潟ユースGKコーチを辞任 後、ここまで元気になれたのは、他でもないホンジュラスのおかげ。僕をまるで「家族」のように温かく迎え入れてくれ、日本人がとうの昔に失ってしまった人間として「大切なモノ」がある、ホンジュラスのおかげ…。今回のスペイン戦の勝利も、僕に「勇気」と「希望」と「力」を与えてくれました。

 僕は「サッカー人としての故郷 」…ホンジュラスを、応援します。


 「運命の対決」は、2日後…。8月1日(水)。

 「ホンジュラスVS日本」…。

 

「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -スペインに勝利!2012年7月29日(日)⑥


☆連絡先メールアドレス → cafehondurasyoji@hotmail.co.jp
(返信できない事もございますので、悪しからずご了承下さい)