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結露のおこしやすさは「どの暖房器具を使うか?」でも変わる


こんにちは。橋本です。


冬におこりがちな結露(けつろ)。


結露が大量になると壁を濡らしてしまい、その湿気が原因で、壁に黒カビがはえてしまった、なんて話もよく聞きます。


アトピーやアレルギーの疾患があると、こういった黒カビが空中に舞うことで症状がひどくなってしまうケースもあります。


そんなやっかいな結露。なるべくなら、なくしたいものですよね。


そこで知っておきたいのは、暖房器具の種類によっては、「結露しやすいタイプ」のものがあること。


結露をおこしやすい暖房器具とは、どんなタイプか?


それは、たとえば、ストーブやファンヒーターといった、「開放型」とよばれる暖房器具です。


結露:暖房の種類


 


暖房から水分が出る


暖房には、「水分を出しやすいもの」と「出さないもの」があります。


「暖房が水分を出す」というと、いまいちピンとこない人もいるかと思います。


暖房から出る水分は、やかんから吹き出す湯気のように目に見えるものではないので、たしかに「水分が出ている」という実感がつかみにくいのは事実です。


ただ、「暖房が水分を出す」といっても、どんな暖房でも水分を出しますよ、というわけではありません。


 


灯油やガスを燃料にした暖房


水分が出るタイプの暖房というのは、灯油やガスを燃料にした暖房です。


石油ストーブ

石油ファンヒーター

ガスストーブ

ガスファンヒーター


こうした暖房器具は、燃料を燃やしている部分が、部屋の内部で開放されているので、「開放型暖房器」とか「開放式暖房器」とよばれています。


ファンヒーター:蒸気


ただし、灯油やガスを燃料にしていても、外の空気を使って燃焼し、排気も外に出すタイプは、一般的に「FF式(えふえふ・しき)」とよばれていてます。


「開放型」に対して、FF式の暖房器は「非開放型」のタイプにあたり、室内には水分を出しません。


また、電気ストーブ、パネルヒーター、エアコンといったような電気を使って暖めるタイプの暖房器具は、暖房時に燃焼を必要としないため、これも室内に水分を出しません。


 


どうして水分が出るの?


灯油やガスなどの燃料は、炭素(C)と水素(H)を含んでいます。


これらを燃やすと、空気中の酸素(O)と結びつきます。


すると、炭素は二酸化炭素(CO2)へ、水素は(H2O)に変化するんですね。


化学式でみると次のような感じになります。


灯油(C12H24など):

C12H24 + 12O2 → 12C02 + 12H2O


都市ガス(CH4など):

CH4 + 2O2 → CO2 + 2H2O


LPガスプロパンガス(C3H8など):

C3H8 + 5O2 → 3CO2 + 4H2O


「燃える」という化学反応の結果、二酸化炭素水分に変化していることがわかるかと思います。


 


どれぐらいの水分が出るの?


「燃える時に出る水分なんて、ごくわずかなもんでしょ」と思ってしまうんですが。


じつは、灯油を燃やすと、それとほぼ同じ量の水分が出ます。


……っていうと、結構な水分量ですよね。


理論的には、1リットルの灯油を燃やすと、1.13リットルの水が発生することになります。


1リットルの灯油を燃やすのと同じ熱をLPガスで生み出そうとすると、1.16リットルの水分。


都市ガスでは、1.68リットルの水分が出ることになります。


1リットルの灯油1.13リットルの水分

同じ熱のLPガス1.16リットルの水分

同じ熱の都市ガス1.68リットルの水分


 


実際に、暖房器具を比較してみる


「でも、こうした水分量の違いって理論上そうなるだけで、実際はどうかわからないじゃない」


そう思うかもしれません。


そこで参考になるのが、実際の湿度変化を調べたデータです 1)


2時間換気しないで暖房器具を使用した時の湿度変化:

暖房器具:湿度変化


 


石油ストーブや石油ファンヒーターに比べ、エアコンは湿度が低くおさえられているのがわかるかと思います。


さらに、FF式のガスファンヒーターは、もっと湿度が低くなっています。


それもそのはず、エアコンも、FF式も、室内に水分を出さないので。


こうやってみると、実際にも、燃焼時に出る水分の差が出ているのが、よくわかりますよね。


 


アレルギーやアトピーを考えると……


とまあ、ここまでみると、暖房することで水分も出るなら、「加湿で肌がうるおっていいんじゃない?」とも思います。


しかし、加湿されることは、必ずしも肌にとってプラスとは限りません。


たしかに、冬の乾燥した空気は、肌を乾燥させやすくしてしまいます。


でも、だからといって、過度に部屋の加湿をすると、今度は窓、サッシ、さらには壁などを結露させてしまいます。


これはいただけません。


というのも、こうして結露が繰り返しおこり、ひんぱんに壁や床を濡らしてしまうと、カビが生えてしまう可能性があるからです。


ひどい場合では、壁のコーナー部分なんかにも、直接、結露があらわれ、カビだらけになってしまうこともあります。


結露で濡れた壁でよく見かけるのは、真っ黒な黒カビです。


このようなカビは、胞子(ほうし:「カビの種」のこと)を飛ばし、部屋中を飛び回ります。


アトピーやアレルギーの疾患があると、この黒カビが症状をひどくしてしまうことも考えられるんですよね。


こうなると、せっかく薬を使って治療をしていても、すぐに症状がぶり返してしまうのも、当たり前といえば、当たり前。


悪化して薬を塗って、悪化しては薬を塗って、と。


ステロイドなどの外用薬の使用量も、必然的に多くなってしまいます。


しかも、黒カビは一度はえると、根元まで落とすのはなかなか苦労するもので、できればなんとか、はえないようにしたいものですよね。


というわけで、アレルギーやアトピーのことを考えると、結露などをおこすような「過度の加湿」は、なるべくなら避けたいんですね。


朝:結露サッシ:結露


 


「開放型の暖房」を使わないのも、結露対策、アレルゲン対策のひとつ


とはいうものの、結露の原因は、様々あり、これさえやればOKという対策はありません。


数ある結露防止の方法……たとえば、「壁断熱」にしても、「二重サッシ」にしても、「ペアガラス」にしても、「すきまテープ」にしても、「カーテン」にしても、「換気」にしても。


どんな防止対策にしても、です。


というのも、住んでいる地域、家の構造などによって、それぞれの家で、何が結露の原因になっているか、大きく違ってくるからなんですね。


しかし、数ある結露対策の中でも、暖房器具を変えるだけで、結露が大幅に減るケースもあるのです。


「結露をなるべくおこさないように」と考えると、やはり、こうした水分を出すような「開放型の暖房器具」を使わないほうが無難です。


また、ファンヒーターのような暖房器具は、床付近のハウスダストを舞い上げてしまうので、アレルギーの心配がある子には向いていません。


加湿器を使う場合でも、湿度計などを目安にしながら、適切な湿度をキープしてあげることが大切です。


生活に最適な湿度は、40~60%。


それ以上に湿度を上げ過ぎると、結露をおこしやすくなり、カビダニといったアトピーの悪化因子が増えやすい環境になってしまいます。


湿度:高い湿度:適度


そういう意味では、石油ストーブ、ファンヒーターといった「開放型の暖房器具」を使わないのも、アレルゲン対策のひとつといえるわけです。


 


 


 


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参考文献:

1) 国民生活センター: 暖房-エアコンディショニングとしての再点検 空気の汚れが気になる 石油ファンヒーターなどの開放式暖房器具. たしかな目 : 国民生活センターの暮らしと商品テストの情報誌 53: 8-13, 1989.