NOTE/大野輝之&レイコ・ハベ・エバンス著「都市開発を考える」・・・(2)
*
県道79号線沿道および神宮町駅南口については
絶対高さ制限解除(商業地域・近隣商業地域)=高層OK!
■但し、地区計画により高層・大型店の立地適否場所・条件を指定(関連記事参照)
ところで・・・
アメリカでは、、、
中曽根政権とともに、
規制緩和による経済活性化をめざす新自由主義の担い手といわれた
レーガン政権の下においても、
アメリカでは日本の民活で目指されたような、
高度規制や容積率の緩和など土地利用規制の著しい緩和は決して行われなかった
:
それどころか、80年代、とくにその後半には、
西海岸や東海岸の成長率の高い都市では、
成長管理政策が新たな広がりを見るなど、
どちらかといえば規制強化の方向への動きが見られた…(下掲載書p.72より)
★書誌情報・・・
大野輝之、レイコ・ハベ・エバンス著「都市開発を考える-アメリカと日本」
(1992年、岩波書店/岩波新書・新赤版215)
:
林立する高層オフィスビル、遠くのマイホーム、破壊される景観・自然・・・。
日本の都市開発は、なぜ生活の質の向上に結びつかないのだろうか。
サンフランシスコなどアメリカ各地の具体例を通して、
徹底した市民参加の手法、
「成長管理」という新しい発想を紹介し、人間の暮らす場を目指した
都市づくりへの指針を明らかにする。。。。。(表紙カバーより引用)
★「公共の利益」とは、、、(上掲書p.80)
↓
単に一般的な「都市の成長」とか「経済開発の推進」ではなく、
都市内の経済衰退地域の再生や
低所得者層の雇用の確保、
アフォーダブル(低所得者向け)住宅の供給、
生活環境の悪化防止などの具体的な課題を意味する・・・・・
24時間眠らない街?…池袋駅(東京都豊島区)周辺/本ブログ管理者撮影
★「24時間都市」・・・【p.89】
↓
日本…24時間活動する都市(24時間仕事をする都市)
米国…昼だけでなく夜も人が住む都市
(=仕事の場だけでなく住宅も確保された都市)
↑
日米における都市づくりの誤解の1つ、、、
(当たり前のことだが、、、)
指定容積率をすべて使い切っていない保存すべき歴史的建造物・・・・・
■本ブログ内関連記事/神奈川県小田原宿編
参照
↑
TDRの概念図【上掲書p.107より引用】
★開発権の移転(TDR)…【pp..106-110】
↓
米国における運用事例・・・・・
①
TDRが行われるのは特定の公共目的のために必要な場合に限定
(最も多いのは歴史的建造物の保存のために使われる場合)
:
歴史的建造物は指定容積率をすべて使い切っていない場合が多い。
そのために取り壊して、新しいビルを作ったほうが事業採算からは良いのだが、
こうした場合に、
使っていない容積率を売却することを認めることで歴史的建造物を保存しようとする
:
同様に、アフォーダブル住宅の保存や建設に使われるケースもある。
:
また郊外では、農地や森林などの保存のためにも用いられる。
②
TDRが導入されるのは、他の開発規制の強化
(たとえば、ダウンゾーニング)とセットで行われる場合が多い
:
つまり、TDRは
成長管理の1つの手段として厳しい開発規制を行う場合に、
それにより経済的な損失を強いられる土地所有者に対する、一種の賠償手法
③
ロサンゼルス市では、
TDRの運用をスムーズにするための新しいルールが91年7月につくられた
↓
開発権売却額の44%はコミュニティ再開発庁が徴収し、
アフォーダブル住宅や保育所の建設、
歴史的建造物の保存に当てられる
密集市街地における(中層共同住宅による)高度利用再開発の事例
★「高度利用論」は、日本の都市づくりを歪める「誤解」の代表選手?【p.114】
↓
「高度利用の促進」
という名の下で行われている施策のすべてが誤っているというわけではない・・・
:
(例えば、、、)
東京には、消防車も入っていけない狭い路地の奥に木賃アパートなどが密集する
居住環境の悪い地域が少なからずある。
こうした地域では、
狭小過密な低層住宅を中層の共同住宅に建て替え、
道路や公園などのオープンスペースを広げる再開発の促進が不可欠である。
こうした再開発においては「高度利用」が土地の望ましい利用方法であるといえる。
:
(しかしながら、、、)
オフィスが過度に集中している大都市で、都市基盤のキャパシティを無視し、
さらに高容積のオフィス開発を進めるような高度利用は、
都市づくりの視点からは望ましいものではない。
住民の生活の質を高めることを都市づくりの目的とすれば、
こうした高度利用は有効利用とはいえない・・・・・
東京都庁展望台より、、、(本ブログ管理者2009年7月撮影)
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東京23区全体の平均でみると、指定されている容積率は252%であるが、
1990年の時点で使われているのは、そのうちの105%。
↓
したがって東京23区全体における平均の指定容積率の充足率は42%。
(ここでの容積率は、道路や公園などを除外し、
【建物床面積÷宅地面積】で計算した、いわゆる「ネット」の数値)
:
職と住が均衡し、近接していれば、ある程度、高容積に土地が使われていても
道路や鉄道の利用者は減り、負担は小さくなる。
ところが、現在のようにオフィスが住宅を駆逐するというような事態が生じると、
高い容積率の使用はいっそうインフラへの負担を高めてしまう。。。【pp..134-135】
★「土地の有効利用」とは何か?【p.138】
↓
①効率的利用(efficient use)
:
計量化できるものが評価の指標となる。
②効果的利用(effective use)
:
計量化できない価値をも含めた効果。
(高度利用≠有効利用)
*
たとえば、公園の場合には、低密度利用こそ有効利用になる。
↓
③最適利用(optimum use)
:
相反する利害や立場から提案されるさまざまな利用方法の選択肢の存在を認識
(いろいろな選択肢のなかから、公共的視点にたって最適な利用方法を選択)
*
(具体的事例)
ワシントン「ペンシルヴァニア通り」開発
経済効率性からいえばオフィスや商業開発がもっともふさわしい立地場所に
住宅を建設
(人間の住む都市をつくるという目的に照らして最適利用の選択)
*本ブログ内関連記事
↓
■NOTE/大野輝之&レイコ・ハベ・エバンス著「都市開発を考える」・・・(1)
■NOTE/大野輝之&レイコ・ハベ・エバンス著「都市開発を考える」・・・(2)
■NOTE/大野輝之&レイコ・ハベ・エバンス著「都市開発を考える」・・・(3)
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